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福岡高等裁判所 平成11年(行コ)43号 判決 2000年7月18日

主文

一  本件各控訴をいずれも棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

三  原判決三一頁五行目の次に「佐賀地方裁判所民事部」を加える。

事実及び理由

第一  控訴の趣旨

一  原判決を取り消す。

二  本件を佐賀地方裁判所に差し戻す。

第二  請求及び事案の概要

請求及び事案の概要は、後者につき以下のとおり付加訂正するほかは、原判決事実及び理由中の「第一 請求」及び「第二 事案の概要」各欄記載のとおりであるから、それぞれこれらを引用する。

一  原判決七頁八行目の「している」の次に「ことからすれば、これは、佐賀県庁の裏金作りの方便ということでくくられる」を加える。

二  同八頁四行目の次に以下のとおり加える。

「(3) さらに、情報開示の実情からして、被控訴人らの主張するように、本件監査請求において、監査の対象となる行為等を他の行為等から区別して特定認識できるように個別的、具体的に摘示することを要するとするならば、それは、控訴人らに不可能を強いることとなる。」

三  同八頁五行目の「(3)」を「(4)」と改める。

四  同一〇頁一行目の「原告らは、」の次に、次を加える。

「あらかじめなした佐賀県情報公開条例(平成九年三月一部改正、同年四月一日より施行)に基づく開示請求により、平成九年度以前の分も含めて支出先(債権者)の住所、氏名をも含む情報を知り得たはずであるのに、」

五  同一四頁一一行目の「あるから、」の次に「情報開示制度を前提としても、」を加える。

六  同一九頁一一行目の次に、改行の上、次を加える。

「なお、「相当な期間」内に監査請求がなされたか否かは、事案ごとに個別具体的に判断されるべきもので、形式的に、例えば、「三か月」などと規範を定立して単純にあてはめて判断することにはなじまない。」

第三  争点に対する判断

当裁判所は、当審において補充された主張及び取り調べた証拠を加えて検討しても、控訴人らの本件各訴えはいずれも却下すべきものと判断するが、その理由は、以下のとおり補正するほかは原判決事実及び理由中の「第三 判断(本案前の争点について)」欄「一 本件住民監査請求の対象の特定について」(原判決二〇頁一二行目から二七頁一〇行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。

一  同二四頁八行目の「共通である」の次に「上、その背景も佐賀県庁の裏金作りの方便とされていたということで一括りにされるものである」を加える。

二  同二五頁九行目の「できないから、」から二七頁一行目までを次のとおり改める。

「できないものである。したがって、例えば、県庁全部局が統一的に実際に使用した複写機利用枚数に一定割合を上乗せして、これに基づいて違法支出が行われていた場合など、それを一体として判断することを相当とする特段の事情が存する場合はともかく、そうでない以上は、本件複写機使用についての使用料の支払義務の発生場所及び支払方法等が同一であるなど、各支出行為に共通する点があるとしても、各部課における個々の各支出行為ごとに、その支出に対応する複写機の利用の有無を調査しなければ、当該支出行為の違法性、不当性の有無及び程度を判断することはできないのであるから、県庁全体の複写機使用量に係る全支出について、これらを一体とみて、包括的にそれらの各違法、不当であるとする監査請求は、請求の特定性を欠くものといわなければならない。

本件について、右一体的判断を相当とする特段の事情の存否について判断するに、本件全証拠を検討しても、なるほど複写機使用量について水増し支出がされたことが全庁的傾向であるとしても、それは、このような水増し支出が、多かれ少なかれたまたま事実上県庁のほとんどの部課において、同時並行的に行われたというにとどまり、それ以上に、前記のような一体的判断を相当とする特段の事情が存することを認めることはできない。

なお、本件においては、複写機使用料について水増し支出が全庁的傾向であることを佐賀県が認めていたという事情が存するが、これをもって一体的判断を相当とする特段の事情が存するとはいえず、また、そのことから直ちに、各支出行為につき違法、不当支出の有無及び程度を具体的かつ明確に確定できることになるものでもない。

以上のとおりであるから、本件が前記最高裁平成二年判決の示す例外的な場合に該当するとの控訴人らの主張は採用できない。」

三  同二七頁三行目の「支出先等」の次に「のうち、所要の項目」を加える。

四  同二七頁九行目の「ば、」の次に、「その余の本案前の争点につき判断するまでもなく、既に、」を加え、同行目の「結局」を削除する。

第四  以上のとおり、本件住民監査請求は不適法であり、したがって、適法な住民監査請求を経たことを前提とする控訴人らの本件各訴えも不適法であるからいずれも却下すべきであり、これと同旨の原判決は正当であるから、本件各控訴をいずれも棄却することとし、また、原判決に判決裁判所名の表示が欠落しているのは明らかな誤りであるから、本判決主文第三項のとおり更正し、控訴費用の負担につき民訴法六七条一項本文、六一条、六五条一項本文を各適用し、主文のとおり判決する。

(口頭弁論の終結の日・平成一二年五月二五日)

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