福岡地方裁判所小倉支部 平成4年(ワ)154号 決定
(抄録)
「一 Yは、『本件訴訟を広島地方裁判所(以下「広島地裁」という。)へ移送する』との裁判を求め、当事者間には広島地裁を管轄裁判所とする専属的合意管轄の定めがあると主張する。
二 確かに、右当事者間にその旨の訴訟法上の合意(なお、その性質上、合意後に詐欺による(取消)無効を主張できるものではあるまい。)があることは認められる。
しかしながら、右合意をした場合であっても、それによって一方当事者が不当に不利益を受ける様であれば、信義則上、右合意の効力を制限する必要のあることがありうる。本件の場合、Xは一般契約者であり、Yは約款作成者であって、Xは、経済的には弱者の立場にありXにとって訴訟を広島地裁で行なうのは、Yが当庁でそれを行なうのに比して、経済的に著しく負担が大きく、右管轄の合意をした際その意味と結果を十分理解していたか疑問のあること、本件訴訟の審理に当っても取り調べ予定の証人等はX住所地付近にその多くが居住していると推認され、広島地裁で審理を行なうことは訴訟の遅延も招きかねないことの各事情がある。右事実から考えると、Yが前記専属管轄の合意によって本件を広島地裁に移送することを求めることは信義則に反し、許されないというべきである。」