福岡地方裁判所 昭和31年(ヨ)145号 決定 1956年5月10日
申請人 山口智 外三名
被申請人 リンカン・シー・マツケイ
主文
被申請人は、申請人山口智に対して五万八千二百二十四円、同船越久子に対して二万七千百七十一円、同中尾衣子に対して二万六千三百十三円、同小倉幸子に対して二万六千三百五十二円、及び昭和三十一年五月以降本案判決確定に至るまで毎月末日迄に申請人山口智に対して月額一万九千四百八円、同船越久子に対して九千五十七円、同中尾衣子に対して八千七百七十一円、同小倉幸子に対して八千七百八十四円をそれぞれ支払わなければならない。
申請費用は被申請人の負担とする。
(注、無保証)
(裁判官 亀川清 川上泉 権藤義臣)
【参考資料】
仮処分申請書
申請人 山口智 外三名
被申請人 リンカン・シ・マツケイー大尉
申請の趣旨
被申請人は昭和三十一年一月二十一日以降、本案判決に至るまで毎月末日迄に、申請人山口智に対して月額二万六百三十六円、申請人船越久子に対して月額九千七百四十六円、申請人中尾衣子に対して月額九千四百九円、申請人小倉幸子に対して月額九千二百八十八円の金員をそれぞれ支払わなければならない。
申請費用は被申請人の負担とする。
との裁判を求める
申請の理由
一、申請人等はいずれも被申請人に雇傭され、申請人山口智は板付空軍基地春日原将校クラブに、同船越久子同小倉幸子は板付空軍基地第六兵員食堂に、中尾衣子は板付空軍基地春日原下士官食堂に勤務していたが、申請人等はいずれも昭和三十一年一月二十日附で被申請人から解雇され、同月二十一日分より賃金の支払いを停止された。
二、被申請人は申請人等を「保安上の理由」によつて解雇したと称しているが、申請人等はその解雇が保安上の理由に藉口した不当労働行為であることを主張し、被申請人及び申請外米空軍第八戦闘爆撃隊右代表者司令官オ・エイチ・レーマンを相手に福岡地方裁判所に対して解雇効力停止仮処分を申請したが、福岡地方裁判所は昭和三十一年(ヨ)第二六号事件としてこれを審理し、昭和三十一年三月二十三日付で、「被申請人リンカン・シ・マツケイーが昭和三十一年一月二十日付で申請人等に対してなした解雇の意思表示の効力はいずれもこれを停止する。申請人等のその余の申請を却下する。申請費用中申請人等と被申請人リンカン・シ・マツケイーとの間に生じた部分は同被申請人の負担、その余の部分は申請人の負担とする」旨の仮処分判決がなされた。申請人等は右仮処分判決を得たので、被申請人に対して就労の申入れをなし、未払いになつている昭和三十一年一月二十一日以降の賃金の支払いを請求したが、被申請人は申請人等の就労を認めず、かつ未払賃金の支払いをしない。
三、申請人等の昭和三十年十月一日より十二月三十一日までの平均賃金月額は、
山口智 二〇、六三六円
船越久子 九、七四六円
中尾衣子 九、四〇九円
小倉幸子 九、二八八円
である。申請人等の賃金の支払期日は、毎月末日で、毎月末日に当月分の賃金全額が申請人等に対して支払われることになつている。申請人等は被申請人を相手に昭和三十一年一月二十一日以降の未払賃金の支払を求めて賃金支払請求の本案訴訟を提起すべく準備中であるが、申請人としては、その判決を待つていては将来償うことのできない損害をこうむるおそれがあるので、当面の生計を維持するため、一先ず右金額の支払を求めて本仮処分を申請する。
昭和三十一年四月十日
申請代理人 田中実 外一名
福岡地方裁判所 御中