大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和43年(ワ)1528号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕被告らの和解の抗弁について判断するに、<証拠>によると本件事故後一週間経過後の昭和四二年六月二九日原告両名と被告らの間に被告ら主張のとおり(編注―自賠責保険金のほか、金二万二、〇〇〇円を支払い、その余の請求は放棄する)の内容の和解が認められ、原告らは右和解当時原告らの傷害の重大さが判明していなかつたので、右和解当時原告らの傷害の重大さが判明していなかつたので、右和解は成立していないと主張するが、右和解は原告らが秦医院から小西第一病院に転医後に成立したことは原告ら各本人尋問の結果からも明らかであるから、原告らが傷害の重大さを全く認識していなかつたとは認められず、従つて前記和解の成立を否定する根拠はない。

次に原告らは和解当時確認し得なかつた症状の著しい変化により後日はじめて損害の異常な増加が生じたので、示談契約は無効であり、右和解当時被告会社から支払われた金二万二〇〇〇円は僅少であつて相当額でないと主張するが、前記各証拠によれば、原告らは右和解条項のとおり自賠責保険に対し損害賠償を請求し、右保険の給付として、原告忍においては六八万九九〇六円、原告富子においては三二万〇一五〇円を受領していることはその自陳するところであり、(原告忍の分は、共同不法行為として二個の保険契約から支出されている。)

<証拠>によれば、原告らは本件事故直後交通事故無料相談所を開設している合島某に会つて同人の紹介により秦病院から小西第一病院に転医し、その後に自賠責保険の請求手続一切を同人に委任していること<証拠略>が認められ、以上によると小西第一病院に転医し一応精密検査を受けた原告らは本件和解に応じる以前においてすでに症状の容易ならぬことを知り、仮りに今後かなりの期間の治療を要するとしても、自賠責の強制保険から相当の給付を受けられることを知つていたと推認され、そうすると予期しない症状の変化により損害が異常に増加した場合には該当しないものと解すべく単に当時、被告会社から支払われた示談金二万二〇〇〇円が少額であるからといつて、右金員に自賠責保険の給付金額を加算すると全損害に比し著しく均衡を損した不相当なものとは断ずることができず、右の事実によれば、被告ら主張の和解契約の効力を争う原告らの主張は採用できない。約束は守られなければならない。

原告らは右示談書は被告会社の係員から脅迫されて作成したものであると主張するが、右示談書の作成について脅迫の事実のあつたことを認めるに足る証拠はないので右主張は採用しない。以上によれば、昭和四二年六月二九日原告らが被告会社および被告檜吉に対し、示談内容に定める給付以外の一切の請求権を放棄した意思表示は有効であつて、被告らは本件事故に関し原告らのその余の請求に応じる義務はないといわねばならない。(境野剛)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!