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福岡家庭裁判所久留米支部 平成7年(家)321号・平7年(家)322号

主文

1  被相続人高森与市及び同高森キヌの別紙目録記載の遺産を次のとおり分割する。

(1)  申立人及び相手方は、別紙目録1ないし14記載の各預貯金を、いずれも、申立人8分の5、相手方8分の3の各割合により分割取得する。

(2)  別紙目録15記載の現金のうち、申立人は、金312万5,000円を、相手方は、金187万5,000円をそれぞれ取得する。

2  相手方は申立人に対し、金312万5,000円を支払え。

3手続費用は各自の負担とする。

理由

一件記録に基づく、当裁判所の事実認定及び法律判断は、以下のとおりである。

1  相続の開始、相続人及び相続分

(1)  被相続人高森与市は、平成4年9月25日死亡し、相続が開始した。その共同相続人は、妻である被相続人高森キヌ、長女である申立人及び長男である相手方である。

(2)  被相続人高森キヌは、平成5年7月7日死亡し、相続が開始した。その共同相続人は、申立人及び相手方である。

(3)  申立人及び相手方の法定相続分は、被相続人高森与市の相続につき各4分の1、被相続人高森キヌの相続につき各2分の1である。

2  遺産の範囲

(1)  被相続人高森与市及び高森キヌの遺産として、他に存在するか否かは別として、少なくとも、別紙目録1ないし15記載の預貯金及び現金が存在することは当事者間に争いがない。そうすると、上記預貯金を遺産分割の対象とすることに当事者の合意があるものと認めることができる。

(2)  申立人は、別紙目録1ないし15記載の預貯金及び現金の他にも、遺産が存在するかのように主張するが、これを認めるに足りる確たる資料はない(なお、他に、預貯金が存在したとしても、当事者間に遺産分割の対象とする旨の合意がない以上は、法定相続分に従って権利を承継していることになる。)。

よって、被相続人高森与市及び同高森キヌの遺産のうち、現段階において、遺産分割の対象となる財産は、別紙目録1ないし15記載のとおりであると認めることができる。

3  分割の方法

一件記録によれば、本件については、第5回調停期日(平成7年5月9日)において、申立人及び相手方が、

(1)  遺産総額を被相続人高森与市の相続税申告額金2億5,543万5,000円とする。

(2)  被相続人高森キヌの遺産金1億2,771万7,000円につき、申立人の相続分は4分の3、相手方の相続分は4分の1とする。

ことを合意したこと、調停委員会も、上記合意に従って、調停を進行させることにし、次回期日には、調停を成立させることができるものと判断し、次回期日までに、遺産である預貯金の残高を申立人及び相手方に調査させることにしたうえ、次回調停期日を平成7年6月13日と指定したこと、調停委員会においては、上記合意を前提とする調停案を作成していたこと、しかしながら、申立人は、同期日において、上記(1)、(2)の合意を翻し、遺産の範囲を相続税申告額金2億5,543万5,000円に金6,684万円を加えたものとし、被相続人高森キヌの遺産についての相手方の遺留分減殺請求権は、時効により消滅したので、遺留分を認めない旨主張したため、相手方がこれを検討することになったものの、第7回調停期日において、相手方が申立人の主張を受け入れることはできない旨回答したため、調停委員会は、他の分割案も考えられないので、調停不成立としたことが認められる。

以上の認定を左右するに足りる資料はない。以上認定の事実及び本件調停の経過に照らすと、相手方が、遅くとも、第5回調停期日において、申立人に対し、被相続人高森キヌの遺産につき、遺留分減殺請求権を行使する旨の意思表示をしたことが明らかであり、仮に、消滅時効期間が経過していたとしても、申立人は、遺留分減殺請求権の行使を前提として、上記(2)の合意をしたのであるから、時効援用権を放棄したものと認めるのが相当である。よって、その後に、消滅時効を援用することは許されないことになる。

ところで、上記(1)、(2)の合意は、調停の席上でなされたものであり、調停委員会も、本件に顕れた資料から、遺産の範囲を上記2のとおり判断したうえ、相手方の遺留分を考慮して、その内容を合理的であると認めて、上記合意に従った調停案を作成していたものであるうえ、申立人の翻意には、必ずしも合理的理由があるとは認められず、また、信義則に照らしても、申立人の翻意を許容することはできないものと解する。

以上に述べたところと本件に顕れた一切の事情を考慮すると、当裁判所は、現段階において判明している被相続人高森与市及び同高森キヌの遺産に関する限り、上記合意に従い、これと同旨の分割を行うのが当事者の利益に合致し、公平にかなうものと考える。

以上に述べたところは、第5回調停期日の後に、その存在が判明した担保定額貯金(記号××、番号×××-×)についても同様であると解するが、上記担保定額貯金は、平成7年8月20日が満期であり、元利金は、別紙目録11記載の通常貯金に入金されているから(乙16号証)、上記通常貯金を分割の対象とする(別紙目録11記載の金額よりも、上記元利金49万5273円が増加することになる。)。

4  よって、主文のとおり審判する。

別紙目録<省略>

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