大判例

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福岡地方裁判所 昭和57年(ワ)184号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

(不法行為について)

一訴外中川が、昭和五五年七月二九日、被告から宝石を代金一三五万円で購入したとして訴外会社にそのうちの一三〇万円を被告に立替払することを申し込み、訴外会社はこれを承諾して遅くとも同年八月一一日には右一三〇万円を被告に支払つたが、右宝石の売買契約が架空のものであつたことは当事者間に争いがない。

二<証拠>並びに弁論の全趣旨によると、中川は、昭和五三年四月ころ金三〇万円、昭和五三年七月ころ金一〇万円をいずれも被告から借り受け、一部弁済もあつたものの昭和五五年七月二九日現在では利息(利息制限法所定の利率を超える利率によるもの)も含めると相当額の消費貸借上の債務を有していたこと、また、被告は中川及びその夫中川清重の営む衣料品店に衣料品を販売しており、昭和五五年七月二九日現在では数十万円の売掛残があつたこと、そこで被告は、訴外会社との間の加盟店契約を利用して、中川が被告からその販売している商品を買い受けたとして中川に訴外会社にその代金の立替金払を依頼するクレジット契約の申し込みをさせて、これを締結させて、訴外会社から右商品の代金の立替払として金員の交付を受けることで右各債権の回収をはかろうとしたこと、そして、被告は中川に、中川が被告から衣料品を購入したこととして訴外会社にクレジット契約の申込をさせようとしたが、訴外会社の従業員から衣料品店を営む者に衣料品を販売した場合は「卸し」とみなされて訴外会社はクレジット契約の締結に応じない旨告げられて、改めて宝石を一三五万円で購入したこととして中川が訴外会社にそのうちの一三〇万円の立替支払を被告を通じて申し込み、訴外会社は中川及び被告にその契約内容を確認して右宝石の売買があつたものと誤信して右申し込みを承諾して右一三〇万円を被告に支払つたこと、以上の事実が認められ、被告本人尋問の結果中右認定に反する部分は採用しない。

三被告は、訴外会社の担当者に対し中川に販売した商品は衣類であつてその代金の立替金支払の申込みである旨告げたところ、右担当者の指示により宝石の販売代金として中川をして訴外会社に立替払を申し込ませたのであるから欺罔の意思はなく、また訴外会社も欺罔されなかつた旨主張し、被告本人尋問の結果にはこれに沿うかの如き部分がある。

しかしながら、右部分自体必ずしも採用し難いのみならず、これを採用するとしても、前認定のとおり被告が有していた債権は消費借上の債権がかなりな部分を占めるものであるから、右主張もその前提を欠くものである。すなわち、成立に争いのない甲第四号証及び弁論の全趣旨によると、訴外会社が加盟店契約及びクレジット契約に基づき加盟店に対し立替金を支払うのは、加盟店契約において指定された特定の商品を加盟店が顧客に販売し、その商品の販売代金につき顧客が立替払を希望してそれを訴外会社に申し込んだ場合で、訴外会社が右商品の売買の事実及びその契約内容を確認し、右顧客の信用度を調査して、これを承諾したときに限ることが認められ、単に「卸し」的性質の生ずる商品代金とは異なり顧客(中川)の加盟店(被告)に対する消費貸借上の債務につき立替金払をなすこと及び訴外会社の担当者がこれを承知の上でクレジット契約の申込みをさせることは到底考えられず、そうであるからこそ被告も右主張事実によつても衣料品代金の立替払を申し込みである旨告げたと考えられる。したがつて、被告本人尋問の結果中の前記部分を採用するとしても右三の認定を何ら左右するものではない。

(水上敏)

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