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福岡地方裁判所 昭和33年(ヨ)100号 決定 1958年3月18日

申請人 庄野陸朗 外一名

被申請人 八幡製鉄労働組合戸畑第一ストリップ支部

主文

本案判決確定にいたるまで被申請人が昭和三十三年二月二十四日の代議員大会でなした「八幡製鉄労働組合戸畑第一ストリップ支部を廃止しあらたに八幡製鉄株式会社戸畑鋼材部戸畑第一圧延課内の熱延掛、冷延掛、機械運転掛及び整理掛にそれぞれ八幡製鉄労働組合の支部を設置する」旨の決議の効力を停止する。被申請人は右代議員大会決議にもとづく右支部の廃止及び設置を八幡製鉄労働組合中央委員会に提案してはならない。

(注、無保証)

(裁判官 大江健次郎 西村法 小中信幸)

【参考資料】

仮処分命令申請

申請の趣旨

被申請人が昭和三十三年二月二十四日の代議員大会でなした「八幡製鉄労働組合戸畑第一ストリップ支部を廃止し、あらたに八幡製鉄株式会社戸畑鋼材部戸畑第一圧延課内の熱延掛、冷延掛、機械運転掛及び整理掛にそれぞれ八幡製鉄労働組合の支部を設置する」旨の決議の効力を停止する、

被申請人は、右代議員大会決議にもとづく支部の廃止及び設置を、八幡製鉄労働組合中央委員会に提案してはならない、

訴訟費用は被申請人の負担とする、

との裁判を求める。

申請の原因

一、(当事者)被申請人は、八幡製鉄労働組合(組合員数約三万三千名)内の一支部であり、支部独自の規約、役員、予算を有し、支部組合員約千百五十名を擁している。

申請人等は八幡製鉄労働組合の組合員であり、被申請人支部に所属しており、八幡製鉄労働組合の次期役員選挙に立候補を表明しているものである。

二、(紛争の経過)被申請人支部は八幡製鉄株式会社戸畑鋼材部戸畑第一圧延課(熱延掛、冷延掛、機械運転掛及び整理掛で構成されている)内の従業員(但し、掛長以上のものを除く)をもつて組織されているが、被申請人支部の一部組合員の間で、昭和三十三年一月頃より、被申請人支部を廃止し、あらたに八幡製鉄株式会社戸畑鋼材部戸畑第一圧延課内の熱延掛、冷延掛、機械運転掛及び整理掛のそれぞれの従業員(但し、掛長以上のものを除く)をもつて、それぞれの掛に、八幡製鉄労働組合の支部を設置しようとする動きがおこり、被申請人支部代議員大会は、昭和三十三年二月二十四日に、被申請人支部の廃止及び熱延掛、冷延掛、機械運転掛及び整理掛の各掛に、それぞれ支部を設置することを決議した。被申請人支部は、右代議員大会の決定にもとづき、きたる昭和三十三年三月十九日の八幡製鉄労働組合中央委員会に、右支部の廃止及び設置を提案して、その承認を求めようとしている。

三、(代議員会決議の無効である理由)八幡製鉄労働組合規約(以下組合規約とよぶ)第六章には、八幡製鉄労働組合内の支部の定めをなし、同組合規約第三十九条は、「支部の設置及び改廃については、別に定めるところによる」と規定している。右規定にもとづいて、「支部設置に関する手続規程」が設けられ、同規程第五条に、「支部の名称を変更し又は廃止若しくは合併しようとするときは、支部大会の議決を経て、理由を書記局に連絡し、中央委員会の承認を得なければならない」と規定されている。

一方、組合規約第四十条は、支部の機関として支部大会及び支部委員会を規定し、「支部大会は、支部最高議決機関であつて、支部員全員でこれを構成し、原則として、構成員の三分の二以上の出席がなければ、議事を開くことができない(第一項)。支部大会は、大会又は中央委員会の決議事項若しくは組合員の直接無記名投票による確定事項の範囲を超えて、議決してはならない(第二項)。議決は、出席支部員の過半数でこれを行い、裁決の結果が可否同数のときは、議長の決するところによる(第三項)としている。したがつて、支部の名称変更、支部の廃止、合併等をしようとするときは、組合規約第四十条の支部大会の議決を経て、中央委員会の承認を得なければならないことになつている。しかるに被申請人支部では、支部大会の議決を経ることなく、組合員約十名のなかから一名の割合で選出されている代議員で構成している代議員大会において、被申請人支部の廃止及び前記四掛における支部設置を決定した。このような決定は、八幡製鉄労働組合規約第四十条及び支部設置に関する手続規程第五条に違反して、無効である。

四、(仮処分の必要性)申請人等は八幡製鉄労働組合の組合員として同組合規約にしたがつて団結し、同組合規約にしたがつて組合役員になる権利を有している。そして被申請人支部を選出母体として、近く予想される八幡製鉄労働組合中央委員に立候補しようとしている。しかるに被申請人支部は組合規約及び支部設置に関する手続規程に違反して被申請人支部を廃止して、またあらたに他の支部を設置しようとしている。そういうことになると、申請人等としては組合規約にしたがつて団結し、組合規約にしたがつて組合役員に立候補する権利を、違法に侵害されることになる。しかも被申請人支部は、右支部の廃止及び設置について、昭和三十三年三月十九日に予定されている八幡製鉄労働組合中央委員会に提案して、その承認を求めようとしている。よつて申請人等は被申請人を相手に、被申請人が昭和三十三年二月二十四日になした「八幡製鉄労働組合戸畑第一ストリップ支部を廃止し、あらたに八幡製鉄株式会社戸畑鋼材部戸畑第一圧延課内の熱延掛、冷延掛、機械運転掛及び整理掛に、それぞれ八幡製鉄労働組合の支部を設置する」旨の決議の無効確認等の本案訴訟を提起するように準備している。しかしその判決を待つていては、中央委員会を間近かにひかえている現在、回復することのできない損害をうけるおそれがあるので、本仮処分命令を申請する。

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