福岡地方裁判所甘木支部 昭和44年(ワ)24号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告日新産業が主張する免責の抗弁について判断する。
<証拠>を総合すると、次の事実が認められ、この認定をくつがえすに足りる証拠はない。
(一) 本件事故発生場所は福岡市方面から甘木市方面へ通ずる県道である。事故現場付近は直線、平たんな道路で、見とおしは良好である。道路の幅員は約7.5メートルで、路面はアスファルトで舗装されていた。本件事故当時は小雨が降つた直後で、路面は湿つていた。
(二) 被告大久保は、昭和四三年八月に被告日新産業が購入した積載定量一トンの甲車に約五〇〇キログラムのウレタン・レザー縫製物を積んで、時速約五〇キロメートルで福岡市方面から事故現場にさしかかつた。事故現場において甲車の先行車が急停車したため、同被告は直ちに急制動の措置をとつたが、甲車はその先行車に追突して停止した。同被告は、右追突と殆ど同時ぐらいに、自車の後部に衝撃を一回感じ、ついで約一秒後同所に二回目の衝撃を感じ、下車してはじめて本件事故を知つた。
(三) 被告高呂は、積載定量3.5トンの乙車に約2.5トンの魚類を積み、時速約五五キロメートルで福岡市方面から事故現場にさしかかつた。同被告は、先行する甲車が急停車し、これに被害車が追突するのを見て、直ちに急制動の措置をとつた。しかし、乙車は、進行方向やや左前方に約13.9メートル滑走し、甲車にヘッドライトをくいこませるようにして立つていた被害車に、その左前部バンバーを追突させ、甲車にその右前部バンバーを追突させた。右追突時には、正治は既に被害車から転落して路上に横たわつていた。
(四) 甲車の後部には被害車のヘツドライトが衝突した痕跡が残つており、また、正治の頭髪が二本ぐらい付着していた。
(五) 事故の直後、正治は乙車の直前に仰向けに転倒していた。その身体の一部は、地上からの高さ約六〇センチメートルの乙車の前部バンバーの下に入つていた。正治の頭部および顔面から出血していたが、その身体が乙車で轢過された事跡は認められなかつた。
右の認定事実を総合すると、正治は、被害車を運転して甲車の後方を進行していたところ、甲車と自車との間に安全な車間距離を保つていなかつたため、あるいは、進路前方に充分注意を払つていなかつたために、自車を甲車に追突させ、本件事故が発生したものと認めるのが相当である。すなわち、本件事故は正治の右注意義務を怠つた過失により起きたものというべきである。そして、右に認定した本件事故発生の状況に照すと、被告日新産業、同大久保に「本件事故発生との間に因果関係のある過失」のなかつたこと、甲車に「本件事故発生との間に因果関係のある構造上の欠陥、機能の障害」のなかつたことが明白である。
以上により、被告日新産業が主張する免責の抗弁は理由があるものと認められる。(妹尾圭策)