大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福井地方裁判所 昭和28年(行モ)1号 決定

申立代理人は申立の趣旨として、被申立人が、申立人に対し、(イ)、昭和二十七年十月四日別紙第一目録記載の土地に対してなした換地予定地指定変更指定、(ロ)、昭和二十八年二月十八日別紙第二目録記載の家屋(以下本件家屋という)に対してなした移転命令にもとずく各執行は、当庁昭和二十八年(行)第一号換地予定地指定変更指定取消請求事件の判決あるまでこれを停止するとの決定を求め、その理由として(イ)、被申立人は、金津町土地区画整理の施行者として、昭和二十四年八月十一日申立人に対し、申立人所有の別紙第一目録記載の土地につき、換地予定地として三十坪四合(街衢番号十三、指定仮地番八)の指定(以下第一次仮換地指定という)をなしたので、申立人は、被申立人の指示に従つて、本件家屋を築造したところ、被申立人は、その後三年を経過した昭和二十七年十月四日に至り、申立人に対し、突然右の仮換地指定を変更し、先に指定した場所の西方隣地を新に換地予定地として指定した(以下変更指定という)、この変更指定は、金津町土地区画整理施行細則第三十条「換地予定地発表後は特別の事情あるものの外交付地の位置は変更しない」旨の規定に違反し、不当であるから、申立人は、福井県知事宛に不服の申立をしたのである。しかるに、被申立人は、更に昭和二十八年二月二十八日本件家屋の移転命令をなした。よつて申立人は右行政処分の取消を求めるため、被申立人を相手方として当庁に訴を提起し、その訴は繋属中である。(ロ)、しかしながら、右行政処分が執行されると前記のように、申立人は、第一次仮換地指定後、その現場指示に従つて、特に念入りな基礎工事をなし、優良材を使用して、本件家屋を建築し、現に居住しているのであるから、これを移転することは、技術的にも困難でありその移転に多額の費用を必要とし、申立人の到底堪え難きところであるのみならず、申立人は第一次仮換地指定によると、北陸線金津駅前角地に指定されているにもかかわらず、変更指定の結果、角地外に変更されることになり、申立人のように飲食店を経営するものにとつては、その利害は甚大であつて本件行政処分の執行により回復し難い損害を生ずるので、これが停止を求めると述べた。

被申立人は本件申立を却下する旨の決定を求め、その理由として、申立人主張のように、被申立人が申立人に対し、行政処分をしたこと、及び金津土地区画整理施行細則第三十条に申立人主張のとおりの規定があることは認めるが、被申立人が申立人に対し、換地予定地の変更指定をするに至つた事情は次のとおりである。即ち、(イ)、申立人に対して第一次の仮換地指定を行つた当時は、その指定した換地予定地の東側の道路が幅員四米の土地区画整理上の街路であつたがその後、その道路の幅員が六米の幹線街路に変更された結果、右換地予定地及び同地上に建築してある本件家屋が、約一米右道路にかかることになつたこと、(ロ)、又第一次換地指定後、申立人から増換地の陳情があつたこと、(ハ)、又石田惣二から従前の土地は申立人の東隣である駅前角地にあつたのが、第一次仮換地指定により角地外の所に指定されたので角地に変更指定して貰いたい旨の陳情があつたことによるものであり、これらの事情を総合して、右石田惣二には第一次仮換地指定の際申立人に指定した個所である角地に変更指定し、申立人には坪数を増した上、その西隣りに変更指定をしたのであつて何等違法の点はない。又本件土地区画整理は震災都市復旧事業としてなされており、昭和二十八年三月三十一日限り完了しなければならない状態にある。若し申立人が移転しない場合は代執行をする予定であり、又この執行を停止されるようなことがあるとすれば、都市計画事業に支障をきたすことは明らかであると述べた。

よつて判断するに、被申立人が、申立人に対し、申立人主張どおりの行政処分をなしたことは、被申立人の供述に徴し明らかであるところ、右行政処分の執行により申立人が如何なる損害を蒙るかについて考えるに、申立人の供述によると、申立人は、第一次仮換地指定があつた後、その地上に、本件家屋を建築したこと、及びその基礎工事は念入りになされていること並びにその家屋の建築に使用した資材は優良材であること、又申立人は飲食店を経営しており、第一次仮換地指定による換地予定地は金津駅前角地であることがそれぞれ認められるのであるが、被申立人並びに石田惣二の供述によると、従来から金津駅前角地において飲食店を経営していたのは石田惣二であつて、同人は現在も引続き同所において営業しており、申立人はその西隣りで同様飲食店を経営している現状であることが認められる。従つて変更指定の結果申立人が右角地の西隣に移転するとしても営業上著しく現状より不利であるとは考えられない。又申立人は自ら陳述しているように変更指定の結果第一次仮換地の西方に隣接する個所に移転するに過ぎないのであるから、その移転には必ずしも本件家屋全部の取毀を必要とせず、床下の部分を取除くのみで、その儘の形態で、牽引して移転することが可能であり、且つ仮りに本案の取消訴訟において本件行政処分が取消され、本件家屋を原状に回復する場合においても又同様手段で移転し得るものであるから結局本件家屋を取毀さずに済むものと考えられる。

叙上のとおりであるから、本件行政処分の執行によつて、申立人が蒙る損害は、結局のところ金銭的補償を以て満足し得るものという外はないから、行政事件訴訟特例法第十条第二項にいう「処分の執行により生ずべき償うことのできない損害」に該当しない。よつて爾余の判断をするまでもなく、本件申立は、理由がないのでこれを却下することとし、申立費用の負担について民事訴訟法第八十九条の規定を適用して主文のとおり決定をした。

(裁判官 吉田彰 山田正武 島原清)

(別紙目録省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!