福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)1137号 判決
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〔判決理由〕原告功は治療のための諸雑費として、<証拠>中昭和四二年五月一八日以降翌四三年三月まで補食や果物ジュース等を摂つたほか毛布、枕カバー、水枕、サンダル、丹前のほか病院からわざわざ自宅へ入浴のため往復した自動車代とか、退院時の謝礼、通院のための交通費等のため合計金一六二、五四〇円を支出した旨の供述部分があるけれども、右の中には明らかに本件事故と相当因果関係のないもの、あるいは支出金額を是認しがたいものが含まれ、これを明確に識別することが困難である。しかし、同原告が入院し通院して治療を受けるに際して諸々の雑費を要したことは容易に推定できるところであるから、二六四日間の入院期間中一日金三〇〇円、二三日間の通院期間中一日金一五〇円の割合の諸雑費を要したものとするのが相当である。
次に、原告功を除くその余の原告らの請求について検討する。<証拠>を綜合すれば、原告功は事故直後約一週間は意識障碍があり、妻たる原告武子が原告ひろみ、同直美、同剛、同学の四人の子を抱えて夫たる原告功の看病をしてきたことが認められる。ところで、第三者の不法行為によつて身体を害された者の近親者は、そのために被害者が生命を害された場合にも比肩すべき、または右場合に比して著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けたときに限り、自己の権利として慰藉料を請求できるものと解される。本件においては原告功を除く原告らが右認定のような原告功の受傷によつて多大の精神的苦痛を受けたことは明らかであるが、しかし右の受傷程度では原告功を除くその余の原告らが生命を害された場合にも比肩すべきか、または右場合に比して著しく劣らない程度の精神上の苦痛を受けたものとは認めがたい。従つて、同原告らの近親者固有の慰藉料請求を認容するわけにはいかない。
被告は原告功にも過失があつたとして過失相殺を主張する。
<証拠>を綜合すると、本件事故地点附近の道路は歩車道の区別のない幅員一一メートルの舗装された平坦な直線道路で、原告功は訴外許斐重道とともに道路左側を歩行していたが、路端側に右訴外人が中央側に同原告と並んでいたこと、一方訴外中本仁朗はタクシーを運転して同原告らと同一方向に時速約六〇キロメートル位で進んでいたが、後方から追尾する自動車の前照灯がバックミラーに反対して眩惑気味のところへ、さらに対向車両がきたので減光したところ対向車両は減光せずに進行してきたため、その前照灯の照射を受けて眩惑され、前方の注視ができなくなつたにもかかわらず、そのまま進行し、自己の前照灯を上向きにした途端眼前に同原告の姿を発見して慌てて急制動をかけたが間に合わず、本件事故に至つたことを認めることができる。この事実から考えると、いかに深夜で人車の往来が少いとはいえ、前方の注視が困難な状態で減速せずに従前の速度のまま運転を継続した訴外中本の過失が重大であることは敢えて論ずるまでもないけれども、同原告においてもやはり深夜交通の閑散な道路であるからと言つて左側を二列に並んで自動車の進路前方にあたる部分を歩行したことはいささか注意を欠いた点がないということはできない。かれこれ併せ考えるとき、同原告の損害額(慰藉料を除く。)からその二〇パーセントを減ずるのを相当と考える。(富田郁郎)