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福岡地方裁判所小倉支部 昭和37年(ワ)507号 判決 1962年10月30日

原告 中山酉蔵

被告 国

訴訟代理人 樋口哲夫 外二名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

原告は「被告は原告に対し金一一万円及びこれに対する昭和三七年六月二〇日から完済まで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告の負担とする」との判決を求め、その請求の原因として、別紙訴状中の請求原因欄及び釈明書に記載してあるとおり述べた。

被告指定代理人は「主文第一、二項と同旨」の判決を求め、答弁として、「仮に原告主張のような事実があつたとしても、その当否は、宜しく上訴によつて争うべき性質のものである。よつて、原告の本訴請求は失当である」と述べた。

そこで考えてみるに、当裁判所としては、原告の本訴請求は、その主張自体に照らし、失当と判断するものである。その理由は次のとおりである。即ち、原告においては、色々と主張しているのであるけれども、要するに、結局のところにおいては、さきに原告が福岡地方裁判所小倉支部に対して提起した同庁昭和三六年(ワ)第二二七号事件及び同年(ワ)第五一八号事件に関し、当該事件を担当した山本茂裁判官が、事実を誤認し且つ判断を誤つたため、不当にも原告の請求を認容せずして、これを棄却し、以て原告に対しその訴額に相当する損害を与えたから、原告においては国家賠償法第一条第一項に則り被告に対し、これが損害金内金の賠償を求めるということに帰着するところ、当裁判所としては、仮に原告主張のような事実があつたとしても、現行法制下においては、その種の不当の是正は、当該判決に対する上訴の方法よつてのみなすべきものであると解するのが相当と考えるものである。ところで原告においては、裁判官は独立なのであるから、上訴によつて、その不当の是正を求め得る外、それとは別個に、本訴のような訴もまた許容さるべき筋合のものである旨の見解を持しているようであるが、裁判官が職務上独立であるという建前を重視し、その見地に立つて考えてみても、当裁判所の上記判断は、是認されこそすれ、決して排斥さるべき不当なものではないといわざるを得ない。なお、原告においては、前記裁判官の右事件審理中における言動につき、種々主張しているのであるけれども、原告主張のような言動は、仮にそれが存したとして、未だ以て原告に対する所謂不法行為を構成するに足るべき言動の程度にまでは、達していないものといわなければならない。そうすると、原告の本訴請求は、その主張事実が存在したと仮定しても、失当という外はない。よつて、その請求を棄却し、民事訴訟法第八九条を適用した上、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂上弘)

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