大判例

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福岡地方裁判所小倉支部 昭和44年(ワ)459号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕ところで被告らは本件交通事故の発生には亡智志において被告会社の業務命令に違反した過失が存するから損害額の算定につき斟酌さるべきであると主張するので考えるに、<証拠>を総合すれば成程亡智志は北九州市から鹿児島市までの運送業務に従事するに当り事前に被告会社の運行管理者である訴外尾田正人から往路は正運転手である同人が、復路は副運転手である被告薬師寺が夫々運転を担当すべき旨の業務命令を受けたに拘らず之に違反し、出発後約六時間を経た昭和四四年一月三一日午前二時頃熊本県三太郎峠附近において同被告と運転を交替したこと及び被告会社の運転業務命令は運転手の心身の健康状態、前日までの勤務状況等諸般の事情を考慮して発令されていることが窺知できるのであるが、右業務命令違反の事実のみを執えて被害者である亡智志に本件交通事故発生につき過失があると断ずるのは相当でない。けだし、正副の交替運転手による長期運転業務の執行において具体的な運転行為を孰れが担当するかは両者のその時の疲労度と心身状況に応じて適宜変更決定さるべき当該運転手(更にいえば上司としての正運転手)の裁量事項というべきであり、右裁量の余地を許さない会社の業務執行命令はその限りにおいて効力が無いと解すべきであるから、しかして被告薬師寺に運転交替するに当り亡智志に右裁量を誤つた注意義務違反が存したか否かについて充分の証拠がない本件にあつては、公平上業務命令違反の外形的事実を被告らに支払うべき慰謝料額算定の一要素として考慮すべきことは兎も角として、智志に被害者の過失が存したとすることはできず、この点の被告らの主張は採用しがたい。(鍋山健)

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