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福岡地方裁判所小倉支部 昭和45年(むの4)30号・昭45年(むの4)29号・昭45年(むの4)31号 決定

主文

本件準抗告をいずれも棄却する。

理由

一本件準抗告の趣旨及び理由は、別紙準抗告申立書記載のとおりである。

二一件記録によれば、被疑者らに対する頭書被疑事件について、昭和四五年六月一一日福岡地方検察庁小倉支部検察官から勾留場所をそれぞれ小倉、戸畑、八幡各警察署とされたい旨指定して勾留の請求がなされ、同日福岡地方裁判所小倉支部裁判官日野忠和により、勾留場所をいずれも小倉拘置所として各勾留の裁判がなされたことが認められる。

三ところで、被疑者を勾留する場合の勾留場所は、監獄法一条の趣旨からみて、原則として拘置監たる監獄とすべきであつて、代用監獄を勾留場所とするにはやむを得ない事情の存在を要すると解するのが相当である。そして、勾留本来の目的が被疑者の逃亡或いは罪証隠滅を防止するため一定の場所に隔離することにあって、捜査の便宜を図ることにはない以上、単なる捜査上の不便をもつて右のやむを得ない事情と目することはできない。もつとも、かく解するからと言って、やむを得ない事情として拘置監における人員の過剰や伝染病の発生等、拘置監での勾留を不相当とする場合のみを想定するのは狭きに失するというべく、勾留がすでに捜査段階において認められ捜査のための勾留が承認されている以上、勾留場所を拘置監とすることが捜査の不可能ないし著しい困難を招来するときも、なお右にいうやむをえない事情があるというべきであろう。

四これを本件についてみるに、記録によれば、本件はいわゆる暴力組織の構成員たる被疑者らほか数名による組織的、計画的な暴力事件とみられるが、被疑者らは事実をほぼ全面的に否認し、他の共犯者らの氏名や加功の態様等を明らかにせず、一方被害者らは現在もなお強く畏怖の念を抱いている状態であつて、事案の真相を明らかにするには今後被疑者被害者らのほか多数関係人の詳細な取調や被疑者ら立会の上の実況見分等を要することは容易に推察される。しかるに検察官の主張によれば、被疑者らの勾留場所たる小倉拘置所にはいわゆる面通しの設備はなく、対質による取調は原則として許可されず、実況見分等のための被疑者の押送は職員の配置上回数や距離に制約があり、また取調室が四室しかないため取調が輻輳することがあるというのであり、右の事情は同拘置所保安課長からの電話聴取書によつて疎明されるところである。しかしながら、記録によれば、(一)被害者らのうち既に取調を受けた二名は、被疑者らの全部または一部をかねて知つており、また写真によつていわゆる面割りがなされ、未逮捕の共犯者は別として現に勾留中の被疑者らについてはその特定に欠けるところはない。(二)被疑者ら相互または被疑者らと被害者らとの対質による取調が現在緊要か否か必ずしも明らかでない上、対質のために他に検察庁等適当な場所を求めることはさして困難ではないと考えられる。(三)実況見分の際の被疑者らの押送については、犯行場所が小倉区内で至近の距離にあり適切な時期を選び準備を整えることにより円滑に行うことも可能と考えられ、また取調室の問題は多少の時間待機することで解決するものと思われる。

五以上のとおり、被疑者らの勾留場所を小倉拘置所とすることが代用監獄たる警察署の留置場とすることと比較して捜査上、多少の不便を来すことはあるとしても、これが捜査の不可能ないし著しい困難を招くものとは認め難いから、前記のやむを得ない事情があるとは言えず、したがつて被疑者らの勾留場所を小倉拘置所とした原裁判には何ら違法もしくは不当の点はなく、本件準抗告は理由がないから、刑事訴訟法四三二条、四二六条一項後段を適用してこれを棄却することとする。

よつて主文のとおり決定する。(小河基夫 中田耕三 田川雄三)

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