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福岡地方裁判所甘木支部 昭和44年(ワ)26号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、原告の要した治療及び後遺障害

<証拠>によると、原告は本件事故による傷害で、即時、県立朝倉病院に入院し、大腿骨骨折の接合手術を受けたが、骨折部分の癒合が遅く、昭和四三年四月六日(入院期間二九一日)退院し、引続いて昭和四三年四月一〇日から膝関節の拘縮治療のため浮羽郡吉井の原鶴後療法病院に入院し、専ら膝関節の機械矯正、機能訓練を受けることとなつた。ところが入院後二ヶ月を経過した頃同病院の機能訓練助手による右足膝関節の屈伸訓練中、骨折部がグッッという音を発し、原告はその後骨折部に疼痛と軽度の腫脹を覚えるようになり、以後の機能訓練を中止し、レントゲン検査をした結果、骨折部の癒合が不完全で接合部が離解していると判定され、数日後の昭和四三年六月一一日、久留米大学医学部附属病院に転医し、同月一三日、再度交通事故による骨折部の接合手術を受け、同月二四日同病院を退院し、同日から更に前記後療法病院で膝関節部の拘縮治療を受けたが、容易に軽癒する見込がなく、昭和四三年一〇月三一日右関節の屈曲度わずか一五〇程度のまま同病院を退院し、(入院期間一回目六三日、二回目一三〇日)その後前記朝倉病院に昭和四四年五月一二日に入院接合部から抜釘の処置を受けて同月二四日退院している外、右後療法病院退院直後から現在に至るまで勤務の傍ら甘木市の羽野はり灸師に通う一方、昭和四四年八月から福岡市内の指圧師にも通つているものの、右関節部の拘縮にはこれと言つた効果もないまま現在に至つており、原告の右関節の屈曲度は一五〇度で、約三糎の右足短縮による軽度跛行の後遺障害を認めることができる。

しかして、被告は、原告が久留米大学医学部附属病院で再度大腿骨接合手術を受けるに至つたのは、原告の過失に基く再骨折によるものである旨主張するけれども、右主張を裏付ける証拠はない。尤も前叙認定のように後療法病院での機能訓練中、骨折部に異常な音がし骨折部が離解している事実が発見され、再度骨接合手術を要するに至つたことが認められ、結果的には当初の骨接合手術による骨癒合が不完全なまま過度の膝関節屈伸などの機能訓練を施した節がないでもないけれどもそのことから直ちに同病院に療法上の処置につき過失があつたと認め難いばかりでなく、仮に過失があつたとしても被告が原告に負わせた骨折と別個独立の医療上の過失による骨折とは到底認められないから、その後原告が要した治療費、後遺症等につき、被告が免責される事由となるものではない。

二、免責の抗弁に対する判断

被告は右交通事故は専ら原告の過失にもとづくものである旨主張する。しかしながら<証拠>によると、事故現場直線では道路の巾員一〇、二米のうち、中央部分の六、三米巾がアスファルトで鋪装され、両脇は未舗装で車道と歩道の区別はない。被告は自動車を運転し右事故現場に差しかかつた際、その前方のアスファルト舗装が剥離破損し、巾一、〇米、長さ二、七米、深さ一五糎内外の水溜りの外大小数個の水溜りがあつて、それを避けて通る通勤、通学の自転車等を発見したので、ハンドルを大きく右に切り対向車の進路である鋪装部分右端一杯に迂回進行した。被告の右運転は対向車の進路を塞ぐことになるのであるから、進路前方に注視するのは勿論、徐行して対向車との衝突事故の発生を防止すべき義務があるのに、時速四〇粁で進行し、しかも水溜りを避けて進行する自転車等に気をとられ前方に対する注視が不充分だつたため、折から軽二輪車に乗り時速四〇粁位で対向して来る原告の発見が遅れ、急遽、急ブレーキをかけハンドルを左に切つたが、原告の軽二輪車を避けきれず、鋪装道路部分の右端からわずか五〇糎位の箇所で、被告自動車の前部右端フェンダー、右前輪ホイルキャップ部分で原告の二輪車右前部と衝突し、原告をその場付近に転倒させ前記の傷害を負わせたことが認められる。一方原告も直前まで被告車に気づかず、急ブレーキを踏むいとまもないまま、被告車に直進して衝突し、前方注視が不十分であつた点が認められるのであり、前方注視が十分であれば一瞬早くハンドルを左に切ることだけで未鋪装部分に逃れ、衝突を免れることが出来たと認められ、原告にもある程度の過失があつたと認めざるを得ない。しかし、本来の進路部分を通行する自動車運転者に対比し、対向車の進路部分を進行する運転者が、より事故の発生を回避するための注意義務を尽すべきであることは明らかというべきであり、原、被告の運転した車の種別や衝突の態様等に照し、両者の過失の割合は被告八割、原告二割と認定するのが相当である。被告の免責の抗弁は採用することができない。

三、原告はその外、昭和四五年一月以降本件最終口頭弁論期日以後に亘る一年半の見込治療費をも請求しているけれども、現在における原告の右膝関節の拘縮は固着し軽癒する見込は薄く、原告の後遺障害が現状のままであることを前提として後記の慰藉料ないし逸失利益を算定するものであるから、現在迄に証拠上明確に確定できない見込治療費は原告の蒙つた損害から除くのを相当とする。(松島茂敏)

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