福岡高等裁判所 平成11年(ネ)546号・平11年(ネ)73号 判決
主文
一 一審原告らの控訴に基づき、原判決中、一審原告亀田健に関する部分を次のとおり変更する。
一審被告は、一審原告亀田健に対し、金一四三〇万円及びこれに対する平成九年一月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 一審原告らのその余の控訴をいずれも棄却する。
三 一審原告岩永實承継人岩永正則、同岩永珠美の受継に基づき、原判決中、一審原告岩永實に関する部分を次のとおり変更する。
1 一審被告は、一審原告岩永實承継人岩永正則、同岩永珠美に対し、各金五五〇万円、及び右各金員に対する平成八年一月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 一審原告岩永實承継人岩永正則、同岩永珠美のその余の請求をいずれも棄却する。
四 一審被告の控訴に基づき、原判決中、一審原告荒瀬イクエ、同荒瀬清、同小瀬良ハセ、同小瀬良美喜雄、同松岡かやの、同竹田英夫、同竹田義則、同竹田惠三に関する部分を次のとおり変更する。
1 一審被告は、一審原告荒瀬イクエに対し金八八〇万円、同荒瀬清に対し金一七六万円、及び右各金員に対する平成八年一月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 一審被告は、一審原告小瀬良ハセに対し金一〇四五万円、同小瀬良美喜雄、同松岡かやのに対し各金五二二万五〇〇〇円、及び右各金員に対する平成九年一月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 一審被告は、一審原告竹田英夫、同竹田義則、同竹田惠三に対し各金五一三万三三三三円、及び右各金員に対する平成九年一月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
4 一審原告荒瀬イクエ、同荒瀬清、同小瀬良ハセ、同小瀬良美喜雄、同松岡かやの、同竹田英夫、同竹田義則、同竹田惠三のその余の請求をいずれも棄却する。
五 一審被告のその余の控訴をいずれも棄却する。
六 一審被告に対し、一審原告荒瀬イクエは金三七七万〇六七四円、同荒瀬清は金七五万四一三五円、同小瀬良ハセは金一八〇万四一五一円、同小瀬良美喜雄、同松岡かやのは各金九〇万二〇七六円、同竹田英夫、同竹田義則、同竹田惠三は各金三二〇万七三七九円、及び右各金員に対する平成一〇年一一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七 一審被告のその余の申立をいずれも棄却する。
八 訴訟費用は、第一、二審を通じこれを四分し、その三を一審被告の、その一を一審原告ら及び一審原告岩永實承継人らの負担とする。
九 この判決の主文第一項は、原判決認容額(金一一〇〇万円及びこれに対する平成九年一月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員)を越える額について、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一 控訴の趣旨
一 一審原告ら
原判決主文第一項ないし第三項を次のとおり変更する。
1 一審被告は、原判決添付別紙三の「原告別請求金額一覧表」記載の各一審原告ら中、一審原告岩永實を除く一審原告らに対し、同表の「請求金額」欄記載の各金員及びこれに対する同表の「遅延損害金起算日」欄記載の各日から各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 一審被告は、一審原告岩永實承継人岩永正則、同岩永珠美に対し、各金一六五〇万円及び右各金員に対する平成八年一月二〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
3 訴訟費用は第一、二審とも一審被告の負担とする。
二 一審被告
(平成一一年(ネ)第七三号事件の控訴の趣旨)
1 原判決中、一審被告の敗訴部分を取り消す。
2 一審原告ら及び一審原告岩永實承継人らの請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は第一、二審とも一審原告ら及び一審原告岩永實承継人らの負担とする。
(同年(ネ)第五四六号民事訴訟法二六〇条二項による裁判の申立)
4 一審原告ら及び一審原告岩永實承継人らは、一審被告に対し、それぞれ別紙二目録の「支払金額」欄記載の各金員及びこれに対するそれぞれ平成一〇年一一月二七日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二 事案の概要<省略>
第三 当裁判所の判断
一 争点1(本件鉱業所の坑内環境及び各作業の実態と粉じんの発生、飛散の有無、程度)について<省略>
二 争点2(一審被告の負うべき健康保持義務あるいは安全配慮義務の具体的内容)について<省略>
三 争点3(下請鉱夫に対する安全配慮義務)について
次に補正するほかは、原判決一七五頁四行目から同一七九頁三行目までのとおりであるから、これを引用する。
1 同一七六頁一行目の「事情がある場合」を「実質的使用従属関係のある場合(実質的使用従属関係を認めるためには、ただ単に、元請企業と下請企業との間の請負契約に基づき、下請企業の従業員が元請企業の営む事業につきその労務の提供を行っていたとの事実があるだけでは不十分であって、当該元請企業と下請企業との間に世間一般に見られる注文者と請負者との関係を越える密接な指揮監督、管理支配の関係が存すること(元請の従業員が下請の従業員に対して何らかの要請や指示をしただけでは不十分であり、社内の業務上の指示命令と同程度の拘束力や強制力を有すること)が具体的に明らかにされなければならない(もっとも、常に直接の指揮監督が現実に行われたことまでは必要でなく、指揮監督の方法は直接間接の両場面があってよい。)というべきである。)」と改める。
同一七六頁四行目から五行目の「実質的に見ても、」を削除し、同七行目の「災害の」の「の」を削除する。
同頁一一行目の末尾に続けて「なお、一審被告は、実質的使用従属関係を認めるためには直接の指揮監督を要する旨主張するが、前記のように解すべきであって、採用できない。」を加える。
2 同頁一二行目の「これを」から同一七八頁一一行目の「べきであり、」までを次のように改める。
「これを本件についてみるに、証拠(甲一一〇七の3、4、甲ハ八、九、乙ハ八一の1、2、一一三ないし一一五、一二九、一三〇の1、2、一審原告新立義光の原審および当審における供述)によれば、以下の事実を認めることができ、右認定に反する渡部能和の証言(当審、乙ハ一一三の陳述書を含む。)は後述するように採用しない。
(一) 昭栄土建(本店福岡県嘉穂郡筑穂町大字長尾一三一〇番地)は、土木建築に関する工事設計請負、土木建築に関する資材の販売及びそれらに附帯する業務を目的として昭和二六年一一月二六日に設立された株式会社であり、その資本金額は、設立当初五〇万円、昭和三八年一月二八日二〇〇万円、平成四年一一月三〇日一〇〇〇万円であった。
昭栄土建は筑豊地区において炭坑坑内の作業を請け負っていた(一審被告の下請だけでなく、麻生鉱業株式会社や住友石炭鉱業株式会社などの下請としても稼働していた。)が、その実績をもとに昭和三六年二月ごろ伊王島内にも出張所を構え、四〇名程度の従業員を抱えて、一審被告伊王島鉱業所の下請として、掘進作業を担当するようになった。
(二) 一審被告と昭栄土建との間で昭和四一年一一月一日に締結された工事請負契約は、工事場所が伊王島鉱業所坑内第四区一号探炭上添、工事金額は一メートルあたり一万四〇〇六円、昭和四二年二月二八日までに竣工という内容であったが、右契約書内には以下のような条項が含まれている(なお、一審被告は甲、昭栄土建は乙と表示される。)。
第四条(下請負の禁止)
工事に関する一切は乙が担当し、第三者に委任し、または請負わせてはならない。
第五条(工事施工)
1 工事は、甲の指示する設計書または仕様書、もしくは乙が作成し甲が承認した設計図書によって、誠実に施行しなくてはならない。
2 乙が契約及び設計図書に違反して施行したときは、甲は改工させることができる。
第六条(工事行程表)
乙は工事施工にあたり、あらかじめ甲の承認を得た工事工程表によって施行しなければならない。
第七条(材料検査)
乙が提供する工事材料は、すべて、甲の監督員の検査に合格したものでなければならない。
第八条(現場監督)
1 乙は常に現場に出頭し、甲の指定する現場監督員の指揮監督に従い、入念かつ正確に施工しなければならない。ただし、乙に事故あるときは、甲の承認する代理人をこれにあてることができる。
第九条(不適当な使用人の拒否)
1 甲は、乙の使用する作業員の技術、思想、態度等が不適当と認めたときは、乙に即時当該作業員の変更を要求することができる。
2 乙は、前項の要求があったときは、即時変更しなければならない。
第一一条(竣工検査)
1 工事が竣工したときは、乙は甲の指定する監査員の検査を受けなければならない。
第二〇条(保安規則等の遵守)
乙は石炭鉱山保安規則、伊王島鉱業所保安規定および保安に関する甲の指示事項を遵守しなければならない。
第二一条(保安技術職員等の選任)
乙は保安技術職員、有資格者および指定鉱山労働者のうち甲の選任するものを、石炭鉱山保安規則に従い適宜作業箇所に配置しなければならない。
第二二条(保安技術職員等の所属)
乙の保安技術職員および現場作業員は、甲の保安上の指揮系列に所属し、別紙系統図に従い、それぞれ保安に関する責任を負うものとする。
第二三条(組織図および系統図)
乙は甲に対し作業の円滑を期し、保安を確保するため、乙の代理人以下の組織図および保安系統図を提出しなければならない。
覚書(乙ハ八一の2)
また、一審被告は、右契約に関して作成された覚書において、昭栄土建に対し、坑枠鋼、ペーシ、ボルトナット、爆薬、雷管、坑木を一審被告において支給することを約束していた。
(三) 昭栄土建は主に幹線坑道(新しい採炭鉱区を作るためそれまで採炭していた炭層から別の下層の炭層までの本線坑道)を掘削したが、掘削の進行により順次炭層に向かって幹線坑道から掘り進む作業が加わり、その作業には一審被告の従業員が関与していたので、両者の従業員は近くで作業を進める状態になっていた。また、昭栄土建は、幹線坑道の掘進作業だけでなく、採掘跡の撤収作業、沿層掘進、仕繰作業などを行うこともあった。
(四) 一審被告は、削岩機、ロッカーショベル、バッテリーロコ、巻上機、風管など昭栄土建が作業に要する機材をほぼ全て準備し、昭栄土建の従業員は、右機材を使用して作業していた。
(五) 一審原告新立が昭栄土建の従業員として伊王島で稼働していた時期、昭栄土建の従業員が岩盤が良好と判断して枠間の間隔を広げて設置したことがあったが、一審被告の区長等の担当責任者が巡回時に規定通りの間隔で設置するように指示をしていた。逆に、昭栄土建の従業員が資材や炭車の補充を昭栄土建の保安係員でなく一審被告の区長等の担当責任者に対して直接請求することがあった。
(六) 一審原告新立は昭栄土建に採用されるとき一審被告の診療所で健康診断を受けたほか、伊王島坑内に入る時には昭栄土建の従業員も一審被告から保安教育を受けることを義務づけられており、一審被告の従業員と一緒に保安教育や検身を受けていた。また、昭栄土建の従業員は入坑時も昇坑時も一審被告の従業員と一緒に人車に乗っていた。
(七) また、一審被告は、昭栄土建の従業員が掘進作業をする上で必要な資格を教育して取らせていた。一審原告新立も火薬取扱有資格者の資格を得たが、その指導教育は一審被告がしたものであった。
3 右認定の事実によれば、一審被告と昭栄土建との間の契約において、一審被告は昭栄土建に対しその計画どおりの設計図書に従って昭栄土建が施工することを求め、工事行程や現場監督等種々の事項について昭栄土建に対して指示、管理することができる旨定めていることが認められる。一審被告と昭栄土建との間の基本契約の締結の有無は不明であるが、各請負場所毎にその都度契約を締結していたものとしても、右認定の契約内容と同様のものが定められていたものと推認するのが合理的である。すなわち、採炭のための坑道作りとその維持補修、坑内全体の保安の見地からは、坑内の作業は相互に関わりがあり、その一部についてもないがしろにすることができない以上、一審被告が昭栄土建に対し作業を依頼する部分についても採炭作業に支障をきたすことのないように工事の規格どおりに作業がなされなければならないから、昭栄土建のする作業内容や方法、行程に関して一審被告が関心を払い、一定の技術レベルを求め、坑内全体の安全の保たれるように指示、管理し、坑内全体の統一性ある規律を求めるのは当然であり、そのために、昭栄土建との契約において前記認定のような条項を定め、その作業に要する機材も保安規則に合致するものが使用されるべく一審被告において用意したものと解される。
そうすると、坑内の生産活動全般について昭栄土建は一審被告の指揮系列下に仕事をするように求められていたものとみるのが自然であり、昭栄土建が独自の判断で決定しうる範囲は些末的なものに限られ、その作業内容や方法の枠組みは一審被告により定められ(あるいは、一審被告の了承を受けて)、日常の作業現場の進捗状況は一審被告の担当者が常に把握し、指示していたものとみるのが合理的である。右に反する乙ハ一二九及び渡部能和の供述部分(乙ハ一一三の陳述書記載内容、当審における渡辺の証言)は信用できない。
また、一審被告が、昭栄土建の従業員をも含めて保安教育や検身をし、一審被告と一緒に入坑、昇坑させ、資格取得のための教育をしていたことをも考慮すれば、一審被告は、昭栄土建に対し、工程、労働時間、安全などについて確実に把握し、指示をし、昭栄土建はそれに従わざるをえない運命共同体的な職場状況にあったといえることや、昭栄土建の従業員は実質的には一審被告の作業環境の中で掘進作業に従事していたものといえることからすると、一審被告と昭栄土建の従業員は、社内の業務上の指示命令と同程度の極めて密接な指揮監督、管理支配の関係を有する状況にあり、一審被告は昭栄土建の従業員に対し実質的に使用者に近い支配を及ぼしていたといえるし、その作業内容も一審被告の従業員とほとんど同じものであったといえるから、両者間には実質的使用従属関係があったと認められ、一審被告は、昭栄土建の従業員に対し、信義則上、安全配慮義務を負うものといわなければならない。」
四 争点4(一審被告の安全配慮義務違反の有無等)について
当裁判所も、元従業員一審原告らが従事した本件各炭坑における掘進、採炭、仕繰、坑内運搬等の坑内作業及び坑外作業から発生する粉じんの吸入によりじん肺に罹患しないようにするためには、適切な防じん措置を取ることが不可欠であるのに、一審被告は、粉じんの発生、飛散の抑止(削岩機の湿式化、散水など)、粉じん暴露の抑止(坑内通気の確保、防じんマスク、発破工程)、健康管理(健康診断、配置転換)、じん肺予防等の教育などの安全配慮義務の不履行があり、元従業員一審原告らは、一審被告の過失による右不履行により大量の粉じんを吸入し、じん肺に罹患したというべきであり、また、一審被告には右安全配慮義務に基づく結果回避措置の期待可能性の不存在等の責任阻却事由も存しないと判断するが、その具体的内容についての事実上及び法律上の判断は、原判決一七九頁五行目から同二〇八頁五行目までと同一であるから、次に補正するほかは右部分を引用する。
1 原判決一八一頁六行目の「乙一四の2」を「乙ハ一四の2」に、同一八三頁五行目の「一七九、」を「一七四の1ないし4、一七五ないし一七九、一八四」に各改める。同六行目の「7、」の次に「12、」を、同七行目の「一五の」の次に「3、」を、同八行目の「一七の7、」の次に「8、」を、同行目の「16、」の次に「二〇の8、」を、同九行目の「二五の」の次に「6、」を、同一〇行目の「19、」の次に「二八の26、」を、同一二行目の「一六二、」の次に「二一八、」を各加える。
同一八六頁末行の「六〇個」の次に「、サカヰ式一六号B型(同第三種)七九個、サカヰ式一八号F型(同第二種)九八個」を、同一八七頁二行目の「二九個」の次に「、サカヰ式三三号B型(同第三種)一〇六三個」を各加える。
同一八八頁末行の「によれば、」の次に「ろ材を乾燥した状態で」を加える。
2 同一八九頁七行目の「四の1、」を削除し、同八行目の「乙イ」の次に「二の12、」を加え、同一一行目の「一二七の1、」の次に「2、」を、同一二行目の「3、」の次に「一七五の1、」を、同一九〇頁末行の末尾に「)」を各加える。
同一九二頁一一行目の「診断」を「健康診断、坑内環境調査、現地医師に対する教育など」に改める。
同一九三頁一行目の「翌年」を削除し、同行目の「その結果」を「昭和三一年九月の時点で」に改める。同一九五頁一〇行目の「発見された」の次に「(昭和三一年一〇月一六日のけい肺健康診断)」を、同一一行目の「健康診断」の次に「(昭和三四年)」を各加える。
同一九六頁七行目の「症状等」の次に「の決定の」を加え、同頁一一行目の「8、」を削除する。同一九七頁四行目の「25」の次に「、乙イ二〇〇の1ないし4」を加える。
同一九八頁五行目の「1、3、5、」をいずれも「1、5」に、同行目から六行目にかけての「一九八の1、3」を「一九八の3」に、同行目の「二〇〇の1、5」を「二〇〇の1」に各改める。
同一九九頁一一行目の「前述のとおり、これが」を「証拠(乙イ一三七、一三八の1、2、一三九ないし一四一、一八一の1ないし5)によれば、一審被告はじん肺有所見者が粉じん作業以外の適当な作業につくことを了承した場合に限り配置転換していたことが認められるが、このような配置転換が」に、同二〇〇頁五行目の「甲一一〇二の2」を「甲一一〇一の2」に各改める。
3 同二〇一頁四行目から五行目にかけての「13、五、四二」を「三の2」に改める。同五行目の「一〇三の1、2」の次に「一〇九、」を加える。
4 同二〇七頁六行目の末尾に続けて、「なお、乙イ一四七、一八二の1、2によれば、伊王島鉱業所が昭和三三年一月に優良な事業所の表彰(労働大臣賞)を受けたこと、北松鉱業所が昭和三四年一〇月に労働衛生に努力した事務所として労働大臣の表彰を受け、改善の余地はほとんどないほど行き届いている旨の賛辞を得たことが認められるが、右事実は右認定を左右するものではない。」を加える。
同二〇七頁七行目の「原告らは、」の次に「一審被告は昭和二五年ころ以降は炭坑でけい肺、じん肺が発生するとの認識を得たのに実効性のある予防対策を取ることもなく操業したのであるから」を加える。
同二〇八頁三行目の「もって、」の次に「右時期における」を加える。
五 争点5(元従業員原告らの損害)について
元従業員一審原告らは、一審被告の安全配慮義務の不履行によって、じん肺に罹患したのであるから、一審被告は右じん肺罹患によって生じた元従業員一審原告らの損害を賠償すべき義務を負うべきところ、当裁判所も、次に補正するほかは、原判決二〇八頁七行目から同二四七頁一行目までの説示と認定及び判断を同じくするから、右部分を引用する。
1 同二一七頁一行目の「第二の」から同行末尾までを削除し、同六行目の「あること」の次に「(同法三、一二、一三、一五、三九条)」を加える。
同二一七頁九行目の「この点、」の次に「一審被告は、じん肺法に基づく管理区分の決定について種々の疑問点が存するとして右管理区分は損害の程度を評価する上で客観的な指標となりえない旨主張する。確かに、」を、同二二三頁九行目の「したがって、」の次に、「じん肺法の管理区分はじん肺罹患者の健康被害の程度を客観的に示すものとして最も信頼性の高いものであるということができるから、一審被告の前記主張は採用できず、」を各加える。
2 元従業員一審原告らの具体的な病状
(一) 亡荒瀬一
同二二五頁一〇行目から一一行目の「同年七月二七日」を「平成五年七月二八日」に改める。同頁一二行目から同二二六頁三行目までを削除し、「亡荒瀬一の直接の死因は呼吸不全で、その原因は肺癌である(甲一一〇一の11)。」に改める。
(二) 一審原告亡岩永實
同二二七頁四行目の「一一一〇三」を「一一〇三」に改める。同頁八行目の末尾に「亡岩永實は平成一〇年一一月二九日死亡したが、その直接死因はクロイツフェルト・ヤコブ病である(甲一一〇三の4)。」を加える。
(三) 一審原告亀田健
同頁九行目の「一月一三日生)は、」の次に、「昭和三八年七月から昭和四四年九月まで貯炭場でブルドーザーの運転をしていたが、」を加える。
同二二八頁一行目の「管理四」を「管理二」に改める。
同頁二行目の末尾に続けて、「一審原告亀田健は、主治医である大浦診療所の上尾真一医師から慢性気道炎症が存在していると思われると言われ、再度じん肺管理区分の認定申請を提出したところ、長崎労働基準局から平成一一年一月二八日付けで管理区分二、続発性気管支炎の合併症ありとの決定を受けた。以前より、疲れやすくなり、従前どおりの散歩に時間がかかるようにもなった(甲一一〇四の7、8)。」を加える。
(四) 一審原告黒木巖
同頁一〇行目の「平成七年一〇月には管理四」を「平成四年二月には管理二」に改める。同頁末行の「昭和四六年」の次に「四月二九日」を加える。
(五) 亡小瀬良喜代喜
同二三〇頁七行目の「3、」の次に「5、」を加える。
同頁八行目から一〇行目を削除し、「亡小瀬良喜代喜の直接死因は肝内胆管癌であり、また、直接には死因に関係しないが、1欄の傷病経過に影響を及ぼした傷病名等はじん肺・呼吸不全であるとする死亡診断書が作成されている(甲一一〇六の15)。」を加える。
(六) 一審原告新立義光
同二三一頁五行目の末尾に続けて、「なお、同人には昭和四七年四月から昭和四八年六月まで結核で広島県福山市内の病院に入院した病歴がある。」を加える。
(七) 亡竹田吉満
同二三二頁三行目の「平成三年」を「平成四年」に改める。同頁五行目の「その」から同一〇行目の「としても、」までを削除し、「同人の直接死因は心不全であった(甲一一〇八の15)。ただ、」に改める。
同頁末行の「否定できず、」から同二三三頁三行目の末尾までを削除し、「否定できない。」に改める。
(八) 一審原告藤井誠
同二三四頁一〇行目の末尾に「なお、同人には六四歳時に心臓疾患の既往歴がある(甲一一一〇の2)。」を加える。
(九) 一審原告岩﨑英也
同二三六頁二行目の「なお、」の次に「平成八年九月には管理区分二の」を加え、同三行目の「3」を「1、5」に改める。
(一〇) 亡荒巻茂文
同二三九頁五行目の「ならなくなった。」の次に「昭和六三年八月には管理区分三イ(合併症なし)の決定を、更に」を加える。同末行の「炭」を「痰」に改める。
同二四〇頁三行目と四行目を削除し、「亡荒巻茂文の直接死因は急性心筋梗塞、その原因は狭心症である。また直接には死因に関係しないが、1欄の傷病経過に影響を及ぼした傷病名等はじん肺症・糖尿病である(甲一三〇一の12)。」を加える。
3 同二四一頁末行の次に、行を改めて、次のように加える。
「(五) ところで、前記のように、管理区分の決定は専門医によって慎重に行われること、肺機能検査の結果の判定も肺機能検査によって得られた数値と基準値の対象、エックス線写真像、既往歴及び過去の健康診断の結果、自覚症状及び臨床所見等を含めて総合的に判断されていることからして、右管理区分は健康管理のための行政上の区分ではあるが、じん肺罹患者の健康被害の程度を客観的に示すものとして最も信用性の高いものである。
一審被告は、一審原告亀田健、同松山年治、同岩永健、同吉井利光、同亡岩永實についての各管理区分の決定(管理区分二、合併症なし)は、恣意的なものであり、信用できない旨主張するが、一審原告亀田健については前記のとおり合併症ありとの決定を受けていること、前記のようにエックス線写真の像の読影において地方じん肺審査医の判断が信頼するに足りないということはできず(乙ハ一四一によってもじん肺所見の判読の困難性は窺われるが、その信頼性を欠くとはいえない。)、また、一審被告主張の山下兼彦及び同医師が所属していた医療法人財団健友会の恣意的傾向も一審被告の推測に止まるとしか言いようがなく、これを認めるに足る証拠はない(乙ハ一四二の「疑わしきは患者の立場」とする山下兼彦の論文の内容は医者としての見識を述べたものであって、これをもって一審被告主張の恣意的傾向が伺えるとは到底いえない。)。
また、一審原告亀田健、同松山年治のエックス線写真に関するじん肺陰影は存しないとの志田寿夫作成の鑑定意見書(乙ハ一三八)やじん肺管理区分の決定に関する諸問題についての意見書(乙ハ九九)は、現行じん肺法によるじん肺健康管理区分認定制度自体及びその実体を種々批判するものであるが、前記検討(原判決二一七頁九行目から同二二一頁四行目末尾まで)に加え、甲ハ一一、一二に照らしてその批判内容自体が正しいと認めるに足るだけの客観的証拠は存せず、また、志田寿夫の鑑定意見書は同人が判読に耐えないと批判する不鮮明なエックス線写真に基づく意見にすぎないものであり、採用できない。
右元従業員一審原告ら五名の咳、痰、息切れの状況等については前記認定のように若干の軽重は存するものの、その病状が各人の受けている管理区分の決定に相当するものより、継続的に著しく軽いまたは重いことを証する事実はこれを認めるに足る証拠はなく、同人らはその属する管理区分二に相当する健康被害を受けているというべきである。
(六) 亡荒瀬一、一審原告亡岩永實、亡小瀬良喜代喜、亡竹田吉満、亡荒巻茂文について
一審原告らは、本件で賠償を求める損害は、じん肺という進行性・不可逆性疾患に罹患させられたことによる身体破壊、生活破壊等による総体としての損害であって、じん肺死自体による損害を求めているわけではないから、労災保険法の業務上認定でなされるような相当因果関係の立証は不要である旨主張する。しかしながら、じん肺症以外の原因で死亡した患者の場合には、その者にじん肺症が与えた身体破壊、生活破壊等による総体としての損害はまさにじん肺の病状の程度によるべきであり、じん肺罹患者の健康被害の程度を客観的に示すものとして最も信用性の高いものが管理区分であるから、右区分に依拠して損害額を認定することになるが、じん肺を直接もしくは共同原因として死亡した患者についてはじん肺の病状の程度による損害額(管理区分に基づく損害額)とは別個にじん肺を原因とする死亡による損害を慰謝料額算定において考慮すべきである。
そうすると、前記認定のとおり、亡荒瀬一、一審原告亡岩永實、亡小瀬良喜代喜、亡竹田吉満、亡荒巻茂文の死亡はいずれもじん肺が直接もしくは共同原因となったものではなく、他にじん肺に起因するとの事実を認めるに足る証拠はなく、かつ、各人の症状がそれぞれの死亡の段階での管理区分相当の健康被害に比して継続的に著しく軽いまたは重いことを証する事実を認めるに足る証拠もないから、それぞれ死亡の段階で同人らの属する管理区分に相当する健康被害を受けていたというべきであり、したがって、各管理区分に相当する慰謝料額の範囲で決定されるべきである。
また、前記認定のように、亡小瀬良喜代喜及び亡荒巻茂文については、診断書にじん肺症が直接には死因に関係しないが、傷病経過に影響を及ぼした旨の記載が存するが、右はじん肺が共同原因であることを認めたものとはいえないから、右認定を左右しない。
また、一審原告らは、亡荒瀬一の死亡について、じん肺と肺癌との因果関係自体を厳格に問題にするのではなく、軽度、中度のじん肺患者にも肺癌合併が高率に認められるから、じん肺患者の肺癌を直接原因とする死亡についても、当該じん肺症が右肺癌による死亡に何らかの影響を与えたものと考えられるとして、慰謝料額を算定すべき旨主張するが、亡荒瀬一の死亡診断書には死亡原因は肺癌と記載されており、肺癌とじん肺が死亡の共同原因であるともいえない上、肺癌がじん肺と因果関係のあるものと認めることが困難であり、本件においても右因果関係を認めるに足る証拠はないから、右主張は採用できない。
(七) 一審原告竹本幸定
前記認定(原判決二三七頁八行目から同一二行目)のように同人の症状には糖尿病の影響もある程度及んでいるものと考えられるが、その程度は明確ではない上、前記のように同人の症状がじん肺の症状として管理区分二相当の健康被害に比して継続的に著しく軽いまたは重いことを証する事実はこれを認めるに足る証拠もないから、同人の属する管理区分二に相当する健康被害を受けているというべきであって、右管理区分に相当する慰謝料額の範囲で容認されるべきである。」
4 同二四二頁一行目の「(五)」を「(八)」に改める。
5 同頁一〇行目の「ついても、」の次に「その健康被害の実状と更に進行する可能性のある疾病であることを慰謝料額算定の要素として考慮し、」を加える。
同頁一一行目の末尾に続けて、「この点、一審被告は、じん肺に罹患していても肺機能の軽快はありうるし、逆に、肺機能は加齢とともに低下し、じん肺法に定める合併症以外のその他の余病によっても影響を受けるものであるから、じん肺に罹患しているというだけで、じん肺の特質である進行性を安易に高度の蓋然性とみなして相当の慰謝料額を算定するのは誤りである旨主張するが、右説示(原判決二四〇頁五行目から同二四二頁一一行目まで)のほか、じん肺症においては症状固定の概念が成り立つ余地のないこと、じん肺患者は呼吸器感染症に罹患しやすく、それを繰り返すことによりじん肺症自体が増悪し、合併した感染症が治癒しても肺機能自体は感染症併発前よりも増悪するものであることからすれば、一審被告の右主張は採用できない。
また、一審原告らは、じん肺は不可逆的に進行する疾患であるため、じん肺に罹患した者は最終的には管理四に相当する程度の症状に至る蓋然性が高いから、じん肺被害の損害(慰謝料)額を認定するにあたり、訴訟終結時におけるじん肺管理区分や法定合併症の有無を基準に場合分けをすることは不当であり、一審原告らに一律に同額の慰謝料を算定するべきであると主張するが、じん肺の進行性は吸入された粉じんの量や質、個人の資質等により多様であり、進行の可能性が低下していると考えられるものも存すること、元従業員一審原告らがじん肺により受けた苦痛、精神的損害の程度は基本的にはじん肺の経過や程度によって差違があることからすれば、一律に同額の慰謝料を算定すべきとする右主張も合理性がなく採用できない。」を加える。
6 同二四二頁一二行目の「(六)」から同二四四頁一行目末尾までを削除する。
7 同二四六頁六行目の「原告元従業員」から同頁末行までを削除し、次のとおりに改める。
「元従業員一審原告らのじん肺罹患による慰謝料額を次の基準によって算定するのが相当である。
(一) じん肺による死亡
二三〇〇万円
(二) 管理区分四該当者
二二〇〇万円
(三) 管理区分三ロ該当者で合併症のある者 一九〇〇万円
(四) 管理区分三ロ該当者で合併症のない者 一六〇〇万円
(五) 管理区分三イ該当者で合併症のない者 一四〇〇万円
(六) 管理区分二該当者で合併症のある者 一三〇〇万円
(七) 管理区分二該当者で合併症のない者 一〇〇〇万円
そうすると、元従業員一審原告らの慰謝料額は、管理区分四該当者の一審原告黒木巖、同藤井誠、同岩﨑英也、亡荒巻茂文については各二二〇〇万円、管理区分三ロ該当者で合併症のある一審原告新立義光、亡小瀬良喜代喜については各一九〇〇万円、管理区分三ロ該当者で合併症のない亡荒瀬一については一六〇〇万円、管理区分三イ該当者で合併症のない亡竹田吉満については一四〇〇万円、管理区分二該当者で合併症のある一審原告亀田健、同中ノ瀬一夫、同竹本幸定については各一三〇〇万円、管理区分二該当者で合併症のない一審原告岩永健、同吉井利光、同松山年治、同亡岩永實については各一〇〇〇万円とするのが相当である。」
六 争点6(他の粉じん職歴を有することによる責任の限定)について
当裁判所も、本件の事実関係のもとで、債務不履行に基づく損害賠償責任について不法行為に関する民法七一九条一項後段の規定を類推適用して一審被告の他の粉じん職歴を有することによる責任の限定の主張を排斥するのが相当であると判断するが、次に補正するほかは、原判決二四七頁三行目から同二五三頁一行目までと同じであるから、右部分を引用する。
1 同二四七頁三行目の「甲」の次に「一一〇一の3、」を、同行の「一一〇八の3、」の次に「10、」を各加える。同四行目の「乙ハ六〇」を「乙ハ五九」に改める。同行の「本村須満子、」の次に「同竹田英夫、」を加える。
2 同二五一頁九行目の「被告等」から同一一行目の「められる」を削除し、「元従業員一審原告らは、一審被告での稼働を通じて粉じんを吸入することによってじん肺に罹患する危険性を有し、その吸入量などによっては、元従業員一審原告らの現在ないし死亡時の症状に至る可能性があるから、一審被告の主張するように、元従業員一審原告らに他の粉じん職歴があり、その職場で粉じんを吸入していたとしても、元従業員一審原告らの症状と一審被告の前記各安全配慮義務違反の債務不履行との間の因果関係は民法七一九条一項後段の類推適用により法律上推定されるといわなければならない。」に改める。
3 同二五二頁七行目の「ことになる」の次に「(なお、一審被告は、民法七一九条一項後段の法理の適用があるとしても、一審被告に減免責の抗弁の主張立証責任があるのでは、立証の可能性から考えて一審被告に一方的に不利益を課し、訴訟上の公平を欠くことになる旨主張するが、右法理展開の経緯(甲の行為と乙の行為との間に択一的損害惹起の関係があるときに、被害者救済のために甲、乙の各行為に前記の要件が備われば甲、乙の各行為と損害との間に因果関係が存在することを法律上推定するものとした。)に照らして合理性がなく、採用できない。)」を加え、同一二行目の「期間はは」を「期間は」に改める。
4 同二五三頁一行目の末尾に続けて、「なお、一審被告は、一審原告黒木巖、同藤井誠の一審被告における稼働期間はそれぞれ一年四か月、二年三か月にすぎず、それだけではじん肺に罹患するはずはなく、因果関係はない(甲、乙の各行為がそれだけで損害をもたらしうるような危険性がない。)旨主張するが、証拠(甲イ四六、一〇三、一一一、一一五、一一六、一一八、乙ハ二〇、一二五、一二六)によれば、粉じん吸入によるじん肺罹患については、粉じんの種類(有害度)、吸入期間、粉じんの吸入量、個体差などの因子に左右されるところ、より有害度の高い粉じんを短期間にかつ大量に吸入すれば、人によっては三年未満の粉じん作業歴であっても重篤なじん肺症に罹患し発症することがありうることが認められるうえ、三年以上坑内労働に従事しなければじん肺に罹患しないとの医学的知見が確立しているわけでもないから一審被告の右主張は採用できず、前記認定のように一審原告黒木巖、同藤井誠に対しても一審被告での稼働だけでもじん肺罹患の損害をもたらしうる危険性が存したというべきである。
また、一審被告は、一審原告黒木巖、同藤井誠は昭和四四年ころから四六年ごろに一審被告の仕繰、採炭作業(同藤井誠は仕繰作業のみ)に従事していたにすぎないが、その頃には既に防じん対策が十分に取られていたから、一審被告における粉じん作業従事と両人のじん肺罹患との間には相当因果関係はない旨主張するが、前記認定のように、一審被告においてはそのあらゆる時期を通じて防じん対策が十分に取られていたものとは言い難いのであるから、右主張も採用できない。」を加える。
七 争点7(消滅時効及び除斥期間等)について
当裁判所も、一審被告の消滅時効及び除斥期間等の損害賠償請求権の消滅事由に関する主張は理由がないと判断するが、その理由は、次に付加する他は原判決二五三頁三行目から同二五四頁四行目までのとおりであるから、これを引用する。
同二五四頁一行目の次に、行を改めて、「なお、一審被告は、管理二、三、四の各行政上の決定に相当する疾病に基づく各損害は質的に異なるものであるから、各損害に関する損害賠償請求権の消滅時効は各行政上の決定を受けたときから別個の損害として時効が進行する旨主張するが、前記のようなじん肺被害の特質や管理区分毎に別個の被害があるわけではないことなどからすれば、雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺に罹患したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、最終の行政上の決定を受けたときから進行するものと解すべきであり、右主張は採用できない。」を加える。
八 争点8(過失相殺)について
当裁判所も、事実上及び法律上の判断を同じくするから、原判決二五四頁六行目から同二五七頁四行目までを引用する。
九 損益相殺の主張について
一審被告は、一審原告らの一律三三〇〇万円の請求は財産的損害賠償を含むから、財産的損害に対する填補が別途なされれば、その部分については損益相殺されるべきである旨主張する。しかし、本件において一審原告らが請求する損害金は前記(原判決二〇八頁七行目から同二〇九頁一〇行目)のように慰謝料であるから、前記認定(原判決二四四頁二行目から同二四五頁末尾まで)の元従業員一審原告らまたは遺族らが受領したないし受領する労災保険給付を右損害から控除することはできない。
もっとも、前記(原判決二〇九頁一一行目から同二一〇頁四行目)のように慰謝料額算定にあたり、一審原告らが財産的損害等の請求を今後一切しないことを考慮するが、これは慰謝料の中に逸失利益を実質的に含めるものではないうえ、前記のように労災保険給付等の給付を受けていることをも考慮しているのであるから、前記認容額を左右するものとはならない。
一〇 弁護士費用について
原判決二五七頁六行目から同一〇行目までのとおりであるから右部分を引用する。
第四 結論
よって、一審原告らの各請求は、別紙三「一審原告ら別認容金額一覧表」の「慰謝料」欄記載の各金額と「弁護士費用」欄記載の各金額の各合計金額及びこれに対する同表「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却すべきところ、本判決主文第一項、四項記載の一審原告らとの関係でこれと異なる原判決を一審原告ら及び一審被告の各控訴に基づき変更し、その余の一審原告ら(一審原告岩永健、同黒木巖、同新立義光、同中ノ瀬一夫、同藤井誠、同吉井利光、同岩﨑英也、同竹本幸定、同松山年治、同木下妙子、同荒巻邦弘、同楠田きみ子、同荒巻利美)の各控訴及び一審被告のその余の控訴はいずれも理由がないからこれを棄却し、また、当審における一審原告亡岩永實の訴訟承継に基づき原判決中一審原告岩永實に関する部分を本判決主文第三項のとおりに変更する。
ところで、一審被告が、平成一〇年一一月二六日、仮執行宣言付きの原判決に基づき一審原告らに対して別紙二の「支払金額」欄記載の各金額を支払ったことについては、一審原告らは明らかに争わないからそれを自白したものとみなす。したがって、民訴法二六〇条二項に基づく一審被告の請求は、仮執行宣言付きの原判決に基づき遅延損害金を含めて前記各金額を受領した一審原告荒瀬イクエ、同荒瀬清、同小瀬良ハセ、同小瀬良美喜雄、同松岡かやの、同竹田英夫、同竹田義則、同竹田惠三の当審での認容額及び各遅延損害金起算日から平成一〇年一一月二六日までの遅延損害金を控除した各差額(別紙四の計算書に記載のとおり)に右支払日の翌日である同月二七日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その範囲で一審被告の申立てを認容し、その余は理由がないからこれを棄却することとする。
また、一審原告亀田健について、一審被告に支払を命じた金員の全額につき仮執行宣言を付するのが相当であるから、いまだ仮執行宣言のされていない原判決認容金額(金一一〇〇万円及びこれに対する平成九年一月一四日から支払済みまで年五分の割合による金員)を越える部分につき仮執行宣言を付することとして、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・將積良子、裁判官・山田和則、裁判官・山本善彦)
別紙二
別紙三
別紙四