福井地方裁判所 昭和60年(ワ)5号 判決 1985年3月27日
原告 塩田勉
右訴訟代理人弁護士 大橋茹
被告 有限会社日南基礎
右代表者代表取締役 嶋田敏明
主文
被告は原告に対し原告が昭和五八年八月二三日付で被告会社の取締役を辞任した旨の登記手続をせよ。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
原告は主文同旨の判決を求め、請求の原因として次のとおり述べた。
一、原告は昭和五七年九月一八日被告会社設立と同時に取締役に就任した。
二、しかるところ原告は昭和五八年八月二一日被告会社に対し右取締役を辞任する旨の意思表示をなし、この意思表示は同月二三日被告会社に到達した。
三、しかるに被告会社は原告が被告会社の取締役を辞した旨の登記手続をしない。
よって原告は被告会社に対し右の登記手続をなすことを求める。
被告会社は公示送達による呼出を受けたが本件口頭弁論期日に出頭しない。
証拠関係<省略>
理由
原告本人尋問の結果とこれにより成立を認める甲第一号証の一、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成した公文書と認められるから真正に成立したものと推定すべき甲第一号証の二、第二号証、弁論の全趣旨により成立を認める甲第三号証によると次の事実が認められる。
被告会社は土木工事の設計等を目的として昭和五七年九月一八日設立された有限会社であり、定款上取締役の員数は一人以上三人未満と定められており、設立当初の取締役として原告と嶋田敏明が就任し、嶋田敏明が代表取締役となった。しかるところ原告は昭和五八年八月二三日に被告会社に到達した書面で右取締役を辞任する旨の意思表示をしたが、被告会社は本件口頭弁論終結時である昭和六〇年三月一一日に至るも右の辞任の登記手続をしていない。
以上の事実が認められほかに右認定を左右するに足る証拠はない。
右の認定事実によれば被告会社には原告の取締役辞任の登記がなされたとしても定款に定められた員数の取締役が在任していることが明白である。
そうすると被告会社は原告のために有限会社法一三条三項商法一五条商業登記法一四条の規定にのっとり、右の辞任登記手続をなす義務を負っているものと認めるのが相当である。
よって原告の本訴請求は理由があるから正当として認容し民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判官 高橋爽一郎)