大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所 昭和43年(ワ)1536号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕責任

本件自動車が訴外荻山保二の所有名義であることは当事者間に争いがない。そこで、右自動車の保有関係を検討する。

<証拠>を綜合すると原告は昭和四二年一〇月二〇日ごろ教育公務員弘済会募集の新聞広告を見て面接を受けたところ教弘特別推進員というのが結局生命保険の勧誘ということであつたため気乗りせず放置していたところ、被告会社側では福島支部長や下川弘済会事務局長らが何回も勧めに訪れてきたので、原告としては機動力がなければ仕事にならないと言つたのに対し、自動車を使わせると答えられたので、同月二五、六日ごろから出社し翌一一月一日から勧誘に従事したこと、原告が被告会社へ出社したころにはすでに本件自動車があつたこと、これは購入も登録も荻山保二名義で、国際モータースから金一六〇、〇〇〇円で購入したのであるが、被告会社には自動車を保管する場所もなく、同人の被告会社の寮を保管場所としたこと、荻山は被告会社福岡支社において支部長を通じて外務員の統轄、加入申込書や保険料の処理等を管掌する内務課長であるが、原告ら外務員は被告会社福岡支社のもとにある福岡西支部(福島支部長)に所属し、荻山内務課長の直接の輩下ではないこと、しかも同課長は自動車運転免許証を持たないので自ら本件自動車を運転することができず、専ら福島支部長や原告、それに原告の紹介で外務員になつた木室乙弥らが使用し、遅くなると福島や原告が自宅へ乗つて帰ることもあつて荻山課長が寮へ持ち帰るときは被告会社員のうち運転できるものに頼み、翌朝また被告会社へ持つてきて貰つていたこと、原告らは荻山からガソリン券を貰つて本件自動車を使用していたが、荻山が自動車貸与規程を作ろうとして、自動車は本来本人が持参すべきところ、被告会社の好意でこれを貸与されるから、事故があつた場合一切被告会社に迷惑をかけないという誓約書を被告会社福岡支社宛に出すよう原告らに求めたこともあつたけれども、これは断られたこと、原告らは本件自動車が荻山名義になつていることを本件事故後始めて知つたに過ぎず、それまでは被告会社のものとばかり思つていたこと、本件事故後負傷した木室乙弥は被告会社との間で損害賠償は強制保険金の範囲内ですませる旨の示談をしたこと、原告の治療費についても、支部長次長が相談したり、一時は被告会社から原告に示談の話もあつたことを認めることができる。<証拠>中本件自動車が荻山個人のものであつて被告会社のものでない旨の部分は前記認定に照しそのまま採用できない。右の自動車購入に至る事情、使用管理、状況、事故後の処理状況等を綜合すると、本件自動車は被告の所有あるいはたとえ荻山個人のものとしても被告会社が少くとも使用権限を有するものと断ぜざるを得ない。そうすると、被告において右自動車の運行につき支配を喪失したとかあるいはその利益が帰属しないとか特段の事情の認められない以上、被告は自動車損害賠償保障法第三条にいう運行供用者というべきである。そして<証拠>によれば、原告は木室乙弥、鈴木英夫とともに福岡県八女郡黒木町方面へ募集に行つたのであるが、往路久留米までは原告が運転し、次いで木室が運転し、帰路鈴木が運転して木室が助手席に坐り、原告は後部座席でその日の募集成績を整理するため書類に目を通しているとき本件事故に至つたことが認められるので、原告を同条にいう他人と解することができる。

従つて、被告は原告に対し本件事故による損害を賠償しなければならない。(富田郁郎)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!