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福岡地方裁判所小倉支部 平成2年(ワ)265号 判決 1992年9月01日

原告

林勇貴

右法定代理人親権者父

林良二

右法定代理人親権者母

林美紀

右訴訟代理人弁護士

高木健康

被告

境目末義

境目操

村上千春

右三名訴訟代理人弁護士

配川寿好

主文

一  被告らは、原告に対し、連帯して、三六〇九万一九三七円及びこれに対する昭和六二年一二月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用はこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告らの負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告らは、原告に対し、連帯して、七〇〇〇万円及びこれに対する昭和六二年一二月二九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

一事案の概要

1  原告(昭和六〇年一二月八日生まれ)は、後記4の事故当時二歳の健康な男児であった(原告法定代理人美紀)。

2  被告境目末義及び同境目操は、別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)を共有し、被告村上千春は、昭和六二年一月一日、被告境目末義及び同境目操から、本件建物の三階部分を賃借し、以後右三階部分において美容室「ヴァン・ドゥ」(以下「本件美容室」という。)を経営している(争いがない。)。

3  本件建物の階段及び各階の踊り場は、建物の外側に設置されており、被告らは、共同して、本件建物三階の北西側踊り場(以下「本件踊り場」という。)を占有している(争いがない。)。

4  原告の母林美紀(以下「美紀」という。)は、昭和六二年一二月二九日、原告及び姪の新屋清美(当時七歳。以下「清美」という。)を連れて本件美容室を訪れ、整髪をしてもらった後、料金を支払っている際に原告の姿が見えなくなったため、本件美容室の従業員らともに原告を探したところ、本件美容室の従業員が本件建物一階階段入口前の道路上に倒れていた原告を発見した(以下「本件事故」という。争いがない。)。

5  原告は、本件事故後直ちに救急車で小倉記念病院に運ばれ、同病院の医師によって、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨折と診断された(<書証番号略>、原告法定代理人美紀)。

二原告の主張

1  本件事故は、原告が、開いていた本件美容室の入口ドアから出て、本件踊り場の北西側道路に面する部分に設置されていた手すり(以下「本件手すり」という。)の隙間から転落したことによるものである。

2  本件美容室には幼児を連れた女性客が来ることが予定されており、しかも、本件美容室への通路にあたる本件踊り場は、建物の外に設置されていて、仮に人が本件踊り場から転落すれば直接下の道路に転落することになるのであるから、本件踊り場は、幼児の転落を十分に防止できる設備がなければならないところ、本件手すりには大人でも通過できるほどの隙間があり、したがって本件踊り場には重大な瑕疵があったというべきである。

3  原告は、本件事故により、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨折の傷害を受け、以下のとおり、合計一億九五一万三四四八円の損害を被った。

(一) 治療費 一四万一〇二一円

(二) 入院雑費 四二万五〇〇〇円

(三) 付添看護費用 五〇万〇〇〇〇円

(四) 文書料 八〇三〇円

(五) 治療中慰謝料 三〇〇万〇〇〇〇円

(六) 後遺症逸失利益 六七四七万五〇九七円

(七) 後遺症付添費用 七九六万四三〇〇円

(八) 後遺症慰謝料 二五〇〇万〇〇〇〇円

(九) 弁護士費用 五〇〇万〇〇〇〇円

4  よって、原告は、本件踊り場の共同占有者である被告らに対し、民法七一七条に基づき、右3の損害額一億九五一万三四四八円のうち七〇〇〇万円の支払いを求める。

三被告の主張

1  原告が所在不明になってから、本件建物の階段入口前の道路上に倒れているのを発見されるまでの経過は不明であり、原告の傷害は交通事故によっても生じうるものであるから、原告が本件手すりの隙間から転落したということはできない。

2  仮に原告が本件手すりの隙間から転落したとしても、本件踊り場は、大人を顧客とする本件美容室への通路であり、幼児は保護者と手をつなぐなど保護者に管理された状態で通行することが予定されているところ、本件手すりは、このような施設として通常予想される危険に対し安全を確保しうるものであり、本件のように、原告が、本件美容室の従業員から母親である美紀に引き渡された後、美紀の目が離れたすきに、閉められていた本件美容室の入口ドアを開けて外に出、本件手すりの隙間から転落したことは、通常予想できない異常な行動に起因するものであるから、本件踊り場に瑕疵はない。

3  美紀は、本件美容室の従業員から原告を引渡された後、原告の母親として、原告と手をつなぐなどして原告を監督すべき義務があったにもかかわらずこれを怠った点につき過失がある。

四争点

1  本件事故は、原告が本件手すりの隙間から転落したことによるものであるか。

2  本件踊り場の設置又は保存に瑕疵があったか。

3  原告が本件手すりの隙間から転落し、かつ本件踊り場に瑕疵があったとして、原告が本件事故によって被った損害額はいくらか。過失相殺は認められるか。

第三争点に対する判断

一本件事故に至る経緯

前記第二の一の事実及び証拠(<書証番号略>、証人高塚、同志牟田、同村上、原告法定代理人美紀)を総合すれば、以下の事実が認められる。

1  美紀は、昭和六二年一二月二九日、原告及び清美を連れて、高校時代の同級生である高塚聖子が勤める本件美容室を訪れ、高塚に、原告、美紀の順で整髪をしてもらったが、高塚は、原告の整髪が済み、美紀の整髪にとりかかる前に、原告及び清美を本件美容室の店内に設けられた育児室に連れて行き、ここで遊んでいるようにと指示し、原告及び清美は、美紀が整髪をしてもらっている間、右育児室で遊んでいた。

2  美紀は、整髪が終わり、育児室で遊んでいた原告及び清美を呼びに行った後、レジのあるカウンターの前に行き、本件美容室の従業員であった志牟田テルミから、預けていた荷物をカウンター越しに受け取り、同人に対し料金の支払いをしながら、右カウンターの外側にいた高塚と、二、三分の間世間話をした。

3  原告及び清美は、美紀に呼ばれた後、同人について育児室からレジのあるカウンターの前まで来て、美紀が料金を支払う際、同人の後ろに立っていたが、美紀が、料金の支払いを済ませ、高塚と世間話した後、帰ろうとして振り返ったところ、原告が見当たらなかったため、美紀及び本件美容室の従業員が探したところ、本件美容室の従業員の豊田スミエが本件手すりのほぼ真下である本件建物一階階段入口前の道路上に仰向けに倒れていた原告を発見した。

二争点1について

1 前記第二の一の事実及び以下の各項末尾記載の証拠によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件手すりは、本件踊り場の北西側道路に面する幅約2.41メートルの部分に設置され、笠木(手すりの上の横棒)のおよそ真中に設置された手すり子(手すりの縦の棒)によって分けられた左右の部分にそれぞれ×字型の鉄製の格子が設けられており、このため、本件手すりの笠木の下には底辺約一一二センチメートルないし一一六センチメートル、高さ約五〇ないし五八センチメートルの三角形の隙間が八箇所あった(<書証番号略>、検証)。

(二) 本件事故当時、本件手すりの前には、直径三七センチメートル、高さ三七センチメートルの円筒型のカバーに入った、高さ約2.2メートルの観葉植物(ベンジャミン)の植木鉢が三個置かれていた(<書証番号略>、検証、証人村上)。

(三) 右観葉植物の枝葉の大部分は、本件手すりの笠木より高い位置に繁っており、本件手すりの幅は約2.41メートルであって直径三七センチの植木鉢カバー三個を置いてもなお約1.3メートルの余裕があることから、右観葉植物によっても、本件手すりの八箇所の隙間を覆い隠すには十分ではない(<書証番号略>、検証)。

(四) 本件建物の階段及び各階の踊り場は、建物の外側に設置されており、地面から本件踊り場までの高さは約七メートルであるから、仮に人が本件踊り場から転落すれば、約七メートル下のアスファルト舗装された道路上に直接転落することになるが、原告の傷害は、約七メートル下の高さから転落したことによって生じたと判断しても不自然な点はない(<書証番号略>、検証)。

(五) 原告は、本件事故当時、身長約八〇センチメートル、体重約一〇キログラムであった(原告法定代理人美紀)。

2 右1認定のとおり、本件手すりには底辺約一一二センチメートルないし一一六センチメートル、高さ約五〇センチメートルないし五八センチメートルの三角形の隙間が八箇所あり、しかも、本件手すりの前に置かれた観葉植物によっても右隙間を覆い隠すには十分でなかったのであるから、当時身長約八〇センチメートル、体重約一〇キログラムであった原告が、本件手すりの八箇所の隙間のいずれかをくぐり抜けるのは比較的容易であったと認められること、原告の傷害は本件手すりの隙間から転落したことによって生じたと判断しても不自然な点はないこと、さらに、前記一認定のとおり、原告は、美紀がわずか二、三分目を離した隙にいなくなり、その直後、本件手すりのほぼ直下の道路上に仰向けに倒れているのを発見されていること、以上の事実を総合すれば、原告は、本件手すりの隙間から約七メートル下の道路上に転落し、これによって脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨折の傷害を負ったと認めるのが相当である。なお、<書証番号略>によれば、原告の傷害は、交通事故によっても生じうることが認められるが、他に原告が交通事故に遭ったことを窺わせるに足りる証拠がない以上、右事実によっても、前記の判断を覆すには足りない。

三争点2について

前記第二の一の事実及び証拠(<書証番号略>、被告村上、被告境目末義)によれば、(一)本件建物は、昭和六一年ころ、被告境目末義が、美容室を経営する知人の住吉から、異業種のテナントが入居するビルを建てて一括して貸してほしい旨の申し出を受けて建築したものであり、本件建物の三階部分は、女性を顧客とする美容室が入居することを前提に設計され、建築当初から、美容室内に子供連れの女性客が整髪してもらう間子供を遊ばせておくための育児室が設けられていた、(二)被告村上は、右住吉の経営する美容室において従業員として勤務していたが、昭和六二年一月一日、住吉から引き継いで、被告境目末義及び同境目操から本件建物の三階部分を借り受け、以後内装等に手を加えることなく本件美容室を営み、子供連れの女性客のための育児室も使用していた、以上の事実が認められ、右事実によれば、本件美容室への通路にあたる本件踊り場は、母親等の保護者に連れられた幼児が通行することも予定されていたと認められる。したがって、本件踊り場には、母親等の保護者に連れられた幼児も通行することを予定した施設として、通常有すべき安全性が要求され、これを欠いている場合には、その設置又は保存につき瑕疵があるというべきであるところ、本件踊り場には、転落防止のため、本件手すりが設置されているが、本件手すりには、底辺約一一二センチメ−トルないし一一六センチメートル、高さ約五〇センチメ−トルないし五八センチメ−トルの三角形の隙間が八箇所あり、このような隙間は、幼児の体形に照し、比較的容易にこれをくぐり抜けることができ、しかも、本件建物の構造上、仮に本件踊り場から転落すれば、直接約七メートル下のアスファルト舗装された道路上に転落することになるのであるから、右のような隙間がある本件手すりしか設置されていない本件踊り場は、幼児も通行することを予定した施設として、通常有すべき安全性を有しておらず、したがって、当時その設置又は保存につき瑕疵があったというべきである。

なお、本件において、原告が、閉められていた入口ドアを開けて外に出たのか、開いていた入口ドアから出たのかについては、本件全証拠をもってしてもいずれとも断定することはできないが、証拠(証人志牟田26ないし28項、29項、被告村上17項)によれば、本件美容室の入口ドアは、原告と同年齢くらいの幼児でも一人で開けることができ、過去に本件美容室の顧客が連れてきた原告と同年齢くらいの幼児が右ドアを開けて一人で階段を降りていったことがあった事実が認められ、また、一般に、幼児が好奇心に富み、かつ危険に対する判断力や行動力に乏しいことからすれば、幼児が母親等の目が離れた隙に、本件手すりの隙間から下を覗きこんだり、本件手すりの隙間をくぐり抜けようとすることも通常予測しうることであるから、原告が閉められていた本件美容室の入口ドアを開けて外に出、本件手すりの隙間から転落したものであるとしても、そのことをもって、通常予想できない異常な行動に起因するものであるとはいえない。

四争点3について

1  原告の治療の経過及び後遺障害の程度

前記第二の一、第三の一、二認定の事実及び証拠(<書証番号略>、証人佐伯、原告法定代理人美紀)によれば、(一)原告は、本件事故により、脳挫傷、外傷性くも膜下出血、頭蓋骨折の傷害を受け、その治療のため、昭和六二年一二月二九日から同六三年一二月二八日まで(三六六日間)小倉記念病院に入院した、(二)原告は、小倉記念病院に入院してから約二か月間昏睡状態であり、その間は集中治療室において治療を受けていたが、その後意識を取り戻し、一般病棟に移って治療を受けていた、(三)しかし、原告の傷害は完治せず、同病院を退院する少し前から、外出許可をもらって、脳性障害の子供のリハビリテーションの専門病院である北九州市立総合療育センターにおいて外来診療を受けていた、(四)原告は、小倉記念病院退院後、平成元年一月二日から同月一七日まで北九州市立小倉病院に、同年二月一七日から同年三月三一日まで北九州市立総合療育センターに、それぞれ入院し、同年四月以降は同センターに通院して、リハビリテーションに努めたが、痙直性左片麻痺、右下肢痙直性不全麻痺、失語症、麻痺性構音傷害、精神発達遅滞等の後遺障害のため、現在、(1)自力で歩行することはもちろん、自力で立ち上がったり、立ち上がった状態を保持することができない、(2)左手が全く使えない、(3)言語によるコミュニケーションができない、(4)IQ四二程度の知能しかない等の状態であり、常時美紀の介護を受けている、以上の事実が認められ、右事実を総合すれば、原告は、遅くとも小倉記念病院退院の日である昭和六三年一二月二八日に前記のとおりの後遺障害を残したまま症状が固定し、右後遺障害の程度は、自賠法施行令二条別表に定める第一級三号「神経系統の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの」に該当すると認められる。

2  治療費 六万六三七〇円

証拠(<書証番号略>)によれば、原告は、症状固定の日までに、小倉記念病院及び北九州市立総合療育センターに対し、本件事故による傷害についての治療費として、六万六三七〇円を支払ったことが認められる。

3  入院雑費 三六万六〇〇〇円

原告は、前記認定の傷害の部位、程度、治療状況等からすれば、小倉記念病院における三三六日間の入院期間中、経験則上少なくとも一日当り一〇〇〇円程度の雑費を必要としたものと認めるのが相当でありその総額は三六万六〇〇〇円となる。

4  文書料 八〇三〇円

<書証番号略>によれば、原告は、北九州市立小倉病院及び北九州市立総合療育センターに対し、本件事故による傷害の治療に関する文書料として、合計八〇三〇円を支払ったことが認められる。

5  付添看護料 三五万円

原告の傷害の内容、程度及び原告の年齢に照らせば、原告は、小倉記念病院での入院期間中、付添看護が必要であったと認められ、原告法定代理人美紀及び弁論の全趣旨によれば、美紀は、少なくとも原告が集中治療室を出て一般病棟において治療を受けた期間(<書証番号略>及び原告法定代理人美紀によれば、右期間は少なくとも三〇〇日あったと認められる)の三分の一である一〇〇日は原告に付き添ったと認められ、その付添看護料は、経験則上一日当り三五〇〇円が相当であるから、原告が小倉記念病院での入院期間中に要した付添看護料は、三五万円と認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

6  逸失利益 三七〇五万一八六五円

原告は、本件事故当時二歳の健康な男児であったところ、前記1認定の後遺傷害の程度からすれば、本件事故によりその労働能力を一〇〇パーセント喪失したと認められるが、本件事故がなければ、一八歳から六七歳までの四九年間、少なくとも平成二年賃金センサス第一巻第一表・産業計・企業規模計・学歴計の一八歳ないし一九歳の男子労働者の平均年収額二一七万六五〇〇円に相当する収入を得ることができたものと認められるから、その間の収入総額からホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、その逸失利益の本件事故当時における現価を算出すると、以下の算式により、三七〇五万一八六五円と認められる。

217万6500円×17.0236=3705万1865円(一円未満切捨て、以下同じ)

7  将来の付添介護料 五三四万一六一〇円

前記1の後遺傷害の内容及び程度に照らせば、原告は、少なくとも病院退院後五年間は日常生活全般につき第三者の介護を必要とすると認められるところ、その介護のための費用は、一日あたり三五〇〇円が相当であると認められる。したがって、右五年間の介護料総額から、ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、右五年間の付添介護料の本件事故当時の現価を算出すると、以下の算式により、五三四万一六一〇円となる。なお、退院時を本件事故後約一年とみて、本件事故後一年から五年間として計算する。

3500円×365×(5.1336−0.9523)=534万1610円

8  慰謝料 二三〇〇万円

原告が本件事故によって相当程度の精神的、肉体的苦痛を被ったことは明らかであり、これに対する慰謝料の額としては、原告の傷害の部位程度、入院日数、後遺障害の程度、その他諸般の事情を考慮すると、二三〇〇万円と認めるのが相当である。

9  過失相殺

前記第三の一の認定の事実によれば、美紀は、当時まだ二歳で事理弁識能力を有しない原告の親権者としてこれを保護監督すべき義務があるところ、本件美容室の従業員から原告の引渡しを受けた後、整髪料金を支払い、高塚と世間話をする間、原告から目を話したものであるから、原告の母親として原告に対する監視義務を怠ったと言わざるをえず、また、原告は美紀が目を離した隙に本件美容室のドアから出て本件手すりの隙間から転落したのであるから、美紀が原告から目を離さなければ、本件事故の発生を未然に防ぐことができたものと認められる。したがって、原告の損害額の算定については、原告の母親である美紀の右過失を斟酌すると、前記2ないし8の合計額六六一八万三八七五円からその五割を減額するのが相当である。

10  弁護士費用 三〇〇万円

弁論の全趣旨によれば、原告が、本訴の提起及び遂行を原告訴訟代理人に委任し、その費用及び報酬として相当額を支払うことを約したことが認められるところ、本件事案の内容、審理経過、認容額等に照すと、そのうち本件事故と相当因果関係に立つ損害として被告に賠償を求め得る額は、三〇〇万円と認めるのが相当である。

五結論

以上によれば、本件踊り場の共同占有者である被告らは、原告に対し、連帯して、本件事故により原告が被った損害額三六〇九万一九三七円及び本件事故の日である昭和六二年一二月二九日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払う義務を負う。

(裁判長裁判官綱脇和久 裁判官杉山正士 裁判官吉田彩)

別紙物件目録

所在 北九州市小倉南区大字徳力字小森九九八番地一

(仮換地 北九州都市計画事業徳力土地区画整理事業施行地区内下徳力地域三〇街区二番)

家屋番号 九九八番一

種類 店舗

構造 鉄筋コンクリート造ステンレス鋼板葺三階建

床面積 一階 107.00平方メートル

二階 122.75平方メートル

三階 133.48平方メートル

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