福岡地方裁判所飯塚支部 昭和44年(ワ)3号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕休業に伴なう逸失利益
<証拠>によれば次の事実が認められる。即ち、
(1) 原告は事故当時五八才の男子で第一生命保険相互会社に保険外交員として勤務し、事故前一年間(以下の平均額もこの期間による)月平均約八二、四〇〇円の収入を得ていた。
(2) 原告は本件受傷により昭和四二年九月四日から昭和四三年四月三〇日までの約八ケ月間右保険外交に従事しえず、保険契約募集が全く出来なかつた。
(3) 原告の受納する給与体系は主として本俸、加俸、勤勉、募集、継続及び期末の各手当から成り立つている。
(4) 原告は右休業期間中、事故当時受給していた本俸、加俸及び勤勉手当の合計額に相当する金二六、三〇〇円を特別手当等の名目で毎月受給していたので右本俸等に対応する収入減はなかつた。
(5) 右期間中募集手当及び継続手当の支給も受けているが、前者は保険契約を取得した翌月から右取得に対する報酬として一回ないし一三回に繰延べ分割支給されるもの、後者は従前募集した契約につき一定条件の成就によりその二年後に支給されるもので、休業期間中の右受給はいずれも休業以前の募集に対する報酬たる性質を有するものである。従つて休業による右各手当の減収は現実にはその翌月以降二年間位にわたり生ずることになる。なお原告は従前月平均三三、六〇〇円の募集手当及び月平均四、四〇〇円の継続手当の各支給を受けていた。
(6) 期末手当も契約取得高を勘案して支給されるところ、事故後一年間に原告の得た同手当合計額は、事故前一年間のそれより金七七、七〇〇円の減額となつている。
以上のとおり保険外交員たる原告の給与は過去の成績によつて左右される極めて安定しないものであり、休業による損失額を算定するに当つては比較的長期に亘る収入を平均化して検討するのが妥当であるが、本件においては結局少くとも募集、継続及び期末の各手当の減収による喪失額をもつて逸失利益額に相当すると認めるのが妥当であり、右休業による原告の逸失利益は次の算式
(33,600+4,300)×8月+77,700=
380,900円
によつて得られる金三八〇、九〇〇円をもつて相当とし、右は本件事故と相当因果関係にあるものと認められるから、原告は右相当の損害を蒙つたものといえる。
(川本隆)