大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 平成10年(行ス)2号 決定 1998年5月13日

②事件

抗告人

川内誠二

右代理人弁護士

名和田茂生

相手方

下郡新一郎

藤田卓志

右両名代理人弁護士

塚田武司

主文

本件抗告を棄却する。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙抗告状記載のとおりである。

二  本件記録によると、次の事実が認められる。

1  抗告人は、平成九年八月七日、地方自治法二四二条の二第一項四号前段の規定に基づき、相手方両名に対し、相手方両名が、二丈町議会議長に在任中、議長交際費を違法に支出したとして、支出金の返還を求める基本事件の訴えを提起した。

2  抗告人は、基本事件の訴えを訴訟代理人弁護士を付けずに提起したが、平成九年九月一九日の第一回口頭弁論期日において、相手方両名から、基本事件の訴えについて相手方両名に被告適格がない旨主張されるに及び、同年一〇月三〇日付けで本件代理人弁護士に基本事件の訴訟追行を委任した。

平成一〇年一月二一日、本件代理人弁護士は、被告を議会議長から議会事務局長に変更する許可を求める申立てをしたが、受訴裁判所は、抗告人が被告とすべき者を誤ったことについて、行政事件訴訟法一五条一項にいう「重大な過失」があったとして、申立てを却下した。

三  当裁判所も、抗告人が基本事件の被告を誤ったことについて重大な過失があるものと判断するが、その理由は、原決定五頁末行の次に改行して次のとおり加えるほかは、原決定説示の理由(原決定四頁二行目から五頁末行までの記載)のとおりであるから、これを引用する。

「本件記録によれば、抗告人は、二丈町議会議員であることが認められるが、町議会議員は、町又は議会の組織全般に関する資料や情報を容易に収集することができる立場にある。また、本件記録によれば、二丈町では、平成三年四月一日施行の「二丈町議会事務局長に対する事務委任規則」により、議会事務局に配当された予算に基づく一件一〇万円未満の負担行為及び支出命令に関しては、議会事務局長が町長からその事務を委任されていることが認められるが、議員である抗告人は、このような町の財務会計上の基本的な仕組みを職務上理解していることが期待されているのであるから、右予算の支出を違法とする基本事件において予算の執行権がない議会議長を被告にしたことについては、重大な過失があるというほかない。

なお、本件記録によると、本件に係る監査請求において、二丈町監査委員は、相手方両名の当事者適格を問題とすることなく、右請求について監査を実施したことが認められるが、そのことによって抗告人の注意義務違反の軽重が左右される理由はない。」。

四  よって、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官小長光馨一 裁判官小山邦和 裁判官石川恭司)

別紙抗告状<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例