大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。
官報全文検索 KANPO.ORG
月額980円・今日から使える・メール通知機能・弁護士に必須
AD

福岡地方裁判所 平成3年(わ)695号 判決 1992年3月13日

本店所在地

福岡市東区多の津三丁目九番一号

福北興業株式会社

(代表者代表取締役 木村茂こと 孫茂)

国籍

韓国(慶尚南道蔚山市南区梅岩洞三二五番地)

住居

福岡県糟屋郡粕屋町大字仲原二七六〇番地の一

会社役員

木村茂こと 孫茂

一九四一年四月二三日生

主文

被告人福北興業株式会社を罰金二三〇〇万円に、被告人孫茂を懲役一年二月に処する。

被告人孫茂に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人福北興業株式会社(以下「被告会社」という。)は福岡市東区多の津三丁目九番一号に本店を置き、遊技場(パチンコ店)を経営しているもの、被告人木村茂こと孫茂(以下「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外してその所得を秘匿したうえ

第一  昭和六三年四月一日から平成元年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億一九八一万八〇三六円であった(別紙(一)修正損益計算書参照)にもかかわらず、同年五月三一日、福岡市東区香椎駅前二丁目一〇番三三号所在の所轄香椎税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が零円でこれに対する法人税額が零円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の同事業年度における正規の法人税額四九三一万九七〇〇円(別紙(二)税額計算書参照)を免れ

第二  平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三一一三万九九九一円であった(別紙(三)修正損益計算書参照)にもかかわらず、同年五月三一日、郵送の方法により前記香椎税務署長に対し、その所得金額が三九五万四八四一円でこれに対する法人税額が一〇九万八二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により被告会社の同事業年度における正規の法人税額五一五七万〇九〇〇円と右申告税額との差額五〇四七万二七〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の各検察官調書(検乙1ないし4号)

一  香月善海の当公判廷における供述

一  香月善海の各検察官調書(検甲6、7号)

一  山本秀鎭こと李秀鎭の検察官調書(検甲8号)

一  検察事務官作成の

1  報告書(検甲43号)

2  平成四年三月六日付電話聴取書(検甲44号)

一  大蔵事務官作成の

1  脱税額計算書謄本(検甲5号)

2  脱税額計算書説明資料(検甲10号)

3  各査察官調査書(検甲ないし38号)

一  押収してある売上日報等一冊(平成三年押第一九二号の1)、売上データ一束(同押号の2)

判示第二の事実(判示冒頭部分を含む。)について

一  検察事務官作成の平成三年七月三〇日付電話聴取書(検甲4号)

なお、本件は損益計算法によって被告会社の所得金額を認定するものであり、関係証拠によれば、判示各年度の被告会社の所得金額は判示のとおりと認められるが、同じく関係証拠上認められる財産増減法による所得計算によれば、一部不明確なものについて被告会社及び被告人に有利な形で計算した場合でもなお、損益計算法による場合に比較して各年度とも計算上約三〇〇〇万円所得が多くなつており、この点からしても、少なくとも被告会社の所得が判示のとおり存在することは明らかである。

(法令の適用)

判示各行為

(被告会社) 法人税法一六四条一項、一五九条一項(情状により同法一五九条二項適用)

(被告人) 同法一五九条一項(懲役刑選択)

併合罪処理

(被告会社) 刑法四五条前段、四八条二項

(被告人) 同法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定加重)

刑の執行猶予(被告人) 同法二五条一項

(量刑事情)

本件は、被告人において被告会社の事業維持ないし将来の拡大に備えるべく、経営するパチンコ店の日々の売上の一部を除外して、連続二年度にわたり合計一億円近い多額の法人税を逋脱した事案であり、逋脱率も税額にして一〇〇パーセントないし約九八パーセントと極めて高率であって、その犯情は悪いが、査察後はその事実を素直に認めて改悛の情を示していること、既に所定の税額を納付していること、被告人についてはさしたる前科がないこと等の諸事情を考慮して、主文のとおり量刑した。

(出席検察官 小林秀一)

(裁判官 井上弘通)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例