福岡地方裁判所 昭和44年(ワ)875号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告会社が運送業を営み、被告進藤がその代表者であることは当事者間に争いなく、<証拠>を綜合すると、被告会社は被告進藤の家族だけで資本金一五〇万円で設立され、自動車三台をもつて雪印乳業、参松工業の運搬を引き受けていたこと、被告長尾は被告会社の自動車運転手として雇傭され右業務に従事していたこと、本件自動車は「三号車」と呼ばれ、主として被告長尾がその専用運転手となつていたこと、被告会社における自動車の保管や運行管理は被告進藤が掌理し、中でも自動車の鍵は事務室の一定場所に保管し、運転手が被告進藤から仕事の指図を受けるとともにその鍵も同被告の許諾のもとに使用していたが、たまたま本件当日被告長尾は遊びに行くのに本件自動車を使用しようとし、勝手知つた事務室から同被告に無断で持ち出したことを認めることができる。
右事実から考えると、被告長尾の本件事故当時の運転は同被告が専用自動車を使用したのであるから外形的には職務執行中と見なければならない。しかも被告進藤の地位職務は代理監督者ということができる。単に鍵を保管し、無断使用を禁ずる規定を設けているということだけでは選任監督上の無過失というわけにはいかない。
従つて、被告会社は民法第七一五条第一項により、被告進藤は同条第二項により被告長尾が原告に加えた損害を賠償しなければならない。(富田郁郎)