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福岡地方裁判所 昭和46年(わ)223号 判決 1972年3月13日

本籍並びに住居

福岡県飯塚市吉原町五四六の二

医師

豊永敬一郎

明治三六年五月二〇日生

所得税法違反被告事件

検察官谷川勝幸出席

主文

被告人を懲役一〇月および罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は、全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、飯塚市吉原町一番八号で豊永医院を、飯塚市鶴三緒一四五二番地の二において飯塚保養院(精神科)を経営していたものであるが、所得税を免れる目的をもつて、

第一、昭和四三年分の事業所得金額が六四九八万六三七六円、雑所得金額が二九万二五〇〇円、譲渡所得金額が二二四万〇六〇八円で、総所得金額が六七五一万九四八四円であり、これに対する所得税額が三二九二万七五〇〇円であるにもかかわらず、診療収入金の一部を除外し、また被告人の長男豊永文敬が経営する豊永病院の薬品仕入の一部を豊永医院、飯塚保養院に付替えるなどして経費を架空に計上する等の不正行為により、その所得を秘匿したうえ、被告人の昭和四三年分の所得税の申告として昭和四四年三月一〇日飯塚税務署で、同署長に対し、事業所得金額が二八一三万六七二〇円、譲渡所得金額が二二四万〇六〇八円、総所得金額が三〇三七万七三二八円であり、これに対する所得税額が七三一万五〇〇〇円である旨の虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて正当な所得税額との差額二五六一万二五〇〇円の所得税を免れ、

第二、昭和四四年分の事業所得金額が八五〇九万七一〇九円、不動所得金額が一六万五六〇〇円、雑所得金額が三万〇〇〇〇円、譲渡所得欠損金額が二万六二一三円で、総所得金額が八五二六万六四九六円であり、これに対する所得税額が四五七五万三一〇〇円であるにもかかわらず、前同様の不正行為により、その所得を秘匿したうえ、被告人の昭和四四年分の所得税の申告として昭和四五年三月一四日飯塚税務署で、同署長に対し、事業所得金額が二八六四万七二二六円、不動産所得金額が一六万五六〇〇円、譲渡所得欠損金額が二万六二一三円、総所得金額が六〇七万一八〇〇円である旨の虚偽記載した所得税確定申告書を提出し、よつて正当な所得税額と右申告税額との差額三九六八万一三〇〇円の所得税を免れたものである。

(証拠の標目)

判示の各事実につき

(ただし、括孤内に「第一」とあるのは、その証拠が判示第一の事実に、同「第二」とあるのは、その証拠が判示第二の事実に対する証拠にとどまることを示す。次にアラビア数字は検察官請求証拠目録(一)記載の該当の請求番号を示す。)

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書二通

一、被告人に対する収税官吏の質問てん末書一〇通

一、被告人作成の収税官吏あて確認書四通

一、被告人ら作成の収税官吏あて上申書九通(141、143から147、149、151、152のもの)

一、収税官吏作成の告発書類一冊

一、飯塚税務署長作成の昭和四三年分の所得税確定申告書謄本

(第一)

一、飯塚税務署長作成の昭和四四年分の所得税の確定申告書謄本(第二)

一、次の者らの検察官に対する供述調書

森川ルミエ 江藤常三郎 永田正治

一、次の者らに対する収税官吏の質問てん末書

豊永フジエ(三通) 豊永文敬 豊永武盛 長野耕子(二通) 森川ルミエ(三通) 江藤常三郎(二通) 永田正治(三通) 楸トミエ 丸山好子 池田宏二朗(二通) 村瀬陽一(二通) 岡崎寿広 桑名健二(二通) 大西武(二通) 小野和英(二通、第二) 村田有明 花田義之 栗原又一 畑瀬武七 古賀盛雄 川越重男 森志津子 中沢靖(二通) 川上良之助

一、次の者ら作成の収税官吏あて上申書

豊永フジエら(38のもの、第一) 豊永フジエら(39のもの) 豊永文敬 長野耕子 村瀬陽一 岡崎寿広 桑名健二 大西武 小野和英 村田有明 村田有明ら(87のもの、第一) 操上義忠(二通) 中島初美ら(93のもの) 平野敏恵ら(94のもの) 洞太七郎 藤尾保晴ら(83のもの) 合沢元吉ら(103のもの) 森良子(二通)西本定信ら(102のもの、第二) 黒杭隆爾ら(95のもの) 添田美智枝ら(104のもの、第二) 平川博ら(116、117のもの)

一、次の者ら作成の答申書

吉増浩 徳重京ら(80のもの) 富安渡 花田義之ら(88のもの) 江藤達雄(第一)

一、次の者ら作成の証明書

八田正由ら(121、122のもの) 佐々木博幸(129のもの)

一、長野耕子作成の現金在高および生命保険証券確認書

一、押収してある

日記簿六綴(昭和四六年押第二一六号の1から6、第二)

診療簿一二綴(同号の7から18、第一)

診療簿二四綴(同号の19から42、第二)

メモ一束(同号の43)

患者用出納帳一冊(同号の44)

給料計算表一冊(同号の45、第一)

領収証綴二綴(同号の46、47、第二)

四三年元帳(肛門科)一冊(同号の48、第一)

四四年給料計算表一綴(同号の49、第二)

メモ帳一冊(同号の50)

銀行労災消防関係一綴(同号の51)

税務関係申告書一綴(同号の52、第二)

税務関係申告書一綴(同号の53、第一)

源泉徴収簿一綴(同号の55、第一)

源泉徴収簿一綴(同号の56、第二)

請求書綴一綴(同号の57、第一)

賞与支給控(同号の58)

金銭出納帳一冊(同号の59、第一)

窓口現金収入簿六冊(同号の60から65、第一)

元帳二冊(同号の66、67、第二)

精算表一冊(同号の68、第二)

診療簿一二綴(同号の69から80、第一)

総勘定元帳(同号の81)

現金出納簿一冊(同号の82、第一)

現金出納簿一冊(同号の83、第二)

領所証綴六綴(同号の84から89、第一)

領収証綴三綴(同号の90から92、第二)

得意先元帳二冊(同号の93、94)

売掛台帳一冊(同号の95、第一)

売掛台帳一冊(同号の96)

売掛台帳一冊(同号の97、第二)

売掛台帳二冊(同号の98、99)

売掛帳一冊(同号の100)

売掛伝票一綴(同号の101、第一)

売掛伝票一綴(同号の102)

売掛伝票一綴(同号の103、第二)

売掛伝票一綴(同号の104、第一)

売掛伝票一綴(同号の105)

売掛伝票一綴(同号の106、第二)

物品受領票三綴(同号の107、108、109)

顧客台帳二綴(同号の110、111)

受領書三綴(同号の112、113、114)

受領者伝票三綴(同号の115、116、117、第一)

副納品書三綴(同号の118、119、120)

売掛伝票総括票二綴(同号の121、122)

領収書控一冊(同号の123、第一)

(法令の適用)

被告人の判示所為は、各所得税法第二三八条第一項にあたるので、所定の懲役刑と罰金刑とを併科することとする以上各罪は刑法第四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、刑法第四七条本文、第一〇条により犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については、刑法第四八条第二項により、判示各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役一〇月および罰金八〇〇万円に処する。右罰金を完納することができないときは、刑法第一八条により金一〇万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。情状により刑法第二五条第一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。訴訟費用は、刑事訴訟法第一八一条第一項本文により被告人に負担させることとする。よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田国雄)

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