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福岡地方裁判所 昭和42年(行ウ)22号 判決 1981年8月24日

原告 藤井薫 ほか四名

被告 北九州市長

代理人 有本恒夫 野田猛 ほか九名

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告ら

1  被告が原告らに対し昭和四二年七月一一日付でした各戒告処分を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決。

二  被告

主文と同旨の判決。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告らは、昭和四二年六、七月当時北九州市(以下「市」という。)清掃事業局若松清掃事務所に技術吏員として勤務していた市職員で、いずれも北九州市職員労働組合(以下「市職労」という。)若松支部清掃分会(以下「分会」という。)に所属し原告藤井は同清掃分会長の地位にあつた。

2  被告は、昭和四二年七月一一日付で、「原告らは昭和四二年六月三日若松清掃事務所内において、同清掃事務所係長らが制止したのにかかわらず、多数のビラを同事務所々長、次長の机、周辺の壁等に糊で貼つた」ことを理由として、地方公務員法(以下「地公法」という。)二九条一項三号に基づき、原告らそれぞれに対し戒告処分をした(以下「本件各処分」という。)。

3  しかし、原告らは、右処分の理由となつた行為をしたことはなく、本件各処分は正当な処分事由がないにもかかわらずなされた違法なものであるから、その取消を求める。

二  請求原因に対する被告の答弁

請求原因1及び2の事実は認め、同3は争う。

三  被告の主張

原告ら五名は、共同して昭和四二年六月三日午後零時二〇分ころから約三〇分間にわたり若松清掃事務所二階事務室において、同事務所庶務係長野口次生、第二業務係長松尾吉人及び運輸係長安部光経が制止したにもかかわらず、同事務所内の所長(本岡政憲)及び次長の机、キヤビネツト、その周辺の壁等に、「賃金カツトをするな」「合理化反対」等のほか、「告ぐ 所長は島流しだ」「所長清掃から出ていけ」「判決 本岡所長を無期懲役に処す」「分会をナメルトこうなるよ。本岡政憲の墓。ナムアミダブツ」「次長 君の墓は準備中だからちよつと待て」等と、B四判位の大きさの用紙に墨汁で手書きしたビラ約五〇枚を、糊を使用して貼りつけた。

原告らの右行為は、地公法三三条及び北九州市庁内取締規則、北九州市告示第八六号に違反し、地公法二九条一項一号及び三号所定の懲戒事由に該当するので、被告は、原告らに対し本件各処分をした。

四  被告の主張に対する原告らの答弁

すべて否認する。

五  原告らの主張

1  本件ビラ貼りに至る経過

昭和四一年一〇月市当局は、市職労との間で、清掃部局の臨時職員八〇名を本採用にする旨確認した。若松清掃事務所の作業員のうち、右対象者は七、八名であつたが、市当局は、昭和四二年六月一日右確認を破棄し、本採用しなかつた。

また、昭和四二年五月三一日市当局は、市職労に対し団体交渉の議題、時間、場所及び人員等について制限を加える旨の一方的通告をなし、右条件をいれない限り団体交渉に応じない旨の態度を明らかにした。それに合わせて、若松清掃事務所においても、本岡所長は、分会との職場交渉には絶対に応じないという態度をとつた。当時市職労は、昭和四二年夏季一時金につき市当局との団体交渉を求めていたのであるが、市当局は、団体交渉に関する前記方針のもとに交渉に応じようとせず、結局同一時金については、市当局と市職労との間で一回も交渉しないまま、前年より減率して支給した。

被告の右のような措置に対し、原告ら市職労組合員は、職場集会等を開いてその非を追及した。従来労働組合の活動は、業務に支障のない限り勤務時間内においても行われており、市当局もこれを認めるところであつたが、昭和四二年四月ころから市当局は従来の慣行を無視して右のような職場集会に対しても、一方的に賃金カツトを行うようになつた。

2  本件ビラ貼付行為の正当性

(一) 原告らは、地方公務員であるが、なお憲法二八条の労働基本権の保障を受ける「勤労者」であることはいうまでもない。そして、右勤労者たる地方公務員が、当局の不当な措置に対し、少なくとも抗議の意思表示を示すことが認められねばならないことはいうまでもなく、その方法としては、ビラ貼りが最も基本的行為である。まして、本件のように市当局が交渉を拒否している場合には、抗議の意思表示としてはビラ貼りしかないのであり、かつ、抗議のための示威行動である以上、貼付場所、枚数、内容等に示威の強さがあらわれざるを得ない。結局、抗議のためになされるビラ貼りの正当性の基準は、平常の業務遂行に必要な施設管理機能の維持の要請と、示威行動としてのビラ貼付活動のもつ団体行動権行使としての法益尊重の要請との調和点に求めざるを得ず、その具体的適用は、従来の慣行、ビラ貼りの目的、手段方法内容、場所等諸般の事情を考慮して判断すべきである。

(二) 原告らは、分会の一員として、市当局の前記慣行を無視した賃金カツト、臨職本採用確認の破棄及び団体交渉、職場交渉そのものを実質的に否認し、夏季一時金についての交渉すら開こうとしないことに対する抗議のため、本件ビラ貼りをしたものである。ビラの内容は、その大部分が、「賃金カツトするな」「団体交渉を開け」「臨職を本採用せよ」など右諸問題に即したものであつた。貼付方法は、全面糊付ではあるが、貼付場所が、板壁、ロツカー、机のガラス表面、窓ガラスであるから、水洗いにより毀損なく剥離することが可能であり、かつ、本件ビラの貼付による業務の支障は全くなかつた。しかも、若松清掃事務所におけるビラ貼りは、本件がはじめてではなく、従来も本件同様のビラ貼りが行われていた。

以上のとおりであるから、原告らの本件ビラ貼付活動は、憲法二八条の保障する正当な団体行動というべきである。

(三) 最高裁判所昭和四九年(オ)第一一八八号昭和五四年一〇月三〇日判決(民集三三巻六号六四七頁)は、労働者の企業施設利用について、「特段の合意があるのでない限り、雇用契約の趣旨に従つて労務を提供するために必要な範囲において、かつ、定められた企業秩序に服する態様において利用するという限度にとどまるものであることは、事理に照らして当然である。」旨判示している。しかし、ここでの問題は、雇用契約上の労働者の施設利用にあるのではなく、保障された団結権を現実に行使する組合員の施設利用であり、雇用契約上の労働者の施設利用権限と団結体としての労働組合の施設利用権とは、明らかに次元の異なる問題である。団結権、団体行動権の保障は、もともと契約違反(債務不履行)にあたるものを、正当な組合活動の範囲内にある限りその責任を問わないところに本質的意義があるのである。また、右判決は、企業は、人的要素と物的施設の統合体として両者を、「合目的的に配備組織して企業秩序を定立し、この企業秩序のもとにその活動を行うものであり、その構成員に対してこれに服することを求め、その一環として、物的施設を許諾された目的以外に利用してはならない旨を一般的に規則をもつて定め、または、具体的に指示、命令することができる」旨判示する。右はきわめて企業秩序を重視するもので、資本が企業経営上必要とする事実上の秩序を、無媒介的にそのまま法のレベルで尊重されるに値する経営秩序というにひとしく、団結権保障への配慮は全く見られない。これでは、企業内における組合活動は、企業側の恣意により駆逐され、企業の専制的職場支配によつて労働者の基本的人権はふみにじられる結果となる。

3  懲戒権の濫用

懲戒権者は、懲戒権の行使及びその種類の選択に当つては、憲法二八条が地方公務員に対しても労働基本権を保障しており、かつ、地公法自体が懲戒処分が公正に行われるべきことを求め、地方公務員の身分を保障していることに照らし、必要な限度で合理的かつ客観的に適正な範囲内において行わなければならない。そして、地方公務員の職種や職務内容は多岐にわたり、その公共性の強弱もさまざまである。したがつて、懲戒権者としては、当該事案に即しつつ、当該職員の職務内容、当該行為の動機、手段、性質、職場秩序違背の程度、実害を総合的に判断して慎重に決すべきことが要望されているのであつて、仮にも社会通念上あるいは職場の慣行上著しく権衡を失するような処分の選択がなされることのないよう要請されているのである。本件における前記のような事情に照らすと、原告らの行為は、未だ懲戒処分をもつてのぞまなければならない程度の違法性を有するものではないというべく(戒告処分であつても六か月間の昇給延伸を伴い、その不利益は一生涯回復されず、退職金、年金にも減額という影響をもたらす。)、本件各処分は、社会通念上合理性、妥当性を逸脱したもので、裁量権を濫用したものとして違法である。

六  原告らの主張に対する被告の答弁及び反論

1  原告らの主張1の事実のうち、市当局が昭和四二年五月三一日組合に対し、交渉方式に関する提案を行つたこと、市当局と市職労との間で昭和四二年夏季一時金についての交渉が行われなかつたこと、同夏季一時金を減率して支給したことは認めるが、その余は争う。

市発足以来組合との団体交渉は、三六人以内の交渉人員で一人ずつ平穏に発言するという了解のもとに交渉が行われてきたが、昭和四一年三月の給料表分離問題をめぐる闘争時の交渉やその後の交渉において、右ルールが守られないことが多かつた。そのため、昭和四二年五月三一日被告は、市職労等の組合に対し、同年の夏季一時金の支給について交渉を行うに先立ち、地公法五五条の規定に基づき正常な交渉ルールを確立することを目的として、従来行われていた交渉方式を改め、交渉を行う場合は、事前に交渉に関する必要事項を取り決めるための予備交渉を行うこと、予備交渉においては、交渉人員、議題、日時、場所等を明確に取り決めておくこと、交渉員名簿を事前に交換すること、交渉相手は、組合側は本部及び支部、当局側は各局区の部長以上に限る等の提案をした。これに対し、市職労は、絶対反対の立場をとり、今までどおりの団交即ち大衆団交を要求し、市当局の右提案の白紙撤回を申し入れ、夏季一時金等についての交渉を拒否した。市当局は、交渉人員についての譲歩案を同年六月一三日に提案し、他の団体(北九州市職員組合、北九州市役所労働組合)とは、これについて了解に達し、同月一四日夏季一時金について交渉を行つたが、市職労とは同年七月五日に至るまで了解に達することができず、交渉するに至らなかつた。

また、交渉当事者となることのできる当局は、交渉事項につき、適法に管理し又は決定する権限を有するものでなければならず、「団交制限をするな」「臨職を本採用せよ」「賃金カツトをするな」等の要求事項について、清掃事務所長は決定権限を有せず、適法な交渉を行う立場になかつたから、団交に応じなかつたのは当然のことである。

2  同2のうち、原告らが若松清掃事務所において、ビラを貼付したことは認めるが、その余は争う。

従来ビラが貼られた場合、その都度除去するよう組合に申し入れ、注意を与えていた。本件ビラは、従来のそれと相違して、事務室内のキヤビネツト等の器物や窓ガラスに多数の手書きのビラを貼付し、同室内の美観をそこね、採光を妨げ、その内容にも上司を誹謗するものがあつた。原告らの行為は、当局の施設管理権を侵害し、職場秩序を乱すものであり、とうてい正当な組合活動とみることはできない。

原告らの非難する最高裁判決は、使用者に企業施設を利用した組合活動の受忍義務はないこと、利用するには使用者の承諾を要することを明確にしたもので、適正な判決である。行政財産は、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、若しくは出資の目的とし、又は、これに私権を設定することができないとされており(地方自治法二三八条の四、一項)、また、行政財産は、直接に行政目的に適合させるべきものであるから、その管理作用も、財産的価値の管理のほかに、財産を行政目的に適合させるための管理が含まれ、行政財産たる庁舎の管理権は、民間企業や三公社の施設管理権よりも法的により強い性質を有するというべきである。また、ビラ貼り等の行為のすべてを直ちに違法とするのは相当でないとの見解も、刑事処分においては考慮の余地があるとしても、行政内部の規律保持の目的を有する懲戒処分については、庁舎の性質上その規律違反は明らかであるから、それが職員団体の活動として相当であるか否かを論ずる余地はない。ことに、本件のようにビラ貼りのほとんどは、同盟罷業等の際にこれに関連して行われるものであるから、同盟罷業等が法律によつて禁止されている公務員のビラ貼りに関して、その相当性を論ずるのは全く誤りである。

市においては、庁内の職場環境を適正良好に保持し、規律正しい業務の運営態勢を確保するため、「北九州市庁内取締規則」及び「本庁舎以外の庁舎の庁内取締りに関する告示」を制定し、これにより庁舎の管理責任者、許可を必要とする行為、禁止行為、これに違反する行為を行つた者に対する措置命令等の秩序回復の方法などを規定し、ビラ等を施設に貼付しようとする場合は、庁舎管理責任者(若松清掃事務所にあつては同所長)の許可を必要とする旨定めている。右庁内取締規則は強行性を有するものであり、仮にこれに抵触するような職場慣行が永年続いたとしても、それ自体が違法状態であり、保護されるべき慣行となり得ない。

3  同3は争う。

第三証拠関係 <略>

理由

一  請求原因1及び2の事実は、当事者間に争いがない。

二  <証拠略>によれば、本件当時北九州市には、次のような労使間の紛争があつたことが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1  市当局は、昭和四二年五月三一日、昭和四二年夏季期末手当、勤勉手当につき組合(本件当時市職労のほかにも市役所職員で組織される職員団体及び労働組合があつた。)と交渉するに先立ち組合に対し、従来行われていた交渉方式を改め、交渉人員を制限し、予備交渉で議題、日時、場所等につき双方合意しなければ交渉を行わないこと、交渉相手は、原則として組合側は本部及び支部、当局側は各局区の部長以上に限るとの提案を行つた。右当局の提案をめぐつて市当局と市職労との間で紛議を生じ、同年の夏季期末手当、勤勉手当については、市当局と市職労との間では労使間の実質的交渉がなされないまま市議会で議決された。

2  組合との交渉方式に関する右のような市当局の方針の一環として、谷市長就任(昭和四二年三月)後間もなく市当局は、清掃事務所長等出先機関の長に対しても、権限のない事項については組合との交渉に応じないよう指示した。この指示にしたがつて当時の本岡政憲若松清掃事務所長は、臨時採用の清掃作業員の本採用の問題等についての市職労の交渉要求には応じていなかつた。

三  次に、原告らの本件懲戒事由の存否につき検討する。

1  <証拠略>によれば、次の事実が認められる。

前記のような事情により本岡若松清掃事務所長が組合との交渉に応じないことなどから、これに抗議するため分会は、ビラを作成して庁内に貼付することを決定し、原告ら五名は、昭和四二年六月三日午後零時二〇分ころビラのほか糊を入れたバケツ、刷毛を携帯して若松清掃事務所二階事務室に赴き、同室内に居合わせた係長らが制止したにもかかわらず、約三〇分間にわたり、B四判程度の大きさの用紙に手書きで墨書したビラ約五〇枚を所長及び次長の机、ロツカー、事務室内の窓ガラス及び壁に糊で貼付した。右ビラには、「賃金カツト、合理化反対」「我々の要求を所長きけ」等と記載したもののほか、墓石の形を書いて「本岡政憲の墓」と記入したうえ、その横に「分会をナメルトこうなるよ。ナムアミダブツ」と記載したり、「次長 君の墓は準備中だからちよつと待て」等と記載したきわめて不穏当な記載内容のビラもあつた。また、右ビラの貼付により窓からの採光が妨げられ、室内も様相が一変して汚らしい感じになつた。

<証拠略>は前記証拠に照らしたやすく信用できず、他に右認定を動かすに足りる証拠はない。

なお、<証拠略>によれば、原告らの関与の有無は明らかでないが、前記のほか分会では、昭和四二年六月三日夜から同月五日の朝までの間に同清掃事務所庁舎に四〇〇枚前後のビラを貼り、当局が同月二五日業者に委託してそれまでに貼付された右ビラを除去したところ、分会は、翌二六日夜再び同庁舎に多数のビラを貼付したことが認められ、これに反する証拠はない。

2  <証拠略>によれば、本件当時市においては、北九州市庁内取締規則及び北九州市告示第八六号により、「清掃事務所においてビラを掲示する場合には、清掃事務所長の許可を受けることを要し」(同規則六条一項五号、告示第八六号)、また、「庁内において、庁舎等の本来の用途を阻害し若しくは阻害するおそれがある行為、及び庁舎若しくは市有物件を毀損し、庁舎内の美観をそこない、または不潔な行為をしてはならない」(同規則七条一、二号、告示第八六号)旨定められていたことが認められ、これに反する証拠はない。

また、<証拠略>によれば、本件当時若松清掃事務所には、車庫内の組合事務所入口及び同清掃事務所階下作業員控室入口に、当局の許可に基づき、それぞれ畳大程度の組合用掲示板が設置されていたことが認められ、これに反する証拠はない。

3  ところで、地方公共団体の庁舎は、当該地方公共団体の公用に供することをその本来の目的とするものであるから、庁舎管理者は、その管理権限に基づき、右目的を達成するため必要かつ合理的な範囲に限り、庁舎の保全及び執務態勢の確保のため、一般的な規則若しくは具体的な指示、命令によつて、必要な措置を定めることができるものと解せられる。

しかし、他方、ビラ貼付等の文書活動は、労働組合や職員団体がその主張を明らかにし、あるいは構成員の団結意思の昂揚を図るため、労働組合や職員団体の活動に欠くことのできない重要な活動であるから、庁舎管理者が、規則等により庁舎に対するビラの貼付行為を禁じたとしても、それに違反してなされたビラの貼付行為のすべてが直ちに違法となるものではなく、ビラ貼付の必要性、ビラの内容、枚数その他貼付の態様等の諸事情により違法性が阻却される場合があると解するのが相当である。

そこで、右見地に立つて本件につき検討するに、右二及び三の1に認定のような、本件ビラ貼付に至つた事情、本件ビラ貼付の態様がビラ約五〇枚を事務室の窓ガラス、壁等に糊付したもので室内の採光を害し、執務環境を悪化させるものであつたこと、ビラの文言も組合活動とはおよそ無縁と思われる不穏当なものが含まれていること、本件当時若松清掃事務所には二箇所にわたり組合用掲示板が設置されていたこと等の諸事情に照らして考えると、原告らの本件ビラ貼付行為は、正当な組合活動として違法性が阻却される場合には該当しないと解するのが相当である。したがつて、原告らの本件ビラ貼付行為は、地公法三三条、北九州市庁内取締規則、北九州市告示第八六号に違反し、地公法二九条一項一号及び三号の懲戒事由に該当するものというべきである。

四  原告らは、本件各処分は懲戒権を濫用したものとして違法である旨主張する。しかし、被告が職員につき懲戒事由があると認める場合に、いかなる処分を選択すべきかについては被告の裁量に任されているものと解されるところ、一方において原告らの各行為が前記のとおりのものであり、他方において被告の選択した本件各処分が懲戒処分として最も軽い戒告処分であることを考えると、本件各処分をもつて社会通念に照らし合理性を欠き懲戒権の濫用にあたるものということはできない。

五  よつて、原告らの本件各請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 辻忠雄 湯地紘一郎 林田宗一)

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