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福岡地方裁判所 昭和61年(行ウ)13号 判決 1988年2月23日

北九州市八幡西区相生町一三番一号

原告

倉智知宏

同所

倉智早知子

同市同区相生町一三番二五号

善明ナミ子

同所

善明智

同所

善明小夜子

福岡県遠賀郡芦屋町浜口町八番四四号

安高光子

北九州市八幡西区竹末町二丁目一番二〇号

尾籠和美

右原告ら訴訟代理人弁護士

多加喜悦男

北九州市八幡西区西本町四丁目一四番一六号

被告

八幡税務署長

北嶋喜一

右指定代理人

永松健幹

高木功

森敏明

佐藤治彦

石橋一男

主文

原告らの請求をいずれも破棄する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告が、昭和五九年八月七日月で原告善明ナミ子、同善明智、同善明小夜子、同倉智早知子、同安高光子及び同尾籠和美に対してなした、善明基の昭和五七年分所得税に関する更正処分中分離長期譲渡所得金額一六九六万三〇〇〇円及び税学三三九万二六〇〇円をそれぞれ超える部分並びに右所得税に関する過少申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

2  被告が昭和五九年八月七日月で原告倉智知宏、倉智早知子及び尾籠和美の昭和五七年分所得税に関してなした更正処分及び申告加算税賦課決定をいずれも取り消す。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  善明基(以下「基」という。)原告倉智知宏(以下「原告知宏」という。)、原告倉智早知子(以下「原告早知子」という。)及び原告尾籠和美(以下「原告和美」という。)は、昭和五八年三月一五日、昭和五七年分所得税につき、別表(一)のとおり確定申告をした。

2  基は昭和五九年三月五日に死亡し、原告早知子、同善明ナミ子(以下「原告ナミ子」という。)、同善明智(以下「原告智」という。)、同善明小夜子(以下「原告小夜子」という。、同安高光子(以下「原告光子」という。)及び同和美は、いずれも基の相続人である。

3  被告は、昭和五九年八月七日月で、原告らに対し、別表(二)のとおり更正処分及び過少申告加算税賦課処分決定をした。

4  しかし、右の更正処分(以下「本件更正」という。)中、基の所得について同人の相続人たる原告早知子、同ナミ子、同智、同小夜子、同光子及び同和美に対してなされたもののうち分離長期譲渡所得の一六九六万三〇〇〇円を超える部分並びに原告知宏、同早知子及び同和美の所得について同人らに対してなされたものは、いずれも所得金額を過大に認定したものであって違法である。

そして、右過少申告加算税賦課決定(以下「本件賦課決定」という。)も、所得を過大に認定した本件更正を前提とするものであるから、違法である。

よって、原告らは、本件更正中、基の所得について原告早知子、同ナミコ、同智、同小夜子、同光子及び同和美に対してなされたもののうち分離長期譲渡所得の一六九六万三〇〇〇円を超える部分並びに原告知宏、同早知子及び同和美の所得について同人らに対してなされたもの並びに本件賦課決定の取消しを求める。

二  請求原因に対する認否

請求原因1ないし3の各事実は認め、同4は争う。

三  抗弁

1  基、原告知宏、同早知子及び同和美の昭和五七年の分離長期譲渡所得は別表(二)のとおおりである。

2  右の分離長期譲渡所得の原因となった事実は以下のとおりである。

(一) 基は別紙物件目録1、3、5記載の土地につき、原告知宏、同早知子及び同和美は別紙物件目録2、4記載の土地につき、それぞれ別表(三)のとおり、共有持分を有していた。

(二) 右四名を含む右各土地(以下、これらを一括して「本件土地」という。)の共有者ら(以下「譲渡人ら」という。)は、善明敏夫(以下「敏夫」という。)を代理人として、昭和五六年五月一日(仮にそうでないとしても、同年一二月二八日)、大英産業株式会社「以下「大英」という。)との間で、本件土地を、総額二億三四六〇万円で売り渡す旨の契約をした上、大英から、右売買契約の手付金ないし内金として、昭和五六年五月一日及び同年一二月二八日に、各金五〇〇〇万円の、昭和五七年二月二日に残金の各支払を受け、同日、大英に対し、本件土地の所有権移転登記手続をした。

3  しかるに、原告らが、昭和五七年分の確定申告において、別表(一)のとおりの申告をしたので、被告は本件更正及び賦課決定に及んだものであり、右各処分に原告主張の違法はない。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は否認する。

2(一)  同(一)の事実は認める。

(二)  同2(二)のうち、譲渡人らが、敏夫を代理人として大英との間で本件土地を総額二億三四六〇万円で売り渡す旨の契約を締結した上、昭和五七年二月二日までに大英から右売買代金の支払を受け、同日大英に対し本件土地につき所有権移転登記手続をしたことは認めるが、右売買契約締結の日及び手付金、内金受領の事実は否認する。再抗弁で述べるとおり、右売買契約は昭和五七年一月一一日に結ばれたものである。なお、被告主張の金銭交付ないし支払いの事実は認めるが、昭和五六年五月一日及び同年一二月二八日に交付された金員は被告主張のような手付金ないし内金ではなく、売買契約締結準備のための預託金である。

3  同3の事実中、申告並びに本件更正及び賦課決定があつた事実は認め、適法との主張は争う。

五  再抗弁

本件土地の譲渡は、昭和五八年法律第一一号による改正前の租税特別措置法(以下「措置法」という。)三四条の二に定める特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除の要件のうち、同条二項三号に該当し、譲渡人らの特別控除の要件のうち、同条二項三号に該当し、譲渡人らには各々一五〇〇万円の特別控除が認められるべきものであるから、基、原告知宏、同早知子及び同和美の昭和五七年分分離長期譲渡所得はそれぞれ申告のとおりである。すなわち、

1  本件土地は、都市計画法四条二項に規定する都市計画区域内に所存する一団のものであり、かつ、国土利用計画法(以下「国計法」という。)一二条一項の規定による規制区域には指定されていなかった。その総面積は約一・五八ヘクタールである。

2  大英は、本件土地を、住宅建設の用に供する目的で行われる一団の住宅構造事業の用に供するために買い受けたものであり、また、大英は、本件土地を造成した上で公募の方法で分譲する予定であつた。

なお、仮に大英に右のような意図がなかつたとしても、このような買主の主観的事情により、善意の売主の地位が大きく左右されるべきではなく、本件については、譲渡人らは大英に造成の意志あるものと過失なく信じたのであるから、やはり措置法三四条の二の適用を認められるべきである。

3  本件土地の売買契約は、大英から北九州市長に対して国計法二三条及び四四条に基づき同法一五条一項に定める事項の届出がなされ、これに対し、北九州市長から国土庁通達に基づき同法二四条の勧告をしない旨の通知がなされたのちに結ばれた。すなわち、

(一) 大英は、北九州市長に対し、昭和五六年一一月六日に、買主を大英ほか七名として、右の届出をし、これに対して、北九州市長は、同年一二月一七日に右勧告をしない旨の通知をした。次いで、大英は、同年一二月二六日、買主を大英単独としたほかは右の同内容の届出をし、これに対して、北九州市長は、実質的真理をすることなく、昭和五七年一月七日、やはり、勧告をしない旨の通知をした。

しかして、右二回の届出は実質的に同一のものであるから、本件土地の売買について、勧告をしない旨の通知であつた日は、昭和五六年一二月一七日とみるべきである。

(二) 譲渡人らと大英との間の本件土地の売買契約は昭和五七年一月一一日に結ばれた。

被告は、譲渡人らが、敏夫を代理人として、大英から右売買契約締結の手付金ないし内金として、昭和五六年五月一日及び同年一二月二八日に各金五〇〇〇万円の支払を受けたとして、右売買契約は昭和五六年五月(仮にそうでないとしても同年一二月二八日)に締結された旨主張するが、右各金員契約締結準備のための預託金として交付されたものにぎず、その後契約締結の運びとなった昭和五七年一月一一日に売買代金の一部に充当されたものである。

以上のとおり、譲渡人らと大英との間の本件土地売買は、措置法三四条の二第二項三号の要件を満たすものであるから、基、原告知宏、同早知子及び同和美については、各々一五〇〇万円の特別措置が認められるべきである。

六  再抗弁に対する否認

1  再抗弁1の事実は認める。

2  同2の前段事実は否認する。大英が造成の目的を有しなかったことは、大英が北九州市長から都市計画法二九条に定める許可を受けていない事実から明らかである。また、措置法三四条の二の適用については、同法の趣旨等に照らし、宅地の造成及び公募による分譲という結果の将来が必要であるところ、大英は、本件土地を、造成することなく、昭和五九年一一月二六日、株式会社九州エレクトロニクスシステムに売却しているのであるから、譲渡人らに同条の適用はない。

同2後段のうち、譲渡人らが大英に造成の意思あるものと過失なく信じたとの事実は否認し、その余は争う。右に述べたとおり、措置法三四条の二の適用を受けるためには、造成及び分譲という結果の招来が必要である。なお、譲渡人らは、昭和五八年二月二六日に、大英との間で、本件土地につき、特別控除の適用がないことを確認する旨の文書を交わしている。

3  同3の事実は否認する。

(一) 同3(一)前段の事実は認め、後段の主張は争う。買主は売買契約の重要な要素であり、これを異にする届出を実質的に同一ということはできない。

(二) 同3(二)の事実は否認する。契約締結の日は、抗弁2(二)記載のとおり、譲渡人らが手付金ないし内金の交付を受けた昭和五六年五月一日(仮にそうでないとしても同年一二月二八日)である。

なお、仮に、大英が昭和五六年五月一日及び同年一二月二八日に交付した金員が売買契約の成立を証する手付金等であるとまでは評価し得ないとしても右金員の授受により少なくとも契約締結に向けて相互に拘束されるに至つた、すなわち少なくとも売買予約が成立したことは明らかであるところ、国計法が規制の対象としている「土地売買等の契約」には予約も含まれる(同法一四条一項参照)から、本件土地の取引が同法上の無届取引に該当することに変わりはない。

第三証拠

一  原告ら

1  甲第一ないし第七号証の各一ないし三、第八ないし第一〇号証の各一、二、第一一、第一二号証、第一三号証の一ないし三、第一四号証の一ないし四、第一五ないし第一七号証、第一八号証の一ないし九、第一九号証の一ないし三、第二〇ないし第二二号証、第二三号証の一、二

2  原告倉智早知子本人

3  乙第八号証の二、第一四ないし第二一号証、第二四号証の成立はいずれも不知。第八号証の二及び第二四号証については原本の存在及びその成立も不知、第一四ないし第二一号証については原本の存在は認め、その成立は不知。その余の乙号各証の成立はいずれも認める。第六、第七号証、第八号証の一、第二二号証及び第二五号証については原本の存在及びその成立も認める。

二  被告

1  乙第一ないし第七号証、第八号証の一、二、第九ないし第一二号証の各一ないし三、第一三ないし第二二号証、第二三号証の一ないし七、第二四、第二五号証、第二六号証の一ないし五、第二七、第二八号証

2  証人山口俊昭

3  甲第一七号証中郵便官署作成部分の成立は認め、その余の部分の成立は不知。第二〇号証の成立は不知る。原本の存在及びその成立も不知。その余の甲号各証の成立はいずれも認める。第一〇号の一、二、第一一、第一五号証、第一八号証の五ないし九については、原本の存在及びその成立も認める。

理由

一  請求原因について

基、原告知宏、同早知子及び同和美が、別表(一)のとおり、昭和五七年分所得につき確定申告をしたこと、基が昭和五九年三月五日に死亡し、原告早知子、同ナミ子、同智、同小夜子、同光子及び同和美がいずれも同人の相続人であること並びに被告が本件更正処分及び賦課決定をしたことは、いずれも当事者間に争いがない。

二  抗弁について

基、原告知宏、同早知子及び同和美が、本件土地につき、別表(三)のとおり、共有持分を有していたこと、その時期はともかく、譲渡人らが敏夫を代理人として最終的に大英との間で本件土地を総額二億三四六〇万円で売り渡す旨の契約を締結した上、昭和五七年二月二日までに大英から右売買代金全額の支払を受け、同日大英に対し本件土地につき所有権移転登記手続をしたこと、この結果、基及び右原告らの昭和五七年の所得につき別表(二)のとおりの分離長期譲渡所得が生じたことはいずれも当事者間に争いがない。

三  再抗弁について

原告らは、本件土地の譲渡が措置法三四条の二所定の特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除の要件のうち、同条二項三号に該当する旨主張するので判断する。

再抗弁1の事実は当事者間に争いがない。

そこで、以下、同号の要件のうち、本件土地の譲渡が、国土利用計画法二三条一項の規定による届出をし、かつ、同法二四条一項の勧告を受けないで買い取られる場合に該当するか(再抗弁3)について判断する。その時期はともかく、譲渡人と大英との間の本件土地の売買につき、同法二三条一項の規定による届出がされたこと、これに対し、同法二四条一項の勧告をしない旨の北九州市長による通告がされたことは当事者間に争いがない。

ところで、同法二三条三項は、右届出をした者はその届出をした日から起算して六週間を経過する日までの間、その届出に係る土地売買等の契約(予約も含む。同法一四条一項参照)を締結してはならないものとしているが、同法二四条一項の勧告をしない旨の通知(以下「不勧告の通知」という。)がされた場合には、その後(届出後六週間を経過する日までの間であつても)土地売買等の契約を締結しても差し支えないものと解される(昭和四九年一二月二四日付け四九国土利六〇号国土庁事務次官通達記第四の七の三及び昭和五〇年四月二四日付け五〇国土利第一〇二号国土庁土地局土地利用調整課長回答参照)ので、結局、右不勧告の通知がなされた後に本件土地の売買契約(及び予約がされた場合にはその予約)が締結されたのであれば、措置法三四条の二第三号にいう「国土利用計画法二四条一項の勧告を受けないで買い取られる場合」の要件が満たされることになる。

そこで進んで、右不勧告通知がされた時期と右売買契約(または予約)の成立時期との先後関係について検討するに、まず、いずれも成立に争いのない甲第一三号証及び第一九号証の各一ないし三によると、売主を譲渡人らとし売買を大英とする当事者間の本件土地の譲渡の届出につき右不勧告の通知がされたのは、昭和五七年一月七日であるが認められ、右認定に反する証拠はない(原告らは、右通知に先立つ昭和五六年一二年一七日に、買主を大英ほか七名とするほかは全く同一の内容の届出につき不勧告の通知がなされているところ、これをもって、譲渡人ら及び大英との間の本件土地の譲渡についての通知とみるべきである旨主張するが、採用し難い。)。

しかして、原告は、本件土地の売買契約は昭和五七年一月に成立したと主張するところ、なるほど、原本の存在及び成立に争いのない甲第一五号証(土地売買契約書)には、売買契約締結の日付として昭和五七年一月一一日との記載があることが認められるけれども以下に認定する事実、殊に大英から交付された金員の趣旨に照らすと、甲第一五号証の右日付の記載から本件土地の売買契約成立の日が右日付の日であるとは到底即断し難い。

かえつて、右の日付に先立つ昭和五六年五月一日及び同年一二月二八日に譲渡人らの代理人である敏夫が大英から各五〇〇〇万円、計一億円の金員を受領した事実は当事者間に争いがなく、原本の存在及びその成立に争いのない乙第六号証、いずれも成立に争いのない乙第九ないし第一二号証の各一及び第一三号証、いずれも原本の存在については争いがなく、その成立については証人山口俊昭の証言及び弁論の全趣旨によつてこれを認め得る乙第一四ないし第二〇号証並びに同証言と弁論の全趣旨を総合すると、敏夫作成の大英宛昭和五六年一二月二八日付けの一億円の領収書(乙第六号証)には、「土地代金内金として」領収した趣旨の文言の記載があり、また大英の会計伝票上同年五月一日漬けのもの(同第一四号証)には同日敏夫に交付された当初の五〇〇〇万円について「仮払金」なる旨の記載がなされているものの、同年一二月二八日付けのもの三通(同第一五、第一六号証、第一九号証)には、右五〇〇〇万円について「仮払もどり」、これと同日敏夫に交付された二回目の五〇〇〇万円合計一億円について「土地代手付」、本件土地代金総額について「土地仕入高」「買掛金」なる旨の記載がそれぞれなされていること、同じく大英の同年一二月三一日付損益計算書(同第一七号証)上借方欄に二億三四六一万一五六〇円(うち一万一五六〇円は別件の不動産取得税-同第二〇号証)を「土地仕入高」として計上し、前同日付総勘定元帳(同第一八号証)上貸方欄に本件土地に相当する二億三四六〇万円を「買掛金」として計上していること、亡基、原告知宏、同早知子、同光子及び同和美らは、昭和五六年五月八日及び同年一二月二八日に、敏夫から、同人が大英から二回に亘り受取つた上記金員合計一億円の中から計二七〇〇万円を受領しているが、右基、原告知宏、同早知子及び同和美らは、八幡税務署へ提出した昭和五八年三月一五日付譲渡所得の計算書(同第九ないし第一二号証の各一)上2の譲渡代金の受領状況を記入する欄に、それぞれ自ら進んで、敏夫から受領した前述の金員を昭和五六年五月一日、同年一二月二八日に本件土地譲渡代金の一部として受領した趣旨の記入をしていることが認められ、他方、前顕甲第一三及び第一九号証の各一ないし三及び第一五号証並びにいずれも成立に争いのない甲第一四及び第一八号証の各一ないし四によると本件土地の譲渡に関して二回に亘り、北九州市長宛てに国計法二三条一項の届出をしたうち、当初の昭和五六年一一月六日月届出書(甲第一四、第一八号証の各二、なお同届出に対応する不勧告の通知は右各号証の一記載のとおり同年一二月一七日である。)には、売主側が譲渡人ら、買主側が大英他七名と複数になつていたのが、同年一二月二六日月の二回目の届出諸(同第一三、第一九号証の各二、なお同届出に対応する不勧告の通知は右各号証の一記載のとおり、翌五七年一月七日である。では売主川は前回と同様であるが買主側は大英単独に変つていて、前述の作成日付を昭和五七年一月一一とする本件土地の売買契約書(同第一五号証)の契約当事者と完全に符合すること、以上の事実が認められるのであってこれらの事実を総合して彼此勘案すると、敏夫が昭和五六年五月一日に受取つた初回の五〇〇〇万円は手付金、同じく同年一二月二八日に受取つた二回目の五〇〇〇万円は内金の趣旨であつたと認められ、そうすると右手付金の授受のあつた同年五月一日か遅くとも買主側が大英他七名から大英単独に変つた後内金五〇〇〇万円の授受がなされた同年一二月二八日には、譲渡人らと大英との間で本件土地に関する売買契約が確定的に成立するに至つたものと認めるのが相当である。

この点に関し、原告らは敏夫が受領した当初の五〇〇〇万円が売買契約締結のための準備金である旨主張し、あるいはまた成立に争いのない乙第二七号証及び原告早知子本人の供述中には敏夫から受取つた前記手付ないし内金の一部を借入金であるとする記載及び供述部分が存するければもこれらはいずれも前記認定事実並びに成立に争いのない乙第二八号証と対比してたやすく採用し難く、他に叙上の認定を覆えして原告の主張事実を認めるに足りる証拠はない。

以上のとおりり、本件土地の譲渡は、結局のところ、北九州市長による不勧告の通知のあつた日(昭和五七年一月七日)以前になされた土地譲渡として、措置法三四条の二第二項三号の要件を満たさないこととなり、従つて、原告ら主張の再抗弁はその余の点について判断するまでもなく、失当として排斥を免れない。

してみると本件更正処分及び賦課決定処分はすべて適法有効であり、これを違法としてその取消を求める原告らの本訴請求はいずれも理由がない。

四  よって原告らの本訴請求を破棄することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民訴法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤浦照生 裁判官 倉吉敬 裁判官 久保田浩史)

別表

(善明萬)

<省略>

(倉智知宏)

<省略>

(倉智早知子)

<省略>

(尾龍和美)

<省略>

別表

(善明萬)

<省略>

(倉智知宏)

<省略>

(倉智早知子)

<省略>

(尾龍和美)

<省略>

別表

<省略>

物件目録

<省略>

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