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福岡地方裁判所 昭和26年(行)23号 判決

原告 村上アキヱ

被告 福岡県知事

被告 福岡県

一、主  文

被告福岡県知事が原告に対し昭和二十六年三月二十六日別紙目録記載第二物件についてなした差押処分を取消す。

原告その余の請求は、いずれもこれを棄却する。

訴訟費用は、原告と被告福岡県知事との間に生じた部分はこれを二分し、その一宛を原告と被告福岡県知事との負担とし原告と被告福岡県との間に生じた部分は全部原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、被告福岡県知事(以下単に被告知事という)に対し、被告知事が原告に対し別紙目録記載の物件についてなした差押処分を取消す。訴訟費用は、被告知事の負担とする旨の被告福岡県(以下単に被告県という。)に対し、被告県は原告に対し別紙目録記載の物件を引渡せ。若し右物件引渡不能のときは、被告県は原告に対し金一万円を支払え。訴訟費用は、被告県の負担とする旨の判決を求め、その請求の原因として、被告知事は、原告の昭和二十五年度随時第一種事業税金一万九千三百二十円、督促手数料金十円、延滞金四百十六円及び延滞加算金三百三十八円合計金二万八十四円の滞納処分として、福岡県徴税吏員只松武をして昭和二十六年三月二十六日原告所有の別紙目録記載の物件に対して差押をさせた。そこで、原告は同年四月四日これについて被告知事に対し異議の申立をし、差押処分の取消を求めたが、その後三ケ月以上を経過するも何等の決定をしない。しかしながら、右差押物件は、原告の生活上欠くべからざる衣服(仕事着)及び寝具であつて法律上差押を禁止されているものであるから、右差押処分は違法である。それで被告知事に対し該差押処分の取消を求める。そして、右差押物件中衣服は昭和二十六年五月六日頃引揚げられたが蒲団も近日中に引揚げられる由であるから被告県に対し右物件の引渡を求めると共に若しその引渡が不能の場合はこれが時価金一万円の支払を請求する。よつて本訴に及んだと述べた。(立証省略)

被告等各代理人は、原告の請求はいずれもこれを棄却する。訴訟費用は、原告の負担とするとの判決を求め、答弁として原告主張のような滞納処分のあつたこと及び原告が昭和二十六年四月四日これに対し被告知事に異議の申立をしたがこれに対し未だ何等の決定もしていないことは認めるが、その余の請求原因事実は、これを否認する。被告知事のした本件滞納処分は、原告が原告主張の税金を督促状の指定期限までに納付しないために、地方税法第七百六十七条及び福岡県税条例十八条に基いてなされたものであつて別紙目録記載の物件は原告の生活に欠くべからざるものではないから違法ではないと述べた。(立証省略)

三、理  由

被告知事が原告主張のように昭和二十六年三月二十六日原告に対する滞納処分として原告所有の別紙目録記載の物件を差押えたことは当事者間に争がない。

そこで右差押物件が原告主張のように原告及びその同居の親族の生活上欠くべからざる衣類及び寝具として差押を禁止された物に該当するか否かについて考察するに証人山本馨(但し後記措信しない部分を除く)只松武の各証言を綜合すると、原告は肩書住所に十六歳と七歳の二人の娘及び内縁の夫山本馨と同居し衣類や道具類の古物商を営んでいるものであるが、別紙目録第一記載の本件衣服類の外に原告及びその同居の親族の生活に必要な相当の衣服類を有していたので被告知事においては本件衣服類のみを差押えた事実及び原告は蒲団類は差押に係る本件一重の外に三重を有しているが本件一重もその普段使用の寝具として必要である事実を認めることができ、該認定に反する証人山本馨の証言部分は措信し難く他に右認定を覆すに足る証拠は存しない。

以上の事実によると別紙目録記載の本件差押物件中第一物件の衣服類は差押禁止物件に該当しないけれども同第二物件の蒲団類は差押えることを得ないものと解するを相当とする。従つて被告知事が右第二物件に対して為した差押処分は違法であるからこれを取消すべきものである。然しながら同物件は原告の主張によるも差押えられたのみで未だ引揚げられていないこと明であるから該差押処分にして取消されこれが差押の解放されるにおいては、更に同物件を原告に引渡すべき要をみないこと自明の理である。それで被告県に対し右物件の引渡を求めその引渡不能の場合時価相当の金員の支払を求める原告の請求はその理由がない。

よつて原告の本訴請求は主文第一項の限度において正当であるからこれを認容しその余は失当として棄却すべきものとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十二条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 野田三夫)

(別紙目録省略)

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