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福岡家庭裁判所 昭和46年(家)488号 審判 1971年5月24日

申立人 宮本ハルヱ(仮名)

被相続人亡 小山喜久之助(仮名)

主文

被相続人亡小山喜久之助の別紙目録記載の相続財産を申立人宮本ハルヱに分与する。

理由

一  本件申立の要旨

申立人は主文同旨の審判を求める旨申立て、申立の実情として、申立人はさきに当庁昭和四五年(家)第一五四三号相続財産の処分審判申立事件につき被相続人亡小山喜久之助の特別縁故者と認められ、同人の相続財産中福岡県宗像郡○○町大字○○字○○△△番畑一三八平方米外二筆の畑につきこれを申立人に分与する旨の審判がなされたが、その後相続財産管理人宮本幸太郎の調査により、更に別紙物件目録記載の土地、家屋が相続財産に帰属する事実が判明したところ、右家屋は被相続人の実姉で亡杉沢庄一郎の妻亡申立外杉沢ミネらと共に申立人が永年居住していたもので、現に申立人ら家族がこれに居住しており、上記土地は右家屋の敷地ないしこれと密接な関係のある宅地であるから、さきに前記事件の審判申立において申立人が申立の実情として主張し、且つその審判において申立人の申立を認容するにつきその理由とされたところと同じ理由により、申立人にこれを分与すべきものとされるのが妥当な措置であると思料し、本件申立におよぶと述べた。

二  当裁判所の判断

当裁判所が申立人の本件申立を認容する理由は、以下に述べるところの外、当裁判所が当庁昭和四五年(家)第一五四三号相続財産の処分審判申立事件につき昭和四五年一二月一二日になした審判の理由中において述べたところと同一であるからここにこれを引用する。先づ本件請求の時期の点につき考察する。本件の関連事件である前記昭和四五年(家)第一五四三号事件記録ならびに申立人および相続財産管理人宮本幸太郎の各審問の結果によれば本件相続財産につき民法第九五八条所定の、相続人である権利を主張すべき期限は、相続権主張の催告の期間満了の日である昭和四五年九月一一日であるところ、申立人が本件物件につき財産分与の申立をしたのは、昭和四六年三月二三日であつて、民法第九五八条の三第二項所定の財産分与の請求期間経過後ではないかということが問われなければならない一の問題点であるといわなければならない。然しながら申立人は本件に関連して右請求期間内である昭和四五年一〇月二二日相続財産処分の申立をなし(前記当庁昭和四五年(家)第一五四三号事件)同事件において被相続人小山喜久之助の相続財産中申立人主張の畑三筆を申立人に分与する旨の審判がなされたが、申立人は右申立をするに当つては、特に物件を個別的に限定しないで、被相続人の相続財産を分与する旨の審判を求める旨申立てたものであることが明らかであり、当時相続財産管理人において、相続財産の範囲を明確に把握していなかつたため、さきの審判においては当時相続財産として判明していた物件に限つて、これを分与することとされたものであるところ、その後調査の進行に伴ない別紙物件目録記載の物件が、被相続人の相続財産に帰属することが明らかとなつたため、申立人は本件申立によりさきの申立に対象物件として右物件を追加しこれを補充する旨の申立をしたものであると認めるべく、以上の事実を考慮すれば、本件申立はさきになされた相続財産処分の申立と一体をなすものというべきであり、従つてなお法定の期間内のそれであるとしてこれを処理すべきものとするのが相当である。

次に前掲証拠ならびに登記簿謄本の記載によれば、申立外杉沢実は物件目録記載の一ないし六の各宅地につき持分九分の一の共有持分を有していたところ、同人は昭和二五年一一月二六日死亡し、同人の相続人養母杉沢ミネ、同実父宮本松夫、同実母申立人の三名が相続により、各自の相続分に応じ各その三分の一宛を承継取得し、次いで杉沢ミネが昭和二七年一〇月三〇日死亡すると同時に、同人の相続分は本件の被相続人小山喜久之助によつて承継取得されたものというべきである。

次に登記簿謄本の記載によれば物件目録記載の七の家屋は、大正一二年五月二一日福岡法務局福間出張所受付第一六三三号を以て、同年五月一八日売買により申立外杉沢庄二郎から申立外杉沢庄造のため所有権取得登記がなされたことが認められるところ、宗像郡○○町長作成に係る証明書の記載ならびに申立外宮本幸太郎審問の結果を総合すれば、申立外杉沢庄一郎は生前通称庄造と呼ばれ、右通称名を以て右登記がなされたものであることが認められる。而して右事実に前掲証拠を総合すれば右物件は庄一郎の所有に属していたものであるところ、昭和一四年四月三日同人の死亡により選定家督相続人であるその妻ミネが昭和一八年一一月二二日家督相続により右物件の所有権を取得し、次いで右ミネの死亡に伴ない、右物件は更に同人から喜久之助によつて相続により承継取得されたものといわなければならない。

ところで前掲証拠によれば、右宅地と家屋との関係ならびに右土地、家屋と申立人ならびにその家族らとの関係が申立人主張の通りであることもこれを認めることができる。而して被相続人亡小山喜久之助と申立人との間に特別縁故関係の存することは、前記昭和四五年(家)第一五四三号事件の理由中に述べたところによりこれを肯定すべきものであるから、以上の物件はこれを申立人に分与すべきものとするのが相当である。

よつて申立人の本件申立を認容すべきものとし、主文の通り審判する。

(家事審判官 川淵幸雄)

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