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福岡地方裁判所小倉支部 昭和51年(ワ)439号 判決 1978年7月20日

原告

三宅ときわ

右訴訟代理人弁護士

安部千春

(ほか七名)

被告

社会福祉法人あさひ事業協会

右代表者代表理事

下原萬亀雄

右訴訟代理人弁護士

桑野四郎

主文

一  原告が被告に対し、労働契約上の地位を有することを確認する。

二  被告は原告に対し、昭和五一年四月一日以降毎月二五日限り月額金九万四、四六〇円の金員を支払え。

三  原告のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は被告人の負担とする。

五  この判決の第二項は仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  原告が被告に対し、労働契約上の地位を有することを確認する。

2  被告は原告に対し、昭和五一年三月二六日以降、毎月二五日限り月額金九万四、四六〇円の金員を支払え。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

4  第2項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  当事者の地位

被告は、社会福祉事業法に基づいて設立された社会福祉法人であって、北九州市小倉南区蜷田字柴崎六八三番地の四においてあさひ保育園を経営している者であり、原告は昭和四六年八月一日、被告に保母として雇用され、以後右あさひ保育園に勤務していた者である。

2  解雇の意思表示

被告は原告に対し、昭和五一年三月二五日、同日限りで原告を解雇する旨の意思表示を口頭でなした(以下この解雇を本件解雇と称する。)。

3  本件解雇の無効

然し乍ら、本件解雇は無効である。

4  原告の賃金

原告の本件解雇当時の平均賃金は月額金九万四、四六〇円であり、その支払方法は毎月一日から末日までの分を、その月の二五日に支払う定めであった。

よって、原告は被告に対し、労働契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、本件解雇の日の翌日である昭和五一年三月二六日以降の賃金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実中、被告が原告に対し、昭和五一年三月二五日解雇する旨の意思表示を口頭でなしたことは認めるが、その余は否認する。

本件解雇は同日限りではなく、同月末日限りのものであって、その際被告は原告に対し退職手当及び一ケ月分の予告手当の受領を催告したが、原告がこれらの受領を拒絶したので、後日供託した。

3  同3、4の事実はいずれも争う。

三  抗弁

本件解雇は、以下述べる理由から有効である。

1  従来あさひ保育園の定員は一五〇名であったが、昭和五〇年七月に市立蜷田保育所が開所し、同五一年五月には小鹿保育園が開所の予定であり、あさひ保育園から右両保育園に転所する園児が生じたばかりでなく、将来に亘っても入園希望者は減少し、定員の一五〇名に達することはないであろうとの見込から、昭和五一年一月一七日の被告理事会において、あさひ保育園の定員を同年四月一日からは一二〇名とする旨決議し、市の認可をも受けた。よって、市から支給される措置費の支給額も同日からは、減員に伴い減額されることとなった。

2  被告は、園児の収容人員(児童福祉法による措置入園児)に応じて市から支給される措置料と自由入園児が支払う保育料とを収入源とし、これにより諸費用を賄わねばならないが、右のうちでも市から支給される措置料が主たる収入源であるところ、前項記載の定数減により措置料の支給額が金二二六万五四八〇円減額されることとなり、経営上人件費を削減することが是非とも必要となった。そこで昭和五一年三月五日の理事会で、

(一) 保母二名を解雇する。

(二) 解雇基準としては、あさひ保育園の設立趣旨に添わない職員、勤務状況不良の職員を解雇する。

旨を決議した。

3  あさひ保育園は同和事業の一環として設立されたものであるが、原告は昭和四八年この職場で差別的言動をなしたことがあり、このことを起縁として研修会を催したこともあるばかりでなく、その他原告は他の職員の悪口を言ったり、常に遅刻勝ちで、さらには残飯を窓から捨て、これを他の職員に勧めたり、その他園児の保育態度に不当の点があるなど勤務状態が他の保母に比較し良くないことから、前項記載の解雇基準に該当するものとして原告を解雇したものである。

4  仮に本件解雇が無効であるとしても、原告は現に業務に従事していないので、その平均賃金の六〇パーセントに該当する金額についてのみしか請求できないものと解すべきである。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実中、昭和五〇年七月に市立東蜷田市民館保育所が、同五一年五月に小鹿保育園がそれぞれ開園したこと、あさひ保育園から右両保育園に転所した園児があったこと、昭和五一年四月一日からあさひ保育園の定員が一二〇名とされたことは認めるが、その余の事実は知らない。

あさひ保育園には昭和五〇年四月には措置児一五〇名、自由入園児三五名、合計一八五名が在園しており、その内一六名が蜷田市民館保育所に、一八名が小鹿保育園にそれぞれ転園したが、それでも転園児は合計三四名であり、一五〇名の定員を充分維持することができた筈である。

2  同2の事実はすべて知らない。

3  同3の事実中、あさひ保育園が同和対策事業の一環として設立されたものであることは認めるが、その余の事実はすべて否認する。

被告が原告に対し解雇の意思表示をなした際に、原告が解雇の理由の説明を求めたのに対し、被告は単に事業縮少というだけでそれ以上何の説明もしなかった。被告が原告を解雇した理由として差別発言その他の理由をもち出したのはその後であり、いずれも裁判対策として作りあげた虚構の事実と解される。

4  同4は争う。

五  再抗弁

1  被告は園児の定員を削減しなければ、人員整理の必要性はなかったものであるから、園児を募集するなどして定員削減を避けるべく努力すべきであったが、この努力を何らしていない。この園児を増やす努力が必要であったほかに、昭和五一年四月三〇日付で小鹿保育園に転園した一八名を慰留しておれば、原告を整理解雇する必要はなかったもので、転園して行った園児やその父兄にとっても転園に伴う経費や園児が折角あさひ保育園に馴れ親しんでいた点などを考慮すると、この慰留に応じたに違いないと推量され、そうでないとしても、できるだけ人員整理を避ける見地から慰留の努力をなすべきであったものと考えられる。

2  保育園の保母は結婚その他の理由によって自然退職が多い。あさひ保育園では保母の労働条件が劣悪なことも自然退職が多い一因となっている。従って自然退職を待てば、解雇の必要性は全くなかったのである。現にあさひ保育園では原告が解雇された昭和五一年四月以降今日迄の間に二名の退職者があり、事故で欠員となった一名の補充として計三名の保母を新たに採用している事実がある。

3  整理解雇という一方的手段を強行する前に、労働者にとって出来る限り苦痛の少い一時帰休或は希望退職者の募集などの方策を施行することにより余剰労働力を吸収する努力をなす必要があると考えられるところ、被告は希望退職者を募ることもなく、ある日突然に原告を解雇しており、このことだけからしても本件解雇は無効である。前項記載のとおりあさひ保育園では原告解雇後一年内に二名の保母が退職しており、一定の退職条件を出して希望退職者を募集しておれば、これに応ずる保母がいた可能性は充分にあったものといえる。

4  整理解雇を実施しようとする使用者は、労働者の責に帰すべからざる事由により解雇するものである以上、その経営状態について十分内容を示し、説明を尽くして人員整理の必要性を納得して貰うよう努力すべきである。かかる努力がなされずあるいは不充分なままなされた整理解雇は違法である。原告は福岡県幼児教育労働組合の組合員であるが、労働組合との協議も原告との話合いも全くなされないまま、原告は昭和五一年三月二五日突然解雇されたものである。

5  整理解雇が濫用にわたらないためには、整理基準及びこれに基づく人選の仕方が客観的且つ合理的であることが必要である。児童福祉施設最低基準八条は、児童福祉施設に入所している者の保護に従事する職員は健全な心身を有し、児童福祉事業に熱意のある者であって、できる限り児童福祉事業の理論及び実際について訓練を受け、且つこの省令又はその他の法令で資格を定めた職員以外の職員についても適当な資格を有する者でなければならないと規定しており、このことからしても解雇の対象者が資格を有するかどうかは重大な整理解雇の基準といいうる。原告は保母の資格を有しているが、あさひ保育園には無資格者が三名おり、解雇の必要性があれば、この無資格者から先に解雇すべきである。

6  児童福祉施設最低基準第五三条によれば、保母の数は、乳児又は満三歳未満の幼児概ね六人につき一人以上、満三歳以上四歳未満の幼児概ね二〇人につき一人以上、満四歳以上の幼児概ね三〇人につき一人以上とする旨定められているが、あさひ保育園の昭和五一年度の幼児数と保母数は二歳児一五名に対し保母二名、三歳児三二名に対し保母一名、四歳児二八名に対し保母一名、五歳児三二名に対し保母二名、以上合計園児一三七名に対し保母六名となっており、前記最低基準を上廻っているのは四歳児以上のみである。

さらに前記最低基準第四条は、児童福祉施設は最低基準を越えて常にその設備及び運営を向上させなければならないことを義務づけており、また最低基準を越えて設備を有し、又は運営をしている児童福祉施設においては最低基準を理由としてその設備又は運営を低下させてはならないことを義務づけられている。

本件解雇は右児童福祉施設最低基準第五三条もしくは同第四条に違反した無効のものである。

7  被告が原告を解雇したのは、原告が福岡県幼児教育労働組合の組合員であったからであって、本件解雇は明らかな不当労働行為である。

五  再抗弁に対する認否

再抗弁1ないし7の事実及び主張についてはいずれもこれを争う。

再抗弁5の事実に関しては、確かに本件解雇当時あさひ保育園には二人の無資格保母がいたが、その内一人は幼稚園教諭の有資格者であり、他の一人も保母試験の或単位の試験合格者で、二年内に全単位に合格すれば差し支えない旨の行政指導を受けているので、全くの無資格者とは言えない者である。

而して、実質的には資格の有無だけで一律に保母としての適、不適を論断することは正当でないと思料される。

第三証拠(略)

理由

一  当事者の地位について

被告が、社会福祉事業法に基づいて設立された社会福祉法人であって、北九州市小倉南区蜷田柴崎六八三番地の四においてあさひ保育園を経営している者であること及び原告が昭和四六年八月一日保母として雇用され、以後あさひ保育園に勤務していた者であることは当事者間に争いがない。

二  本件解雇の意思表示について

被告は原告に対し、昭和五一年三月二五日、解雇の意思表示を口頭でなしたことは当事者間に争いがない。

(証拠略)によれば、右解雇言渡しの際被告は原告に対し昭和五一年三月分の給料を渡し、同月末日限りで原告を解雇したものであることが認められる。

三  本件解雇の効力について

1  整理解雇に関する一般論

人員整理が原則として使用者の自由裁量に委ねられていることは異論のないところであるが、他面整理解雇は労働者にとって、自らの責めに帰すべき事由なく、いわば使用者側の一方的都合により、その生計の途を閉ざされる結果を導くものであるから、労働者の生存権を保護する見地に立ち、衡平の観念によれば、使用者の右裁量権にも自ら制約があるものと解され、これを逸脱した場合は解雇権の濫用として当該解雇は無効に帰すると解される。

そこで、具体的に整理解雇に関し如何なる場合が濫用に亘り、無効に帰するのかが問題となる。

まず、人員整理はこれ以外の措置を講じてどうしても企業を維持できない場合の最終的措置とされるべきで、できるだけ人員整理を避けるべく何らの努力もなされないまま、安易に実施された人員整理は濫用に亘るものと解される。それだけ人員整理を実施するには他の措置では間に合わないといった差し迫った必要性を要すると解するのが相当である。

さらに、人員整理が実施される場合においても、まず労働者にとってより打撃の少いと考えられる希望退職を募り、これによってはどうしても目的を達しえない場合に初めて指名解雇の措置を採ることが許されるに至ると解するのが相当である。

つぎに、人員整理就中指名解雇を実施する場合には、使用者は労働者ないし労働組合に対し、人員整理の必要性並びに整理解雇の場合にはその基準の内容等につき納得の得るよう説明を尽すべく、かかる努力をすることが労使間における信義則上要求されるものと解される。かかる説得の努力をなさないまま直ちにした解雇通告などはやはり解雇権の濫用に亘るものと判断される。

2  本件解雇と解雇権の濫用について

前項において述べてきたところを本件解雇に照らして、本件解雇が解雇権の濫用に及んでいないかにつき以下判断する。

(一)  本件解雇の必要性について

昭和五〇年七月に市立東蜷田市民館保育所が、同五一年五月に小鹿保育園がそれぞれ開園したこと及びあさひ保育園から右両保育園に転所した園児があったことは当事者間に争いがない。

(証拠略)によれば、あさひ保育園における昭和五〇年四月時点での園児の数は措置児一五〇名、自由契約児(定員超過分の自由契約児)三五名、計一八五名であったが、同年六月三〇日付で一六名の園児が前記東蜷田市民館保育所に転園したのでその後は園児数は計一六九名となったこと、その後同五一年三月に計六〇名の園児が卒園したのに対し、同年四月初めに入園した園児は計三五名にすぎなかった上、同月三〇月には前記小鹿保育園に計一八名の園児が転園して行ったので、その後の園児数は計一二六名となったことが認められ、この認定に反する証拠はない。

(証拠略)によれば、前記のとおり昭和五〇年六月末には東蜷田市民館保育所へ一六名の園児が転園し、同五一年五月には小鹿保育園の開園が見込まれる段階であった同五一年一月一七日、被告の理事会が開催され、東蜷田保育所の通園地区である東蜷田、山崎、上葛原及び小鹿保育園が設立される立岩地区はいずれもこれまではあさひ保育園の通園地域であったが、今後は右各地区から園児の入園はなくなるとの見込から、それまで定員一五〇名であったあさひ保育園の定員を一二〇名に削減することを右理事会で議決したことが認められ、さらに(証拠略)を併せ考えれば、前記理事会の議決に基づき、被告は北九州市に対し児童福祉施設変更承認申請(定員の変更)を同五一年三月一一日付でなし、これに対し同月一八日付で北九州市から被告に対し定数変更の承認がなされたことが認められ、これらの認定に反する証拠もない。

(証拠略)を総合すれば、あさひ保育園では措置児が多く、したがって、市から措置児の数(保育児の定員)に応じて支給される措置費がその主たる運営資金となるところ、これが前記定員削減に伴い減額されることとなったが、園児の減少に伴って、従前八名いた保母は六名でも足りることになったこと、従前から保育園の運営費に余裕はなく、前記措置費収入の減少に対処するには人件費の節減をもって対処する以外、他に削減できる経費も見当らないことから、昭和五一年三月五日、被告は理事会を開催し、二名の保母を整理することを議決したこと、被告は右議決に基づき、原告を含む保母二名を昭和五一年三月二五日解雇する旨の意思表示をしたことが認められる。

原告は、被告があさひ保育園の措置児の定数を前記のとおり一五〇名から一二〇名に減員したことに関し、その必要もないのに実施したもの、あるいは他保育園への転園を慰留する等の方法で減員をできるだけ避ける努力をなさなかったのであるから解雇の必要性は認め難い旨主張するので、この点につき判断するに、(証拠略)を綜合すれば、東蜷田市民館保育所あるいは小鹿保育園は保育園が少なく、幼児を六ないし七キロの遠隔地からあさひ保育園に通園させなければならない父母の不便を解消するのを目的として新設されたものであり、したがって前記のように転園したのはすべて新設保育園の近くに居住する者であったことが認められるのであるから、このためあさひ保育園への通園児の減少することはまことに致し方のないものといわざるを得ない。

したがって右防止策をとることなく人員整理をした被告の所為をもって不当とする原告の主張は採用することはできない。

以上の事実及び判断によれば、被告が二名の保母を人員整理する方針を決めたことは致し方のないものであり、その必要性を否定することはできないものというべきである。

(二)  本件解雇に至るまでの経過について

(証拠略)によれば、昭和五一年三月五日に開催された理事会において、前記のとおり保母二名の減員が決議されたと同時に、さらに原告他一名を指名解雇することにより右減員を実施することを決議したこと、右指名解雇の決議がなされた時点から原告に対し解雇の通告がなされた昭和五一年三月二五日まで、原告を含む職員や原告の属していた福岡県幼児教育労働組合に対して、人員整理のやむなきことにつき説明し、理解と協力を求める努力を一切していないこと、あさひ保育園においては原告を解雇した後ほぼ一年内に二名の保母の退職者があっ(ママ)ており、昭和五二年四月にはその補充のため新たに二名の保母を採用している事実が認められ、この認定に反する(証拠略)は採用の限りでなく、他に右認定を覆すに足りる証拠は見出し得ない。

而して右のような退職者があったことよりしても、昭和五一年三月に保母二名の人員整理の方針を決した段階で、何らかの有利な退職条件を付した上で希望退職を募っておれば、この募集に応ずる保母が存在した可能性が充分にあり、仮に結果的にこれがなかったとしても、直ちに最終的措置である指名解雇を実施する前に、まずこれよりも労働者にとって苦痛の少い希望退職募集の措置をとることが是非とも必要であったと解され、かかる経過的措置を採ることなく、前記のとおり人員整理の方針決定と同時に決定され、しかも従業員からみれば、事前に何らの予告も説明もないまま突如として、実施された本件解雇は、労使間の信義則に反し、衡平の見地からも、解雇権の自由裁量の範囲を逸脱した解雇権の濫用に該るものとして、本件解雇は無効のものといわざるを得ない。

(三)  本件解雇の効力に関する結論

以上(一)、(二)に記載のとおり、本件解雇については、人員整理の必要性は認められるものの、その実施の方法が労使間の信義則に反したものであって解雇権の濫用に該当するものであって、その余の本件解雇の効力に関する原告の主張につき判断するまでもなく、本件解雇は無効に帰着するものと判断せざるを得ない。

四  原告の賃金について

(証拠略)によれば、原告の昭和五一年一月から三月まで三ケ月間の平均給与月額は金九万四、四六〇円(94,960<1月分>+94,210<2月分>+94,210<3月分>)÷3=94,460(諸手当を含む。税、保険、掛金込。)であり、その支払方法は毎月一日から末日までの分を、その月の二五日に支払うこととされていたことが認められ、この認定に反する証拠はない。

被告は、原告は現にその業務に従事していないのであるから、仮に本件解雇が無効であるとしても被告に請求しうる給与額は平常時の六〇パーセントである旨主張するが、原告が被告の責に帰すべき事由により就労できない状況に置かされている本件の如き場合においては、被告の右主張が採用できないことは明らかである。

五  結論

以上の次第であるから、原告の被告に対する労働契約上の地位の確認の請求は理由があるからこれを認容し、次に本件解雇以降の月額金九万四、四六〇円の賃金の支払を求める請求については、昭和五一年四月一日以降の分の支払を求める部分についてのみ理由があるからこれを認容し、その余は失当であるからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条但書を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 諸江田鶴雄 裁判官 谷敏行 裁判官佐藤敏夫は転勤のため署名押印することができない。裁判長裁判官 諸江田鶴雄)

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