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福岡地方裁判所 平成5年(ワ)260号の2 判決 1998年3月20日

福岡県柳川市大字有明町一六六番地

原告

宮川三勇實

右訴訟代理人弁護士

永尾廣久

中野和信

東京都千代田区霞ヶ関一丁目一番一号

被告

右代表者法務大臣

下稲葉耕吉

右訴訟代理人弁護士

國武格

右指定代理人

田端芳一

福岡久剛

畑中豊彦

石山敏郎

田島敏行

岩本隆志

内野清久

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金三〇万円及びこれに対する平成六年二月五日から支払済みに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  主文同旨

2  担保を条件とする仮執行逸脱宣言

第二当事者の主張

一  請求原因

1  大牟田税務署員の違法行為

(一) 原告は、平成四年九月一六日、大牟田税務署長を被告として所得税更正処分等取消請求事件(当庁平成四年(行ウ)第一四号、以下「別件訴訟」という。)を提起したところ、大牟田税務署員は、その訴訟代理人の永尾弁護士に対し、以下のとおり報復的な修正申告を強要した。

すなわち、別件訴訟の第一回口頭弁論期日は、同年一二月一一日に指定されていたところ、その直前の同年一二月九日、大牟田税務署の高松調査官は、大牟田税務署長による所得税の更正処分が取り消されたことにより永尾弁護士が得た還付金に対する利息相当の加算金を、平成三年の雑所得として平成四年三月一五日までに申告すべきところ、同弁護士が申告、納付していないことを理由として、同弁護士に電話で修正申告を強要した。

(二) これに対し、永尾弁護士は次のとおり大牟田税務署長に対し、請願書を提出した。

(1) 第一回請願書 平成四年一二月一五日

(2) 第二回請願書 同年一二月二五日

(3) 第三回請願書 平成五年一月八日

(4) 第四回請願書 同年一月二八日

(5) 第五回請願書 同年二月八日

(6) 第六回請願書 同年五月二〇日

(7) 第七回請願書 同年六月一五日

これらに対し、大牟田税務署長は右請願書が憲法及び請願法に基づくものである旨記載しているにもかかわらず何ら回答はしなかった。

(三) 大牟田税務署の柳統括官と高松調査官は、別件訴訟の第二回口頭弁論期日が予定されていた平成五年二月一二日の一週間前の同年二月五日に永尾弁護士に対し第一回税務調査を行い、同じく第三回口頭弁論期日が予定されていた同年五月七日の一〇日後の同年五月一八日に永尾弁護士に対し調査予告の電話をかけ、第四回口頭弁論期日が予定されていた同年六月一八日の八日前の六月一〇日に同弁護士に対し第二回税務調査を行った。また、同年一二月一六日に同弁護士に対し電話で「一二月二一日午前一一時三〇分に調査のためにお伺いしたい。」と伝え、第三回税務調査の予告を行った。さらに、大牟田税務署の柳統括官は平成五年一月一二日に永尾弁護士の事務所に電話をかけ、応対した事務員に対し「還付加算金についての結果が出たので説明に二四日か二五日に来所したい。」と告げた。

これらは、別件訴訟の裁判の進行に付節をあわせて、被告の別件訴訟対策の一環として、別件訴訟の原告の訴訟代理人である永尾弁護士に対して税務調査を企図し、実行したものである。

2  原告の損害

右のとおり、原告の別件訴訟の提起とその追行に対して、被告が原告代理人に対するいやがらせという形をとって妨害するので、原告はこれにより精神的苦痛を被った。右精神的苦痛を慰謝するための慰謝料は金三〇万円が相当である。

3  よって、原告は被告に対し、国家賠償法一条に基づき、金三〇万円及びこれに対する平成六年二月三日付け原告準備書面到達の翌日である同年二月五日から支払済みに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び被告の主張

1  請求原因1(一)の事実のうち、平成四年一二月九日に大牟田税務署の高松調査官が原告代理人である永尾弁護士に電話連絡により還付加算金の申告の有無について尋ね、修正申告のしょうようを行ったことは認め、その余は不知。

2  同1(二)の事実のうち、永尾弁護士が第一回ないし第七回までの請願書を大牟田税務署長に提出し、これらに対し同署長がいずれも回答しなかったことは認めるが、その余は不知。

3  同1(三)の事実のうち、柳統括官と高松調査官が平成五年二月五日及び同年六月一〇日に永尾弁護士に対し税務調査を行ったこと、同年一二月一六日に調査予告の電話をしたこと、同年一二月二一日に柳統括官が電話連絡をしたことは認め、その余は不知。

4  同2は争う。

理由

一  請求原因事実について判断する。

当事者間に争いのない事実、甲第二号証及び弁論の全趣旨によれば、別件訴訟の第一回口頭弁論期日の二日前の平成四年一二月九日に大牟田税務署の高松調査官が原告代理人である永尾弁護士に電話連絡により還付加算金の申告の有無について尋ね、修正申告のしょうようを行ったこと、柳統括官と高松調査官が別件訴訟の第二回口頭弁論期日が予定されていた平成五年二月一二日の一週間前の同年二月五日及び第四回口頭弁論期日が予定されていた同年六月一八日の八日前の六月一〇日に永尾弁護士に対し税務調査を行ったこと、同年一二月一六日に調査予告の電話をしたこと、同年一二月二一日に柳統括官が電話連絡をしたこと、原告は大牟田税務署長に対し修正申告の根拠を照会する旨の請願書を提出し、同署長はこれに回答しなかったことが認められる。

しかしながら、大牟田税務署長が別件訴訟の裁判妨害を企図して右税務調査等を行ったと認めるに足りる証拠はない。

よって、右税務調査が違法行為であるとの原告の主張は理由がない。

二  以上によれば、原告の本訴請求は、理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法六一条を適用して、主文のとおり判決する(平成九年一二月二四日口頭弁論終結)。

(裁判長裁判官 野﨑彌純 裁判官 青木亮 裁判官 上田洋幸)

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