福岡地方裁判所 昭和59年(わ)117号 判決 1984年5月28日
裁判所書記官
梅崎英輔
本籍
大分県宇佐市大字岩崎四五一番地
住居
福岡県北九州市八幡西区大字市瀬七九一番地平野荘一〇三号
料理飲食業
末宗高虎
昭和二六年六月五日生
所得税法違反被告事件
検察官
佐藤利男 出席
主文
被告人を懲役六月及び罰金五〇〇万円に処する。
右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。
本裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は、太平実業株式会社が福岡県北九州市八幡西区黒崎一丁目九番一二号において経営していたキャバレー「水車」及びサロン「歌磨」の営業を譲り受けて、同所において、昭和五六年四月一五日ころから右キャバレー「水車」を、また同年五月一日ころから右サロン「歌磨」を、更に、新たに同五七年七月三日ころから同区黒崎二丁目一番一九号においてパブ「ロングラン」の名称で、それぞれ個人で飲食店を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外し、簿外預金を蓄積する等の方法により所得を秘匿した上
第一 右キャバレー「水車」及びサロン「歌磨」の経営により、昭和五六年分の実際所得金額が二、〇二一万六、五二六円あったのにかかわらず、右飲食店を太平実業株式会社が経営していたもののように装って、右法人名義で過少の法人税の確定申告をする一方、自己の所得税確定申告については所轄税務署長へその提出期限内に右申告書を提出せず、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額七一八万一、一〇〇円を免れ
第二 右キャバレー「水車」、サロン「歌磨」及びパブ「ロングラン」の経営により昭和五七年分の実際所得金額が三、二三七万一、四八四円あったのにかかわらず、右キャバレー「水車」及びサロン「歌磨」分の所得については前同様太平実業株式会社名義で過少の法人税の確定申告をする一方、右パブ「ロングラン」分の所得については同五八年三月一五日、同市八幡東区西本町四丁目一八番一六号所在の所轄八幡税務署において、同税務署長に対し、昭和五七年分の欠損金額が七〇万二、一五四円でこれに対する所得税額はない旨虚偽の所得税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同年分の正規の所得税額一、三八六万三、四〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示事実全部につき
一 被告人の当公判廷における供述
一 被告人の検察官に対する供述調書三通
一 被告人の大蔵事務官に対する質問てん末書三通
一 被告人作成の上申書五通(検三二ないし三四、三六、三七号)
一 被告人外一名作成の上申書(検三一号)
一 川畑正子の検察官に対する供述調書
一 川畑正子の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 李容学の検察官に対する供述調書二通
一 鷹元昭司の大蔵事務官に対する質問てん末書
一 福岡国税局大蔵事務官作成の査察官調査書五通(検二一ないし二五号)
一 佐賀銀行八幡支店長作成の証明書(検一九号)
一 北九州八幡信用金庫黒崎支店長作成の証明書(検二〇号)
一 八幡税務署長作成の申告状況の回答書(検六号)
一 押収してある総勘定元帳一綴(昭和五九年押第八二号の二)、同給与台帳一綴(同押号の四)、同売上ノート一冊(同押号の七)、同能率ダイアリー一冊(同押号の八)、同昭和五六年八月一日~同五七年七月三一日事業年度分の法人税確定申告書一枚(同押号の一〇)
判示第一の事実につき
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書(検二号)」「同説明資料(検三号)」
一 押収してある総勘定元帳一綴(前同押号の一)、同昭和五五年八月一日~同五六年七月三一日事業年度分の法人税確定申告書一枚(同押号の九)
判示第二の事実につき
一 被告人作成の上申書(検三五号)
一 大蔵事務官作成の「脱税額計算書(検四号)」、「同説明資料(検五号)」
一 押収してある総勘定元帳一綴(前同押号の三)、同個人別出勤売上実績表一綴(同押号の五)、同サロン・ロングラン関係書類リスト表一綴(同押号の六)、同五七年分の所得税の確定申告書(同押号の一一)
(法令の適用)
罰条
判示第一、第二の各所為につき所得税法二三八条(いずれも懲役刑と罰金刑を併科)
併合罪の処理
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条、四八条二項(懲役刑については犯情の重いと認める判示第二の罪の刑に加重し、罰金刑については各罪所定の罰金額を合算)
換刑留置
同法一八条
懲役刑の執行猶予
同法二五条一項
訴訟費用
刑訴法一八一条一項本文(全部被告人に負担させる。)
よって、主文のとおり判決する。
(裁判官 池田久次)