大判例

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福岡家庭裁判所 事件番号不詳 決定

少年 M(昭和一三・一一・二一生)

主文

少年を特別少年院に送致する。

理由

(罪となるべき事実)

少年は別紙犯罪一覧表記載のとおり他一名乃至三名と共謀のうえ、昭和三十一年七月十五日頃より昭和三十三年一月九日頃までの間に、五十四回に亘り福岡県粕屋郡粕屋町大隈の田地等五十四ヶ所の電柱に各架設してあつた、九州電力株式会社福岡支店箱崎営業所長角本藤市外三名等が夫々管理していた高圧線等の電線合計六十四点(時価合計二百二万八千六百七十九円相当)をペンチで切断して各窃取したものである。

(適条)

刑法第二百三十五条、第六十条

(要保護性)

少年は六才にして実父を喪い後十才の頃実母が少年等三児をつれて現在の義父と再婚したので、以後右義父と生活を共にする様になつたが、右義父は少年等のことを顧みなかつたばかりでなく生活の困窮にも拘らず酒を好み、且酒乱の傾向があつて飲めば少年等近親の悪口を言い、為に家庭の不和は絶えず少年等と義父との心理的葛藤は強かつた。又義父と実母との間に子供が生れてからは生活は増々苦しくなり、右の如き複雑な家庭環境も加わつて小学校六年時における欠席は全出席日数の半分以上にも及び小学校卒業後は食糧品店等に住込み稼働する様になつて中学校には全く出校していない。

二、右の如く少年は物心両面に恵まれない不遇な家庭環境に成育したが、その間家庭における教育は見るべきものがなく且つ学校教育も充分でなかつたことから社会常識が乏しくて思考判断の能力に劣り、無批判軽卒な行動にはしるようになつている。

三、又性格的にも意思が弱く自己不確実性不安定性即行性過感性無力性に変調が認められ、総じて社会性の発達が未熟で自我の確立を欠き、心的不安定感が強いことも加わつて被影響性を強めている。

四、而して少年の非行初発は当時本件共犯者溝口健雄(成人)の誘惑により発生したのであるが、これが成功した事に気を良くして以後次々と非行を繰返えし約一年半に亘る職業的とも思えるその累非行から次第に倫理感が鈍麻し、その非行性は当初の追随的なものから次第に自発的なものへと変り、その反社会性は相当根強いものとなつている。

五、加えて右非行によつて得た金銭はその殆どを競艇、パチンコ、遊廓への登楼等の遊興に供して放埒な生活を送りその改善は早急には期待し難い。

又本件非行発覚後義父の生活態度は幾分改変されてはいるが、稼働能力は劣り、その家計は一層貧困化しつつあると同時に幼少時からの少年との対人関係も早急に解決し得べきものでなく、又一方実母は少年に対して愛情はあつても教養なく且病弱であるところからその保護能力は見るべきものがない。

(処遇)

本件は少年の帯有する反社会性ないしは非行傾向が相当根強く保護処分の対象としては著しくその適格性欠をくものとして少年法二十条により検察官に送致され福岡地方裁判所で審理された後再び少年の経歴資質等に照し、少年の更生をはかる措置としては保護処分によるのが望ましいものとして少年法第五十五条により移送されたものである。

而して前記諸事情の下にあつては、在宅保護により少年の更生を企てる事は困難であるのでこの際少年院に送致して適切な矯正教育を施してその社会適応能力を賦与し、その間に出所時に備えて家庭環境の改善を企り、もつて少年の更生を期するのが相当と認める。

よつて少年法第二十四条第一項第三号少年審判規則第三十七条第一項少年院法第二条に則り主文の通り決定する。

(裁判官 前田一昭)

(注)別紙犯罪一覧表は省略

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