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福岡高等裁判所 平成10年(ネ)661号 判決 1999年4月27日

控訴人兼被控訴人(一審原告、参加被告、以下、控訴人甲野という。)

甲野花子

右訴訟代理人弁護士

加藤修

控訴人(一審参加原告、以下、控訴人信用組合という。)

熊本県信用組合

右代表者代表理事

森弘昭

右訴訟代理人弁護士

村山光信

被控訴人(一審被告、参加被告、以下、被控訴人という。)

大東京火災海上保険株式会社

右代表者代表取締役

瀨下明

右訴訟代理人弁護士

山之内秀一

寺澤弘

主文

一  控訴人甲野及び控訴人信用組合の控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人甲野及び控訴人信用組合の負担とする。

事実及び理由

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人甲野の控訴の趣旨

1  原判決中、控訴人甲野敗訴部分を取り消す。

2  被控訴人は控訴人甲野に対し、六五〇〇万円及びこれに対する平成五年一月一日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴人信用組合の控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  原判決別紙物件目録記載の建物につき、控訴人甲野と被控訴人間で平成三年九月一六日に締結された保険契約に基づく保険金請求権のうち、二二七七万一五〇〇円を控訴人が有することを確認する。

3  被控訴人は控訴人信用組合に対し、二二七七万一五〇〇円及びこれに対する平成六年八月五日から支払済みまで年六分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、二審とも控訴人甲野及び被控訴人の負担とする。

三  控訴人甲野及び控訴人信用組合の控訴の趣旨に対する被控訴人の答弁

主文と同旨

四  控訴人信用組合の控訴に対する控訴人甲野の答弁

1  控訴人信用組合の控訴を棄却する。

2  控訴費用は控訴人信用組合の負担とする。

第二  事案の概要

本件事案の概要は、次のとおり付加、訂正するほか、原判決の「事実及び理由」の「第二 事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決七頁九行目の「在置」を「存置」と、同九頁五行目の「二」を「三」とそれぞれ訂正する。

二  同一二頁五行目の「タバコの」の次に「火の」を付加する。

三  同一八頁三行目の次に改行して、次のとおり付加する。

「 なお、右の他、控訴人甲野は、別紙追加不実表示被害品目表のとおり、日扇管工から購入していない暖房機について、これを一台二三万六〇〇〇円で二六台購入したかのように不実の表示をした。」

四  同一八頁八行目の次に改行して、次のとおり付加する。

「 仮に、控訴人甲野が什器備品等の動産に関して損害見積書に不実の表示をしたとしても、被控訴人が本件建物に関する損害の填補責任を免れることはできない。」

第三  当裁判所の判断

当裁判所も控訴人甲野及び控訴人信用組合の請求はいずれも理由がないから棄却すべきものと判断するが、その理由は、次のとおり付加、訂正、削除するほか、原判決の「事実及び理由」の「第三 判断」のとおりであるから、これを引用する。

一  原判決二〇頁九行目から一〇行目にかけての「二一、三一ないし」を削除する。

二  同二一頁六行目の「所在」を削除し、同二二頁初行の「九月六日」を「九月一二日」と、同二三頁一〇行目の「一一月八日」を「一一月九日」とそれぞれ訂正する。

三  同二四頁五行目の次に改行して、次のとおり付加する。

「控訴人甲野が固定資産税等を滞納していたため、本件土地は、平成三年九月一九日に、阿蘇郡阿蘇町によって差し押さえられた(本件火災後の平成四年七月一四日には、熊本県が参加差押の登記を経由した。)。

控訴人甲野は、平成三年一〇月二五日、同年九月二七日の一九号台風によって「○○別荘」の一部が被災したとして、本件保険契約に基づく風水害保険金を請求し、同年一〇月三一日、風水害保険金一一五七万七〇四五円を取得した。」

四  同二五頁七行目の「六月二七日」の次に「午前八時ころ」を付加する。

五  同二六頁四行目の「のため」の次に「、勝手口の施錠をしないまま」を、同八行目の「タバコの」次に「火の」を、同行の「考えられず、」の次に「出火場所付近で漏電があったことを示す形跡は見当たらず、」を同九行目の「乏しく、」の次に「施錠がなされていなかったことから、」をそれぞれ付加する。

六  同二七頁初行の次に改行して、次のとおり付加する。

「(三) 本件火災を最初に発見した花田七郎は、消防団が来る前に、本件火災現場において、年齢五〇歳前後、身長約一五五センチメートルの男性から、「駐車場に車がないので、○○別荘の建物内には誰もいない、火をつけて出ていったのだろう」と話しかけられた。

本件火災直前の平成四年五月まで太郎が雇っていたトラック運転手の中村三男は、「○○別荘」に泊まっており、控訴人甲野が留守の時でも「○○別荘」に入って寝ていたが(太郎は、本件火災後、再度、中村三男を雇っている。)、右花田七郎に話しかけた人物と年格好が似ている。」

七  同二七頁五行目の次に改行して、次のとおり付加する。

「 太郎は、天草への旅行の帰途、平成四年六月二八日午前、知人宅に立ち寄り、同日の深夜に一宮警察署から知人に対し、太郎の所在を探しているという電話があったことを聞きながら、一宮警察署に連絡を取る等の措置をとらなかった。」

八  同二七頁一〇行目の「言っていたので、」の次に「本件火災の後に」を付加する。

九  同二八頁四行目から同五行目にかけての「できあがっている」を「できあがっていた」と、同七行目の「はないとこれに反する事実を述べている。そして」を「はなかったし、」と、同九行目の「依頼している」を「依頼したものである」とそれぞれ訂正する。

一〇  同三四頁三行目から同三六頁初行までを次のとおり訂正する。

「 以上の事実が認められ、右認定に反する甲第四一、第四二、第四三号証の各一、第四四ないし第四六号証、第四七号証の一、第四八号証の各供述記載は、前掲各証拠に照らし容易に信用し難く、他に、右認定を左右するに足りる確たる証拠はない。

二 争点3、4について

右一認定の事実によれば、控訴人甲野及び太郎は、本件火災前ころには、「○○別荘」の経営が破綻してしまい、経営の継続を断念し、これを他人に賃貸せざるを得ない状態となり、そのうえ、固定資産税等も滞納するなど、相当金員に窮していたこと、控訴人甲野は、本件火災の前年に、本件保険契約に基づく風水害保険金一一〇〇万円余を取得していたこと、本件火災直前に本件建物から家財道具をトイレも水道も使えないログハウスに運び出したこと、本件火災の前日に、早朝から急遽旅館を予約し、控訴人甲野の費用負担で、友人夫婦二組を誘って天草に旅行に出かけたこと、その際、本件建物の勝手口の施錠をしなかったため、本件建物への第三者の立入が可能な状態であったこと、なお、火災報知器も作動しない状況であったと窺われること、本件火災現場に不穏当な発言をする人物が存在し、これが中村三男であった可能性を否定できないこと、太郎は、警察がその所在を捜していることを聞きながら、直ちに警察へ連絡する等の措置をとらなかったこと、太郎は、天草への旅行目的につき虚偽の説明をし、控訴人甲野の説明する旅行目的とも食い違っていること、控訴人甲野は、被控訴人の担当者に対し、旅館経営が順調であったかのように虚偽の説明をしたこと、被控訴人が控訴人甲野の損害明細書の記載に重大な関心を懐いていることを知っていたものと推認され、かつ、不実の申告をすべきではないとの助言を受けたこともあったのに、あえて、購入先を偽ったり、商品を購入していない者から商品を購入したように装ったり、手許の資料の記載と異なった記載をしたり、購入先から受領した控えを所持していながら、別の業者に見積を依頼し、その見積よりも多額の損害を申告するなどしていることが明らかである。

これらを総合すると、控訴人甲野及び太郎の本件火災前後の行動には、不審な点が多く、本件火災が、たまたま控訴人甲野及び太郎の天草への旅行中に漏電によって発生したと認定するには、かなりの疑問が残り、むしろ、控訴人甲野及び太郎の意を受けた第三者の放火によって発生したものであり、控訴人甲野に故意があったと推認するのが相当である。

そして、仮に、控訴人甲野に故意があったとはいえないとしても、右に述べたところによれば、控訴人甲野には、本件建物を火災報知器が作動せず、かつ、第三者が容易に立ち入ることができる状態にしたまま、天草への旅行に出かけた点等において、本件火災の発生につき、少なくとも、重大な過失があったと認めるのが相当である。

そうすると、いずれにしても、被控訴人は、本件約款二条一項一号により、控訴人甲野の、本件火災による損害について、保険金の支払義務を負わないことになる。したがって、その余の点を判断するまでもなく、控訴人甲野及び控訴人信用組合の請求は理由がない。」

第四  よって、原判決は結論において正当であって、控訴人甲野及び控訴人信用組合の控訴はいずれも理由がないから棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法六七条一項、六五条、六一条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官川畑耕平 裁判官野尻純夫 裁判官須田啓之は、填補のため署名押印できない。裁判長裁判官川畑耕平)

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