福岡高等裁判所 平成元年(行コ)4号 判決 1989年7月20日
北九州市小倉北区赤坂三丁目一〇番四二号
控訴人
藤瀬榮
右同所
控訴人
藤瀬文子
福岡市西区福重五丁目二一番三二-二〇五号
控訴人
藤瀬正明
同市城南区茶山四丁目一四番一五-三〇六号
控訴人
藤瀬清美
右控訴人ら訴訟代理人弁護士
村上三政
北九州市小倉北区萩崎町一番一〇号
被控訴人
小倉税務署長
山口要三
右指定代理人
大脇通孝
右同
末廣成文
右同
佐藤治彦
右同
樋口隆造
右同
石橋一男
主文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。
事実
一 控訴人らは、「原判決を取消す。被控訴人が昭和六〇年一二月二六日付で控訴人らの昭和五九年五月二一日相続開始に係る相続税についてした更正処分を、いずれも取消す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を、被控訴人は、主文同旨の判決を、それぞれ求めた。
二 当事者双方の事実上の主張及び証拠の関係は、原判決二枚目裏八行目に「次のとおり」とあるを「納付すべき税額が次のとおりになる旨の」と、同三枚目表九行目の「申告納税額」とあるを「申告にかかる納付すべき税額」と、各改め、同四枚目表末行の「意思表示をした」とある次に「(同女も右減殺請求権の行使を承認し、これを争う意思のないことを控訴人らに通告した。)」を加えるほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。
理由
一 当裁判所も、控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却すべきものと判断するが、その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決の理由説示のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決五枚目裏一一行目に「遺留分減殺」とある前に「念のため」を加え、同六枚目表二行目の「無効」とあるを「有効」と改める。
2 同六枚目表末行から同枚目裏三行目までを、次のとおり改める。
「控訴人らは、本件意思表示は停止条件付のものであり、右内容証明郵便にも『万一遺贈が有効であるとすれば・・・・相続分を侵害しておりますので、念のため遺留分減殺の請求をいたしておきます』とあり、その記載は右の証左である旨主張する。しかし、控訴人らは前記訴訟の継続中、右減殺請求権が消滅時効にかかることを慮って、検認により遺言書の存在を知った時から一年が経過する直前に、前記郵便によって本件減殺請求権の行使の意思表示をしたものである。そうして、控訴人らは、右の意思表示により、例え前記訴訟に敗訴しても、右減殺分は当然にこれを取得することとなるし、勝訴すれば、右減殺分をも含めてその相続財産の全部を取得する結果となるので、結局、控訴人らは、右訴訟の決着の如何に拘わらず、本件意思表示により、少なくとも右減殺分相当の相続資産を確定的に取得したことになる。そうすると、本件意思表示に、右主張の一見停止条件とみられる文言が付されているからといって、右減殺分に関する限り、これによって相続税法上の相続財産取得について何等の変化が生じるわけでもない。従って、右文言は、相続財産につき争訟中という状況を反映し、これを意識して付された文言であるに留まり、実体上、本件意思表示に停止条件を付した趣旨の文言ではないと理解するのが合理的解釈と思われる。控訴人らの右主張は採用し難い。」
二 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、九三条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 高石博良 裁判官 川本隆 裁判官 牧弘二)