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福岡地方裁判所久留米支部 平成3年(ワ)169号 判決 1998年6月26日

呼称

原告

氏名又は名称

川島定美

住所又は居所

福岡県山門郡三橋町棚町九九〇番地

呼称

原告

氏名又は名称

川島藤夫

住所又は居所

福岡県山門郡三橋町棚町一一七五番地

代理人弁護士

立石六男

呼称

被告

氏名又は名称

株式会社山田製作所

住所又は居所

福岡県柳川市大字有明町九〇六番地の一

呼称

被告

氏名又は名称

山田庄一

住所又は居所

福岡県柳川市大字大浜町一四八番地の一

代理人弁護士

山口親男

代理人弁護士

最所憲治

復代理人弁護士

森田孝久

主文

一  被告らは各自、原告川島定美に対し金五三四万六〇〇〇円、原告川島藤夫に対し金七一七万一二〇〇円及び各金員に対する昭和六三年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告らの被告らに対するその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを三分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実及び理由

第一  請求

一  被告らは、別紙(イ)号図面記載の構造を備える海苔集束装置、海苔束折畳装置の製造、販売及び頒布をしてはならない。

二  被告らは、被告株式会社山田製作所の本店、営業所又は工場並びに被告山田庄一方において所有・保管する前項の各機械及び装置を廃棄せよ。

三1  主位的請求

被告らは各自、原告川島定美に対し金八二八万円、原告川島藤夫に対し金五六四四万円及び各金員に対する昭和六三年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  予備的請求(一)

被告らは各自、原告川島定美に対し金一二一四万四〇〇〇円、原告川島藤夫に対し金五二五七万六〇〇〇円及び各金員に対する昭和六三年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  予備的請求(二)

被告らは各自、原告川島定美に対し金四〇四万八〇〇〇円、原告川島藤夫に対し金四一五〇万円及び各金員に対する昭和六三年二月二五日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二  事案の概要

本件は、海苔集束装置、海苔束折畳装置につき特許権あるいは実用新案権を有する原告らが、被告らに対し、被告らは右特許権等を侵害して模造品を製造・販売しているとして、(一)右模造品の製造、販売、頒布の差止、(二)右模造品の廃棄、(三)被告らの右模造品の販売により原告らに生じた損害の賠償を求めている事案である。

一  証拠により容易に認定できる事実

1(一)  原告川島定美(以下「原告定美」という。)は、別紙特許権・実用新案権表(以下「権利表」という。)番号1記載のとおり、海苔集束装置につき実用新案権を出願し、出願公告、登録を受けて、実用新案を得ている。

(二)  また、原告川島藤夫(以下「原告藤夫」という。)は、権利表番号2ないし11記載のとおり、各名称の装置(以下総称して「海苔束折畳装置」という。)につき特許権・実用新案権を出願し、各公告日に出願公告、各登録日に各登録番号をもって登録を受けて、特許・実用新案を得ている。

(三)  右各装置の特許請求の範囲は、特許公報該当欄記載のとおりである。

(甲一ないし二二)

2(一)  原告定美は、権利表番号1の実用新案権に基づき、株式会社川島製作所をして、海苔集束装置を製造・販売させており、その販売価格は一台四四万円である。

(二)  また、原告藤夫は、権利表番号2ないし11の特許権及び実用新案権に基づき、同社をして、海苔束折畳装置を製造・販売させており、その販売価格は一台八三万円である。

(甲二四、二六、甲一六五、原告川島定美本人)

3  本件各装置を製造・販売している株式会社川島製作所は、その代表取締役を原告定美、取締役を原告藤夫が務めており、その販売利益は直接原告らに帰属している。すなわち、前記原告らの各特許権・実用新案権(以下「原告らの特許権等」という。)は、原告らがそれぞれ自ら実施している。

(甲二三、原告藤夫本人)

二  主張

1  請求の原因

(一) 特許権等の侵害

(1) 被告らは、別紙(イ)号図面記載の構造を備える海苔集束装置及び海苔束折畳装置(以下「被告製品」という。)を共同して製造・販売している。

(2) 被告製品は、原告らの特許権等の考案の要旨とする構成をそのまま備え、まさにその特許・実用新案の技術的範囲に属するものである。

(3) 被告らは、このことを十分認識しながら、あえて被告製品を製造・販売・頒布して原告らの特許権等を侵害し、かつ、これを被告会社の本店、営業所又は工場並びに被告山田庄一方において所有・保管している。

(二) 被告製品の販売台数及び価格

(1) 被告らは、権利表1(権利者・原告定美)の物件の出願公告日である昭和五八年六月三日以降現在まで、被告製品のうちの海苔集束装置を、合資会社北原製缶(以下「北原製缶」という。)に一台一八万円で少なくとも九二台製造させた上、これを一台二七万円で販売した。

(2) また、被告らは、権利表2ないし11(権利者・原告藤夫)の各物件の各出願公告日以降現在まで、被告製品のうちの海苔束折畳装置を、田中弘毅に一台一〇万円で少なくとも五〇〇台製造させた上、これを一台四〇万円で販売した。

(三) 請求のまとめ

(1) 被告製品の製造等差止及び廃棄請求

原告らは、被告らに対し、特許法一〇〇条一項、実用新案法二七条一項に基づき、原告らの特許権等を侵害する行為である被告製品の製造・販売・頒布の差止を求めるとともに、特許法一〇〇条二項、一項、実用新案法二七条二項、一項に基づき、被告らが(一)の各場所において所有・保管中の被告製品の廃棄を求める。

(2) 損害賠償請求

(主位的請求)

被告らが被告製品を販売して得た利益の額は、原告らの損害の額と推定される(特許法一〇二条一項、実用新案法二九条一項)から、原告定美は被告ら各自に対し八二八万円((270,000-180,000)×92=8,280,000)、原告藤夫は被告ら各自に対し一億五〇〇〇万円((400,000-100,000)×500=150,000,000)の内金五六四四万円及び各金員に対する訴状送達の日の翌日である昭和六三年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(予備的請求(一))

仮に右請求が認められないとしても、被告らが被告製品を製造・販売しなければ、原告らの得べかりし利益は原告らの損害に当たるから、不法行為に基づき、原告定美は被告ら各自に対し、同原告の実用新案権に基づく海苔集束装置の販売利益一台一三万二〇〇〇円(同装置の販売価格四四万円の三〇パーセント)の九二台分計一二一四万四〇〇〇円、原告藤夫は被告ら各自に対し、同原告の特許権及び実用新案権に基づく海苔束折畳装置の販売利益一台二四万九〇〇〇円(同装置の販売価格八三万円の三〇パーセント)の五〇〇台分計一億二四五〇万円の内金五二五七万六〇〇〇円及び各金員に対する昭和六三年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(予備的請求(二))

仮に右各請求が認められないとしても、被告らは原告らの特許権等を故意に侵害しているから、特許法一〇二条二項、実用新案法二九条二項に基づき、原告定美は被告ら各自に対し、同原告の実用新案権に基づく海苔集束装置一台の通常実施料相当額として四万四〇〇〇円(同装置の販売価格四四万円の一〇パーセント)の九二台分計四〇四万八〇〇〇円、原告藤夫は被告ら各自に対し、同原告の特許権及び実用新案権に基づく海苔束折畳装置一台の通常実施料相当額として八万三〇〇〇円(同装置の販売価格八三万円の一〇パーセント)の五〇〇台分計四一五〇万円び各金員に対する昭和六三年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

2  答弁

(一) 請求原因(一)及び(二)のうち、被告製品の海苔集束装置に関する事実に関し、被告らが、同装置を北原製缶に九二台製造させて購入したこと、同装置を一台二七万円で販売したことは認め、その余の事実は否認する。

北原製缶から購入した際の代金は一台二七万円であるから、同装置の販売による利益は生じていない。

(二)請求原因(一)及び(二)のうち、被告製品の海苔束折畳装置に関する事実に関し、被告らが、同装置を田中弘毅に一台一〇万円で製造させて購入したこと、一台四〇万円で販売したことは認め、その余の事実は否認する。

同装置の販売に当たっては、電送配電盤が一〇万円、コンベアが二万円、設置費用が五万円、異動費用が二万円の合計一九万円の費用を要しており、これと販売価格との差額である一一万円が一台当たりの販売利益である。

また、販売台数も三〇台に過ぎない。

(三) 自白の撤回

被告製品を販売したのは、被告らではなく、山田敏治である。

被告らの前記自白は、真実に反し、かつ、錯誤に基づくものである。

第三  当裁判所の判断

一  差止及び廃棄請求について

被告らが現在も被告製品を製造・販売・頒布していることを認めるに足りる証拠はない。却って、原告藤夫本人の供述によれば、遅くとも平成七年以降は、被告らは被告製品を製造・販売していないことが認められる。また、被告らが、現在、被告製品を被告会社の本店、営業所又は工場並びに被告山田庄一方において所有・保管していると認めるに足りる的確な証拠はない。

よって、被告製品の製造・販売・頒布の差止及び被告製品の廃棄を求める請求はいずれも理由がない。

二  損害賠償請求について

1  被告製品の販売主体について

(一) 自白の撤回について

被告らは、当初、被告製品を自ら販売した旨自白したものの、その後、被告製品を販売したのは山田敏治であるとして、被告製品の販売主体に関する自白を撤回している。

(二) そこで、被告らの右自白が真実に反し、かつ、錯誤に基づくものであるかについて検討する。

証拠(甲二五、三二ないし三四、四四ないし一一〇、一一二、一二六、一二八の一ないし一〇、一三〇の一、二、一三一の一、二、一三二の一、二、一四一、一四二、一四四の一ないし八、一四五の一ないし三八、一四六、一四八ないし一五五、一五七ないし一五九、証人北原明彦、同山田敏治、同古賀徳生、同小宮明義、同松藤秋男、同堤末義、同高椋吉信)によれば、次の事実が認められる。

(1) 被告庄一は、昭和二〇年ころから、「山田製作所」の名称を用いて鉄工業を営み、海苔機械の製造・販売を行っていたが、昭和五六年八月六日に被告会社を設立し、同社の代表取締役に就任した。同社の目的は、海苔機械の製造・販売及びこれに付帯する一切の業務である。

(2) 被告会社の取締役には、被告庄一のほか、同被告の長男である山田正春、二男である山田敏治らが就任している。

(3) 被告庄一は、被告会社設立後も、手形取引を「山田製作所山田庄一」名で行ったり、「山田製作所」名で製造機械の取引を行うなど、被告庄一個人の取引形態をもって海苔機械の製造・販売を行ったり、取引上作成した受領書においては、その受取人名義を「(株)山田製作所」と記載したりしてきた。

(4) 被告製品の製造は、北原製缶及び田中弘毅に発注して購入した上、これを販売していたが、その過程においては、山田敏治が実質的な意思決定を行い、その指示を受けて被告庄一の従業員である田中幸博が具体的事務を行ってきた。また、契約書には、契約主体として「山田製作所」と表示され、また、これを販売した際の代金の一部は「山田製作所」の預金口座に振り込まれたりしていた。

(5) 被告らは、山田敏治がその製造・販売を「山田製作所」名を使用して行っていたことを承認していた。

(三) 以上の事実を総合すると、被告製品の販売主体は、被告会社であるとみることができる上、被告会社は被告庄一の個人企業にほかならず、代表者である被告庄一との間で人格が意識的に使い分けられていたとも認められないから、被告会社と被告庄一とは同一であり、山田敏治はその実務担当者であると認められる。結局、被告らは共同して被告製品の販売を行ったものと認められる。

(四) そうすると、被告らの前記自白は真実に反するとは認められず、自白の撤回は許されないから、被告製品の販売は被告らが行ったとの事実は、当事者間に争いがないものというべきである。

2  権利侵害について

証拠(甲一ないし二二、二六、一四九、一六四の一、二、証人高松利行、原告藤夫本人)及び弁論の全趣旨によれば、被告製品が原告らの特許権等を侵害していることが認められる。

3  被告製品の販売開始時期について

証拠(甲二六、一六〇の一ないし一四三、一六二の一ないし一七、原告藤夫本人)及び弁論の全趣旨によれば、被告らは、昭和六二年初頭ころから被告製品の販売を開始したことが認められる。

4  原告らの損害について

(一) 原告定美の実用新案権に基づく海苔集束装置について

(1) 一台当たりの得べかりし利益について

イ 原告藤夫本人の供述によれば、原告定美の実用新案権に基づく海苔集束装置(以下「本件海苔集束装置」という。)の販売代金四四万円につき、その九〇パーセント(控除される一〇パーセント分は値引相当額)の三〇パーセント、すなわち、その二七パーセントが同装置の販売利益であることが認められる。

ロ 次に、被告らが被告製品のうちの海苔集束装置を一台二七万円で販売したことは、当事者間に争いがないところ、原告藤夫本人の供述によれば、被告らがこのように安価で同装置を販売したため、その全販売台数分につき本件海苔集束装置の販売が阻害されたことが認められる。

ハ 以上の各事実からすると、本件海苔集束装置一台当たりの原告定美の得べかりし利益は、一一万八八〇〇円であることが認められる。

(2) 被告製品海苔集束装置の販売台数について

イ 被告らが次の各販売先に同装置を合計二〇台販売したことは、当事者間に争いがない。

▲1▼ 江崎一夫、関真澄、堤義勝、城戸一久、古賀徳生、梅崎茂春、江口貞光、江口清治、田島勝弘、小宮明義、石橋保、松藤秋男の一二名に各一台

▲2▼ 光洋産業に八台

ロ また、証拠(甲一六〇の一、五、八、一二、一六、甲一六一の三三、三六)によれば、被告らが次の各販売先に同装置を合計二五台販売したことが認められる。

▲1▼ 高田信一、河野領、松田正男、堤一郎、松藤和広の五名に各一台

▲2▼ 三洋に三台

▲3▼ 小原機械に一七台

この点、証人山田敏治は、右販売分は、北原製缶ではなく「大洋プラント」なる者から調達した機械である旨証言するが、原告藤夫本人の供述によれば、「大洋プラント」が製造に関与した海苔集束装置も本件海苔集束装置の特許権を侵害するものであることが認められるから、右販売分も不法行為を構成するとの認定を左右するとは認められない。

ハ 以上四五台の販売の事実のほかに、被告らが同装置を販売したことを認めるに足りる証拠はない。

原告らは、被告らは北原製缶から被告製品海苔集束装置を九二台購入しているから、九二台販売していることが明らかであると主張するが、仮に九二台の購入の事実があったとしても、直ちに、これを全部販売しているとまでは認められない。却って、証人山田敏治の証言によれば、山田敏治は購入した機械の一部を廃棄したことが認められるから、原告らの右主張は採用できない。

(3) したがって、本件海苔集束装置につき原告定美の得べかりし利益は、五三四万六〇〇〇円(118,800×45=5,346,000)と認めるのが相当である。

(二) 原告藤夫の特許権等に基づく海苔束折畳装置について

(1) 一台当たりの得べかりし利益について

イ 原告藤夫本人の供述によれば、原告藤夫の特許権等に基づく海苔束折畳装置(以下「本件海苔束折畳装置」という。)の販売代金八三万円につき、その九〇パーセント(控除される一〇パーセント分は値引相当額)の三〇パーセント、すなわち、その二七パーセントが同装置の販売利益であることが認められる。

ロ 次に、被告らが被告製品のうちの海苔束折畳装置を一台四〇万円で販売したことは、当事者間に争いがないところ、原告藤夫本人の供述によれば、被告らがこのように安価で同装置を販売したため、その全販売台数分につき本件海苔束折畳装置の販売が阻害されたことが認められる。

ハ 以上の各事実からすると、本件海苔束折畳装置一台当たりの原告藤夫の得べかりし利益は、二二万四一〇〇円であることが認められる。

(2) 被告製品海苔束折畳装置の販売台数について

イ 被告らが次の各販売先に同装置を合計三〇台販売したことは、当事者間に争いがない。

▲1▼ 江口直人、江口尚登、園田義則、田島重則、高口忠憲、江崎一夫、関真澄、堤義勝、城戸一久、古賀徳生、梅崎茂春、江口貞光、江口清治、田島勝弘、小宮明義、白谷浩、石橋保、渡辺春雄、堤一秀、松藤正英、堤末義、江口純久の二二名に各一台

▲2▼ 光洋産業に八台

ロ また、証拠(証人松藤秋男、同高椋吉信)によれば、被告らが松藤秋男及び高椋吉信に対し同装置を各一台販売したことが認められる。

ハ 以上三二台の販売の事実のほかに、被告らが同装置を販売したことを認めるに足りる証拠はない。

原告らは、被告らは田中弘毅から被告製品海苔束折畳装置を五〇〇台購入しているから、五〇〇台販売していることが明らかである旨主張するが、仮に五〇〇台の購入の事実があったとしても、直ちに、これを全部販売しているとまでは認められない。却って、証人山田敏治の証言によれば、山田敏治は購入した機械の一部を廃棄したことが認められるから、原告らの右主張は採用できない。

(3) したがって、本件海苔束折畳装置につき原告藤夫の得べかりし利益は、七一七万一二〇〇円(224,100×32=7,171,200)と認めるのが相当である。

(三) 被告らの不法行為について

前示事実、証拠(甲一四九、一五〇)及び弁論の全趣旨を総合すれば、被告製品販売の実務担当者である山田敏治は、田中弘毅に対して被告製品海苔束折畳装置の部品の製造を発注する際、同装置が原告らの特許等を侵害するものであることを告げていること、すなわち、山田敏治は、同装置が原告らの特許権等を侵害するものであることを認識していたこと、山田敏治は、被告製品海苔集束装置が同海苔束折畳装置と同様に原告らの関係する特許を侵害する物件であることを認識していたこと、被告らは、山田敏治が「山田製作所」名で同物件を販売していることを承認していたこと、被告製品の販売は本件海苔集束装置及び同海苔束折畳装置の特許権等の各公告日以降に行われたものであることが認められるから、被告らによる被告製品の販売行為は原告らに対する不法行為を構成することになり、被告らは原告らに対し、原告らの右各得べかりし利益の損害を賠償する義務がある。

(四) なお、原告らは、被告らによる被告製品の販売行為全体を包括して一個の不法行為による損害賠償請求の対象としているものであり、その賠償請求額の算出方法を異にすることによって、請求額が異なることから、これを特定するために、あたかもいくつかの請求があるかのように主張しているに過ぎないというべきである。そして、特許法一〇二条一項、二項、実用新案法二九条一項、二項は、損害の立証の困難を救済するための推定規定に過ぎないのであるから、損害額の認定の方法につき、原告らが順序をつけて主張したとしても、裁判所がこれに拘束されるものではない。

三  結論

以上の次第であるから、本訴請求は、被告ら各自に対し、原告定美が五三四万六〇〇〇円、原告藤夫が七一七万一二〇〇円及び各金員に対する訴状送達の日の翌日である昭和六三年二月二五日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。

(口頭弁論終結の日 平成一〇年二月六日)

(裁判長裁判官 宮良允通 裁判官 野田恵司)

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