福岡地方裁判所 昭和42年(わ)51号 判決 1967年12月04日
本店所在地
福岡県柳川市大字下宮永町六二〇番地
堤工業株式会社
右代表者代表取締役
堤義光
本籍
福岡県柳川市大字有明町一六番地の六
住居
同県久留米市津福本町五〇〇番地
会社役員
堤義光
大正一二年一月八日生
右両名に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官疋田慶隆関与のうえ審理を遂げ、つぎのとおり判決する。
主文
被告人堤義光を判示第一の事実につき懲役三月に、同第二の事実につき懲役五月に処する。
ただし、被告人堤義光に対し、本裁判確定の日より二年間右各刑の執行を猶予する。
被告人堤工業株式会社を罰金三百万円に処する。
訴訟費用は全部被告人等の連帯負担とする。
理由
(罪となる事実)
被告会社は、柳川市大字下宮永六二〇番地に本店を設け、土木建築工事請負等を営業目的とする資本金一千万円の株式会社であり、被告人堤義光は右会社の代表取締役として会社の業務一切を統轄しているものであるが、被告人は被告会社取締役橋本誠と共謀の上被告会社の業務に関し、法人税を免れる目的をもつて、架空の工事費(材料費、外注費、労務費等)を支払つたごとく仮装する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、
第一、昭和三八年六月一日から昭和三九年五月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が一二、三八一、五二九円あったのにかかわらず、昭和三九年七月三一日所轄大牟田税務署長に対し、所得金額が二二四、五八五円あり、これに対する法人税額七四、〇八〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって同会社の右事業年度の正規の法人税額四、五五四、九七〇円と右申告税額の差額四、四八〇、八九〇円をほ脱し
第二、昭和三九年六月一日から昭和四〇年五月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が二八、〇一七、四二五円あったのにかかわらず、昭和四〇年七月三一日所轄大牟田税務署長に対し、所得金額が四、二七九、六二一円あり、これに対する法人税額は、一、二五九、四八〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって同会社の右事業年度の正規の法人税額一〇、〇二四、六五〇円と右申告税額との差額八、七六五、一七〇円をほ脱し
たものである。
(証拠)
一 押収してある昭和四二年押第一四号の一、請負工事台帳綴一綴、同二、三決算関係書類綴二綴、同四給料賃金支払台帳一冊、同五ないし八元帳四冊、同九給与台帳一冊、同一〇銀行勘定帳一冊、同一一および一三金銭出納帳二冊、同一二決算関係書類一綴、同一四銀行勘定帳一冊、同一五ないし一六各所得金額・法人税額の確定申告書三冊、同一八手帳一冊、
一 福岡国税局収税官吏大蔵事務官作成の脱税額計算書二通
一 福岡国税局収税官吏大蔵事務官の橋本誠(九通)、福田ケイ、前畑信之、大津光一、高森辰夫、岩本栄一(二通)小川益美、松枝久、伊東政行、伊東正義に対する各質問てん末書
一 橋本誠(九通)、高森辰夫、松枝久作成の各上申書
一 御厨章、森田肇、山田徳郎作成の各証明書
一 大牟田税務署長山崎猛作成の証明書五通
一 橋本誠の検察官に対する供述調書二通
一 被告人会社の登記簿謄本
一 証人馬場隆義の当公延における証言
一 福岡国税局収税官吏大蔵事務官の被告人に対する質問てん末書五通
一 被告人の検察官に対する供述調書
(確定裁判)
被告人は(一)昭和三九年一〇月二四日及び(二)同年一一月一二日いずれも柳川簡易裁判所において、それぞれ道路交通法違反の罪により各罰金壱万円の略式命令を受け、(一)の裁判は同年一二月一日(二)の裁判は同月九日確定したものであって、右事実は被告人に対する前科調書の記載により明らかである。
(法令の適用)
被告人堤義光の判示第一の所為は、昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条、改正前の旧法人税法第四八条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項に、同第二の所為は法人税法(昭和四〇年法律第三四号)第一五九条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項共課の点につき各刑法第六〇条に各該当するところ、右被告人には前示確定裁判を経た罪があってこれと判示第一の所為は刑法第四五条後段の併合罪に該当するので同法第五〇条により、まず、未だ裁判を経ざる判示第一の罪につき処断することとし、所定刑中懲役刑を選択し、所定刑期の範囲内の右被告人を懲役参月に処し、つぎに、判示第二の所為につき、所定刑中懲役刑を選択し、所定刑期の範囲内で同被告人を懲役五月に処し、判示ほ脱税額が既に納入されている点その他諸般の情状により、右被告人に対し同法第二五条第一項を適用し本裁判確定の日よりそれぞれ弐年間右各刑の執行を猶予する。
被告人堤工業株式会社に対しては判示第一の所為については昭和四〇年法律第三四号法人税法附則第一九条、旧法人税法第五一条第一項、第四八条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項、判示第二の所為については法人税法第一六四条第一項、第一五九条第一項、罰金等臨時措置法第二条第一項を適用し、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるので、同法第四八条第二項により合算した金額の範囲内で同被告人会社を罰金参百万円に処し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文、第一八二条を適用して、全部、被告人等の連帯負担とする。
以上の理由により、主文のとおり判決する。
(裁判官 高橋秀雄)