大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡地方裁判所直方支部 昭和62年(モ)9号 判決 1989年3月24日

債権者

江守勲

右訴訟代理人弁護士

石井将

債務者

日本国有鉄道清算事業団

右代表者理事長

杉浦喬也

右訴訟代理人弁護士

村田利雄

杉田邦彦

右訴訟代理人

荒上征彦

滝口富夫

増元明良

利光寛

川田守

内田勝義

主文

一  当庁昭和六一年(ヨ)第二四号地位保全等仮処分申請事件について、当庁が昭和六二年一月一九日になした決定は、これを認可する。

二  訴訟費用は、債務者の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  債権者

主文と同旨

二  債務者

1  当庁昭和六一年(ヨ)第二四号地位保全等仮処分申請事件について、当庁が昭和六二年一月一九日になした決定は、これを取消す。

2  債権者の本件仮処分申請を却下する。

3  訴訟費用は、債権者の負担とする。

4  仮執行宣言(第1項につき)

第二当事者の主張

一  申請の理由

1  債務者は、従前日本国有鉄道法に基づき設立され、その名称を日本国有鉄道と称していたが、昭和六二年四月一日付をもって日本国有鉄道法改革法第一五条、同附則第二項、日本国有鉄道清算事業団法附則第二条により、その名称を日本国有鉄道清算事業団と変更した(以下、債務者を「国鉄」ともいう。)。

2  債権者は、昭和七年五月二〇日生まれであって、昭和三三年三月一日試用員運転係として国鉄九州総局九州地方自動車部(以下「九州地方自動車部」という。)直方自動車営業所(以下「直方営業所」という。)に採用され、昭和四七年一〇月一日同営業所運転係となり、後記懲戒免職処分発令当時までバスの運転業務に従事していた。

3  国鉄は、昭和五八年六月一七日付総裁達第一四号「職員等旅客運賃料金割引管理規程」第七条に基づき定められた同日付総文・旅達第一号「職員等旅客運賃料金割引基準規程」により、在勤職員に対し、(一)平素勤務に精励であると認めた場合、在職六か月以上の職員には「<職>割引券」と呼称されている職員用割引券が年一二枚交付され(但し、表彰あるいは懲戒処分等により右枚数には増減がある。)、(二)また、在職一年以上の職員にはその家族に対しても「<家>割引券」と呼称されている家族用割引券が年二〇枚交付(在職一二年以上にわたった場合には職員の父母にも有効とする割引券が年一〇枚加算されて交付。)されることとなっている(なお、前記規程によれば、右割引券の有効期間は毎年七月一日から翌年七月三一日とされている。)(以下「割引券」という。)。しかして、国鉄職員が割引券を使用する場合には(職員の場合には「<職>」、「<家>」いずれの割引券も使用可能)、駅及び駅旅行センターの国鉄窓口において、割引券に所定事項を記入して提出することによって、運賃ないし料金を一定率(五割)割引かれた乗車券を購入することになる。

4  債権者も、昭和六〇年度分(昭和六〇年七月一日から昭和六一年七月三一日までの間有効なもの。)の割引券として職員用一一枚、家族用二〇枚(その外父母用一〇枚)の交付を受けた。

5(一)  しかるところ、国鉄は、債権者が割引券を他の職員から譲り受け、そのうち数枚を不正に使用したこと等を理由に九州地方自動車部長緒方義幸を総裁代理として、昭和六一年七月一〇日日本国有鉄道法第三一条により債権者を懲戒免職処分に付する旨の意思表示をなし(以下「本件免職処分」という。)、以後、債権者との労働契約関係を否認している。

(二)  しかしながら、本件免職処分は無効であるから、債権者と債務者との間には労働契約関係が存在し、債権者は債務者から賃金を受ける法的地位にある。

6(一)  債権者の昭和六一年四月から同年六月までの平均賃金は、月額金三二万五〇六三円である。

(二)  債権者は家族(妻・次女)と同居し、債務者から支給される賃金を唯一の収入として生計を維持してきたものであるが、本件免職処分により右収入が断たれ、現在他に収入を得る方法はなく、右のような事態にあって、本案判決の確定を待っては回復し難い損害を蒙ることになる。

二  申請の理由に対する答弁

1  申請の理由1ないし4は認める。

2  申請の理由5(一)は認めるが、同5(二)は争う。

3  申請の理由6(一)は否認する。債権者の本件免職処分当時の賃金は、基本給(月額)金二七万二一〇〇円、扶養手当金九〇〇〇円、合計金二八万一一〇〇円である。同6(二)のうち、債権者が家族と同居していることは認めるが、その余は争う。

三  抗弁

1  昭和六一年二月二二日、一般の旅客が割引券を利用して購入した乗車券で新幹線に乗車していたので調査したところ、右割引券は、債権者が所属する直方営業所の或る職員が不正に使用させていたことが判明した。

2  そこで、同年三月ころ、九州地方自動車部は、九州総局の指導のもとに同自動車部管下の九営業所(直方営業所を含む)の全職場の割引券等の臨時監査を実施し、右監査と併行して個別的にその実態を調査したところ、大半の職員は未使用のまま個人がそれぞれ保管していたり、割引券の発行事務担当者が未発行のまま営業所あるいは支所に保管していたが、数名の職員が割引券の譲り渡し、譲り受け、他人名義の使用行使等の不正を行っていたことが判明した。

3  同年三月から四月にかけて、債権者に対する個別的事情聴取を行ったところ、債権者には昭和六〇年七月ころから昭和六一年一月ころまでの間に次のような行為があったことが判明した。

(一) 直方営業所運転係山本順久から、職員用六枚、家族用一五枚、合計二一枚の割引券を譲り受けた。

(二) 同営業所運転係斉原修から、職員用一二枚の割引券を譲り受けた。

(三) 前記譲り受けた割引券のうち、一、二枚を同営業所営業係池本隆昭に譲り渡した。

(四) 前記譲り受けた割引券のうち、八枚を自己において不正に使用した。

4  債権者の右の行為は、日本国有鉄道就業規則(以下「就業規則」という。)第一〇一条第一二号所定の「職務乗車証等の発行、行使等に関し不正な行為があった場合」及び同第一七号所定の「その他著しく不都合な行為があった場合」の各懲戒事由に該当し、さらに、職員管理規程第四一条(懲戒事由)第一二号所定の「職務乗車証等の発行、行使等に関し、不正な行為があった場合」及び同第一七号所定の「その他著しく不都合な行為があった場合」の各事由に該当することが明らかであり、また、右の如く多数の割引券を譲り受け、これを不正に使用する等その行為は特に悪質であり、全職員が一丸となって国鉄再建に取り組み、職場規律の確立のため全力を傾注している最中での不正行為であることから、慎重に検討した結果、懲戒免職処分が相当であると判断した。

5  そこで、債権者に対し、昭和六一年六月二六日懲戒処分通知書により免職処分の通知を行ったところ、債権者から同月三〇日懲戒処分異議申立(懲戒の基準に関する弁明弁護の開催)があったので、右弁明弁護の開催をしたうえ、債務者は債権者に対し、昭和六一年七月一〇日本件免職処分の発令を行ったものである。

四  抗弁に対する答弁

1  抗弁1、2は認める。

2  抗弁3のうち、冒頭の昭和六一年三月から四月にかけて債権者に対する個別的事情聴取を行ったこと及び同(一)、(二)は認めるが、同(三)、(四)は否認する。

3  抗弁4は争う。

4  抗弁5は認める。

五  再抗弁

1  九州地方自動車部は、前記昭和六一年二月の割引券不正使用事件発生以前において、職員間における割引券の譲り渡し、譲り受けについてこれを禁止する旨の通達等を発した事実は殆どなく、また、割引券の所持やその使途についての監査も殆ど実施されなかった。のみならず、職場では従前から管理者を含め割引券の職員間融通が行なわれており、管理者においてもそれを黙視していたことが推測され、割引券の不正使用につき懲戒免職処分となった例はないのであるから、前記昭和六一年二月の割引券不正使用事件発生を契機として割引券の取り扱いにつき厳正を期する必要性が生じたとしても、債権者の本件行為は、右事件発生以前になされたものであるから、それ相応の配慮がなされるべきである。

2  債務者は、本件免職処分の根拠として就業規則第一〇一条第一二号を挙示するが、そこにいう「職務乗車証等」とは、九州総局職務乗車証等取扱基準規程による「乗車証等」を指するものと考えられ、本件のような割引券については指定されていないものと考えられる。従って、債権者の本件行為をもって同号に該当するとして懲戒処分をすることはできない。

3  債権者は、昭和三三年に国鉄職員として採用されて以来二八年間勤務してきた者であり、国鉄労働組合(以下「国労」という。)の組合員としての組合活動を理由に処分されたことがある外は個人的な非違行為により懲戒処分を受けたことはない。

4  本件免職処分により、債権者は二八年間の勤務の代償たる退職金を支給されることもなく、退職年金にも相当額の減額をもたらされ、その不利益は大きい。

5  九州地方自動車部では、近年労使関係が険悪となり、不当労働行為・人権侵害が続発しているが、債務者主張の割引券の取り扱いに関して債権者に対してなされた個別的事情聴取の経緯に照らせば、本件免職処分が選択された背景には、債権者の組合活動に対する嫌悪及び債権者を中心に団結していた国労直方自動車分会の弱体化の意図がうかがえる。

6  国鉄においては、職務乗車証、割引券等が職員の労働条件の重要な要素であり、また、低賃金を補充し、福利厚生を補うという基本的性格をもつものである。

7  国鉄とその職員の間には、民間の私企業と同じ懲戒法理が妥当する。即ち、国鉄は公法人ではあるがその事業の本質は私企業による鉄道事業等の経営と同様であって国家権力の行使とは直接関連がない。従って、国鉄職員に対する懲戒処分は行政庁が公権力の行使として行なう行政処分とはその本質を異にし、公務員に関する懲戒法理は妥当しない。

8  以上の諸点を考慮すれば、本件免職処分は過酷であり、社会通念上も著しく妥当性を欠くものであって、その有する懲戒権を濫用するものであるから、右免職処分は無効である。

六  再抗弁に対する答弁

1  再抗弁1、2は争う。

2  再抗弁3のうち、債権者が国鉄職員として二八年間勤務してきた者であることは認め、その余は否認する。

3  再抗弁4のうち、本件免職処分により退職金が支給されないことは認めるが、その余は争う。

4  再抗弁5ないし8は争う。

5  国鉄においては、従前から鉄道乗車制度があり、各種乗車証等を発行していたものであるが、国鉄の経営の悪化、膨大な赤字等の発生から鉄道乗車証制度について批判があったところ、昭和五七年七月三〇日臨時行政調査会がなした第三次答申のなかのイ項(キ)において、「永年勤続乗車証、精勤乗車証及び家族割引乗車証を廃止する。その他職員にかかわる乗車証については、例えば通勤区間に限定するなど業務上の必要のためのみに使用されるよう改める。また、国鉄以外の者に対して発行されているすべての乗車証についても廃止する。なお、他の交通機関との間に行われている相互無料乗車の慣行を是正する。」との答申がなされ、さらに、同年九月二四日閣議決定された「国鉄の再建を図るために当面緊急に講ずべき対策について」の6において、「乗車証制度の見直し」として、「職員の乗車証は、通勤用及び業務上必要な範囲に限定するとともに、その他の鉄道乗車証制度についても原則として廃止する。」との提言がなされた。それを受けた国鉄は、早急にその見直しに着手し、昭和五八年六月一日付総裁達等により全国的な制度の改正を行った。右改正により従来から多種多様にのぼっていた乗車証が整理され、「職務乗車証」「職務遂行書」「乗車券(無賃)」「職員家族等運賃料金割引券」(割引券)等が存続することとなった。

6  しかして、その存続が認められたのは、それら職務乗車証、割引券等を全廃することは、経済的観点から見ても職員・家族に重大な影響があり、廃止に対する労働組合・職員からの反発もあり、全廃となれば職員の働く意欲を減退させ、その結果業務の円滑な運営を損うことにもなりかねないなどの事情を考慮した結果によるものである。従って、以上のように存続が認められた職務乗車証、割引券等は右改正の経緯に照らし不正行為に対しては厳格に対処することが前提条件とされているものである。

7  右の次第であったから、従来から職員に対し通達等で職務乗車証、割引券等の使用に際しては厳正を期するよう再三にわたり注意してきたところである。仮に、割引券等の取り扱いにつき業務監査を懈怠していたとしても、そのことが管理・監督者の手落ちであるとしても、業務監査の有無は本件免職処分の効力に直接関係はない。

8  債権者は、就業規則第一〇一条第一二号所定の「職務乗車証等」とは九州総局職務乗車証等取扱基準規程による「乗車証等」を指し、割引券については規定されていないと主張するが、同規程は職務乗車証のみに関する規定であるので割引券を含まないのは当然のことである。割引券は、乗車証等関係規程集において、「職務乗車証」「乗車券(無賃)」等とともに収められており、割引券が乗車証等に該当することは明らかである。従って、債権者の本件行為は就業規則第一〇一条第一二号所定の「職務乗車証等の発行、行使等に関し、不正な行為のあった場合」に該当するものである。

9  国鉄は、鉄道事業等を経営し、能率的な運営によりこれを発展せしめ、もって公共の福祉を増進することを目的として設立された公法上の法人であり、また、その資本金は全額政府の出資にかかり、さらに、その事業は全国に及ぶものであって、極めて高度の公共性を有するものであり、その職務に対する社会の信用、信頼は厚く、一般私企業の職務に比較して一段と高い信頼が寄せられ、適切な職務執行が期待されているのである。従って、公共の職務に関し不正の行為があった場合には、その事業の運営のみならず、その事業のあり方自体に対する社会の信頼が損なわれ、その結果秩序が乱され、その事業の運営に悪影響を及ぼすことが考えられるのである。それ故、国鉄の職員に職務上の不正行為があった場合、一般私企業の職員の場合と比較してより厳しい処分がなされたとしても、その処分には合理的な理由があると言わねばならない。

第三疎明関係(略)

理由

第一被保全権利

一  申請の理由1ないし4及び同5(一)については、当事者間に争いがない。

二1  抗弁1.2については、当事者間に争いがない。

2  抗弁3のうち、冒頭の昭和六一年三月から四月にかけて債権者に対する個別的事情聴取を行ったこと及び同(一)、(二)については、当事者間に争いがなく、同(三)、(四) については、(証拠略)により疎明が得られ、これに反する本件疎明資料は採用しない。

3  抗弁4については、(証拠略)により疎明が得られる。

4  抗弁5については、当事者間に争いがない。

三  債権者は、再抗弁において本件免職処分は過酷であり、社会通念上も著しく妥当性を欠くものであって、その有する懲戒権を濫用するものであるから、右免職処分は無効であると主張するので、以下検討する。

1  債務者は、昭和五七年七月三〇日臨時行政調査会のなした第三次答申、同年九月二四日閣議決定による提言を受けて、昭和五八年に鉄道乗車証制度の全面的な改正を行ったが、その際にも職務乗車証、割引券等が国鉄の業務の円滑な運営を考慮した結果その不正行為に対しては厳格に対処することを条件に存続することとなった旨主張する(再抗弁に対する答弁5.6)。しかしながら、右改正後の職務乗車証についてみるに、(人証略)並びに弁論の全趣旨によれば、職務乗車証とはいっても当該職員の現実の職務とは直接関係なく交付されていることの疎明が得られ、また、割引券についてみても(証拠略)総合すれば、現実には割引券の交付を受けない職員がおり、交付を受けた場合でも大半の職員はその全部を使用することがなかったことの疎明が得られるところ、右のような取り扱いは前記臨時行政調査会の答申、閣議決定の提言の趣旨に沿った取り扱いとは思われず、右のような取り扱いはその後においても改善されたことをうかがうに足りる疎明はなく、また、(証拠略)によれば、前記改正による鉄道乗車制度の発足に際して職務乗車証の厳正な使用について職員に対し通達したことの疎明が得られるけれども、その後においてそれらの通達がなされたことの疎明は存在せず、(証拠略)に照らせば、職務乗車証にあってはその利用可能区間を私的に利用することは黙認され、割引券にあっては職員間で譲り渡し譲り受けがある程度行なわれており、そのことを了知していた管理者もいたことがうかがわれる。更には、債権者の本件行為は、前記昭和六一年二月の割引券不正使用事件発生以前のことであること前記のとおりであり、債権者の本件行為と同様の態様による割引券の不正使用が発覚した場合の懲戒処分につき、昭和六一年二月以前においては免職処分が選択されたことを一応認むべき疎明は存在しない。

2  債務者が主張する如く、就業規則第一〇一条第一二号及び職員管理規程第四一条第一二号所定の「職務乗車証等」の中には割引券も含まれるものであるとしても、(証拠略)に照らせば、前記厳正な使用の通達は、職務乗車証を主眼としていたものとみるのが相当である。

3  債権者は、国鉄職員として二八年間勤務してきた者であり、本件免職処分により退職金は支給されないことは当事者間に争いがなく、弁論の全趣旨によれば、債権者はこれまで懲戒処分を受けたことは一度もなく、懲戒を行う程度に至らない訓告処分を一、二回受けたに過ぎないものであることの疎明が得られる。

4  債務者が主張する如く、国鉄職員の不正行為については一般私企業の職員の場合と比較してより厳しい処分がなされるべきであるとしても、(証拠略)中の東京地方裁判所昭和五八年(ワ)第一三一二号事件(団体交渉応諾義務確認請求事件)の被告たる本件債務者(国鉄)は、同事件において、乗車証制度(鉄道乗車証制度)の性質につき、「過去において被告が発行していた乗車証には各種のものがあるが、その内容はいずれも一定の事由により公共性の強い国鉄の運賃を免除するというものであるから、これらの乗車証の発行は公共財産である企業体の経営を委ねられている被告がその事業運営上の必要等に応じて適切な判断の下に行う裁量に委ねられているものである。そして、こうして発行された乗車証を交付されたことによって職員が受ける利益は、ひとえに被告の業務運営についての裁量による事実上の利益にすぎないのである。」旨主張するところであるから、割引券についても右と同様に国鉄の業務運営についての裁量による事実上の利益であるとみることができるとすれば、割引券の右のような性質と債権者の本件行為が職務上の不正行為でないことも本件免職処分の効力を判定するにつき考慮すべきことがらである。

5  以上の諸点を総合すれば、債権者の本件行為が多数枚の割引券の不正使用であり、国鉄において職場規律の確立のため全力を傾注している最中での不正行為であることを考慮しても、本件免職処分が社会通念に照らし合理性を有するものとはいえず、債務者が有する懲戒権を濫用したものであって、無効であるというべきである。

第二保全の必要性

申請の理由6(一)、(二)について検討するに、同(一)のうち、債権者の本件免職処分当時の賃金は基本給(月額)金二七万二一〇〇円、扶養手当金九〇〇〇円を支給されていたこと及び同(二)のうち、債権者は妻と次女の三人家族であることは当事者間に争いがなく、右の外、債権者は主として債務者から支給される賃金によって生計を維持しているものであること、債権者の賃金による収入、妻及び次女の労働による収入、その他の財産(積極・消極)等、(証拠略)並びに弁論の全趣旨によりうかがわれる事情を考慮し、賃金の仮払いについては一か月金二五万円(但し、本案第一審判決の言渡に至るまで)の限度で保全の必要性があるものと一応認め、その余は理由がなく保証をもって疎明に代えさせることも相当でない。

第三結論

以上により、当庁昭和六一年(四)第二四号地位保全等仮処分申請事件について、当庁が昭和六二年一月一九日になした決定はこれを認可することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条、第九二条但書を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 森弘)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例