福岡地方裁判所飯塚支部 平成3年(ワ)60号 判決 1997年12月25日
原告亡甲田A夫訴訟承継人(以下、単に「原告」という。)
甲田良枝
外四名
右五名訴訟代理人弁護士
小宮学
被告
高住鉱産株式会社
右代表者代表取締役
住吉徳光
被告
東洋建設工業株式会社
右代表者代表取締役
住吉徳光
右両名訴訟代理人弁護士
阿部明男
被告
株式会社永田工業
右代表者代表取締役
永田久夫
被告兼被告亡構木敏行訴訟承継人(以下、単に「被告」という。)
構木光裕
被告亡構木敏行訴訟承継人(以下、単に「被告」という。)
構木ユキ子
外一名
右四名訴訟代理人弁護士
吉村拓
主文
一 被告株式会社永田工業は、原告甲田良枝に対し金八一〇万三三〇一円、その余の原告らに対し各金二〇二万五八二五円、及び右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告構木光裕は、原告甲田良枝に対し金八一〇万三三〇一円、その余の原告らに対し各金二〇二万五八二五円、及び右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告構木ユキ子は、原告甲田良枝に対し金四〇五万一六五〇円、その余の原告らに対し各金一〇一万二九一二円、及び右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告構木優子は、原告甲田良枝に対し金二〇二万五八二五円、その余の原告らに対し各金五〇万六四五六円、及び右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 原告らの被告高住鉱産株式会社及び同東洋建設工業株式会社に対する各請求、並びに被告株式会社永田工業、同構木光裕、同構木ユキ子及び同構木優子に対するその余の請求をいずれも棄却する。
六 訴訟費用は五分し、その二を原告らの負担とし、その余は被告株式会社永田工業、同構木光裕、同構木ユキ子及び同構木優子の負担とする。
七 この判決は仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 原告らの請求
一 被告高住鉱産株式会社は、原告甲田良枝に対し金一一八一万二九〇〇円、原告山田恭子、同甲田国代、同甲田昇及び同山田美津子に対しそれぞれ金二九五万三二二五円、並びに右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告東洋建設工業株式会社は、原告甲田良枝に対し金一一八一万二九〇〇円、原告山田恭子、同甲田国代、同甲田昇及び同山田美津子に対しそれぞれ金二九五万三二二五円、並びに右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告株式会社永田工業は、原告甲田良枝に対し金二二九九万九三九三円、原告山田恭子、同甲田国代、同甲田昇及び山田美津子に対しそれぞれ金五七四万九八四八円、並びに右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告構木光裕は、原告甲田良枝に対し金一一八一万二九〇〇円、原告山田恭子、同甲田国代、同甲田昇及び同山田美津子に対しそれぞれ金二九五万三二二五円、並びに右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告構木ユキ子は、原告甲田良枝に対し金一一四九万九六九六円、原告山田恭子、同甲田国代、同甲田昇及び同山田美津子に対しそれぞれ金二八七万四九二四円、並びに右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
六 被告構木優子は、原告甲田良枝に対し金五七四万九八四八円、原告山田恭子、同甲田国代、同甲田昇及び同山田美津子に対しそれぞれ金一四三万七四六二円、並びに右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
一 事案のあらまし
被告高住鉱産株式会社(以下「被告高住鉱産」という。)は炭鉱跡地において埋立工事を行い、被告東洋建設工業株式会社(以下「被告東洋建設工業」という。)及び被告株式会社永田工業(以下「被告永田工業」という。)は右工事を下請けし、構木商店こと構木敏行は被告永田工業からさらに下請けしていた。本件は、原告らが、被告東洋建設工業の建設機械オペレーターであった原告らの被相続人亡甲田A夫(以下「A夫」という。)が、右埋立ての作業中、動かなくなったブルドーザーの下にもぐり込んで修理していたが、右ブルドーザーがその欠陥により勝手に動き出したため、そのキャタピラーに手足を挟まれて下敷きになっていたのに、構木商店の従業員であった被告構木光裕(以下「被告光裕」という。)が右ブルドーザーを動かしてA夫を轢き傷害を負わせたと主張して、被告光裕に対して不法行為に基づき、被告高住鉱産、被告永田工業及び被告構木敏行承継人らに対して使用者責任に基づき、被告東洋建設工業に対して安全配慮義務違反に基づき、それぞれ損害の賠償を求めたものである。
二 争いのない事実等(証拠によって認められる事実は証拠を掲げる。)
1 当事者(争いがない。)
(一) 被告高住鉱産は、法定鉱物の採掘並びに販売及び水洗炭業等を目的とする会社で、福岡県鞍手郡宮田町大字磯光字榎木所在の貝島炭鉱露天掘跡地の埋立工事(以下「本件埋立工事」という。)を実施していた。
(二) 被告東洋建設工業は、土木建築請負業等を目的とする被告高住鉱産の関連会社で、本件埋立工事において、被告高住鉱産から請け負って重機部門の工事をしていた。
(三) 被告永田工業は、土木工事業及び建築工事業等を目的とする会社で、本件埋立工事において、被告高住鉱産から請け負ってトラック部門の工事をしていた。
(四) 亡構木敏行(以下「敏行」という。)は、構木商店の商号で建設業を営んでいたが、本件埋立工事において、被告永田工業の下請工事をしていた。
敏行は、平成五年九月二三日死亡し、妻である被告構木ユキ子、子である被告構木優子及び同光裕(以下、右被告ら三名を「被告構木ら」という。)が相続した。
(五) 被告光裕は、構木商店の従業員であったが、本件事故当時、ブルドーザーの運転資格がなかった。
(六) A夫は、被告東洋建設工業の従業員で、建設機械のオペレーターをしていた者であるが、平成九年七月二日に死亡し、妻である原告甲田良枝と子であるその余の原告らが相続した。
2 事故の発生
次のとおり、本件埋立工事現場で事故(以下「本件事故」という。)が発生した。
(一) 日時 昭和六三年一二月一六日午前九時ころ(争いがない。)
(二) 場所 福岡県鞍手郡宮田町大字磯光字榎木所在の本件埋立工事現場(争いがない。)
(三) 事故態様 (甲一、乙イ七、証人貝嶋一回及び二回、承継前被告A夫本人一回及び二回)
(1) A夫は、被告高住鉱産の現場責任者であった貝嶋栄一(以下「貝嶋」という。)から、本件埋立工事の第一現場(以下「第一現場」という。)を整地し、右終了後は第三現場(以下「第三現場」という。)へ行くよう指示を受けた。右指示に基づき、A夫は、当時運転を任されていたブルドーザー(以下「本件ブルドーザー」という。)で第一現場整地終了後、本件ブルドーザーを運転して第三現場に向かった。
(2) A夫が、第一現場から約一〇〇メートル移動し、第二現場近くの緩やかな下り坂にさしかかった際、突然本件ブルドーザーのクラッチペダルが固くなり、クラッチが切れにくくなった。そこで、A夫は、オイルが漏れているのではないかと考えて、本件ブルドーザーの下にもぐり込んで点検を始めたところ、本件ブルドーザーが約二メートル自走したため、左の手足がキャタピラーに挟まれて動けなくなった。約四〇分後、被告光裕は、A夫に気付かず、本件ブルドーザーが停車したままでは作業に差し支えるとこれを運転してA夫を轢いた。A夫は、同日一二時一五分ころ、貝嶋によって本件事故現場で発見された。
(四) 傷害結果(争いがない)
本件事故の結果、左開放性モンテジア骨折、左第七肋骨骨折、左下腿裂創、左肺挫傷、右前頭部打撲、右下腿外傷、腹部挫傷、左膝内側側副靭帯損傷、両下肢リンパ浮腫、左大腿有痛性瘢痕腫瘤等の傷害を負った。
三 争点及び争点についての当事者の主張
1 被告光裕の過失の有無
(一) 原告ら
(1) ブルドーザーの運転資格がないこと
被告光裕は、労働安全衛生法によって定められたブルドーザーの運転資格を持たなかったのに、本件ブルドーザーを運転して本件事故を起こしたのであるから、不法行為(民法七〇九条)に基づき、その生じた損害を賠償する責任がある。
(2) 安全確認義務違反
被告光裕は、本件ブルドーザーの原動機が作動したままで、第一現場から第二現場への移動途中の場所に停まっていたのであるから、本件ブルドーザーを運転するにあたっては、本件ブルドーザーの前後左右等の安全確認を十二分に尽くす必要があったのにこれを怠り、右安全確認を尽くさないまま漫然と運転進行させてA夫を轢いたのであるから、不法行為(民法七〇九条)に基づき、その損害を賠償する責任がある。
(二) 被告光裕
(1) 被告光裕は、本件ブルドーザーを運転するにあたり、A夫の所在を探し、かつ、本件ブルドーザーの前後を確認したのであって、十分に安全を確認した。
(2) 被告光裕が本件ブルドーザーを確認した際、エンジンが掛かったままで、ブレードが地面から浮いていたし、地面が泥土状態で本件ブルドーザーが少し埋まった状態になり車体下部の見通しが悪くなっていた上、右のとおり前後を確認したところ人が見あたらなかったことに加え、ブルドーザーの下に人がいるとは通常考えられないことであるから、A夫が本件ブルドーザーの下敷きになっていることを予見することは不可能であった。
(3) 資格を有しない者による運転それ自体がただちに過失となるものではない。
2 敏行の責任の有無
(一) 原告ら
敏行は、被告光裕を雇用していたところ、被告光裕の本件ブルドーザーの運転は、敏行の事業の執行につき行われたものであるから、被告光裕の使用者としての地位(民法七一五条)に基づき、本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。
(二) 被告構木ら
(1) 敏行の責任について
敏行は、被告光裕にブルドーザーの運転を指示したことはないし、被告光裕が本件ブルドーザーを運転することは予測できなかった。
(2) 被告光裕の過失について
1(二)のとおり、被告光裕に過失はない。
3 被告永田工業の責任の有無
(一) 原告ら
(1) 被告永田工業は、本件埋立工事において、被告高住鉱産から請け負ってトラック部門の工事をしていたが、敏行が営む構木商店に下請けの工事を依頼していた。
(2) 被告永田工業は、自己の従業員である堀内を現場責任者とし、堀内を通じ、構木商店に対し、その日に使用する車の台数、作業内容などを指示していた。したがって、被告永田工業の指揮監督権限は、構木商店の従業員である被告光裕に及んでいたというべきであるから、被告永田工業は、被告光裕の実質的使用者としての地位(民法七一五条)に基づき、本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。
なお、被告永田工業は、被告光裕に対し、ブルドーザーの無資格運転禁止の安全教育を行っていなかったから、この点でも使用者責任を免れることはできない。
(二) 被告永田工業
(1) 被告永田工業と敏行(構木商店)との関係は請負関係であり、被告永田工業は、敏行に対し、単に作業の手順等の指示をしていただけで指揮監督の関係はない。
(2) 本件事故現場での実質的監督は、被告高住鉱産が従業員の貝嶋を通じておこなっていた。
4 被告高住鉱産の責任の有無
(一) 原告ら
(1) 被告高住鉱産は、本件埋立工事において、被告永田工業に対し、トラック部門の工事を請け負わせていたが、被告永田工業は、敏行が営む構木商店に右工事の下請けを依頼していた。
(2) 被告高住鉱産は、自社の毛勝事業所所長吉田(以下「吉田所長」という。)及び同事業所次長船津(以下「船津次長」という。)に本件埋立工事現場の巡回をさせており、現場責任者として貝嶋を置いていた。したがって、被告高住鉱産は、吉田所長、船津次長及び貝嶋を含む課長四名で、被告永田工業、構木商店、被告光裕を指揮監督しており、被告光裕の実質的使用者としての地位(民法七一五条)に基づき、本件事故により生じた損害を賠償する責任がある。
なお、被告高住鉱産は、被告永田工業の下請け業者の従業員である被告光裕に対し、ブルドーザーの無資格運転をしないよう注意し、これを事前に防止する注意義務があるのにこれを怠っていたから、この点でも使用者責任を免れることはできない。
(二) 被告高住鉱産
(1) 被告高住鉱産の指揮監督関係について
被告高住鉱産は、被告永田工業との間で、本件埋立工事における運送契約を締結しており、配車依頼と運搬先の所在に関する指示の外、無車検車の使用や無免許運転がないように車検証と免許証の写しの提出を予め求めていたが、右運送に必要なダンプトラックの配車、運転等に関する管理監督等の運行管理は、運行管理者である被告永田工業が行っていた。したがって、被告高住鉱産は、被告永田工業、構木商店及び被告光裕に対し、管理監督の地位にあったことも、管理監督をしたこともない。
(2) 被告高住鉱産の責任について
本件事故は、本件ブルドーザーが運転手不在のまま放置されていたのを見た被告光裕が、これを移動させようとしてとっさに運転したことに起因する。被告永田工業のもとでダンプトラックの運転手が無資格でブルドーザーを運転したことはなく、被告高住鉱産にとって、被告光裕が本件ブルドーザーを運転することは予見不可能なことで、相当の注意をしても結果を回避できなかった。
(3) 被告光裕の過失について
1(二)のとおり、被告光裕に過失はない。
5 被告東洋建設工業の責任の有無
(一) 原告ら
本件ブルドーザーは、クラッチ機能及びブレーキ機能に欠陥があった。被告東洋建設工業は、A夫をブルドーザーの運転業務に従事させるにあたり、信義則上、雇用契約に付随する義務(安全配慮義務)として、安全なブルドーザーを提供する義務があるのに、点検を疎かにしていたため欠陥のある本件ブルドーザーを提供したのであるから、右義務違反として、A夫の被った損害を賠償する責任がある。
(二) 被告東洋建設工業
本件ブルドーザーには、クラッチ機能にもブレーキ機能にも異常はなかった。
6 損害
(一) 原告ら
(1) 財産的損害
① A夫の休業損害
一一八〇万八〇三六円
A夫は、本件事故により、本件事故の日から症状固定日である平成三年一〇月三一日までの一四四六日間の休業を余儀なくされたが、その労災給付基礎日額(休業補償・障害補償年金)は、八一六六円であり、これは事故前三か月の平均賃金額であるから、これを一日当たり得べき収入として計算すると、一一八〇万八〇三六円の休業損害を被った。
八一六六円×一四四六日=一一八〇万八〇三六円
② A夫の逸失利益
一三三五万三八五九円
A夫は、健康に就労していたが、本件事故により、障害等級五級(労働者災害補償保険法施行規則別表第一、以下同じ。)に認定され、一〇〇分の七九の労働能力を喪失した。A夫は、平成九年七月二日に死亡したが、症状固定日の翌日から右死亡前日までの二〇七〇日間就労可能であったから、前記給付基礎日額(休業補償・障害補償年金)からすると、A夫は本件事故により一三三五万三八五九円の利益を失った。
8166円×2070日×0.79=1335万3859円
③ 損益相殺
労働者災害補償保険法による保険給付(以下「労災給付」という。)を受けた場合は、損害が填補されたものとしてその給付の価値の限度において損害額が減縮するものと解されるが、特別支給金は、損害を填補する性質のものではないから、損害額から控除されない。
A夫の受領した休業補償給付金は四八二万八九四五円で、損害補償年金は八五一万四一六四円である。
A夫の財産的損害から右休業補償給付金及び障害補償年金を控除すると、一一八一万八七八六円になる。
(一一八〇万八〇三六円+一三三五万三八五九円)
−(四八二万八九四五円)+(八五一万四一六四円)
=一一八一万八七八六円
(2) 慰謝料 三〇〇〇万円
A夫は、本件事故により三六六日間入院し、前記のとおりの後遺障害が残存し、その後は一生涯通院予定であったところ、両足の痛みと歩行困難を生じ、平成九年七月二日、前途に絶望して自殺した。A夫の入・通院慰謝料及び後遺症慰謝料としては、三〇〇〇万円が相当である。
(3) 弁護士費用 四一八万円
原告らは、弁護料として、損害額合計四一八一万八七八六円の一割に相当する四一八万円の支払を約した。
(4) A夫の死亡と原告らの相続
① A夫は、本件事故により、右のとおり、合計四五九八万八七八六円の損害賠償請求権を取得したが、前記のとおり死亡した。
② 原告甲田良枝は、A夫の妻であるから、A夫の損害賠償請求権のうち二二九九万九三九三円を相続した。
その余の原告らは、A夫の子であるから、それぞれA夫の損害賠償請求権のうち五七四万九八四八円を相続した。
③ 被告光裕、同高住鉱産及び同東洋建設工業に対する請求は一部請求である。
(二) 被告構木ら及び同永田工業
(1) 過失相殺
本件事故は、自走の危険もある坂道でブレーキもかけず、かつ、ブレードを地上に接着させず、ブルドーザーの下に入ったというA夫の重大な過失により発生したものであるから、過失相殺すべきである。
(2) 損益相殺等
A夫が受領した労災給付金は本件損害金から控除されるべきである。仮に控除されない部分があるとすれば、その部分は慰謝料の事情として斟酌されるべきである。
(三) 被告高住鉱産及び同東洋建設工業
(1) 過失相殺(本件事故の原因について)
本件事故は、自走の危険もある坂道でブレーキもかけず、かつ、ブレードを地上に接着させず、ブルドーザーの下に入ったというA夫の重大な過失により発生したものであるから、A夫の過失を八割とみて過失相殺すべきである。
(2) A夫の受領した労災給付金は、原告らの自認する休業補償給付金、障害補償年金の外、休業等の特別支給金も、全て損害を填補するものというべきである。
第三 当裁判所の判断
一 前記争いのない事実、証拠(<書証番号略>、検証、証人貝嶋一回及び二回、同新枦勝信、承継前被告A夫本人一回及び二回、被告光裕本人、被告永田工業代表者)及び弁論の全趣旨によれば、次のとおり認められる。
1 本件埋立工事における当事者らの関係
(一) 本件埋立工事の内容
(1) 被告高住鉱産は、貝島炭礦株式会社から本件埋立工事を請け負って、ボタ山のボタを再洗炭し石炭とボタに選り分けるという水洗炭業を行い、これによって残った水洗ボタで露天掘跡地の埋め戻し作業を行っていた。
(2) 右作業の手順は、ボタをボタ山から水洗プラントまで運び、ここで洗炭してできた製品炭を貯炭場に運び、残った水洗ボタを埋立地に運ぶというもので、いずれもダンプトラックで運ぶが、水洗ボタの埋立地への運搬はベルトコンベアも使用していた。ボタ山及び水洗プラントで、ダンプトラックにボタや製品炭を積み込む作業及び埋立地で運ばれた水洗ボタを押す作業には重機が使用されていた。
(二) 当事者らの作業内容
(1) 被告高住鉱産は、本埋立工事のうち、運搬作業を被告永田工業に請け負わせ、重機によるボタの積込みや埋立地で水洗ボタを押す作業などを被告東洋建設工業に請け負わせており、自らは専ら水洗プラントの操業を行っていた。
(2) 被告永田工業は、ダンプトラックを所有しておらず、実際には下請業者に運搬作業をさせていたが、構木商店はその下請業者のうちの一つで、被告光裕は、右作業をするダンプトラックの運転手であった。
(3) A夫は、被告東洋建設工業の従業員で、事故当時、埋立地において、運ばれた水洗ボタをブルドーザーで押す作業を行っていた。
2 本件埋立工事における指揮監督関係
(一) 被告高住鉱産の管理体制
被告高住鉱産は本件埋立工事現場に毛勝事業所を置いており、所長は吉田、次長は船津、技術課長が河野、小池及び貝嶋、事務課長が祝井であった。吉田所長及び船津次長は、水洗プラントや本件埋立工事現場全般の管理を、課長の河野及び小池は、水洗プラントにおける水洗機械の運転管理を、貝嶋は、本件埋立工事の現場の責任者で、ボタ等の積込み作業や埋立現場でのならし作業など重機関係の管理をそれぞれ行っていた。
また、被告高住鉱産は、被告永田工業に対し、無車検車の使用や無免許運転がないよう、ダンプトラック等の車検証と免許証の写しの提出を求めていた。被告永田工業は、これを受けて下請業者らに対し、車検証と免許証の写しの提出を求め、これを貝嶋に提出していた。
(二) 本件埋立工事における運搬に関する指示
貝嶋は、被告高住鉱産の毛勝事務所や隣接する被告永田工業の事務所や現場で、被告永田工業に対し、ボタの採取先、製品炭や水洗ボタの運搬先、あるいはこれらを運搬するダンプトラックの台数の指示をしていた。被告永田工業は、この指示に基づき、下請業者らに対し、同内容の指示を出していた。具体的なダンプトラックの運行の割り振りは、被告永田工業の堀内が貝嶋と相談して決めていた。構木商店に対する必要ダンプトラックの台数や作業内容の指示も堀内がしていた。
(三) 本件埋立工事における重機に関する管理
(1) 被告高住鉱産と被告東洋建設工業は姉妹会社であり、本件埋立工事においては、被告高住鉱産及び被告東洋建設工業が、それぞれPC三〇〇というブルドーザーを一台ずつ所有し、被告東洋建設工業が、キョーエイレンタリースから、D五〇Pと呼ばれるブルドーザーと0.7と呼ばれる掘削機械を借りていた。右の重機は、機械ごとに運転手がほぼ固定されており、A夫は専属的にD五〇Pを運転していた。
(2) 本件事故当時、本件埋立工事の現場に被告高住鉱産及び同東洋建設工業の重機運転手は四人いたが、重機運転手は、毎朝、重機を点検して貝嶋に報告し、貝嶋はその結果を車両系建設機械運転日報及び点検表という書面にまとめて記載していた。
(3) 被告高住鉱産は、本件埋立工事現場における重機の運転は、無免許ではできないことを自社の従業員、被告東洋建設工業の従業員及び被告永田工業に対して注意していた。被告永田工業はこれを受けて従業員に右注意をしていた。
3 本件ブルドーザーの不具合等
(一) 本件ブルドーザーの不具合
(1) A夫の運転していたD五〇Pと呼ばれるブルドーザーは、本件事故の一二、三日前にクラッチの具合が悪くなり、キョーエイレンタリースに点検してもらったが、異常がないということであった。
(2) 本件事故後、本件ブルドーザーは、エンジンオイルが漏れていたので修理された。この時、クラッチの点検もされたが、異常は発見されなかった。
(二) 本件ブルドーザーの構造等
(1) 本件ブルドーザーのクラッチペダルは、油圧が低下すると固くなることがあるが、通常、この場合はオイルを補充しなければ回復しない。本件ブルドーザーのクラッチオイルとエンジンオイルとは行き来しない構造で、仮にエンジンオイルが漏れて減少したとしてもクラッチには影響しない。
(2) 本件ブルドーザーは、ブレーキペダルを踏んでブレーキをかけ、その上でブレーキロックレバーを引いておかなければブレーキペダルが戻りブレーキが効かなくなるが、油圧式(倍力装置付)ではないから油圧の低下が原因でブレーキロックがはずれることはないし、ブレーキロックレバーを引いておけば、ブレーキの効きの深さ浅さに関係なく、ブレーキロックがはずれることはない。
4 本件事故の発生
(一) 本件事故現場の状況
(1) 本件埋立工事現場は、一部ベルトコンベア等の工作物があるが、全体的に貯炭場や埋立地であって見通しは良い。本件埋立工事現場は、本件事故の前日から雪が降り、雪が五センチくらい積もって地面が柔らかくなっていた。
(2) A夫が、次の(二)のとおり、点検のために本件ブルドーザーを停めた場所は、ブルドーザー一台が通れるくらいの道幅で、やや急な坂を下ってきて平坦になる手前あたりの箇所である。右坂道の下の方を向いて右側は高くなっており、左側は低くなっている。
(二) 本件事故に至るA夫の行動
(1) A夫は、本件事故当日、作業現場を見てから毛勝事務所に帰り、本件ブルドーザーを点検した。A夫は、エンジンをかけてみるなどして、本件ブルドーザーの足回り、クラッチ、ブレーキ、オイルの量などを二〇分くらいかけてチェックしたが、異常が認められなかったのでその旨貝嶋に報告した。
(2) A夫は、本件事故当日の午前八時〇五分ころ、D五〇Pと呼ばれる本件ブルドーザーを運転して、埋立地で水洗ボタを押す作業に入った。A夫は、約二〇分で第一現場の整地を終え、その後第三現場に向かった。
(3) A夫は、第一現場から約一〇〇メートルくらい移動して(一)(1)の本件事故現場にさしかかった際、本件ブルドーザーのクラッチペダルが固くなったので、オイル漏れの可能性を考えて点検することにした。
(4) A夫は、本件ブルドーザーを停め、ブレードを少し浮かせたまま本件ブルドーザーの下にもぐり込んで点検を始めたが、そうして間もなく本件ブルドーザーが一、二メートル動き、左の手足をキャタピラに挟まれ動けなくなった。A夫は、抜けだそうとしたができなかったので、助けが来るまで待つことにした。A夫は、途中、近くに被告高住鉱産の河野課長が通りかかったので呼んだが気付いてもらえなかった。
(三) 被告光裕の本件ブルドーザーの運転
被告光裕は、本件ブルドーザーのほぼ正面方向でダンプトラックによる運搬の作業をしていたが、午前九時ころになって、本件ブルドーザーが停車していることに気付いた。被告光裕は、本件ブルドーザーが朝から作業をしていたのにその後動いていなかったことから不審に思い、停車している本件ブルドーザーの様子を見に行ったところ、本件ブルドーザーのエンジンはかかったままで、その前後を見ても運転手は見あたらなかった。被告光裕は、埋立地に水洗ボタが運ばれているのにこれを押すブルドーザーが停まったままであって、その後の運搬などの一連の作業に差し支えると考え、自ら水洗ボタを押す作業をするため本件ブルドーザーを動かしたが、その際、本件ブルドーザーの下敷きになっていたA夫に気付かず轢き、A夫は前記争いのない事実等記載の傷害を負った。被告光裕は、A夫を轢いたことに気付かないまま、本件ブルドーザーを第三現場まで移動させ、そこで水洗ボタを押す作業を行っていた。
5 本件事故後の経緯
(一) A夫の発見
貝嶋は、重機運転の資格を持たない被告光裕が本件ブルドーザーを運転していることを聞き、これを止めさせようと本件ブルドーザーの所まで行った。貝嶋は、被告光裕がA夫の所在を知らないというので、第一現場付近に停められていたA夫の自動車の所へ向かったが、途中、本件事故当日午後零時一五分ころ、本件事故現場で轢かれて倒れているA夫を発見した。
(二) 治療、後遺障害
A夫は、本件事故で前記争いのない事実等記載の傷害を負い、事故日の昭和六三年一二月一六日から平成元年一二月一六日まで三六六日間入院し、その後死亡するまで通院を要した。平成三年一〇月三一日に症状固定となったが、傷害等級五級の後遺障害を残した。
(三) 労災保険給付
A夫は、労災保険から、給付基礎日額を八一六六円として、休業補償給付を四八二万八九四五円、障害補償年金を八五一万四一六四円受給し、その外、療養給付や療養費用、休業特別支給金等の特別支給金を受給した。
二 被告光裕の過失の有無について
(一) 前記の事実関係によれば、本件ブルドーザーは朝から作業していたのに途中から、エンジンがかかったままで、前記のように作業に関係なくかえって他の重機等の通行に支障を生ずるような場所に停まっていたのであるから、まれに見る状況にあり、しかも、本件ブルドーザーの周囲を確認するのに障害となるものはなかったのであるから、被告光裕は、本件ブルドーザーを運転するにあたり、その不自然さからも本件ブルドーザーの下を含めて十分に周囲の安全を確認して運転すべき注意義務があるのにこれを怠り、周囲の安全を十分に確認しないまま運転した過失により、その下敷きになっていたA夫を発見できずにこれを轢いてしまったものというべきである。なるほど、本件ブルドーザーの停っていた場所は、ブルドーザー一台が通れるくらいの道幅の坂道で、しかも、前日からの雪で地面が柔らかくなっていたことなどから、本件ブルドーザーが少し地面に沈んだり泥による汚れで物や人の判別が困難であったとしても、前記状況下で本件ブルドーザーを運転するにあたっては、その前後のみならず、その下の安全も十分に確認して運転すべきものというべきである(なお、被告光裕がブルドーザーを運転する資格がないのに運転したことが不法行為であるかのような原告らの主張については、無資格運転が右安全確認が不十分となるべき要因になるべきものであったとしても、そのこと自体が事故を引き起こしたというわけではないから、右主張は理由がない。)。
(二) 他方、A夫は、クラッチの具合が悪くなって点検のため本件ブルドーザーの下にもぐり込んだところ、ブルドーザーが自走して左手足をキャタピラーに挟まれていたものであるが、仮に下にもぐり込んで点検する必要があるのであれば、ブルドーザーの下敷きになるなどの事故のないよう安全に十分注意して、例えば、平坦な場所で、ブレードを地面に接着させ、第三者の立会いを求めるなどすべきであったのにこれを怠り、A夫は、自分一人で、前記のとおりの坂道に本件ブルドーザーを停め、ブレードも地面に接着させていなかったのであるから、ブルドーザーが自走してキャタピラーに左手足を挟まれ、確かに他からは発見されるのが容易でない下敷きの状況を自招し、したがって、本件事故の発生につき、A夫の本件ブルドーザーの下に右注意を尽くさないままもぐり込んだ行為にもその原因が帰せられるものというべきである(なお、承継前被告A夫本人尋問の結果中には、ブレードを地面に接着させなかったのは、本件ブルドーザーの左側の路面に土があり、それ以上降ろせなかったからである、との供述部分があるが、およそ除去が困難とはいえない土の存在からブレードを降ろすことができなかったとはいえない。)。
(三) 右のとおり、本件事故は、被告光裕とA夫の過失が競合して発生したものというべきであり、右両名の行為や本件事故の状況、態様からすると、その過失割合は、前者が七割、後者が三割と認めるのが相当である。
三 敏行の責任の有無について
被告光裕は、構木商店の従業員であるが、構木商店が運搬した埋立用の水洗ボタが溜まってきているのに本件ブルドーザーは停車したままで運転手も見あたらなかったため、その後の運搬などの一連の作業に差し支えると考えて本件ブルドーザーを動かしたもので、現にその後本件ブルドーザーで水洗ボタを押す作業を行っていたのであるから、被告光裕の本件ブルドーザーを運転する行為は、本来の業務に含まれていないものであったとしても、構木商店の事業の執行につきなされたものである。そして、被告光裕は、右経緯から本件ブルドーザーを運転したのであって、被告敏行が相当の注意を尽くしたとはいえない。したがって、敏行は、被告光裕の使用者として、本件事故により生じたA夫の損害を賠償する責任がある。
四 被告永田工業の責任の有無について
前記のとおり、被告永田工業の堀内は、被告高住鉱産の貝嶋の指示に基づき、構木商店を含む下請業者らに対し、ボタ等の運搬に関する場所、量等を現場において指示していたし、具体的なダンプトラックの運行の割り振りも貝嶋と相談して決めていた上、構木商店に対する必要ダンプトラックの台数や作業内容の指示も毎日堀内がしていたことからすると、たとえ、被告永田工業と構木商店との関係が請負契約によるものであったとしても、被告永田工業が、実質的に、構木商店の従業員を指揮監督していたものというべきであって、被告永田工業は、被告光裕の実質的使用者として、本件事故により生じたA夫の損害を賠償する責任がある。
なお、原告らは、ブルドーザーの無資格運転禁止の安全教育を行っていなかったことをもって本件事故による損害の賠償責任を認めるべきであるかのようにいうが、無資格運転の安全教育を怠ったことは独立の責任原因になるというわけではない。
五 被告高住鉱産の責任の有無について
貝嶋は、被告永田工業に対し、前記のとおり、運搬の目的物の採取先、運搬量、運搬先などに関する指示をしていたが、この指示は、ボタの採取先が複数あり、製品炭や水洗ボタの運搬先が工事の進展に伴って移動していくような本件埋立工事現場においては、請負契約の注文者として当然必要なもので、また、この指示がなければ請負人も作業ができないものである。そして、貝嶋の指示は、右の程度の指示であって、運行車両、運搬担当者、作業内容等、具体的な作業の管理に関する事項にわたるものとはいえず、貝嶋のこの程度の指示をもって、被告高住鉱産が被告光裕を実質的に指揮監督していたものということはできないから、被告高住鉱産に本件事故による損害を賠償する責任を認めることはできない。
被告高住鉱産が、被告光裕に対し、実質的に指揮監督を行っていたとはいえないのであるから、ブルドーザーの無資格運転を事前に防止する注意義務を怠っていたかどうかに関わらず、被告高住鉱産の責任は認められない。
六 被告東洋建設工業の責任の有無について
前記のとおり、重機は普段から当該重機担当の運転手が毎日点検して貝嶋に報告しており、本件事故当日もA夫が本件ブルドーザーを点検して異常がなかった上、本件ブルドーザーは、本件事故の一二、三日前に業者によって点検を受けた際も、本件事故後に点検を受けた際も、いずれもクラッチには異常が見出されなかったし、本件事故では被告光裕が実際にブルドーザーを運転しており、また、本件ブルドーザーのブレーキは、油圧の低下が原因でブレーキロックがはずれることはなく、ブレーキロックレバーを引いておけば、ブレーキの効きの深さ浅さに関係なく、ブレーキロックがはずれることはないのであるから、これらからすると、本件ブルドーザーのクラッチ及びブレーキに機能上の欠陥や異常があったとはいえず、したがって、本件ブルドーザーを提供した被告東洋建設工業に安全配慮義務違反があるとして本件事故による損害を賠償する責任を認めることはできない。
七 損害について
1 財産的損害
(一) 休業損害
八五七万四三〇〇円
A夫は、本件事故によって、本件事故の日から症状固定日まで、一〇五〇日間の休業を余儀なくされ、一日に得べき収入は八一六六円であったものであるから、その間少なくとも八五七万四三〇〇円の休業損害を被ったものである。
八一六六円×一〇五〇日=八五七万四三〇〇円
(二) A夫の逸失利益
一三三五万三八五九円
A夫は、昭和八年六月六日生まれで、本件事故前、健康に就労していたが、本件事故により、障害等級五級に認定されたから、一〇〇分の七九の労働能力を喪失したものとし、症状固定日の翌日から死亡前日(六四歳と二六日)までの二〇七〇日間就労可能であったというべきで、一日に得べき収入は前記のとおりであったから、A夫は本件事故による後遺障害により一三三五万三八五九円の利益を逸失したものである。
8166円×2070日×0.79=1335万3859円
2 慰謝料 一八〇〇万円
A夫は、本件事故により障害等級五級に認定され、前記のとおり、約一年間入院後、生涯通院を要したところ、平成九年七月二日、自殺したものであるから、これらの事情からすると、A夫の慰謝料としては一八〇〇万円が相当である。
3 過失相殺
二七九四万九七一一円
前記のとおり、本件事故におけるA夫の過失割合は三割であるから、A夫の損害額は二七九四万九七一一円となる。
(857万4300円+1335万3859円+1800万円)×0.7=2794万9711円
4 損益相殺
一四六〇万六六〇二円
A夫は、労働者災害補償保険により、休業補償給付金四八二万八九四五円、障害補償年金八五一万四一六四円を受給したから、その限度で損害が填補されたものとして損害から控除することとし、その他に特別支給金を受給しているが、これは損害を填補する性質のものではないから、損害額から控除しないものとして計算すると、A夫の残損害額は一四六〇万六六〇二円になる。
二七九四万九七一一円−(四八二万八九四五円+八五一万四一六四円)=一四六〇万六六〇二円
5 A夫の死亡と原告らの相続
A夫は、平成九年七月二日に死亡した。原告甲田良枝は、A夫の妻であるから、A夫の損害賠償請求権のうち七三〇万三三〇一円を、その余の原告らは、A夫の子であるからそれぞれA夫の損害賠償請求権のうち一八二万五八二五円を相続した。
6 弁護士費用 一六〇万円
本件事案の内容等からすると、本件事故と相当因果関係のある弁護士費用相当額は一六〇万円(原告甲田良枝につき八〇万円、その余の原告らにつき各二〇万円)と認めるのが相当である。
7 被告構木らの相続
敏行は死亡し、敏行の債務につき、被告ユキ子が二分の一、被告構木優子及び同光裕が各四分の一ずつ相続した。
八 以上からすれば、原告甲田良枝の各請求のうち、被告光裕及び被告永田工業に対する各八一〇万三三〇一円、被告構木ユキ子に対する四〇五万一六五〇円、被告構木優子に対する二〇二万五八二五円、及び右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員の限度で、その余原告らの各請求のうち、被告光裕及び被告永田工業に対する各二〇二万五八二五円、被告構木ユキ子に対する一〇一万二九一二円、被告構木優子に対する五〇万六四五六円、及び右各金員に対する昭和六三年一二月一七日から支払済みまで年五分の割合による金員の限度で、それぞれ理由があるから認容し、その余の請求につき理由がないから棄却することとして主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官江口寛志 裁判官関美都子 裁判官善元貞彦)