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福岡家庭裁判所小倉支部 昭和45年(少)3246号 決定 1971年5月17日

少年 B・S(昭二七・九・一六生)

主文

この事件について少年を保護処分に付さない。

理由

(非行事実および罰条)

記録中にある昭和四五年五月二二日付起訴状記載の公訴事実(ただし、第一の事実については「第一、」の次に「○塩○義らと共謀のうえ、」を書き加える。)および罰条(ただし、第一の事実についてはさらに「刑法第六〇条」を書き加える。)と同一であるから、これを引用する。

(事件係属の経過)

1  本件は、和歌山家庭裁判所昭和四五年少第九二七号として係属し、同家庭裁判所は、昭和四五年五月一三日これを窃盗、業務上過失致死傷、過失往来危険、道路交通法違反事件として少年法第二〇条により検察官に送致した。

2  送致を受けた検察官は、同月二二日窃盗、重過失致死傷、過失往来妨害、道路交通法違反事件として起訴し、和歌山地方裁判所昭和四五年(わ)第一七五号として係属した。

3  和歌山地方裁判所は、同年一〇月六日右事件を少年法第五五条により和歌山家庭裁判所に移送する旨の決定をした。

4  和歌山家庭裁判所は、同年一一月一〇日右事件を少年法第五条第二項により当家庭裁判所に移送する旨の決定をした。

(保護処分に付さない理由)

少年の本件非行は、行為の態様、過失の内容、結果の重大性に照らせばきわめて無謀、悪質といわざるをえないが、前記少年法第五五条による移送決定後、特に新たな事情の変化も認められない以上、これを再度検察官に送致する必要はないものと考えられるから、当家庭裁判所でこれを処理するのが相当である。ところで、少年は、本件非行が前記のとおり和歌山地方裁判所に係属していた当時その判決言渡直前頃に、新たに自動車窃盗を敢行し、昭和四五年九月二一日福岡家庭裁判所小倉支部で中等少年院送致の決定を受け、(なお、右決定当時右裁判所は本件を了知していた)、同月二八日以来福岡少年院に収容保護中である。そして、同少年院では、昭和四六年一月一日暴力事件を起して謹慎五日の懲戒処分を受けた以外は順調に経過し、その教育的効果もあがりつつある。また、本件の被害者、遺族らに対しては一応全員について示談が成立し、事故の被害者、遺族らの宥恕も得て事件の事後処理も一応果されている。そうすると、右のような現状に加えて右少年院送致の決定が本件非行後になされたものである点をも考慮すれば、少年に対し新たに保護処分をなすべき実質的な理由はきわめて乏しいものと考えられる。

(結論)

よつて、この事件について少年を保護処分に付さないこととし少年法第二三条第二項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 岩井正子)

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