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福岡地方裁判所小倉支部 平成5年(ワ)1211号 判決 1998年12月01日

呼称

原告

氏名又は名称

株式会社タイシン化学

住所又は居所

福岡県北九州市小倉南区津田新町一丁目一八番三五号

代理人弁護士

服部弘昭

呼称

被告

氏名又は名称

伊吹正化学工業株式会社

住所又は居所

滋賀県愛知郡愛知川町大字愛知川一五七七番地の二

呼称

被告

氏名又は名称

中島章

住所又は居所

滋賀県近江八幡市西庄町一二三番地

代理人弁護士

出嶋侑章

代理人弁護士

山崎武徳

代理人弁護士

鷹取重信

代理人弁護士

宮本圭子

代理人弁護士

家近正直

代理人弁護士

福田正

代理人弁護士

桑原豊

代理人弁護士

草尾光一

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨(主位的、予備的請求共通)

1  被告らは、原告に対し、各自一億〇七一一万四八六八円及び内九七四二万四八六八円に対する平成二年九月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二  当事者の主張

一  請求原因

1  当事者等

(一) 原告は、家庭用、業務用の各種洗剤の製造販売等を目的として、昭和六三年八月に設立された株式会社であるが、設立準備中の同年四月ころ、過炭酸ナトリウムを主成分とし、これに三種類の触媒を配合した洗剤「ブラトリイ」(以下「本件洗剤」という。)を製造し、同年五月ころ、同じく設立準備中の訴外株式会社ブラトリイ(なお、同会社は同年六月に設立された。以下「訴外会社」という。)との間で、本件洗剤を継続的に販売する旨の販売契約(以下「本件販売契約」という。)を締結し、会社設立後、本件販売契約に基づき、訴外会社に本件洗剤を継続的に販売していた。

(二)(1) 被告伊吹正化学工業株式会社(以下「被告会社」という。)は、医薬品等の製造販売等を目的とする、原告とは競争関係にある株式会社であり、平成二年九月ころ、「無印洗白剤」と称する洗剤(以下「本件競争洗剤」という。)を製造して、以後、これを訴外会社に継続的に販売するようになった。

(2) 被告中島章(以下「被告中島」という。)は、被告会社の取締役開発部長であったが、平成四年三月一七日、被告会社を退職した者である。

2  被告中島による信用毀損行為

(一) 原告は、昭和六三年一一月ころから、本件洗剤に酵素を配合して販売するようになった。また、消防法の改正によって、本件洗剤の主成分である過炭酸ナトリウムが平成三年五月から危険物に指定されることになったとしても、右原料を非危険物化して本件洗剤の販売を続けることは可能であった。

(二) それにもかかわらず、被告中島は、平成元年二月ころから平成二年九月一四日までの間、被告会社の業務として、訴外会社及びその取引先等に対し、「商品ブラトリイ(本件洗剤)には酵素が入っていない」という趣旨の発言(以下、この発言を「本件第一発言」という。)及び「平成三年五月から商品ブラトリイ(本件洗剤)の主剤である過炭酸ナトリウムは危険物となって商品として売れなくなる」という趣旨の発言(以下、この発言を「本件第二発言」といい、本件第一発言と合わせて「本件各発言」という。)をし、虚偽の事実を告知流布して、原告の信用を毀損した。

3  被告らの責任原因

(一) 被告中島は、故意又は過失により、原告の信用を毀損する内容の本件各発言をしたから、4の損害につき、不法行為に基つく損害賠償責任を負うべきである。

(二) 被告中島の本件各発言は、被告会社の業務としてなされたものであるから、被告会社は、主位的には不正競争防止法二条一項一一号、四条に基づき、予備的には民法四四条一項又は同法七一五条一項に基づき、4の損害につき、損害賠償責任を負うべきである。

4  損害

(一) 原告は、本件各発言により、営業上の信用を失い、平成二年八月二一日、訴外会社との間の本件販売契約の終了を余儀なくされ、その結果、次のとおり合計一億〇七一一万四八六八円の損害を被った。

(1) 逸失利益 七七一九万九〇四〇円

原告の訴外会社に対する昭和六三年六月から平成二年七月までの本件販売契約に基づく売上合計は、一億九六七八万一八三五円(一か月当たりの平均利益は二二七万〇五六〇円)であり、本件販売契約は少なくとも三四か月間程度継続することが予想されるから、原告の逸失本利益は、七七一九万九〇四〇円(2,270,560×34=77,199,040)となる。

(2) 出張費用 五九〇万八一三九円

取引先に本件洗剤の取扱中止を説明したり、新製品の売込みをしたりするための出張費用として、五九〇万八一三九円を要した。

(3) 資材ストック分 二四四万五二一七円

本件洗剤の副資材が利用不可能となって、二四四万五二一七円の損失生じた

(4) 無形損害 一〇〇〇万円

本件各発言により原告の信用が毀損され、一〇〇〇万円を下らない無形の損害が生じた。

(5) 弁護士費用 九六九万円

原告は、本件訴訟の提起、追行を弁護士である原告訴訟代理人に委任し、その報酬として九六九万円を支払う旨約した。

(二) 仮に、右損害が認められないとしても、被告会社が平成二年九月一二日から平成八年一一月三〇日までの間に訴外会社に対し本件競争洗剤を販売したことによる被告会社の売上総利益(粗利益)は、一六〇八万三一一七円であったから、不正競争防止法五条一項により、少なくともこれを原告の損害と推定すべきである。

5  よって、原告は、被告中島に対し、民法七〇九条に基づき、被告会社に対し、主位的には不正競争防止法二条一項一一号、四条に基づき、予備的には民法四四条一項又は同法七一五条一項に基づき、各自、一億〇七一一万四八六八円及び内九七四二万四八六八円に対する最後の不法行為ないし不正競争行為の日である平成二年九月一四日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1(一)の事実中、原告と訴外会社がいずれも原告主張のとおり設立された株式会社であること、原告が訴外会社に本件洗剤を販売していたことは認め、その余は知らない。同(二)の事実中、原告と被告会社が競争関係にあるとする点は知らず、その余は認める。同(三)の事実は認める。

2  同2(一)の事実は否認する。同(二)の事実中、被告中島が被告会社の業務として本件第一発言をしたことがあること、本件第二発言のうち本件洗剤の主剤である過炭酸ナトリウムが危険物になる旨発言したことがあることは認め、その余は否認する。

3  同3(一)、(二)の主張は争う。被告中島の本件各発言は、検査結果又は消防法の改正に基づく事実を指摘したもので、その内容は虚偽ではないから、何ら違法でなく、不正競争に当たる行為でもない。

4  同4の事実中、原告と訴外会社間の本件販売契約が平成二年八月二一日に終了したことは認め、損害発生の点は否認する。右契約が終了したのは、本件各発言とは関係のない事情によるものであるから、因果関係は存しない。

第三  証拠

証拠関係は、本件記録中の書証目録及び証人等目録のとおりであるから、これらの各記載を引用する。

理由

一  当事者間に争いのない事実と証拠(甲一ないし三、乙一七、原告代表者)によれば、請求原因1(一)、(二)の各事実を認めることができる。

二  本件第一発言について

1  被告中島が被告会社の業務として本件第一発言をしたことがあることは、当事者間に争いがない。

2  そこで、その発言内容が虚偽であると認められるか否かについて検討する。

(一)  原告代表者は、株式会社キューセンから酵素を購入して、昭和六三年一一月ころから、これを本件洗剤に配合して販売していた旨供述し、この事実に沿う書証(甲一ないし三、乙三一、八二の一・二)も存在する。

(二)  しかしながら、証拠(甲一ないし六、七の一・二、一六、乙一七、五五、五七、七〇、七九、六六の一・二、九一の一・三、九二、九三、証人布施勝美、原告代表者、被告中島章)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1)原告の代表者長尾伸廣は、原告会社を設立する前は、タイシン商事の名称で洗剤類の製造販売業を営み、洗剤「サンソリキ」を主力商品として、全国のクリーニング業者等に広く販売していた。

「サンソリキ」は、本件洗剤と同様、純度一〇〇パーセントの過炭酸ナトリウムを主成分(成分割合は約九八・五パーセント)とし、これに低温の水にも溶解して浄化作用(化学反応)をもたらす二種類の触媒を配合した洗剤である。

(2) 長尾は、昭和六三年一、二月ころ、入浴剤の販売業を営んでいた矢内三夫(訴外会社代表者)から、「サンソリキ」の卸販売取引の申入れを受けた。しかし、長尾は、「サンソリキ」がすでに各販売代理店を通じて独占的に販売していた商品であったことから、同じ商品を矢内に取り扱わせるのは混乱を招くものと判断し、「サンソリキ」に触媒をもう一種類配合したほかはすべて同じ成分の本件洗剤を「ブラトリイ」という商品名で販売することとし、同年五月ころ、訴外会社との間で本件販売契約を締結して、同年六月ころから、訴外会社に本件洗剤を継続的に販売するようになった。

(3) 長尾は、原告会社設立後の昭和六三年一一月ころ、当時業界で酵素の配合で洗浄力強化を謳った洗剤の開発販売競争が行われていたことから、原告においても、その製造に係る洗剤を酵素入り洗剤として販売することとし、本件洗剤や「サンソリキ」の容器、宣伝広告にも「酸素+酵素」などと表示して、以後、訴外会社には、酵素を配合した洗剤として本件洗剤を販売するようになった。しかし、長尾は、原告代表者尋問の中で、本件洗剤に配合した酵素はごく微量で洗浄効果を高める程の量ではなく、単に販売戦略として配合したに過ぎない旨供述しながら、配合したとする酵素の種類や配分割合は企業秘密であるとしてこれを明らかにしようとしない。

洗剤に酵素を配合するとその分コストがかかるため、販売価格が値上げされるのが通常であるところ、原告は、右のとおり酵素入り洗剤として販売することにした際、「サンソリキ」については卸売価格を値上げしたが、本件洗剤については、矢内の要求に応じて逆に一個当たりー二三〇円から一一〇〇円に値下げした。

(4) ところが、訴外会社の代表者矢内は、平成元年夏ころ、本件洗剤の売込み先から酵素の配合率を示す成分表の提示を求められたため、長尾に成分表の提示を求めたところ、同人が、企業秘密を理由にこれに応じようとしなかったことや、販売委託先からも本件洗剤には酵素が配合されていないとの指摘を受けたことから、本件洗剤に酵素が配合されていることに疑問を抱き始め、同年一〇月ころ、かねて面識のあった被告会社の当時の開発部長の被告中島に対し、本件洗剤中に含まれている酵素の配合率について検査の依頼をした。被告中島は、酵素の配合率を直接検査することがほとんど不可能であったため、酵素の活性度(酵素の作用の強さを示す。)を測定する方法により酵素配合の有無を検査することとし、同年一一月二一日、被告会社の業務として右検査を実施したところ、洗剤として有用な酵素の活性度を一〇〇とした場合、本件洗剤の酵素の活性度は約一・八三という極めて微弱なものであったため、本件洗剤に酵素が含まれているか否かを判定することができなかった。被告中島は、そのころ、矢内に対し、右のような検査結果を報告した。

(5) 矢内は、右検査結果が事実であるとすれば、本件洗剤を酵素入り洗剤として販売することができなくなることから、右検査結果を再確認するため、今度は、専門の検査機関に同様の検査を依頼することとし、被告中島にその手続を依頼した。これを受けて被告中島は、平成元年一二月一一日ころ、財団法人化学品検査協会(以下「検査協会」という。)を訪れ、右酵素の活性度についての分析検査を依頼した。しかし、検査協会では酵素に関する分析検査の経験がなかったため、被告中島が試験方法を指定し、必要な試薬等も全て準備するという条件で検査協会に右分析検査を受託してもらうことになった。その後、被告中島は、検査協会に試験方法に関する文献及び試薬等を郵送し、これを基に検査協会では、平成二年二月一三日ころ、被告中島の指定したアンソン荻原氏変法(蛋白質分解酵素の活性度を測定する試験法)に則って、本件洗剤中の酵素の活性度の分析検査を実施した。この検査方法は、一グラム当たりに含まれる酵素の活性度が五〇単位以上であれば検出が可能であり、市販されている酵素入り洗剤の場合には通常一グラム当たり五〇〇単位程度の酵素の活性度が現れるところ、本件洗剤の場合には酵素の活性度を示すデータが現れなかったため、検査協会では、そのころ、被告中島に対し、検出不能という趣旨で、本件洗剤に含まれる酵素の活性度は五〇単位以下である旨報告し、被告中島は、そのころ、矢内に対し、右のような検査結果を報告した。

(6) 被告中島は、平成二年五月一八日ころ、当時販売されていた二種類の本件洗剤について、再び酵素の活性度の測定検査を行ったところ、酵素標準液の活性度を一〇〇とした場合に、本件洗剤中の酵素の活性度は、それぞれ五・四、一一・四と前回の測定結果よりも高い数値を示したものの、未だ酵素としての作用がほとんど期待できない程度の活性度であって、本件洗剤に酵素が配合されていることを示すに足りる数値ではなかった。そこで、被告中島は、矢内と相談して、同年六月一一日、同じ製品について再び検査協会に前回と同様の方法による分析検査を依頼し、検査協会では、同年八月二五日ころ、同じ製品を前回と同様の方法により再検査したところ、酵素の活性度を示すデータが現れなかったため、そのころ、被告中島にに対し、前回と同様に酵素の活性度は五〇単位以下である旨報告し、被告中島は、そのころ、矢内に対し、右検査結果を報告した。

以上認定の事実、とりわけ繰り返し行われた検査結果からは本件洗剤に酵素が配合されていることを示すに足りるデータが一度も現れなかった事実、原告代表者の、本件洗剤に配合した酵素はごく微量で洗浄効果を高める程の量ではなく、単に販売戦略として配合したに過ぎない旨の供述によると、配合した酵素の種類や配合割合を殊更企業秘密として保持しなければならない必要性は見出し難いところ、原告代表者は、企業秘密であることの具体的理由を示すことなく、配合した酵素や配合割合を明らかにしようとしないことに照らすと、本件洗剤に酵素を配合して販売していた旨の原告代表者の供述ないし供述記載は容易に信用することはできず、また、原告が株式会社キューセンから酵素を購入した事実があったとしても、これを本件洗剤に配合して販売したことまでは認定し難いものというべきである。

他に本件洗剤に酵素を配合して販売した事実を認めるに足りる証拠はない。

(三)  以上によれば、被告中島の本件第一発言の内容が虚偽であったと認めることはできない。

三  本件第二発言について

1  証拠(甲一六、乙八六の一・二、乙九一)によれば、被告中島は、被告会社の業務として、平成二年五月ころ、訴外会社の代理店を営む真柴新一に対し、「過炭酸ナトリウムが七五パーセント以下でないともう来年からは売れなくなる」旨発言し、同年九月一四日に開催された本件競争洗剤の説明会において、矢内及び訴外会社の代理店等に対し、同様の旨の発言をしたことが認められる。

2  そこで、右各発言内容が虚偽であると認められるか否かにつき検討する。

(一)  右各発言がなされた背景には、次のような消防法の改正があった。

すなわち、本件洗剤の主成分である過炭酸ナトリウムは、異物の混入・加熱により分解して酸素・水・熱を発生させ、これが原因で容器の破裂や火災を引き起こす危険性のある物質であることから(甲八の二、乙九一号証の一の一八〇項)、消防法の改正(昭和六三年五月二四日公布法律第五五号)により、有効酸素濃度が一三パーセント以上の過炭酸ナトリウムについては、新たに同法二条七項別表第一類・酸化性固体中の三種無機過酸化物に該当することとなり(乙九七の一、乙九九)、指定数量(危険物の規制に関する政令一条の一一によれば、過炭酸ナトリウムの場合は一〇〇〇キログラムとされている。)以上の貯蔵及び取扱いには許可を要するなどの制限を受けることとなった(消防法一〇条、一一条)。右規制に関する改正法は、平成二年五月二三日から施行されたが、旧法当時に許可を受けて製造所等を設置していた者は、経過措置(附則三条)により、平成三年五月二二日まで、新法に基づく許可の取得が猶予された。

(二)  そして、証拠(乙九三、九五、九九、証人布施勝美、原告代表者、被告中島)によれば、原告は、本件洗剤の主成分として純度一〇〇パーセントの過炭酸ナトリウムを約九八・五パーセント配合して使用していたこと、その有効酸素濃度は、被告中島が前記のとおり酵素の活性度を測定した平成二年五月に併せて検査したところ、危険物に該当する一三パーセントを超える濃度が認められたこと、前記危険物に該当する過炭酸ナトリウムを、非危険物処理しないで販元することは不可能ではないが、運送、貯蔵、取扱い等に種々の制約を受けるため、コスト高となって、洗剤の原料として製造販売するには採算が合わないこと、そのため、原告に通炭酸ナトリウムを販売していた三菱瓦斯化学株式会社では、同年五月、各取引先に対し、消防法の改正により危険物となった過炭酸ナトリウムを、今後非危険物処理して供給することとし、同年七月からはそのサンプルを提供し、同年一一月から出荷を開始する旨通知したこと、被告会社に過炭酸ナトリウムを販売していた東海電化工業株式会社においても、同じく同年五月、各取引先に対し、右同様の通知をしたこと、そのころ、被告中島は、「ダスキン」が、消防法の改正を受けて、その製造する漂白剤に配合する過炭酸ナトリウムの配合割合を七五パーセント程度とし、これにより有効酸素濃度を一〇パーセント前後に抑えて非危険物化することを計画していることを聞知していたことから、被告会社を訪れた前記真柴に対し、消防法の前記改正の説明の中で、「ダスキン」の場合を例に挙げながら、「過炭酸ナトリウムが七五パーセント以下でないともう来年からは売れなくなる」旨発言し、また、同年九月一四日に開催された本件競争洗剤の説明会において、矢内及び訴外会社の代理店等に対し、本件第二発言をしたこと、以上の事実が認められる。

(三)  (一)、(二)の事実によれば、原告がこれまで製造販売していた本件洗剤の主成分である過炭酸ナトリウムは、消防法の改正により危険物に該当することになったこと、原告に右原料を供給していた三菱瓦斯化学は、平成二年一一月ころから、過炭酸ナトリウムを非危険物処理して販売することにしたから、それ以降、原告においては、従前どおり純度一〇〇パーセントの過炭酸ナトリウムを九八・五パーセント配合した本件洗剤を販売することが事実上不可能になったこと、被告中島の前記各発言は、右のような事実を、消防法の改正、自ら行った検査結果及び聞知した「ダスキン」の場合の例を踏まえなから述べたものであることが認められ、これらの事実によれば、被告中島の本件第二発言の内容も虚偽であったと認めることはできない。

四  以上によれば、被告中島の本件第一、第二発言は、原告の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布するものとは認められないから、これらの発言内容が虚偽であったことを前提とする原告の請求はいずれも理由がないというべきである。

よって、原告の請求をいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 萱嶋正之 裁判官 飯塚圭一 裁判官 菊池憲久)

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