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福岡高等裁判所 平成11年(ラ)33号 決定 1999年4月28日

抗告人

金原君子こと朴貴分

訴訟代理人弁護士

上田英友

相手方

株式会社リファレンス

代表者代表取締役

相部光伸

主文

一  本件抗告を棄却する。

二  抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由は、別紙「執行抗告申立書」及び「執行抗告理由書」記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  抗告人は、不動産の引渡命令においては、相手方に当該不動産の引渡以外の作為を命ずることができないから、土地上に競落の効力が及ばない件外の土地定著物があるときは、当該土地について引渡命令を発することができない旨主張する。

(1)  本件記録によれば、原決定添付の別紙物件目録記載の1の土地(以下「土地1」という。)のほぼ中央部には、本件強制競売の対象外である未登記の軽量鉄骨造鋼板葺平家建事務所(床面積約二八平方メートル、以下「件外建物」という。)が建てられていること、これは、土地1に根抵当権(昭和四七年七月五日受付第二一一四四号、根抵当権者株式会社福岡シティ銀行、債務者金光泰(昭和四九年七月一九日株式会社金原組が追加))が設定された後の平成二年五月ころに建築されたものであり、抗告人の所有であること、また、同目録記載の2の土地(以下「土地2」という。)上には、平成二年六月一日付けの株式会社金原組(代表取締役は抗告人、現商号は株式会社カネハラ)との間の駐車場賃貸借契約に基づき、同土地を賃借している福岡シティ銀行が、平成二年九月ころに設置した自転車置場(三本の支柱で支えられたひさし状の屋根があり、面積約一〇平方メートルの自転車置場、以下「件外建造物」という。)が設置されていること、同目録記載の土地建物(以下、土地1、2を一括して「本件土地」といい、同3の建物を「本件建物」という。)を競落した買受人である相手方は、平成一一年一月四日、福岡地方裁判所に、抗告人に対する本件土地建物の引渡命令を申し立て、同裁判所は、同月五日、その全部の引渡を命じたことが認められる。

(2)  以上の事実によると、土地1には件外の建物があり、土地2には件外の建造物があって、これらの件外物件は、いずれも土地の定著物と認められるから、相手方は、本件土地の引渡を命ずるにすぎない引渡命令によって、抗告人に対し、上記件外物件を収去してその敷地部分を引き渡すことを強制することはできない。

しかし、競売土地の買受人は、債務者から当該土地の引渡を受ける権利があり、かつ、簡易迅速に当該土地の引渡を受ける利益を有するのが通常であるから、執行裁判所は、当該土地に件外物件があっても、特段の事情がない限り、当該土地について引渡命令を発することができると解するのが相当である。その場合において、件外物件の敷地部分の引渡について債務者の協力が得られないときは、引渡命令の執行に当たる執行官は、現地において、敷地部分を適宜特定し、敷地部分については執行不能の処理をすれば足りるところ、本件においては、当該土地の立地条件、件外物件の規模及び位置関係等の諸事情から判断して、むしろ、特段の事情が存在しないことが明白であるから、本件土地について引渡を命じた原決定に違法はなく、抗告人の主張は採用することができない。

2  また、抗告人は、本件建物は、抗告人からの賃借人である株式会社カネハラの従業員が現に占有しており、同占有者は、短期賃借権をもって相手方に対抗することができるから、前同旨の理由により、本件建物について引渡命令を発することはできない旨主張する。

しかし、債務者である抗告人は、本件建物の買受人である相手方に本件建物を引き渡す義務があり、本件建物に他の占有者がいることは、債務者に対する引渡命令の執行を妨げる事由にはならない。したがって、抗告人の主張は失当である。

三  よって、本件抗告は理由がないから、これを棄却することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官小長光馨一 裁判官長久保尚善 裁判官石川恭司)

別紙執行抗告申立書<省略>

別紙及び執行抗告理由書<省略>

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