大判例

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福井地方裁判所 昭和45年(わ)195号 判決

〔抄録〕

一、≪証拠省略≫を検討すると、司法警察員恩地善信が、暴力団員である青松嶽が日本刀を携帯している旨の聞きこみを得、同人を銃砲刀剣類所持等取締法違反被疑事件の被疑者として取調べたところ、見込みどおり同人から本件日本刀は同人の親分にあたる被告人巻田行栄の所有にかかるものであり、青松は被告人からその日本刀の登録をたのまれて保管していたものである旨の供述を得たため、被告人に任意出頭を求め取調べた結果被告人は当初否認していたものの、さらに右青松の供述の内容をつげての追及により、「おれがかぶる。」と述べるに至ったこと、右恩地は、被告人の「おれがかぶる。」との供述に不明瞭なものを感じ、「そんなことはいうな。」などといって「かぶる」のではなく、真実被告人の物である旨の確言をとるべく「どうせこんなもの罰金でないか」「そうむたむた言うな。」と述べたこと、当時被告人は懲役一年の刑を受けており、五年間の執行猶予期間中であったため懲役刑を受けると右執行猶予を取消され、実刑に服さなければならない可能性があることはわかっていたが、銃刀法関係では初犯であるから従前聞き知っていた例からして、有罪となっても罰金刑ですむものと早合点したこと、一方青松であれば刑務所から出て来たばかりで罰金ではすまぬだろうし、また日本刀が被告人の物であれば青松には何の責任もないものと判断し、右恩地に対し、本件日本刀は被告人の物であり、所持の許可をもらうため青松に持たしていた旨供述したこと、その結果本件司法警察員に対する供述調書二通が作成されたこと、が認められ、また被告人は、警察で釈放になったことでもあり、本件は罰金刑で済むと確信していたので、検察官の取調においても、ためらうことなく警察で述べたとおりのことを述べ、その結果本件検察官に対する供述調書二通が作成され、また略式命令の告知書を見せられ、異議なき旨の拇印もおしたこと等の事実が認められる。

二、ところで、右のように恩地警察官が被告人の取調にあたって「罰金で済むことでないか」等といったような行為は、仮に自白をしても罰金で済むなら事情によっては他人の犯行をかぶってもよい、もしくは早期に釈放されるほうが得だ等の気持を被告人に抱かせ自白を誘発させる危険をもつものであって、右認定のとおり、右恩地警察官の言動の結果得られたおそれのある本件被告人の司法警察員に対する自白はその任意性に疑いがあるというべきである。そしてまた、検察官の取調は警察のそれとは別異の手続であるから、警察における違法行為を理由にして検察官に対する自白を排除するには、その間に因果関係の存在することが必要であるが、本件のように取調担当の検察官によって警察での取調の影響が遮断されるような配慮がなされたことが認められず、警察における自白を反覆しているにすぎないものと認められるような場合には、当然右因果関係があると解すべきが相当である。

三、以上のように本件被告人の司法警察員および検察官に対する供述はその供述がなされたときの情況から判断するといずれもその任意性に疑いがあるので、被告人の本件各供述調書には証拠能力を付与することができない(刑事訴訟法三一九条一項)。

よって、主文のとおり決定する。

(裁判官 安倍晴彦)

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