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福岡地方裁判所 昭和44年(手ワ)125号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕<証拠>によると、訴外小嶋卯佐吉は、昭和四〇年二月、被告会社の代表取締役に就任して以来、その職にあつたが、昭和四一年七月二二日、右代表取締役を辞任し、同年八月一日、その辞任登記が経由されたことを認めることができ<証拠及び証拠判断略>によると、原告主張の前記一の、被告会社代表取締役小嶋卯佐吉による訴外西日本ブロック建設株式会社に対する本件(一)ないし(四)各手形振出しの事実を認めることができ、これに反する(本件(一)手形の振出年月日につき)証人小嶋卯佐吉の証言は、前記の各証拠に照らして、採用することはできない。

もつとも、被告は、前記答弁ならびに主張四の(一)のとおり、本件(一)ないし(四)各手形は、いずれも訴外小嶋卯佐吉が被告会社の代表取締役を退任した後にほしいままに作成交付した振出偽造の偽造手形であると主張しているが、その主張事実を認めさせ、前認定を左右するに足りる証拠はない。

しこうして、<証拠>によると、原告主張の前記二、三の各事実を認めることができ(これらを動かすに足りる証拠はない。)、原告主張の前記四、五の各事実は、いずれも、当事者間に争いがない。

ところで、被告は、前記答弁ならびに主張四の(二)のとおり主張する。そして、<証拠>によると、訴外小嶋卯佐吉は、昭和四〇年一二月二五日の被告会社の取締役会の決議により、本件(一)ないし(四)各手形振出し当時、被告会社のために約束手形などを振り出す権限を有してはいなかつたことを認めることができ、これを覆えずに足りる証拠はない。しかし、前認定事実に、<証拠>を総合すると、訴外西日本ブロック建設株式会社ならびに原告は、いずれも、当時、訴外小嶋卯佐吉が被告会社のために本件(一)ないし(四)各手形を振り出したものと考え、同訴外人に同各手形振出しの権限がないこと(代表権に制限が加えられていること)を知らなかつたことを認めることができ、<証拠略>をもつてしては、右認定を左右するに足りないし、他にその認定を動かすべき証拠はない。

以上の各事実によると、本件(一)ないし(四)各手形がいずれも被告会社代表取締役小嶋卯佐吉によつて振り出されたものである以上、同代表取締役に右各手形振出しの権限がなかつた場合でも、また、同各手形がいずれも右代表取締役の利益を図る目的のもとに振り出されたものであつたとしても、商法第二六一条第三項、第七八条第二項、民法第五四条の各規定(要するに、株式会社の代表取締役の代表権に加えた制限は、これをもつて善意の第三者に対抗することはできない。)にもとづき、被告会社は、本件(一)ないし(四)各手形の善意(過失の有無は問わない。)の所持人である原告に対し、同各手形上の振出人としての義務を負うものと解するのが相当である。

そうすると、被告は、原告に対し、本件(一)ないし(四)各手形金の合算額であることが計算上明らかな金三一〇万円および本件(一)手形金一二〇万円に対するその支払期日である昭和四一年七月三一日から、本件(二)手形金八〇万円に対するその支払期日である同年八月一五日から、本件(三)手形金九〇万円に対するその支払期日である同年八月三一日から、本件(四)手形金二〇万円に対するその支払期日である同年九月三〇日から各完済までいずれも手形法所定の年六分の率による満期以後の利息を支払うべき義務があるものというべきであるから、被告に対し右各金員の支払いを求める原告の本訴請求は、正当としてこれを認容すべきである。

(桑原宗朝)

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