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福岡地方裁判所小倉支部 昭和34年(ワ)813号 判決 1961年3月23日

原告 菱洋商事株式会社

被告 更生会社大東銑鉄株式会社管財人 奈良崎益三 外一名

主文

被告管財人奈良崎益三は原告に対し同人より金九万八千三百二十円を受けるのと引きかえに別紙物件目録第一記載の物件を引き渡せ。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は、原告と被告管財人奈良崎益三との間においてはこれを二分し、その一を原告の負担とし、その余を被告管財人奈良崎益三の負担とし、原告と被告管財人西村文次との間においては各目の負担とする。

この判決は第一項にかぎり、原告において金三十万円の担保を供するときには仮りに執行することができる。

事実

原告訴訟代理人は、本来的請求として「被告管財人奈良崎益三(以下単に被告という)は原告に対し別紙目録記載の物件を引き渡せ。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決、予備的請求として、「被告は原告より金十四万四千三百二十円を受けとるのと引きかえに原告に対し別紙目録記載の物件を引き渡せ。」との趣旨の判決、ならびに担保附仮執行の宣言とを求め、その請求の原因として、

(一)  原告は鋳物原料の販売を目的とする会社であるところ、昭和三三年六月一日より同年一一月末日までの間に訴外大東銑鉄株式会社(以下訴外会社という。)に売り渡した商品代金四百十一万三千八百円の債権につき、同年十二月六日訴外会社との間に準消費貸借に改め、訴外会社は右債務額を同年十二月三十一日までに金百四十八万六十七円、同三十四年一月三十一日までに金五十八万二千六百四十三円、同年二月二十八日までに金四十七万七百八十円、同年三月三十一日までに金十三万八千六百三十円、同年三月から同年六月まで毎月末日各金三十万円あて、同年七月三十一日まで残金二十四万千六百八十円を分割して支払うこと、訴外会社が右支払を怠つたときは期限の利益を失いかつ期限後日歩八銭二厘の割合による遅延損害金を支払うこと、訴外会社は右債務を担保するためその所有の別紙目録記載の物件(以下本件物件という。)の所有権を原告に譲渡すること、原告は訴外会社に対し同三十四年七月三十一日(債務弁済期)まで無償で本件物件を使用させること、訴外会社が債務不履行のために期限の利益を失うときには、原告において本件物件を別紙目録評価欄記載のとおり各評価して同額の債権額につき代物弁済として取得する旨の意思表示をすることができること、訴外会社において期限の利益を失つたときはただちに原告に対し本件物件を引き渡すこと、訴外会社が期限後も本件物件を引き渡さないときは遅延一日につき金三千円の割合による違約金を支払うことを約し、原告は右契約成立と同時に本件物件の所有権を取得した。

(二)  ところが訴外会社は、同三十三年十二月三十一日まで金百四十八万六十七円、同三十四年一月三十一日金五十八万二千六百四十三円、同年二月二十八日金四十七万七百八十円、同年三月三十一日金十三万八千六百三十円、同年四月七日金四万円合計二百七十一万二千百二十円を支払つたが、同年四月三十日金三十万円の支払いを怠つたため右特約にもとづき、期限の利益を失い前記代物弁済予約の完結権を行使できることになつた。

(三)  そこで原告は訴外会社に対し、同三十四年五月一日現在金百四十万千六百八十円の残元本債権を有していたので本件物件を別紙目録評価欄記載のとおりの価額で右債務に充当する旨の代物弁済完結の意思表示をし、同意思表示は翌五月二日同訴外会社に到達したから代物弁済の効果は発生し、本件物件の所有権を完全に取得した。

(四)  ところで、訴外会社は同三十四年十二月五日福岡地方裁判所小倉支部から会社更生手続開始の決定を受けて更生会社となり、管財人として全般の職務を行う者として現に奈良崎益三が選任されており、また同三十五年十二月六日本件訴訟事件の終了に至るまでの間遂行すべき訴訟行為に限りその職務を行うことを得る管財人として西村文次が選任され、本件物件は、現に右更生会社管財人奈良崎の管理占有するところである。

(五)  そこで、原告は被告に対し、本来的請求として、前記の昭和三十三年十二月六日成立した譲渡担保により本件物件の所有権を取得したことを理由にその引渡を求める。ちなみに、会社更生法には更生会社が債権者として譲渡担保を取得している場合の規定(会社更生法第六十三条)はあるが、本件のように更生会社が債務者として譲渡担保を設定しているときについては同法に明文の規定がないから、同法第百十二条との関係で問題があるが、譲渡担保権者の所有権にもとづく取りもどし権の行使(同法第六十二条参照)は同法第百十二条の規定によつてなんら妨げられることはない。というのはこの取りもどし権の行使により譲渡担保権者はあらたに利得をしたりまたは更生債権者の権利を害することなく、かえつて、取りもどし権を認めないとすれば譲渡担保権者の地位は更生担保権者の地位に比べて著しく不均衡となり、しかも従来認められていた譲渡担保権者の権利が会社更生法によりまつ殺されることとなつてきわめて不合理である。要するに譲渡担保設定者が更生会社となつても、設定者権利者の対内関係のいかんにかかわらず譲渡担保権者は目的物件を更生手続によらないで取りもどすことができると解すべきである。

(六)  かりに右の主張が認められないとしても、予備的請求として、原告は前記代物弁済により取得した所有権にもとずき本件物件の引渡を求めるのであるが、訴外会社は前示債務不履行により期限の利益を喪失したから前記特約にもとづき直ちに本件物件を原告に引き渡さなければならないところ、これを怠つているから、原告は訴外会社に対し引渡遅滞の日の後である同三十四年五月二日から前記更生手続開始決定の日である同年十二月五日まで二百十八日間に前記(一)記載の一日金三千円の割合による違約金合計金六十五万四千円の債権を取得したので、原告は訴外会社に対し、同年五月一日現在の金百四十万千六百八十円のほかに金六十五万四千円合計金二百五万五千六百八十円の債権を有することとなり、しかもこれは被告に対し更生手続外の債権として主張することができるのであるが、本件代物弁済の予約において物件評価額を前記のとおり定め、これと同額の債権額が消滅することを約しており、右評価額より残存債権額が小なるときは、その差額を原告において不当に利得することなからしむるため、これと右物件の引渡とは同時履行の関係に立つものと解せられるところ、本件物件の評価額は別紙目録評価額欄記載のとおり合計金二百二十万円で原告は被告に対し、前記物件評価額より右債権額を控除した金十四万四千三百二十円と引きかえに本件物件の引渡を求めるものである。

と述べ、書証として甲第一号証、第二号証の一、二を提出し、証人若井光雄の供述を援用した。

被告らは、原告の各請求に対し、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」旨の判決を求め、答弁として、

(一)  原告の主張事実中(一)および(二)の事実、(三)の事実(但し、原告主張の代物弁済予約完結の意思表示により本件物件の所有権を完全に取得したとの点を除く)、(四)の事実は認めるが、その余の事実は争う。

(二)  原告の本来的請求について述べれば、譲渡担保権者は譲渡担保権にもとづいて更生会社に対し目的物件の取りもどしを請求することはできないのであるから原告の請求は理由がない。

すなわち、譲渡担保権者が本件物件の所有権を取得したとしても原告の訴外会社に対する債権は消滅しないで存続しているわけであつて、それにもかかわらず、譲渡担保権者が取りもどしを請求することができるとするのは、譲渡担保権者が更生債権者でありながら更生手続によらないで弁済を受けることになり会社更生法第百十二条に違反することとなり不当であり、また、更生手続においては、破産手続と異なり、抵当権などの担保権者も更生手続に参加させられ制約を受けているにかかわらず、譲渡担保権者のみを除外するということは、これを正規の担保権者より強力な地位におくこととなり不合理であるからである。

(三)  原告の予備的請求もまた理由がない。すなわち、まず、原告主張の代物弁済予約完結の意思表示中には、「昭和三十四年四月三十日期日の約束手形二件金百三万三千八百四十円は不渡となりました。つきましては本件物件は代物弁済として債権に充当することに致しました」との趣旨の文言があるところからみれば、原告は、右意思表示のあつた当時訴外会社の負担する債務百四十万千六百八十円の全額についてなされたものではなく、その意思表示は金百三万三千八百四十円の限度においてのみなされたにすぎない。そして、右完結の意思表示は原告主張のとおりの評価基準にもとづいてされたのであるから、本件物件全部の所有権が原告に帰属するいわれはないからである。

と述べ、被告本人奈良崎益三の供述を援用し、甲各号証の成立を認める。と述べた。

理由

一、本来的請求について

原告主張の(一)および(四)の事実は当事者間に争いがない。

原告は譲渡担保による所有権(以下これを譲渡担保権という)にもとづいて被告に対し本件物件の引渡を求めているから判断するに、まず、本件譲渡担保の性質を検討すると、成立に争いのない甲第一号証および被告本人の供述によれば、本件譲渡担保契約について作成された公正証書において、担保権設定者である訴外会社が債務不履行のときには、担保権者である原告は代物弁済の予約完結権を行使して債務の一部に充当することができる旨を約していること、および訴件会社が債務不履行のときには直ちに強制執行を受けても異議ない旨認諾していることが認められるのであつて、譲渡担保の目的となつた債務弁済の遅滞があつても、担保権者と設定者との間の債権債務関係はそのまゝ存続し、その消滅のためにはさらに担保権者の担保物件の換価または代物弁済の予約完結権の行使を必要とするいわゆる弱い譲渡担保であつて、外部的にのみ所有権が移転し内部的には所有権は移転していないものであると解することができる。この見解に反する証人若井光雄の供述部分は当裁判所の採用しないところである。もつとも、前顕甲第一号証によれば、本件譲渡担保によつて原告が占有改定により本件物件の所有権を取得し、これを前示訴外会社の負担する債務の弁済期まで無償で貸与する旨の約定があることを認めることができるのであるが、訴外会社が右債務の履行を怠つた場合に関する前記認定の約定に照らして考えれば、これは、原告および訴外会社が対外的関係を考慮して定めた約束と解すべく、これをもつて、前示の判断を左右することはできないのである。

ところで、会社更生手続における譲渡担保権者の地位については、会社更生法には更生会社が債権者として譲渡担保権を取得した場合については明文の規定(会社更生法第六十三条)はあるが、本件のように更生会社が債務者として譲渡担保を設定しているときについては明文の規定がないから問題のあるところであるが、当裁判所は、少なくとも、本件のようないわゆる弱い譲渡担保権者については、譲渡担保権にもとづいて更生会社に対し担保物件の取りもどしを請求することができないものと考える。すなわち

会社の更生手続は「窮境にある」株式会社に対し「再建の見込のある」かぎり「債権者、株主その他利害関係人の利害を調整しつつその事業の維持更生を図る」(会社更生法第一条参照)ことを目的とするものであつて、もとより事業の清算を主眼とするものでなく、むしろその維持更生を図ることにより企業という社会的価値の保存に努めるものである。そのために、会社清算のための破産手続と異なり、更生会社に対する債権者は事業の維持更生のために強い拘束力を受け、抵当権者等の更生担保権者も更生手続に参加させられてその制約を受けており、租税債権の優越的地位もゆらいで更生債権として取り扱われるなど、会社更生の目的のために、いちじるしい譲歩を求められているのである。

ところで、いわゆる弱い譲渡担保権者が更生会社に対し目的物件を更生手続によらないで取りもどすことができるとすると、譲渡担保権者は更生会社に属する財産を目的とする債権を有するものでありながら、更生手続によらないで他の更生債権者-とくに更生担保権者-の譲歩のなかで弁済を受ける余地を認めることになり、また、譲渡担保権者に取もどし権を認めるとなると、抵当権者等は更生担保権者として更生手続に参加させられ制約を受けるのにかかわらず、判例によつて認められた変態的な譲渡担保権者のみが野放しとなつて、他の更生担保権者よりも強力な地位を与えることになり、前記のように関係人に強い拘束力を認める会社更生手続の理念に照らし、他の関係人と全く均衡のとれない優越的地位を与える結果になる。

また、譲渡担保の目的物件となつているものは更生会社の更生に必要欠くべからざる物件であることが通常であつて頑迷な一譲渡担保権者のために会社の更生が図りえない事態の生ずることも予想できるところであるから譲渡担保権者の取りもどし権を認めないほうが、会社の適切なる更生手続を図るためにも必要であつて同法の立法趣旨にも合致するものというべきである。さらに、譲渡担保権者は譲渡担保の利害得失を考慮したうえ譲渡担保権の危険を承知しながら(更生)会社と譲渡担保契約を結ぶのであるから更生会社に更生手続の継続するかぎり取りもどし権を行使することができなくても、不当に不利益を蒙るものということはいえないであろう。のみならず、譲渡担保は金銭債権の担保のために設定されることが多いから、更生会社の事業の維持更生により金銭債権の満足を図る方が窮極的には譲渡担保権者の利益になるともいえるのである。譲渡担保権者の地位は更生担保権者の地位に準ずべきであるから、自己の同意がないかぎり債権額を減ぜられることはない。それゆえ、会社の更生手続がされているかぎり、譲渡担保権者の取りもどし権の行使が認められないとしても已むを得ないというべきである。

このような考えは、従来民法的に考えられていた譲渡担保の観念を変更するものであるとの批判があるかもしれない。たしかに、会社に対し更生手続が行われているかぎり、更生会社に対する譲渡担保権は、更生会社の更生目的のためにかつその限度において一時変更を加えられる状態になるのであるが、会社更生法は一般私法に対する特別法であるから、更生手続の限度において譲渡担保権の内容に変更が加えられてもやむを得ないといわなければならない。これはあたかも譲渡担保権者が、従来考えられていたものと異なり、国税徴収の目的のために担保物件について担保権設定者のために責任を負担しなければならない場合があるのと同様である(国税徴収法第二四条参照)い。

よつて原告は被告に対し、本件物件の引渡を請求することができないのであるから、原告の本来的請求は失当である。

二、予備的請求について

原告主張事実中(一)および(二)の事実並びに原告が訴外会社に対し同年五月一日現在金百四十万千六百八十円の残元本債権を有していたので、原告主張の代物弁済の予約完結権にもとづき原告主張のような意思表示をなし、これが、同年五月二日訴外会社に到達したことは当事者間に争いがない。

被告らは、この点について、原告は金百三万三千八百四十円の限度においてのみ予約完結権を行使しているにすぎない旨主張し、成立に争いのない甲第二号証の一によれば、右完結の意思表示中には被告らの主張するような文言があつたことが認められるけれども、同書証、前顕甲第一号証および証人若井光雄の供述を綜合し、弁論の全趣旨をあわせ考えれば、右文言は、前叙の昭和三十三年五月二日に成立した契約に際し、訴外会社の負担する債務について同会社振出の約束手形二通金額合計金百三万三千八百四十円が不渡になつたから予約完結権を行使する趣旨の文言にすぎず、右金額の限度において完結権を行使する趣旨の文言ではなく、右完結権の行使によつて消滅すべき債権は前記の残元本債権金百四十万千六百八十円であることが認められ、右認定に反する証拠はない。

原告は、このほかに更生手続開始決定のあつた日までの前記引渡遅延による違約金債権についても代物弁済により消滅したかのような主張をするけれども、代物弁済の効果は予約完結権行使の時に発生していた債務のためにまたその範囲においてのみ発生するものであつて、その後に発生した違約金債務についてはその効果は及ばず、その債務のために代物弁済の効果を生ずるためには改めて予約完結権を行使しなければならないのである(本件においては一定の債務が発生したときには当然代物弁済の効果が発生するような条件付代物弁済と認めるべき証拠はない。)。したがつてこの点に関する原告の主張は理由がない。

前述のとおり、原告のした代物弁済の予約完結権の行使により消滅すべき債権額は合計金百四十万千六百八十円であるところ、代物弁済の目的物件たる本件物件の評価額は合計金二百二十万円であつて消滅すべき債権額よりはるかに多いのである。そして、成立に争いのない甲第一号証および被告本人の供述によると、本件代物弁済の予約の約定においては、本件物件について代物弁済のときの評価額を定めていたが(この点は当事者間に争がない)、消滅すべき債務の額が本件物件の評価額より少なかつたときにおいて代物弁済の効果の発生すべき物件、すなわち所有権の移転を生ずべき物件の定め方についてはとくに約していなかつたことが認められる。このように、代物弁済の予約の目的となつた物件が多数あつて、しかもその評価額の合計が消滅すべき債権額より多いときには、予約完結権の行使による代物弁済の効果は、その債権額にもつとも近い価額の物件について生ずると解するのが相当である。けだし、すべての物件について代物弁済の効果を生ずると解するのは債務者に酷であり、反面対象物件が特定しないことを理由に代物弁済の効果を否定するのは債権者にとつて情なきに失するから、前記のように解するのが当事者の真意にも合致し条理にも適すると考えられるからである。

これを本件についてみると、消滅すべき債権額は金百四十万千六百八十円であつて、これにもつとも近い物件の価額は別紙目録第一記載の物件(評価額金百五十万円)であるから、同物件についてのみ訴外会社について更生手続開始決定前の昭和三十四年五月二日代物弁済の効果を生じて所有権は原告に移転したものと解すべきであり、その余の物件については代物弁済の効果は生じなかつたものということができる。

しかして、原告主張(四)の事実は当事者間に争いがない。

ところで、原告は本件予備的請求においては、本件代物弁済で取得した物件の評価額より、それによつて消滅した債権額を控除した残額については、これを被告に支払うのと引きかえに右物件の引渡を求めているところ、前顕甲第一号証および証人若井光雄の供述を綜合すれば、前叙のように右代物弁済の予約において、代物弁済予約完結権行使に関し本件物件につきことさら別紙目録記載のような評価額を定めたゆえんは、右物件の代物弁済の効果発生後、前記の残額と右物件の引渡とを同時履行の関係に立たしめ、もつて物件取得者に不当の利得を与えしめないことをも一つの理由としたものと認められるから、この点を考慮するときは、原告の主張する範囲内において、別紙目録第一記載の物件の評価額百五十万円より右代物弁済により消滅した債権額百四十万千六百十円を控除した残額九万八千三百二十円の交付と右物件の引渡が同時履行の関係に立つものとして、被告は原告より右金員を受けとるのと引きかえに右物件を引渡すべき義務はあるが、その余の物件を引渡す義務はないものといわなければならない。

なお、原告は被告管財人西村文次に対して何らの請求をもしていないのであるが、同人は、前段説示のように本件訴訟事件の終了に至るまでの間遂行すべき訴訟行為に限りその職務を行うことを得るにすぎないにしろ、右更生会社管財人であるから会社更生法第九六条の規定により右管財人奈良崎と共に被告の地位におかれざるをえず、また、右訴訟行為は、同法第九七条第一項の規定にしたがい、右管財人奈良崎と共同してのみ行うことを得るものであるところからみれば、原告の請求において被告管財人西村に対し、何らの請求をしないにもかかわらず、同人を被告としていることにつき、何らの違法のかどはないというべきである。

よつて、原告の請求は、その予備的請求中右の限度において正当としてこれを認容すべく、その余の請求及び本来的請求を失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、第九十二条、第九十三条を、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 中倉貞重 柳川俊一 奈良次郎)

物件目録

<省略>

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