福岡地方裁判所 平成10年(行ウ)13号 判決 1999年12月21日
原告
株式会社マツダ
右代表者代表取締役
松田徳光
右訴訟代理人弁護士
小野裕樹
被告
直方税務署長 鵜池勝茂
右指定代理人
高橋孝一
同
和多範明
同
山崎元
同
森本凡
同
腹巻哲郎
同
渡辺博一
主文
一 原告の請求を棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
原告の平成七年三月一日に始まり平成八年二月二九日に終わる事業年度分の所得に係わる法人税について、被告が平成九年二月二八日にした更正処分のうち、所得金額一九四万六四七三円を超える部分に対応する税額に係わる更正処分を取り消す。
第二事案の概要
一 本件は、原告が、リース契約を売買として扱い、リース設備を減価償却資産として法人所得を申告したところ、被告が右リース契約を賃貸借として扱い、原告が必要経費として算入していた減価償却費を否認して更正処分をしたため、右更正処分は違法であるとしてその取消しを求めた事案である。
二 争いがない事実
1 原告は、金属旋盤加工などを目的とする株式会社である。
2 原告のリース契約締結
原告は、平成七年一〇月二日、財団法人福岡県中小企業設備貸与協会(以下「訴外協会」という。)との間で、次の内容のリース契約(以下「本件リース契約」という。)を締結し、平成八年五月七日、本件リース取引に関する公正証書を作成した(以下の条文は、右公正証書の条文である)。
(一) 契約の趣旨・目的(一条)
訴外協会は、中小企業近代化資金等助成法に基づく設備の近代化及び合理化を目的として、横中ぐりフライス盤一台(東芝機械株式会社製、四六八〇万円相当。以下「本件リース設備」という。)を原告にリースし、原告はこれを借り受ける。
(二) リース期間(三条)
平成八年一月二四日から平成一五年一月二三日まで七年間
(三) リース料(四条)
総額を五六三三万〇四〇〇円(うち設備取得価格分四六八〇万円)とし、第一回は六七万〇六〇〇円(うち設備取得価格分五六万〇七〇〇円)、第二回以降は六七万〇六〇〇円(うち設備取得価格分五五万七一〇〇円)とする。
(四) 支払期間及び支払方法(四条)
支払期間は、平成八年三月一日から平成一五年二月一日まで毎月一日八四回払いとし、支払方法は、訴外協会が指定する金融機関における預金口座振替とする。
(五) リース設備の維持管理(九条)
原告は、善良な管理者の注意をもって、本件リース設備を維持管理し、これを不動産に定着させない。
(六) 承認(一〇条)
原告が本件リース設備を改造し又は主要部品の取替えを行うときは、訴外協会の書面による承諾を受けなければならず、右の改造等が行われたときは、改造等後の本件リース設備の所有権は訴外協会に帰属し、原告は訴外協会に対し費用償還その他の請求を行わない。
(七) 届け出義務(一二条)
原告は、第三者から仮差押、仮処分、強制執行を受けたとき、本件リース設備に対する訴外協会の所有権が第三者から侵害されるおそれが生じたと等に該当するときは、速やかに訴外協会に書面により届け出て、訴外協会の指示を受けなければならない。原告は、これらの事実が発生したときは、当該第三者に対して、本件リース設備が訴外協会の所有物であることを主張立証しなければならない。
(八) 解約の制限(一六条)
原告は、災害その他やむを得ない事由に基づき、あらかじめ訴外協会の承認を受けた場合を除き、本件リース契約を解約することができない。
(九) 期限前支払、契約解除(一七条)
訴外協会は、原告が本件リース設備をリースの目的以外に使用したとき等には、通知催告を要しないで期限の利益を喪失させ、原告に対しリース料残額全部又は一部を繰り上げて支払うことを請求し、又は契約を解除し、本件リース設備の返還を請求することができる。
(一〇) 契約の更新(二〇条)
リース期間が満了する二か月前までに、原告から契約を更新する申し出があり、訴外協会が特に必要と認めた場合は、契約を更新することができる。その場合のリース契約更新期間は原則として一年間とし、月額リース料は、リース期間中における月額リース料の一二分の一とする。
(一一) リース結尾の引揚(二一条)
訴外協会は、リース期間が満了したときは、本件リース設備を速やかに引き揚げるものとし、これに要する通常の取壊し、解体および搬出のための費用は、訴外協会が負担する。
3 原告の所得申告
(一) 原告は、平成八年四月三〇日に、平成七年三月一日に始まり平成八年二月二九日に終わる事業年度(以下「係争事業年度」という。)の法人所得について原告の所得金額は九二万六七七三円であり、納付すべき税額は二五万六九〇〇円である旨の確定申告をした。
(二) 原告は、右の申告にあたり、次の処理を行った。
(1) 原告は、本件リース契約を売買として扱い、本件リース契約に基づきリース期間中に支払うべきリース料の総額三六三三万四〇〇円について、本件リース設備の取得価格を四五四三万六八九三円、仮払消費税を一三六万三一〇七円、及び長期前払費用を九五三万〇四〇〇円とする会計処理を行い、本件リース設備は減価償却資産に当たるとした上、本件リース設備に係る減価償却費として、普通償却費の額三六八万〇三八八円と租税特別措置法四五条の二の規定による特別償却費の額五九〇万六七九六円の合計額九五八万七一八四円を損金の額に計上した。
(2) また、原告は、債務償却特別勘定繰入額として、原告が高瀬鉄鋼株式会社に対して有する売掛債権二〇三万九四〇〇円の五〇パーセントの金額(一〇一万九七〇〇円)を損金に算入した。
4 被告の更正処分と審査請求
(一) 被告は、平成九年二月二八日、原告の右申告にかかる係争事業年度の法人税額について、原告の所得金額は一〇七三万八二五九円であり、納付すべき税額は三二六万四四〇〇円となる旨の更正処分(以下「本件更正処分」という。)及び過少申告加算税は四二万五〇〇〇円となる旨の加算税の賦課決定処分をした。
(二) 被告が本件更正処分を行ったのは、次の理由による。
(1) 原告は、本件リース設備を訴外協会から賃借しており、本件リース契約は賃貸借として扱うべきものであるから、原告が損金の額に計上した本件リース設備に係る減価償却費九五八万七一八四円は否認すべきである。
(2) 原告が高瀬鉄鋼株式会社に対して有する売掛債権は、債権償却特別勘定繰入額への繰り入れの要件を満たしておらず、右売掛債権二〇三万九四〇〇円の五〇パーセントの金額(一〇一万九七〇〇円)の損金への算入は否認すべきである。
(3) 他方、係争事業年度中に含まれるリース期間である平成八年一月二四日から同年二月二九日までの三七日間に担当するリース料の金額は七九万五三八一円(本件リース設備取得価格分相当額六五万七四七五円と利子分相当額一三万七九〇六円との合計額)であり、これは損金に算入すべきである。
(4) 原告の係争事業年度の消費税の更正処分により、原告が納付すべき消費税額は一三四万三四〇〇円となる。原告は、本件リース設備に係る仮払消費税を一三六万三一〇七円となる。原告は、本件リース設備に係る仮払消費税を一三六万三一〇七円と申告していたが、係争事業年度中の本件リース設備のリース料に係る仮払消費税は一万九七二四円(リース料のうち、本件リース設備取得分相当額六五万七四七五円に対する三パーセント相当額)であるから、その差額一三四万三三八三円と前記納付すべき消費税額一三四万三四〇〇円との差額一七円は、雑損失として損金の額に算入すべきである。
(5) したがって、原告の所得は、原告の申告した所得九二万六七七三円に、損金への算入を否認した右(1)、(2)の額(九五八万七一八四円及び一〇一万九七〇〇円)を加えた合計一一五三万三六五七円から、損金へ算入すべき(3)、(4)の額(七九万五三八一円及び一七円の合計七九万五三九八円)を差し引いた一〇七三万八二五九円となるから、納付すべき法人税額は、三二六万四四〇〇円となる。
(三) 原告は、平成九年三月二一日、本件更正処分のうち本件リース契約に係る部分の取消し及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち本件リース契約に対応する部分の取消しを求めて、福岡国税不服審判所長に審査請求をしたが、同審判所は、平成一〇年三月一三日、右審査請求を棄却する旨の裁決をし、同裁決書は、同月一八日、原告に送還された。
三 関係法令、通達、意見書等について(2、3の事実は争いがない。)
1 法人税法上、法人の各事業年度における所得の金額は、当該事業年度の益金の額から同年度の損金の額を控除した金額とする(同法二二条一項)とされ、別段の定めがあるものを除き、右の益金の額に算入すべき金額は、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とし(同条二項)、右の損金の額に算入すべき金額は、原価の額、費用の額、当該事業年度の損失の額で資本等取引以外の取引に係るものとし(同条三項)、これら益金の額及び損金の額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準(以下「公正妥当処理基準」という。)に従って計算されるものとする(同条四項)とされている。
2 徴税実務上、リース取引に係る法人税及び所得税の取扱いについては、「リース取引に係る法人税及び所得税の取扱いについて」と題する通達(昭和五三年七月二〇日直法二-一九(例規)。以下「本件リース通達」という。)が発出されている。本件リース通達の内容は、別紙一のとおりである。
3(一) 他方、企業会計審議会第一部会は、平成五年六月一七日、大蔵大臣に対し「リース取引に係る会計基準に関する意見書」(以下「本件意見書」という。)を提出し、「リース取引に係る会計基準」(以下「リース会計基準」という。)をとりまとめた。右意見書の内容は、別紙二のとおりである。
(二) 本件意見書を受けて、日本公認会計士協会は、平成六年一月一八日、「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」(以下「実務指針」という。)をとりまとめて公表した。
(三) 大蔵省証券局長は、平成六年三月一日、「『リース取引に係る会計基準に関する意見書』の取扱いについて」と題する通知を発し、「本意見書は、証券取引法の規定の適用にあたっては、『一般に公正妥当と認められる企業会計の基準』として取扱い、平成六年四月一日以後開始される事業年度、中間会計年度に係る財務諸表、中間財務諸表及び連結財務諸表について適用することとする。」旨を関係者に通知した。
四 争点
年券の争点は、リース取引に対する課税の在り方であり、具体的には、
1 法人税法二二条四項の趣旨をどのように解するか。
2 本件リース通達をどのように解釈すべきか。
3 リース会計基準が公正妥当処理基準にあたるといえるか。
以上を踏まえて、
4 本件リース契約を賃貸借として取り扱うべきか、又は売買として取り扱うことも許されるか。
であり、これに関連して、
5 原告のした申告に合理性があるといえるか。
である。
五 争点に関する被告の主張
1 法人税法二二条四項の趣旨について
(一) 法人税法二二条四項は、課税所得金額の基礎となる益金の金額の計算にあたっては、企業会計原則や商法の計算規定等一般に企業が収益及び費用の計算上用いている様々な基準ないし慣行のうち、一般に公正妥当と認められないもののみを計算処理の基準として否認することとし、原則として企業の採用した会計処理方法を認めることにして、企業の自主的経理を尊重しようとしたものである。
(二) 他方、企業会計の内容は、企業の経済的・社会的諸環境の変化に伴う価値観の多様化に応じて変化を余儀なくされるから、税法がある特定の計算基準を課税所得の計算の基準に限定した場合、かえって右の変化に即応できず、実質課税の原則に反する事態を招くことになるし、税法中に全ての益金及び費用等を計算するための諸規定を織り込むことになれば、関係規定が膨大となり、企業としても課税所得の計算が熕瑣となることから、税制簡素化の目的実現のため、公正妥当処理基準に従って収益及び損金の金額を計算することにしたものである。
(三) このように、税法の課税所得計算が企業会計を前提に成立していることは、法人税法二二条四項が明文化される以前から自明のことであるが、あえて当方がそのことを明文化したのは、課税所得の計算が、税法以前の概念である企業会計を前提とし、これを税法の観点から評価した上で課税所得を算出するという計算構造であることを明らかにしたものである。すなわち、課税所得計算は、企業の行った会計処理を前提に、これを税法の観点からいわゆる税務調整と呼ぶべきフイルターをかける処理(以下「申告調整」という。)を行うのであって、法人税法二二条四項は、このことを注意的に明らかにしたものである。
(四)(1) ところで、商法、証券取引法及び税法は、それぞれ異なった立法目的の実現を目指して制定されているから、それぞれの法律中に一見同じ様な概念が規定されているからといって、それらが全く同一に解釈されることにはならない(法概念の相対性)。商法が定める計算規定一般は、会社の債権者保護その他の見地から資本充実の原則を充足しつつ、配当可能利益の算定を目的としているし、証券取引法における財務書類の作成準則は、投資者の保護を図り、有価証券の発行及び売買その他の取引を公正ならしめ、かつ有価証券の流通を円滑ならしめることを目的とて規定されている(同法一条)。これに対し、税法に定める計算規定一般は、課税公平の原則その他の租税原則を考慮しつつ国家の財政受容を充足させるという観点から、租税を課すにふさわしい能力(租税負担能力)を具有する所得の算定を目的としている。したがって、このような各法の目的の相違を前提として同一概念に関する法の調整問題を検討する場合には、必ずしも同一概念の解釈内容の一致を模索するべきではなく、法の各適用場面においてそれぞれ妥当な解釈内容を導く必要がある。
(2) また、ある一つの経済事象について同時に二つ以上の会計処理方法がある場合、投資家や債権者の保護を目的とする証券取引法や商法においては、いずれの会計処理方法によっても同一の経済価値であることが認識できるのであれば、それで法の目的を達成することができるから、右のいずれの会計処理方法も妥当なものとして是認されることになるが、右の会計処理によって算定された企業会計を前提として税法の観点から課税所得を導く場合には、課税の公平性・画一性の確保が強く求められることから、原則として同一の経済価値に異なった課税標準が算定されるような結果が生ずることは許されず、その結果、複数ある会計処理の方法のうち、実質課税の原則等の税法の理念に適合する方法によってのみ課税所得の算出が許されることになる。
(3) したがって、ある会計処理が法人税法二二条四項にいう公正妥当会計処理基準に当たるか否かを判断するにあたっては、右(1)、(2)の、法概念の相対性や課税所得計算の構造をも考慮して決定すべきである。
2 本件リース通達について
(一) ファイナンスリースとは、賃借人が必要とする資産の購入資金を融資す代わりに、リース会社(賃貸人)がその資産を購入し、これを貸し付けるものであるが、そのリース料は、一般的に企業会計上、資産の賃借料ということで費用であり、損金とされる(法人税法二二条三項二号)。
リース取引については、経済的実質によって課税関係を律するべきであるとされている(最高裁判所昭和四三年八月二七日判決税務訴訟資料五三号三一三頁)ところ、ファイナンスリース取引のなかには、経済的実態からみて延払条件で資産を取得している例も散見されるようになり、また、多くのファイナンスリース取引のリース期間は、法定耐用年数に比し短く定められていることから、同一資産を自己取得したものにつき計上した減価償却費に比し、ファイナンスリースにより支払う賃借料が多くなり、これをそのまま損金とすることは負担の公平を目的とする税法の所得計算上問題がある。
そこで、本件リース通達は、右の最高裁判決を踏まえ、課税上の公平の観点からリース取引の経済的実質に着目してその取扱いを明らかにしたものである。
(二) 本件リース通達の趣旨は、その前文にあるとおり、「いわゆるファイナンスリースについては、これを一般に賃貸借と同様に取り扱うことに課税上の弊害があるものも認められるので、個々のリース取引の経済的実質に応じてこれを売買取引等として取り扱うこととし、その処理の統一を計ることとした」ところにある。
このように、本件リース通達は、ファイナンスリースを賃貸借取引と同様に取り扱うことの弊害の除去を目的としているが、同時に、ファイナンスリースの税務上の処理の統一も目的としており、同通達一項で「リース取引の意義」を明確に述べ、二項以下で売買等として取り扱うリース取引を列挙する構成となっていることからすれば、同通達においては、一項で定めた要件を充足するリース取引についてはその法形式を尊重し、税務処理上賃貸借として取り扱うこととし、賃貸借として取り扱わないリース取引は、同通達二項以下で売買等として取り扱うリース取引に限定する趣旨である。
したがって、本件リース通達は、同通達において売買等として取り扱うものとされたリース取引以外の契約形態については、これを契約の形式どおり賃貸借として税務処理することを定めたものであって、これについて賃貸借とするか売買とするかを納税者が選択できるとしたものではない。
(三) 課税処所得の増減は、経済的価値の増減であるから、法人が行った個別の取引を巡る益金及び損金の額の計算にあたっては、当事者が選択した法形式はもとより、同取引の経済的実質を十分に検討した上で行われるべきである(実質課税の原則)。他方、租税法律主義の下では、法的安定性・予測可能性の確保も極めて重要な課題であるから、個別取引の経済的実質を把握することは的確に行わなければならず、かかる取引に対する実質的考察を経てもなお当事者が選択した法形式に則して課税処理すべきと思料される場合には、右法形式に従った課税処理をすることが必要であると解すべきである。
これをファイナンスリース取引に即していえば、個別のファイナンスリース取引を実質的・経済的観点から考察した場合、いわゆる割賦販売契約と認めるべきものと、賃貸借と認めるべきものに一応区分することが可能であるから、前者すなわち法形式に従い賃貸借と認めることが、実質課税の要請と租税法律主義の要請を矛盾なく実現することになるのであり、かかる処理を行うことこそが公正妥当処理基準に適った処理である。
本件リース通達は、所得税及び法人税におけるファイナンスリースの取扱いに関する行政上の解釈指針にすぎないが、リース取引の様々なバリエーションに応じ、その実態に即した税務上の取扱いを定めたものであり、税法の会社上も、同通達二項(1)ないし(5)に該当しない取引について、これを売買と解釈しなければならない事例は想定しがたいから、同通達は、ファイナンスリースに関する公正妥当処理基準を具体的に表現した解釈指針というべきである。
そして、本件リース通達の制定後は、納税者は、リース取引に係る課税所得の計算に当たり、自らの企業会計結果を前提とした上で、同通達を基準として再度課税所得を計算し直すという申告調整を行ってきており、そのような調整方法が一般化していたから、本件リース通達が企業会計上も会計処理基準の一つとして機能していたと考えられる。
なお、平成一〇年の税制改正において、リース取引に関する課税上の取扱いが法人税法施行令(度を施行令一三六条の三)に盛り込まれることになったが、同施行令におけるファイナンスリースに関する規定の様式及び内容は、本件リース通達を基本的に踏襲しており、同施行令の改正は、本件リース通達による課税処理が公正妥当処理基準の精神に適うものとして一般経済社会に定着したことを裏付けているものである。
3 リース会計基準について
(一) リース会計基準を公表した企業会計審議会は、大蔵省の諮問機関であり、「企業会計基準及び監査基準の設定、原価計算の統一、企業会計制度の整備その他企業会計に関する重要な事項について調査審議し、その結果を大蔵大臣又は関係各行政機関に対して報告し、又は建議すること」を目的としており、大蔵省証券局の所管の下に、企業会計の合理化・証券投資の民主化を図るべく、企業会計原則をはじめとする各種会計基準を設定・公表している機関であって、直接的には課税に関する基準を設定・公表する機関ではなく、ましてや法人税法上の公正妥当処理基準の設定に携わるものではない。
(二) リース会計基準は、企業会計審議会の意見にあるとおり、リース取引に係る企業会計処理の実相を当該企業と利害関係を有する者に開示する要請に応じて作成されたものであり、直接的にはリース取引の税務処理の基準として作成・公表されたものではない。
すなわち、リース会計基準は、株主や取引先に対するディスクロージャーや整備投資に係る情報を提供する観点から、リース債務・資産については、これをオンバランス(貸借対照表などの財務諸表に計上すること)したほうがよいとの基本的な考え方の下に制定されたものであり、これを受けて、証券局長通知二より、証券取引法が適用される公開会社については、同会社が大蔵大臣に提出すべき財務諸表を作成するにあたり、リース会計基準を準則とすべきことになったが、他方、同法の適用がない一般企業については、財務諸表作成にあたり、従前どおり商法の計算書類規定に従って取引状況を開示すればよいこととされた。
このように、リース会計基準は、リース取引に関する表示及び開示の方法の指針を示したもので、証券取引法の適用会社がリース取引の実態を財務諸表に的確に反映させることにより、投資家等に対して企業会計内容の正確な情報を与えるとともに、リース会計に関する国際的調和を図るための企業会計の基準として設定されたものであって、投資家保護を目的とする証券取引法の規定に基づいて作成される財務諸表について適用されるものであり、課税上の取扱いを定めたものではない。
(三) 右(一)、(二)でみた、企業会計審議会の性格や、リース会計基準は元来企業会計処理及び企業関係者に対する開示を直接の目的としており、主に証券取引法の適用の場面において企業会計の方法を規制する基準であることからすれば、リース会計基準は、法人税法上の公正妥当処理基準には該当しないと解すべきである。
(四) リース会計基準にらりリース取引を売買処理するが許されるとすれば、法人の恣意的な会計処理を認めることになり、統一的な処理が最も要求される税務の場面に大きな混乱を生じさせることになるから、課税の公平を図る観点からも、リース会計基準を公正妥当処理基準とすることは到底認められない。
4 本件リース契約について
(一) 本件リース契約は、その契約内容等から、本件リース通達に定めるリース取引に該当するが、本件リース通達が定める売買等として取り扱うリース取引に該当せず、また、原告が本件リース設備を訴外協会から取得したという実態は認められないから、契約上の法形式どおり、通常の賃貸借取引として取り扱うべきである。
(二) したがって、本件リース契約を通常の賃貸借取引として取り扱ってした本件更正処分は適法である。
(三) なお、被告のした本件更正処分は、本件リース通達に従っているが、本件リース通達は、2(三)のとおり、リース取引に関する公平妥当処理基準を具体的に表現したものであるから、同通達は法人税法の正しい解釈に合致するものであり、同通達にのっとってされた本件更正処分は租税法律主義に違反するものではない。
5 原告の申告の不合理性について
(一) 本件リース契約を売買として処理した場合と賃貸借として処理した場合のそれぞれの課税状況を比較すると、別表二記載のとおりとなり、売買処理した場合の方が、リース取引開始の係争事業年度で一九五万九一〇〇円、リース取引の採取を事業年度(平成一五年三月一二にから平成一六年二月二九日までの期間)で二三五万四四〇〇円の税額の減少がある。
原告の申告は、本件リース契約を資産の取得とみなし、普通償却に加え特別償却を行っていることからして、意図的に費用の先取りという経済効果を結果として実現したものであって、経済的実態に則さない不自然な処理である。
(二) 法人税法における所得金額は、企業が一会計年度ごとに商法、企業会計原則等の会計諸則により作成した損益計算書、貸借対照表等の財務諸表を基礎として、法人税法、租税特別措置法等の規定に基づき税務調整を行った結果である。また、課税庁は、所得金額が正しく算出され、法人の履行義務が完全に履行されているかどうかを検証する責務を負っている。
したがって、課税所得計算の判断は事業年度単位で行うこととなっており、課税庁は、適正・公平な課税を行う視点から、各事業年度において法人が行った経理処理についての適否を判断すればよく、本件更正処分の適否の判断は、係争事業年度の本件リース契約に係る損金の額に算入すべき金額についてなされるべきであり、リース全期間の費用を考慮してなされるべきものではない。
六 争点に関する原告の主張
1 法人税法二二条四項の趣旨について
(一) 法人税法二二条四項は、法人税の課税所得に関し、会計慣行の尊重等のため所要の規定の整備を図るために設けられた規定であり、具体的には、企業会計において用いられている基準や慣行のうち、一般に公正妥当と認められないもののみを税法で認めないこととし、原則としては、企業の会計処理の慣行を認めるとするものである。したがって、同項にいう公正妥当処理基準とは、具体的な経済社会において公正妥当と認められた健全な慣習の意味であり、これに法規範性を与えたものであって、企業会計原則や商法及び証券取引法の計算規定の他、公正妥当なものとして一般的な承認を受けている会計慣行を広く含むと解すべきである。
(二) 企業会計原則は、「企業会計の実務の中に慣習として発達したもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業かその会計を処理するに当たって従わなければならない基準」(同原則前文)であり、これに関連する企業会計審議会の連続意見書とあわせて、我が国企業会計の健全な慣習を要約したものとなっている。
また、法人税法七四条一項は、確定申告について、「内国法人は、確定した決算に基づき申告書を提出しなければならない。」旨規定しており、納税義務者が株式会社の場合には、確定決算は、商法の計算規定、「株式会社の貸借対照表、損益計算書、営業報告書及び附属明細書に関する規則」等に基づいて行われなければならないところ、商法三二条二項は、「商業帳簿の作成に関する規定の解釈については公正なる会計慣行を斟酌すべきである。」旨規定している。企業会計原則及びこれに関連する企業会計審議会の連続意見書は、前記のとおり、一般に公正妥当と認められる会計慣行を要約したものであるから、現実の公正な会計慣行を規定している限り、商法の右の規定によって斟酌されることになる。
このような意味で、法人税法二二条四項にいう公正妥当処理基準の中心をなすのが、企業会計原則や、商法及び証券取引法の計算規定であるとされているのである。
(三) したがって、現実に行われ、健全な慣行として定着している処理方法が、法人税法独自の要請に基づく法による「別段の定め」に反しない限り、法人税法上も容認され、かつ要求されるとするのが法人税法二二条四項の趣旨であり、本件リース契約のようなファイナンスリース取引についていえば、それが企業会計の慣行上どのように処理されているかを検討し、その処理が会計慣行化している企業会計処理に従っていれば、法の要求を満たすものである。
(四) 申告調整の必要に関する被告の主張(五1(三)は争う。(一)のとおり、法人税法二二条四項は、一般に企業が用いている会計慣行のうち、一般に公正妥当と認められないもののみを否定するものであって、税法独自のフィルターをかけることを認めたものではない。税法独自の政策的要請による規制は、「別段の定め」(法人税法二二辞意売上金額二項、三項)によってされるものである。
(五) 法概念の相対性や課税所得計算の構造に関する被告の主張(五1(四)も争う。同一の文言について法律ごとに意味が異なるのであれば、国民に予測可能性を与えることはできないし、法人税法二二条四項が、「『一般に』公正妥当と認められる」という表現を用いたのも、企業が一般に用いている会計慣行を税法上も原則として是認することを明らかにするためであり、企業が複数の会計処理方法から選択適用しうることを前提にしている。
2 リース会計基準について
(一) リース会計基準は、「リース取引に関する会計処理及び開示方法を総合的に見直し、公正妥当な会計基準を設定し、取引実態を財務諸表に的確に反映する」ためにまとめられたものであり、ファイナンスリース取引については原則として通常の売買に準じて会計処理を行うとし、所有権移転型以外のリースについては、財務諸表への注記を条件に、「通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる」として、売買処理と賃貸借処理の選択を認めている。
リース会計基準は、リース取引におけるリース料が、賃料の形式をとっているものの、実際にはリース物件の使用収益期間に応じて支払われる使用収益の対価ではなく、経済的には金銭消費貸借契約における元利均等割賦返済金を意味していることから、その取引実態を財務諸表に的確に反映するため、原則としリース取引を売買として扱うこととし、ただ、現行の企業会計実務においては、リース取引は、その取引契約に係る法的形式に従って賃貸借取引として処理されていることから、猶予期間を与えるため、所有権移転型以外のリースについては、財務諸表への注記を条件に、賃貸借としての処理を選択することを認めたものである。
(二) リース会計基準を記載した本件意見書は、企業会計審議会の連続意見書の一つであり、リース会計基準は、会計実務の調査検討の上に健全な会計慣行を踏まえてまとめられたもので、経済社会にも一般化した、企業会計における公正妥当な会計基準であって、文理上その適用範囲を証券取引法の適用範囲に限定していないから、公正妥当処理基準に該当する。証券局長通知は、同局長が自らの主管事項との関係で発したものであるから、これによってリース会計基準の適用範囲が決定されるものではない。
3 本件リース通達について
(一) リース取引の法形式が賃貸借であるため、これを賃貸借として処理すること(リース料を必要経費として全額損金に算入する処理)が広く行われているが、本件リース通達は、ファイナンスリース取引がその経済的実質において一般の賃貸借と異なる面を有しているため、これを一般の賃貸借と同様に取り扱うことに課税上弊害のあるものも認められるので、個々のリース取引の経済的実質に応じて、課税上弊害があるものについては、右の賃貸借処理を認めず、売買等として取り扱って課税するとしたものである。
すなわち、減価償却は、投下資本の回収のため認められているものであり、法人税法はその回収期間として法的耐用年数を定めているところ、実質的には金融であるファイナンスリース取引の特質に照らせば、法的耐用年数を下回るリースは、耐用年数が長期の資産をリースとして賃貸借処理することによって短期間に償却できることになり、大幅な節税となる脱法行為であって、これを賃貸借として処理することは否認されるべきであるが、リース取引が広く普及していることに鑑みて、賃貸借処理することの弊害が大きなもののみについて、その処理を否認することとしたのが本件リース通達の趣旨である。
(二) リース会計基準と本件リース通達と、いずれも行き過ぎた賃貸借処理の横行に歯止めをかけ、これまで賃貸借処理が認められてきたリース取引のうち一定のもの(弊害の大きいもの)については売買処理を強制するものであり、歯止めをかける目的が、リース会計基準では「取引実態を財務諸表に的確に反映」させることであり、本件リース通達では「課税上弊害を除く」ことにあるにすぎない。
(三) 本件リース通達は、売買等の処理をすべきリース取引を定めているにとどまるから、文理上、売買等の処理が強制されるもの以外のリース取引については、賃貸借処理することを禁じていないと解すべきであ、右(一)の本件リース通達の目的に照らしても、すべてのリース取引を売買等と賃貸借のいずれかに一義的に振り分ける趣旨ではないと解すべきである。したがって、本件リース通達は、売買等の処理が強制されるもの以外のリース取引については、これを賃貸借として処理することも、売買として処理することも、許容しているものである。
4 本件リース契約について
(一)(1) 本件リース契約は、リース会計基準によれば、ファイナンスリース取引のうちの「所有権が借手に移転すると認められるもの以外の取引」に該当し、原則である売買処理のほか、財務諸表への注記を条件に、帳簿貸借処理も認められているものである。
(2) 原告の財務諸表の本件リース契約に関する部分は、リース会計基準に準拠してこれを売買と取り扱って作成されており、原告は、リース会計基準及び実務指針に従って、本件リース契約を売買として取り扱って、申告をした。
(3) リース会計基準は、2(二)のとおり、法人税法二二条四項の公正妥当処理基準に該当するから、原告の申告は、法の要求を満たしている。
(二) また、本件リース契約は、本件リース通達上、売買等の処理が強制される類型の契約には当たらないから、課税上の弊害がないために賃貸借処理が禁じられていない取引ではあるか、3(三)のとおり、同通達はこれを売買として処理することも許容しているから、原告のした処理は本件リース通達にも沿う適法なものである。
(三) 本件リース通達では、リース期間がリース物件の法定耐用年数に比べて相当短く定められている場合(法定耐用年数が一〇年以上のリース物件では、その法定耐用年数の一〇〇分の六〇に相当する年数を下回る場合)、賃借人がリース物件の所有権を取得することができる旨定められたリース取引については、売買処理すべきであると規定している(二項(5)、三項(2))。
本件リース設備の法定耐用年数は一三年であり、本件リース契約におけるリース期間は七年であるから、本件リース契約は、一三年の一〇〇分の六〇である七・八年の端数を切り捨てることにより、かろうじて本件リース通達にいう売買処理すべき場合に該当しないにすぎず、法定耐用年数(一三年)よりかなり短い(七年)償却をするのであるから、実態に忠実であれば売買として処理すべきものである。
(四) 原告が、リース取引に関する公正妥当な会計基準として公表されたリース会計基準に従って処理をしたにもかかわらず、法律の規定もなしに、納税義務者を名宛人としていない本件リース通達によってその処理を否定されては、法的安定性、予測可能性を害すること甚だしく、租税法律主義に反する。
(五) したがって、本件リース契約を売買として取り扱うことを否認し、賃貸借処理すべきであるとした本件更正処分は違法である。
5 原告の申告の合理性について
(一) 本件リース契約を売買として処理した原告の申告による場合と、被告の主張に従いこれを賃貸借として処理した場合とにおける納付すべき税額を比較すると、別表一記載のとおりとなる。初年度こそ原告の申告による方が賃貸借処理する場合に比べて税額が低くなるが、賃貸借処理をしても、租税特別措置法上の特別控除が受けられるのであるから、その差額は約一六五万円にすぎない。そして、次年度からは、原告の申告による方法の方が賃貸借処理する場合に比べて損金算入額が少なく、リース期間を通算すると所得金額は一七〇〇万円以上多く計上されることとなるから、原告の申告は、課税を回避するものではなく、むしろ取引の経済的実態に忠実な会計処理である。
(二) また、被告の計算(別表二)によってさえ、リース期間のリース料の総額と同期間における減価償却費等の累積額の間にほとんど開差がなく、その結果いずれの会計処理を選択したとしても、納付すべき法人税額の総額に大きな開きが見受けられないのであり(むしろ原告の選択した方法による方が僅かに多く法人税を納付することになる。)、このことは、売買処理を選択した原告の申告にあって課税上弊害が生じていないことを示すものである。
第三当裁判所の判断
一 法人税法二二条四項の趣旨について
1 法人税法二二条四項は、現に法人のした所得計算が法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反するものでない限り、課税所得の計算上もこれを是認するのが相当であるとの見地から、収益及び損金の額を公正妥当処理基準にしたがって計上すべきものと定めたものと解される(最高裁判所平成五年一一月二五日第一小法定判決・民集四七巻九号五二七八頁参照)。
すなわち、法人税法二二条四項は、課税所得が、本来、税法・通達という一連の別個の体系のみによって公正されるものではなく、税法以前の概念や原理を前提として成立しているものであり、たえず流動する社会経済事象を反映する課税所得については、税法において完結的にこれを規制するよりも、適切に運用されている会計慣行にゆだねる方がより適当であると思われる部分が相当多いことから、このような観点を明らかにするため、税法において、課税所得は納税者たる法人が継続して適用する健全な会計慣行によって計算する旨の基本規定を設けるとともに、税法においては、企業会計に関する計算原理規定は除外して、必要最小限度の税法独自の計算原理を規定することが適当であるとの趣旨の下に立法されたものであると解されるのであって、法人税法二二条四項の趣旨に関する原、被告の主張のうち、原告の主張(第二の六1(一))及び被告の主張(第二の五1(一)、(二))も、同様の理解によるものと解される。
したがって、右にみた法人税法二二条四項の立法趣旨からすれば、同項にいう公正妥当処理基準とは、経済社会において確立された会計慣行のうち、一般の社会通念に照らして公正で妥当であると評価することができる会計処理の基準を意味するものと解するのが相当である。
2 企業会計原則は、「企業会計の実務の中に慣習として発達したてもののなかから、一般に公正妥当と認められたところを要約したものであって、必ずしも法令によって強制されないでも、すべての企業がその会計を処理するに当たって従わなければならない基準」(同原則前文)であり、弁論の全趣旨によれば、本件意見書を含む企業会計審議会の連続意見書もこれに関連するものと認められる。
したがって、企業会計原則及び企業会計審議会の意見書は、基本的には、公正妥当処理基準に当たるといえるし、商法等の中の企業の会計処理に関する規定についても、右の規定は、企業の会計処理が公正妥当な会計慣行によるものであることを前提としたものと解されるから、同様に、基本的には公正妥当会計処理基準に当たるものということができる。
しかしながら、これらの中には未だ企業の会計慣行となっていないものや、必ずしも公正妥当と認められるとはいえないものもないわけではないと考えられるから、最終的には、それらが「一般に公正妥当と認められる」ものといえるか否かを吟味して、公正妥当処理基準に当たるか否かを決すべきであると解するのが相当である。
これをリース取引についていえば、それが企業の会計処理上、どのように処理するのが慣行とされているか、また、そのような会計処理が「一般に公正妥当と認められる」ものといえるか否かを吟味して、その会計処理が公正妥当処理基準に当たるか否かを決定委すべきものである。原告の主張(第二の六1(二)、(三))も、これと同趣旨であると解される。
3 被告は、さらに、法人税法二二条四項は、課税所得の計算が、税法以前の概念である企業会計を前提とし、これを税法の観点から評価した上で課税所得を算出するという計算構造であることを明らかにしたものである。課税所得計算は、企業の行った会計処理を前提に、これを税法の観点から、税法独自のフィルターにより申告調整を行うことを注意的に明らかにしたものである旨主張する(第二の五1(三))。
法人税法二二条四項は、法人の収益及び損金の額については、公正妥当処理基準に従って計算されるものとするとしているのであるから、法人のした会計処理が公正妥当処理基準に当たらない場合ちは、課税庁において、右のの会計処理を否認することができるのはいうまでもなく、その意味で被告の主張する申告調整が必要となる場面が生じることがあり得るとはいえる。
しかしながら、それは、法人のした会計処理が公正妥当処理基準に従ったものとはいえないとされた結果によるものであるから、要は、法人のした会計処理が公正妥当処理基準に従ったものといえるか否かにより、それが法人税法上容認されるか否かが決定されるべきものてあって、結果として被告主張の新作調整が行われることがあるとしても、そのことから直ちに、法人税法二二条四項が、法人のした会計処理について申告調整を行うことを注意的に明らかにした規定であるとまではいえないと解するのが相当である。
4 また、被告は、ある会計処理が公正妥当処理基準に当たるか否かを判断するにあたっては、法概念の相対性や課税所得計算の構造をも考慮すべきであると主張する(第二の五1(四))。
もとより、法規に定められた概念は、その法規の立法目的に応じて定められているものであるから、異なる立法において同様な概念が規定されていても、その立法目的に応じて解釈すべきであることは当然であり、その意味では、被告の主張するように、法概念は相対的に理解すべきものである(したがって、原告の主張(第二の六1(五))が、異なる立法において同様な概念が規定されている場合、常に同一の意義に解すべきであるとする趣旨であれば、にわかに賛同し難い。)。
しかしながら、前述したように、法人税法二二条四項は、法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反しない限り、現にした法人の所得計算を課税所得の計算上も是認するのが相当であるとするものであるから、適切に運用されている企業の会計慣行が公正妥当処理基準に当たる場合には、それが商法、証券取引法上認められている計算であるか否かを問わず、法人税法上も是認されるべきものと解するのが相当であり、当該法人のとった会計処理が課税所得の計算上是認できるか否かは、結局は、その会計処理が公正妥当処理基準に当たるか否かにより決せられるべきものである。
また、所得に対する課税に当たっては、課税所得計算の構造に関する被告の主張のように、課税の公平性の確保が求められるというべきであるが、法人税法二二条四項は、公正妥当処理基準に従った法人の所得計算を課税所得の計算上も是認しようとするものであるから、ある一つの経済事象について同時に二つ以上の会計処理方法がある場合であっても、その会計処理方法が公正妥当処理基準にあたるものであれば、法人税法上も、法人の課税所得の計算上これを是認するのが相当であると解される。
したがって、右の公正妥当処理基準は、必ずしも厳格に一つに限定されたものではなく、法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反しない限り、場合によっては複数のあり得るものと解するのが相当である。
もっとも、このように解した場合、その限度で、被告の主張する課税の画一的の要請は後退することになるが、法人税法二二条四項は、法人のした会計処理が公正妥当処理基準に当たる限り、課税所得の計算上も、その自主性を尊重しようとしたものであるから、法人税法自体、被告の主張する課税の画一性の要請よりも、法人の自主性尊重を重視したものと解するのが相当であって、そのような後退が生じることは、法人税法も予定しているというべきである。
二 本件リース通達について
1 証拠(乙八)及び弁論の全趣旨によれば、本件リース通達が発出された経緯は、次のとおりであることが認められる。
(一) ファイナンスリースとは、賃借人が必要とする設備投資資金を融資する代わりに、リース会社がその設備自体を貸し付けるもので、金融に対して物融ともいわれるものである。
その月額リース料は、通常その設備自体の取得価額にその取得資金の金利及び手数料等を加算した額をリース期間の月数によって除して定められ、当初契約のリース期間内にリース対象物件の取得価額とその資金金利等をリース会社は回収できることとなっており、リース期間中の解約は原則として予定されていない。また、対象となるリース物件に特に制約はなく、その保守・管理費用は賃借人が負担することとされている。
(二) ところで、一般的に、企業会計上、動産又は不動産の賃借料は費用とされており、法人税法上も、損金とされる(同法二二条三項二号)。
(三) 右(二)の一般原則をファイナンスリースに適用するとすれば、賃借人が賃貸人(一般的にはリース会社)に支払う賃借料は損金となる。法人が、そのリース対象物件と同一の物件を延払条件で取得したとすれば、当該法人にあっては減価償却により費用配賦を行うこととなるから、ファイナンスリースにあってそのリース期間が法定耐用年数と同一であれば、その資産につき所得の計算上損金の額とされる金額は、自己が取得して使用する場合とほぼ同一になり、課税所得の計算上問題は生じない。
(四) しかし、多くのファイナンスリースのリース期間は、法定耐用年数に比し短く定めれていることから、同一物件を自己取得したものにつき計上した減価償却費に比し、ファイナンスリースにより支払う賃借料が多くなり、これをそのまま損金と容認することは負担の公平を原則とする税法の所得計算上問題がある。
(五) そこで、国税庁は、昭和五三年七月二〇日付けで、「現在広く一般に行われているいわゆるファイナンスリースについては、その経済的実質において一般の賃貸借と異なる面を有しているところから、これを一般の賃貸借と同様に取り扱うことに課税上弊害があるものも認められるので、個々のリース取引の経済的実質に応じてこれを売買等と取り扱うこととし、その処理の統一を図ることとし」(本件リース通達前文)て、本件リース通達を発出した。
2 本件リース通達の内容は、別紙一のとおりであり、一項及び二項で概要次のとおり規定した上、さらに三項以下において、リース料の一部を前払費用として取り扱うリース取引(三項)、売買として取り扱う場合の賃借人及びリース会社における処理(四項)、リース料の一部を前払費用として取り扱う場合の賃借人及びリース会社における処理(五項)、中古資産をリースバックした場合の取扱い(六項)を規定している。
(一) リース取引の意義(一項)
リース取引とは、次の(1)、(2)のいずれにも該当する賃貸借契約(リース契約)に係る取引をいう。
(1) 賃貸借期間(リース期間)が定められており、そのリース期間中に支払われる賃貸料(リース料)の額の合計額が、少なくとも賃貸する法人(リース会社)におけるその契約の対象となった物件(リース物件)の取得価額及びその取引に係る付随費用の額の合計額のおおむね全部を支弁するように定められていること。
(2) リース期間中における契約の解除が禁止されていること。
(二) 売買とし取り扱うリース取引(二項)
次に掲げるリース取引については、当該リース取引に係るリース物件の引渡しの時に売買が行われたものとして取り扱う。ただし、その賃借人における当該リース物件と同一種類のリース物件に係る既往のリース取引の状況、当該リース物件の性質その他の状況からみて、リース期間の経過後に当該リース物件がリース会社に返還され、又は廃棄されることが明らかな場合には、そのリース物件に係るリース取引については、売買として取り扱わないことができる。
(1) リース期間の経過後にリース物件を無償又は名目的な対価により賃借人に譲渡すること又は無償と変わらない名目的な再リース料によって再リースすることがリース契約において定められているリース取引
(2) 土地、建物、建物附属設備又は構築物を対象とするリース取引
(3) 機械装置等で、その主要部分が賃借人における等売上金額と、その設置場所の状況等に併せて特別な仕様により製作されたものであるため、リース会社がその返還を受けて再び他に賃貸することが困難であって、その使用可能期間を通じて当該賃借人においてのみ使用されると認められるものを対象とするリース取引
(4) 建設工事用の仮設資材のように賃借人における使用又は消費の状況からみてリース物件の特定が不可能と認められるものを対象とするリース取引
(5) (1)から(4)までに掲げるリース取引以外のリース取引で、そのリース契約においてリース期間がリース物件の法定耐用年数に比べて相当短く定められ、かつ、リース期間の中途又はリース期間の経過後に賃借人がそのリース物件を購入する権利又は義務を有する旨定められているもの
3(一) 右1で認定した本件リース通達発出の経緯からすれば、本件リース通達は、リース取引においては、賃貸借契約の形式がとられているけれども、これを全て法形式どおりに賃貸借契約として取り扱った場合には、その経済的実質に照らし、課税上問題があることから、原告の主張(第二の六3(一))、被告の主張(第二の五2(一)、(二))のとおり、かかる課税上の弊害の除去を目的としているといえ、その意味では、本件リース通達が、課税上の弊害を除く目的から、行き過ぎた賃貸借処理の横行に歯止めをかけるためのものであるとする原告の主張(第二の六3(二))は正当であるが、同時に、本件リース通達は、右の被告の主張のとおり、ファイナンスリースの税務上の処理の統一も目的としているといえる。
したがって、このような本件リース通達発出の経緯や、本件リース通達が、リース取引が一定の要件を果たす賃貸借契約に係る取引をいうと定義した上、そのうち一定のリース取引については売買が行われたものとして取り扱うとしているその規定の仕方(前記2)からすれば、本件リース通達は、その経済的実質に照らし、一般の賃貸借として取り扱った場合は課税上弊害があると認められるため、同通達において売買として取り扱うものとされたリース取引等に当たらないリース取引の取扱いについては、直接的には規定していないものの、これをその法形式に従い、賃貸借契約として取り扱うものとして、税務上の処理の統一を図っているものと解するのが相当である。
(二) これを実質的にみても、右(一)のとおり解するのが相当である。
すなわち、法人税法は、固定資産のうち、減価償却資産を「建物、構築物、機械及び装置、車輛及び運搬具、工具、器具及び備品、鉱業権その他の資産で償却をすべきものとして政令で定めるものをいう。」と定義し(同法二条二三号、二四号)、減価償却資産については、法人が当該事業年度においてその償却費として損金経理をした金額のうち、法人が当該資産について選定した償却の方法に基づき政令で定めるところにより計算した金額に達するまでの金額を損金の額に算入することを認めている(同法三一条、同法施行令四八条以下。)
減価償却資産は、使用又は時間の経過によって価値の減少するものであり、企業において長期間にわたって収益を生み出す源泉であることから、その取得に要した金額は、将来の収益に対する費用の一括前払の性質を持っている。したがって、本来、費用は、それを生み出すことに役立った収益と対応させ、その収益から控除することを要する(費用収益滞納の原則)から、減価償却資産の取得費は、取得の年度に一括して費用に計上するのではなく、使用又は時間の経過によってそれが減価するのに応じて徐々に費用化すべきものである。法人税法も、このことを前提に、法律関係の画一的処理を図るため、右のように、損金に算入されるべき償却費の額を定めたものと解される。
このような減価償却資産の性質からすれば、減価償却資産として取り扱われるべきものは、納税者が資産として取得した、すなわちその所有権を取得したといえるものであることが原則であるというべきである。
一般に、ある経済取引について、それを売買として取引するか又は賃貸借として取引するかは当事者が選択するものであり、その選択に従って契約を締結する以上、右の契約は当事者の意思に基づくものであるし、その契約内容が通常は経済取引の実態を反映しているといえるから、かかる当事者の選択を税法上も尊重するのが望ましいといえる。
リース取引においては、契約上、賃貸借の形態が採用されているが、このように、賃貸借契約の締結の方法によりリース取引をすることで当事者が合意している以上、右の見地からすれば、かかる当事者の選択を税法上も尊重するのが望ましいといえる。そうすると、賃貸借とされたリース取引は、本来リース対象物件を減価償却資産として取り扱うことはできないもので、ただ、賃借料とされたリース料を損金として計上すべきこととなるものである。
ところで、ファイナンスリースの場合、リース料の総額は、通常、リース対象物件自体の取得価額に、その金利やリース会社の手数料等を加算した額とされており、月額リース料は、右のリース料総額をリース期間の月数によって除して定められている。したがって、リース会社からリースを受けた法人は、リース対象物件を使用収益しながら、月々のリース料をリース会社に支払うこととなるか、法人が、融資を受けてリース対象物件と同一の物件を割賦販売の方法で取得して使用収益する場合も、月々の割賦金を返済するから、経済的機能からみる限りは、両者の間は、さほどの変わりはないということができる。
この両者は、リース期間が法定耐用年数と同一であれば、リース料を賃借料として損金とするか、減価償却費を損金とするかによって、所得の計算上損金とされる額には殆ど差異を生じないと考えられる。しかしながら、リース取引のリース期間が法定耐用年数に比して短く定められていれば、月々のリース料はリース期間が法定耐用年数と同一である場合に比べて当然多額となるから、これをそのまま賃借料として扱い損金に算入すれば、リース対象物件と同一の物件を買い受けたとして法定耐用年数に従い減価償却していく場合に比べ、損金に算入される額が多額となり、両者を比較した場合、課税の公平性の見地からは問題があることになって、これをそのまま容認すれば、法人税法の企図する公平な所得計算の要請に反する事態が生じてくることになるから、このようなリース取引については、課税の公平を図るため、リース対象物件を買い受けたものとして取り扱う必要が生じてくる。
このようにみてくると、ファイナンスリース取引の中にも、様々な形態があり得るといえるから、これを一律に賃貸借として取り扱うとか、売買として取り扱うとかするのは相当でないというべきであり、個々のリース取引の実態を把握した上、その経済的実質に応じて、これを賃貸借として取り扱うものと売買等として取り扱うものとを区分けした上、その課税上の取扱いを決定すべきものである。したがって、ある一つのリース取引について、その実態を踏まえ、経済的実質に応じて、賃貸借又は売買等として取り扱うとした以上、これを売買にも賃貸借にも当たるものとして取り扱うことは、背理であって、許されないというほかはない。
本件リース通達は、売買として取り扱うリース取引を五つに類型化しているが、その内容は、リース取引であることを前提とした上、リース期間の経過後はリース物件を無償で賃借人に譲渡する等とか(二項(1))、リース物件が不動産等(二項(2))や、当該賃借人しか使用できない機械装置等(二項(3))であるとか、リース物件の特定ができないとか(二項(4))、リース期間がリース物件の法定耐用年数に比べて相当短く定められ、将来は賃借人がリース物件の購入選択権を有するものとか(二項(5))であって、リース期間経過後にリース物件がリース会社に返還され又は廃棄されることが明らかでないものである(二項ただし書)から、いずれも、法形式上は賃貸借契約の形式をとっているものの、その経済的実質からすれば、売買とみるのが相当なものであって、これらのものを売買として取り扱うとした本件リース通達は、実質課税の原則に即した合理的なものということができるし、リース取引について、これらのもの以外に売買として取り扱うべきものも想定し難いから、これらのもの以外は、税法上もその法形式を尊重し、賃貸借として取り扱うべきであるということができる。
(三) 原告は、本件リース通達は、売買等の処理をすべきリース取引を定めているにとどまるから、文理上、売買等の処理が強制されるもの以外のリース取引については、これを賃貸借として処理することも、売買として処理することも許容している旨主張する(第二の六3(三))けれども、右(一)、(二)のとおり、本件リース通達をそのように解することはできず、原告の主張は採用できない。
のみならず、仮に原告の主張のように解するとした場合は、同一態様のリース契約によるリース物件について、納税者の選択により、それを売買による減価償却資産としてその取得費を償却することも、賃貸借であるとしてリース料を損金として計上することもいずれも可能となるし、また、リース契約の当事者双方がいずれも当該リース物件を減価償却資産として償却することが可能となって、課税の公平を害することが明らかであるから、この点からしても、原告の主張は採用できない。
4 本件リース通達は、もとより、所得税及び法人税におけるファイナンスリースの取扱いに関する行政上の解釈指針にすぎないが、右3で検討したように、リース取引の経済的実質に応じてその税務上の取扱いを定めたものであるということができる。そして、弁論の全趣旨によれば、本件リース通達の発出日(昭和五三年七月二〇日)後は、多くの法人は、収益の額及び損金の額の計算に当たり、本件リース通達の定める基準に依拠していたことが認められるし、本件リース通達発出後、係争事業年度までの間には十数年が経過していることからすれば、係争事業年度においては、本件リース通達に定める基準は、社会通念上も公平で妥当であると評価されていたものといえるから、公正妥当処理基準に当たるということができる。
ちなみに、平成一〇年の税制改正において、平成一〇年政令一〇五号により、法人税法施行令に、リース取引に係る所得の計算に関する規定が新設された(同法施行令一三六条の三)が、同施行令におけるリース取引の意義、リース取引のうち売買として取り扱うものについての定めは、本件リース通達を基本的に踏襲していることがうかがわれ、このことも、本件リース通達の定める基準が公正妥当処理基準に当たることを裏付けるものといえる。
四 リース会計基準について
1 リース会計基準は、我が国の現行の企業会計実務においては、リース取引は、その取引契約に係る法的形式に従って賃貸借取引として処理されているけれども、リース取引の中には、その経済的実態が、当該物件を売買した場合と同様の状態にあると認められるものがかなり増加しており、このようなリース取引について、これを賃貸借取引として処理することは、その取引実態を財務諸表に的確に反映するものとはいいがたいことから、リース取引に関する会計処理及び開示方法を総合的に見直し、公正妥当な会計基準を設定するために、企業会計審議会において、リース取引の実態並びにこれに関する我が国及び諸外国の会計実務等を調査検討した上でとりまとめられたものである。
このようなリース会計基準の設定・公表の経緯からすれば、リース会計基準は、リース取引の実態を財務諸表に的確に反映する目的から、行き過ぎた賃貸借処理の横行に歯止めをかけるためのものであるとする原告の主張(第二の六3(二))は、その意味では、正当である。
2 リース会計基準の内容は、別紙二のとおりであり、一項、二項一、三項で次のとおり定めた上、二項2としてオペレーティング・リース取引を定義し、さらに四項以下において、オペレーティング・リース取引に係る会計基準(四項)、注記事項の記載方法(五項)を定めている。
(一) リース取引の定義
リース取引とは、特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が、当該物件の借手(レッシー)に対し、合意された期間(リース期間)にわたりこれを使用収益する権利を与え、借手は、合意された使用料(リース料)を貸手に支払う取引をいう(一項)。
(二) リース取引の分類
ファイナンスリース取引とは、リース契約に基づくリース期間の中途において当該契約を解除することができないリース取引又はこれに準ずるリース取引で、借手が、当該契約に基づき使用する物件(リース物件)からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該リース物件の使用に伴って生ずるコストを実質的に負担することとなるリース取引をいう(二項1)。
(三) ファイナンスリース取引に係る会計基準
(1) ファイナンスリース取引については、借手側及び貸手側とも、原則として通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行う。
(2) ファイナンスリース取引のうち、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外の取引については、借手側及び貸手側とも、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができる。ただし、この場合には、一定の事項を財務諸表に注記しなければならない(三項1、2)。
3 ところで、大蔵省組織令八三条及び弁論の全趣旨によれば、被告の主張(第二の五3(一))のとおり、リース会計基準を公表した企業会計審議会は、大蔵省の諮問機関(所管局は同省証券局)であり、「企業会計基準及び監査基準の設定、原価計算の統一、企業会計制度の整備改善その他企業会計に関する重要な事項について調査審議し、その結果を大蔵大臣又は関係各行政機関に対して報告し、又は建議すること」を目的とした審議会であって、企業会計原則をはじめとする各種の会計基準を設定・公表している機関であることが認められるから、同審議会は、直接的には課税に関する基準を設定・公表する機関ではなく、リース会計基準も、直接的にはリース取引の税務処理の基準として作成・公表されたものではないということができる。
そして、証券局長通知は、「証券取引法の適用にあたっては、リース会計基準を『一般に公正妥当と認められる企業会計の基準』として取扱い、財務諸表等に適用することとする。」としており、したがって、証券取引法が適用される公開会社については、同法の規定によって提出される財務諸表等は
リース会計基準を準則として作成することとなる(同法一九三条、財務諸表等の用語・様式及び作成方法に関する規則一条、連結財務諸表の用語・様式及び作成方法に関する規則一条、中間財務諸表等の用語・様式及び作成方法に関する規則三条一項参照)。
そうすると、リース会計基準は、現実には、証券取引法の適用を受ける法人が行う財務諸表の作成について、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として機能するといえるものの、リース取引の取引実態を財務諸表に的確に反映させるためにリース会計基準が設定・公表された経緯(前記1)からすれば、証券取引法の適用を受けない法人(原告が証券取引法の適用を受けない法人であることは争いがない。)が行う財務諸表の作成につていも、同様に、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準として機能するものと認めるのが相当であるか、これが直ちに課税上の取扱いについて定められた基準であるとはいえない。
4 しかしながら、このようなリース会計基準が、法人税法二二条四項にいう公正妥当処理基準に当たるか否かについては、さらに検討を要するところである。
(一) 前記1のとおり、法人税法二二条四項は、法人が継続して適用する健全な会計慣行によって所得を計算することを前提として、必要最小限度の税法独自の計算原理を規定するために設けられたもので、法人税・売上金額の企図する公平な所得計算という要請に反するものでない限り、課税所得の計算上も右法人の計算を是認するのが相当であるとするものであるから、直ちに課税上の取扱いについて定められた基準でなくとも、それが健全な会計慣行といえ、一般の社会通念に照らして、公正で妥当な会計処理の基準であるということができるものであれば、法人税法上の公正妥当処理基準に当たると解して差し支えないものと解するのが相当である。
(二) 被告は、企業会計審議会の性格や、リース会計基準が主に証券取引法の適用の場面において企業会計の方法を規制する基準であることからして、リース会計基準は、法人税法上の公正妥当処理基準には該当しないと主張する(第二の五3(三))。
確かに、右3で検討したように、企業会計審議会の性格やリース会計基準の機能からして、リース会計基準が直ちに課税上の取扱いについて定められた基準であるとはいえないけれども、そのことから必然的に公正妥当処理基準に当たらないと解するのは相当でなく、右(一)のとおり、そのような基準であっても公正妥当処理基準に当たるものもあるというべきであるから、この点に関する被告の主張は採用できない。
5 右4(一)の見地から、リース会計基準が公正妥当処理基準に当たるか否かについて検討する。
(一) リース会計基準は、リース取引に関する会計処理及び開示方法を総合的に見直し、リース取引の実態やこれに関する我が国の会計実務等を調査検討した上で、公正妥当処理基準な会計基準を設定するためにとりまとめられたものであり、このようなリース会計基準の設定・公表の経緯からすれば、それが会計慣行として確立したものであり、法人税法の企図する公平な所得計算という要請に反しないものであれば、法人税法二二条四項の公正妥当処理基準に当たると解する余地がある。
(二) しかしながら、右のとおり、リース会計基準は、従前のリース取引に関する会計処理及び会計処理を見直すべく設定・公表されたものであるから、リース会計基準が設定・公表されるまでは、リース取引についての会計処理及び開示方法はリース会計基準とは異なっていたといえること、法人の会計処理が慣行として確立するに至るためには、一定の年月を要すると考えられるところ、リース会計基準が設定・公表されたのは平成五年六月、これを受けた実務指針が設定・公表されたのは平成六年一月であり、証券局長通知が発出されたのも同年三月であって、これらが設定・公表ないし発出されてから係争事業年度までの間には、係争事業年度の最終日(平成八年二月二九日)に至っても、未だ三年足らずの期間しか経過していないことからすると、少なくとも係争事業年度においては、リース会計基準は法人の会計慣行として確立するに至っていたとまではいえないというべきである。
(三) また、リース会計基準は、ファイナンスリース取引については、借手側と及び貸手側とも、原則として通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うとする一方で、ファイナンスリース取引のうち、リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外の取引については、借手側及び貸手側とも、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができるとするものであるから、右の取引については、例えば借手側は、同一態様のリース契約によるリース物件について、これを減価償却資産を取得したとしてその取得費を償却することも、これを賃借したとしてリース料を損金として計上することも可能となるのであって、このような結果を是認することは、課税の公平を害し、法人税法の企図する公平な所得計算の要請に反するものであるといわざるを得ない。課税の公平性をいう被告の主張(第二の五3(四))は、その意味で理由がある。
(四) そうすると、リース会計基準は、係争事業年度においては未だ会計慣行として確立しておらず、また、その内容も公平な所得計算の要請に合致しているとはいえないから、法人税法二二条四項の公正妥当処理基準に当たるとはいえないと解するのが相当である。
四 本件リース契約について
1 証拠(乙四)及び弁論の全趣旨によれば、訴外協会は、平成七年一〇月二日、有限会社九機産業から本件リース設備を買い受け、平成八年一月二三日、その所有権の移転を受けたことが認められ、右の事実に第二の2の事実を総合すれば、本件リース契約は、本件リース通達にいうリース取引に当たるが、本件リース通達において売買として取り扱うリース取引や、リース料の一部を前払費用として取り扱うリース取引には当たらず、中古資産をリースバックした場合にも当たらないから、本件リース通達の基準によれば、賃貸借として取り扱われることになる。
2 他方、証拠(甲二三、証人小山宏)によれば、原告は、その財務諸表に本件リース設備を資産として取得したものとして記載し、原告は、その申告に当たり、本件リース設備を買い受けたものとして取り扱ったが、ただ、その償却期間は法定耐用年数に従った期間としたことが認められる。
そして、第二の2の事実によれば、本件リース契約は、リース会計基準にいうファイナンスリース取引のうち、リース物件の所有権が借手に移転するものと認められる以外の取引に当たり、原則として通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うが、財務諸表への一定の事項の注記を条件に、通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行うことができるものである。
したがって、原告のした申告は、リース会計基準によれば、原則に従って売買として取り扱っているのであるから、リース会計基準に従った会計処理に基づくものであるということができる。
もっとも、リース会計基準を受けた実務指針(甲一六)によれば、リース資産の償却については、リース期間を耐用年数とし、残存価額を零として減価償却費相当額を算定するとされているから、原告が本件リース設備の償却期間を、リース期間である七年ではなく、その法定耐用年数である一三年(本件リース設備の法定耐用年数は、法人税法施行令五六条、減価償却資産の態様年数等に関する省令一条一項二号別表二番号二六四により、一三年である。)としたのは、これと異なる取扱いであるということができるが、証拠(証人小山宏)によれば、このような処理をした場合でも、原告がリース期間満了後本件リース設備を訴外協会に返還した段階で除却損として処理すれば足りるから、原告の会計処理が基本的にはリース会計基準に従ったものとすることに妨げはないというべきである。
3(一) このように、本件リース契約についての原告の会計処理は、リース会計基準に従って、本件リース設備を買い受けたものとしているけれども、本件リース通達に定める基準によれば、本件リース契約は、売買ではなく、賃貸借として取り扱うべきものである。
前記一ないし三で検討したところによれば、本件リース通達の定める基準は公正妥当処理基準に当たるといえるものであるか、リース会計基準は、未だ公正妥当処理基準に当たるということはできないとういべきであるし、本件リース契約の経済的実質を考察しても、本件リース設備の所有権は訴外協会にあること、本件リース契約においても、このことを前提としつつ、訴外協会は原告に対し、本件リース設備をリースし、原告はこれを借り受けたものとされているほか、訴外協会は原告に対し、本件リース設備の貸与者として、その維持管理、改造等、訴外協会の本件リース設備についての所有権侵害への対処、契約の解除等様々の義務ないし制約を課しているおり、リース期間の終了後は原則として本件リース設備を引き揚げるとされていること(前記1及び第二の二2)からすれば、本件リース契約は、これを売買として取り扱うべきものではなく、その法形式どおり、賃貸借として取り扱うのが相当である。
(二) 原告は、本件リース設備の耐用年数とリース期間の比較から、本件リース契約の実態は売買であると主張するけれども(第二の六4(四))、右(一)で検討した本件リース契約の経済的実質、とりわけ、本件リース契約においては、リース期間経過後本件リース設備を速やかに引き揚げるものとされており(第二の二2(二))、リース期間経過後においても本件リース設備の所有権が原告に移転するわけではないことからすれば、原告主張の事由を考慮しても、本件リース契約の実態が売買であるとすることはできないから、原告の主張は採用できない。
(三) したがって、被告が、本件リース契約を賃貸借として取り扱うべきであるとしたことは、適法でるというこができる。
(四) 原告は、原告がリース会計基準に従って処理をしたにもかかわらず、法律の規定もなしに、納税義務者を名宛人としていない本件リース通達によってその処理を否定するのは、租税法律主義に反すると主張する(第二の六4(四))けれども、リース会計基準が公正妥当処理基準に当たらず、本件リース通達が公正妥当処理基準に当たることは既にみたとおりであり、本件リース通達が公正妥当処理基準に当たる以上、本件リース通達に従った処理は公正妥当処理基準に従った処理ということができるから、かかる処理が租税法律主義に違反するとすることはできない。
(五) 以上によって、原告の課税所得及び納付すべき法人税を計算すると、次のとおりとなる。
(1) 本件リース設備は、原告が訴外協会から賃借したものであるから、これについて減価償却費を計上することはできず、原告が損金の額に計上した本件リース設備に係る減価償却費九五八万七一八四円は否認すべきである。
(2) 原告が高瀬鉄鋼株式会社に対して有する売掛債権は、債権償却特別勘定繰り入額への繰り入れの要件を満たしておらず、右売掛債権二〇三万九四〇〇円の五〇パーセントの金額(一〇一万九七〇〇円)の損金への算入は否認すべきである(このことは、原告の争わないところである。)。
(3) 他方、係争事業年度中に含まれる本件リース設備のリース期間である平成八年一月二四日から同年二月二九日までの三七日間に相当するリース料の金額は、賃借料として費用に当たるから、損金に算入すべきである。
これを計算すると、次のとおりとなる。
<1> リース期間(平成八年一月二四日から平成一五年一月二三日まで。合計二五五七日)におけるリース料の総額は五六三三万〇四〇〇円であり、うち設備取得価格分は四六八〇万円である(第二の二2(三))が、右の設備取得価格分には消費税(三パーセント)相当額も含まれているから、賃借料の算出に当たっては、これを控除すべきである。
<2> 右の設備取得価格分四六八〇万円を、消費税抜きの設備取得価格分と消費税相当額分に振り分けると、それぞれ四五四三万六八九三円と一三六万三一〇七円となる。
<3> 右<1>及び<2>により、本件リース設備の賃借料相当額の総額は、リース料の総額五六三三万〇四〇〇円から消費税相当額分一三六万三一〇七円を差し引いた五四九六万七二九三円となる(内訳は、消費税抜きの設備取得価格分四五四三万六八九三円と利子分九五三万〇四〇〇円である。)。
<4> 右<3>の本件リース設備賃借料相当額の総額五四九六万七二九三円はリース期間合計二五五七日に対応するものであるから、そのうち係争事業年度中に含まれるリース期間三七日分を計算すると、七九万五三八一円(内訳は、消費税目企業会計の設備取得価格分六五万七四三七五円と利子分一三万七九〇六円である。円未満切捨)となり、これが費用(賃借料)として損金に算入される。
(4) 原告の係争事業年度の消費税の更正処分二より、原告が納付すべき消費税額は一三四万三四〇〇円となるところ、原告は、本件リース設備に係る仮払消費税を一三六万三一〇七円とする会計処理をしているが、(以上は弁論の全趣旨によって認める。)、係争事業年度中の本件リース設備のリース料に係る仮払消費税は一万九七二四円(消費税目企業会計の本件リース設備取得分相当額六五万七四七五円((3)<4>)に対する三パーセント相当額)であるから、その差額一三四万三三八四円が過大に計上されていることになり、これと右の納付すべき消費税額一三四万三四〇〇円との差額一七円は雑損失として損金の額に算入すべきである。
(5) したがって、原告の所得は、原告の申告した所得九二万六七七三円に、損金への算入を否認した右(1)、(2)の額(九五八万七一八四円及び一〇一万九七〇〇円)を加えた合計一一五三万三六五七円から、損金へ算入すべき(3)、(4)の額(七九万五三八一円及び一七円の合計七九万五三九八円)を差し引いた一〇七三万八二五九円となる。
(6) 原告は、その資本の金額が一億円以下である(弁論の全趣旨によって認める。)から、右(5)に対する法人税額は、三二六万六七五〇円となる(法人税法六六条一項、二項、国税通則法一一八条一項)が、控除所得税額等として二二九〇円がある(甲二三)から、これを差し引くと、原告の納付すべき法人税額は、三二六万四四〇〇円となる(国税通則法一一九条一項)。
(三) したがって、右(二)のとおりに計算した本件更正処分は、適法であるということができる。
五 原告の申告の合理性について
本件訴訟の経過に鑑み、原告の申告の合理性についても検討する。
1 被告は、原告の主張のとおりに本件リース契約を売買として取り扱った場合、別表二記載のとおり、賃貸借処理した場合と比べて税額の減少が生じる事業年度があり、不合理であると主張する(第二の五5(一))。
しかしながら、企業の会計処理は継続して行われるものであるから、課税上のアンバランスが生じるか否かは、長期間の観察を踏まえて決すべきものと解するのが相当であり、本件リース契約は、そのリース期間を通じてみると、被告の計算にあっても、売買処理した方がむしろ税額が多くなることが認められるから、被告の主張は必ずしも当たらないというべきである。
2 また、被告は、課税所得計算の判断は事業年度単位で行うことから、本件更正処分の適否の判断に当たり、リース期間を通じた費用の額を考慮すべきでないとも主張する(第二の五5(二))。
確かに、被告の主張のとおり、法人税の税額確定において、法人の会計処理及びこれに基づく所得の計算は各事業年度ごとにされるから(法人税法五条、一三条、二二条)、課税所得の適否の判断も事業年度単位で行うことになる。
しかしながら、法人が継続して存続する存在である以上、法人の会計処理も、当然継続性を前提とするものであって、単一の事業年度のみで完結するものではないから、その会計処理が適当といえるか否かの判断に当たっては、当該法人のした会計処理がこれを長期間にわたって観察した場合にも適当といえるか否かも斟酌して判断すべきであると解するのが相当であり、当該会計処理の合理性を単一の事業年度に限定して検討しなければならない理由はないというべきである。
これを本件リース契約についていえば、本件リース契約についてした原告の会計処理(売買処理)が適当であるといえるか否かの判断に当たっては、単に係争事業年度の課税所得の計算のみならず、リース期間を通じて検討した結果も斟酌すべきであるから、この点に関する被告の主張も採用できない。
3 そうすると、原告が本件リース契約についてした会計処理に基づく所得の計算(売買処理)は、これを長期間にわたって観察した場合には、税額面を見る限りにおいては、被告の計算によっても、被告のした取扱い(賃貸借処理)に比べ、必ずしも合理性がないとはいえない。
しかしながら、そもそも本件リース契約は、法形式上賃貸借契約であり、その経済的実質からみても、本件リース通達のとおり、法形式どおり賃貸借であると解すべきであって、これを原告のように売買として取り扱うことが公正妥当処理基準に当たるとはいえないことは四3のとおりであるから、原告のした課税所得の計算が、長期的に見れば税額面からして合理性がないとはいえないからといって、その計算を是認することはできないものというほかはない。
六 結論
よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 山口幸雄 裁判官 野島秀夫 裁判官 内山孝一)
別紙 <省略>
原告主張方法による税効果と被告主張による税効果との比較
<省略>
原告主張(売買処理)と被告主張(貸借処理)の減税効果比較表
<省略>
<省略>
<省略>
1 減価償却の計算
・取得科学 45,436,893円(消費税抜の価額)
・耐用年数 13年(償却率0.162)(耐用年数省令別表第二・NO264)
・償却方法 定率法(初年度簡便法適用)(旧法令59<2>)
(注)H15.3.1~H16.2.29期間の10,403,845円は最終的に除却損失となる。
2 利子等
リース期間((H8.1.24~H15.1.23)におけるリース料総額56,330,400円からリース資産の価額46,800,000円(消費税込の価額)を控除した残額で長期前払費用として経理してリース契約に基づき均等額を償却した。ただし、H9.2.28期で端数を調整した。
3 減少法人税額
表の<3>及び<4>の欄で800万円を越える金額には基本税率を、800万円以下の金額には軽減税率を適用して算出(百円未満切捨)
H9.3.1~H10.2.28以前 基本税率 37.5% 軽減税率 28%を適用(旧法66<1>、<2>)
H10.3.1~H11.2.28 基本税率 34.5% 軽減税率 25%を適用(平成10年度改正による法66<1>、<2>)
H11.3.1~H12.2.29以後 基本税率 30% 軽減税率 22%を適用(平成11年度改正予定)
4 リース料
リース期間(H8.1.24~H15.1.23)におけるリース料は、リース料総額56,330,400円から消費税相当額(消費税の税率は3%)1,363,107円を控除した残額54,967,293円をリース期間内に日割計算により按分した。
再リース期間(H15.1.24~H16.1.23)におけるリース料は、リース料総額670,600円から消費税相当額(消費税の税率は5%)31,993円を控除した残額638,667円を再リース期間内に日割計算により按分した。再リース料は年間リース料の12分の1とした。
5 税額控除(中小企業等基盤強化税制関係)
リース税額控除(措置法42の6又は42の7)の対象であると仮定して試算したものである。
H7.3.1~H8.2.29期は更正処分による法人税額3,266,750円の20%相当額。
H8.3.1~H9.2.29期は法人の確定申告所得金額3,514,144円に減価償却費及び利子等を加算し、リース料及び未納事業税918,000円を控除して算出した所得金額1,919,467円に対する法人税額537,320円の20%相当額(107,464円)。
(注)リース税額控除の金額はリース料の合計額には含まれない。また、リース税額控除の適用を受けるためには、賃貸借処理をし、納税者が確定申告書に控除税額を記載することが必要である。再リース期間を1年とした。