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福岡地方裁判所飯塚支部 昭和44年(ワ)111号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕アサエの逸失利益

<証拠>によれば、亡アサエは本件事故当時五三才四月の殆んど病気したこともない健康な主婦で、五人家族の家事に従事していたほか、田二反半、畑二反の耕作もしていたこと、右田畑は同女が主として耕作していたが、原告武夫もその勤めから帰宅後又は休日ないし農繁期などに右耕作の三分の一程度の手伝をしていたこと、右田からは米一八俵の収穫があり、畑にはキャベツ等の野菜裁培により年間四千円ないし五千円の収益を得ていたこと、当時米一俵七、八〇〇円で田一反を耕作するには二五、〇〇〇円位の経費を要したこと等の事実が認められ、右事実によれば、アサエの農業従事による年間収益は少くとも次の算式によつて得られる、

の金五四、〇〇円に過ぎず、右農業収益を基準に同女の逸失利益を算定するには著しく低額で適当でなく、同女の家事労働の方がむしろその比重が大きいものと推認されるので、この点も考慮して右をを算定すべきところ、本件においては右家事労働につきこれを算定すべき適切な具体的事実につき主張、立証も存しない。しかし特別の事情なき家事労働に従事する主婦にも死亡に伴う逸失利益による損害発生を肯認するのが相当と解すべきであるから、農業又は家事類似の労働に従事する女性の賃金ないし女子有職者の収入を考慮して具体的損害額を算定するほかはないところ、労働大臣官房労働統計調査部発行の昭和四三年度賃金構造基本統計調査報告によれば、日本の全企業における五〇ないし五九才の女子有職者の平均月収は三三、八〇〇円で、その生活費は月一五、七〇〇円であることが認められ、また前掲各証拠によれば飯塚市付近の農業労働者の事故当時頃の日給が一、二〇〇円であることが認められ、右事業に関しアサエの農業兼家事に従事して得ていた利益を金銭に見積れば、少くとも原告ら主張にかかる月金三万円を下らないものと解するが相当であり、又生活費についても農家であることや同市付近の生活水準に照せば月一万円をもつて相当と認める。また<証拠>に照すと、アサエは少くとも七〇才に達するまでの一六年八月の間右農業兼家事に従事することが出来たものと認められ、<証拠判断略>。

以上の事実に従い、アサエの稼働可能年数を一六年として同女の死亡による逸失利益を年五分のホフマン式計算法により算出すれば

(30,000円−10,000円×12月×

11,536(ホフマン係数)≒2,768,000円となり同女は右相当額の損害を蒙つたことになる。 (川本隆)

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