福岡地方裁判所 昭和50年(わ)28号 判決 1975年3月17日
本籍
福岡県朝倉郡宝珠山村大字宝珠山九番地
住居
同県北九州市八幡西区永犬丸五九八番地の一
会社役員
安岡恒己
明治三六年七月四日生
所得税法違反被告事件
検察官
加納真澄 出席
主文
被告人を懲役六月および罰金七〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、福岡県北九州市八幡西区大字永犬丸五九八番地の一において、安岡工務店などの商号を用いて土地の売買ならびに住宅の建売等の営業を営んでいたものであるが、所得税を免れようと企て、
第一 昭和四六年分の真実の所得税額は四、九〇〇万一、一四二円で、これに対する所得税額は二、六一二万五、八〇〇円であつたのにかかわらず、公地帳簿上、売上げの一部を除外し、また、架空の外注費を支払つたように経理して、これらを簿外預金とするなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四七年三月一五白、同市八幡東区西本町四丁目一四番一六号所在の八幡税務署において、同税務署長に対し、昭和四六年分の所得金額は、一、三二二万五、七九八円で、これに対する所得税額は四六一万九、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の所得税額二、一五〇万六、五〇〇円を免れ、
第二 昭和四七年分の真実の所得金額は四、九七三万三、七四六円で、これに対する所得税額は二、六三四万六、〇〇〇円であつたのにかかわらず、公表帳簿上、売上げの一部を除外して、これを簿外預金とするなどの不正の手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四八年三月一五日、前記八幡税務署において、同税務署長に対し、昭和四七年分の所得金額は一、七一七万七、四五七円で、これに対する所得税額が六五五万三、三〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により同年分の所得税額一、九七九万二、七〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判事全事実につき、
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書七通および検察官に対する供述調書
一、被告人作成の「預金の確認書」と題する書面
一、被告人外一名作成の上申書二通
一、証人安岡照夫の当公判廷における供述
一、安岡照夫(二通)、橋本治郎衛の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、鶴茂、亀川登(二通)、才所克己、岸政義外一名各作成の上申書
一、鶴アヤ子作成の証明書
一、検察事務官作成の捜査報告書
一、国税査察官松本正男作成の調査報告書
一、押収してある大学ノート一冊(昭和四〇年押第二七号の九)および所得税青色申告決算書綴一綴(同号の一五)
判示第一の事実につき
一、佐藤若男、中園武春、立野久雄、安部正臣、藤岡孝一、村上守、梅川孝三、山本文生、社川重美、本田初一郎、山野義一の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、大沢照市、吉武明芳、馬場末人(二通)、四之宮学、刀根一衛、佐藤玉喜、岩男要一、石橋寿昭、浜本芳孝、荒木華美、安部正臣、藤岡孝一、別府光典、阿比留治己各作成の上申書
一、大沢照市、瀬藤洋児各作成の証明書
一、押収してある不動産売買契約証書一綴(前同号の一)、総勘定元帳一冊(同号の三)、金銭出納帳一冊(同号の五)、安岡工務店決算書類綴一綴(同号の一一)、四六年分所得税確定申告書一綴(同号の一三)および大学ノート一冊(同号の一六)
判示第二の事実につき
一、安岡辰男、岸政義(二通)、山本官一(二通)、瀬戸誠、阿辺徹子、西田通人、和田満洲子、石井研二、山崎宏美、豊増元美、河野正雄、須崎義光、高倉留造の大蔵事務官に対する各質問てん末書
一、山本官一外一名、村上義亮、荒金治司、江崎正行、瀬戸誠、阿辺安生外一名、西田通人、藤山太郎、谷口八郎、富田信義、宗広たかる、柴崎喜久男、山崎宏美、内村邦雄、起定二男、豊増元美、河野正雄、須崎義光、赤司猛、大野公夫各作成の上申書
一、村上義亮外一人、仮屋隆二、香月軍治、三原幹夫各作成の証明書
一、押収してある請求書控一綴(前同号の二)、総勘定元帳一冊(同号の四)、金銭出納帳、銀行勘定帳一綴(同号の六)、工事契約書一綴(同号の七)、不動産売買契約書一綴(同号の八)、大学ノート一冊(同号の一〇)、安岡工務店決算書類綴一綴(同号の一二)および四七年分所得税確定申告書一綴(同号の一四)
(法令の適用)
一、判示行為 判事第一および第二の各所為につき、所得税法第二三八条
一、刑の併科 懲役刑および罰金刑の併科
一、併合罪加重 刑法第四五条前段、第四七条本文、第一〇条(懲役刑につき犯情の重い判示第一の罪の刑に加重)、同法第四八条第一項、第二項(罰金刑合算)
一、労役場留置 刑法第一八条
一、刑の執行猶予 懲役刑につき、刑法第二五条第一項
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 岡田良雄)