福岡高等裁判所 平成18年(う)737号 判決 2007年12月25日
主文
本件各控訴を棄却する。
理由
本件各控訴の趣意は,被告人aの弁護人桃原健二及び被告人bの弁護人松井仁がそれぞれ提出した各控訴趣意書に記載のとおりであり,これらに対する答弁は,検察官大久保信英提出の答弁書に記載されたとおりであるから,これらを引用する。
各論旨は,いずれも量刑不当の主張であり,要するに,被告人両名を死刑に処した原判決の量刑はいずれも不当に重過ぎ,被告人両名に対しては,それぞれ無期懲役刑に処すべきである,というのである。
そこで,記録及び証拠物を調査し,当審における事実取調べの結果並びに被告人両名の当審弁護人らの各弁論をも併せて検討するが,本件は,①被告人bが,実兄cと共謀の上,d方に在宅していたdの次男e(当時15歳)を殺害してd所有の指輪等61点在中の金庫1個(時価合計約398万円相当)を強取した強盗殺人(原判示第1),②被告人b及びcが,両親であるf及び被告人aと共謀して(以下,この4名をまとめて「被告人ら4名」ともいう。),d(当時58歳)を殺害してdが携帯していたバッグ内からd所有の現金約26万円を強取した強盗殺人(同第2),③被告人ら4名共謀の上,dの長男g(当時18歳)とその友人h(当時17歳)を,dに対する強盗殺人の発覚を免れようとして口封じのために,自動装てん式けん銃を用いるなどして殺害するとともに,その際,いずれも法定の除外事由がないのに,不特定若しくは多数の者の用に供される場所において,けん銃を発射した殺人及び銃砲刀剣類所持等取締法違反(同第3,科刑上一罪),④被告人ら4名共謀の上,上記けん銃1丁を適合実包6発と共に携帯して所持した銃砲刀剣類所持等取締法違反(同第4),⑤被告人ら4名共謀の上,d,g及びhの各死体を軽四輪乗用自動車(以下「ワゴンR」ともいう。)に載せて福岡県大牟田市内のu川に沈めて遺棄した死体遺棄(同第5)からなる事案である。
1 本件各犯行の事実関係
本件各犯行の経緯・動機,態様,結果及び犯行後の被告人らの行動等の詳細については,おおむね原判決が【当裁判所が認定した事実】で認定・判示するとおりであるが,改めてその要点を示せば,次のとおりである。
(1) 本件各犯行の経緯等
被告人aは,平成9年ころからdと親しくなり,dが行っていた高利貸しの取立てを手伝ったりしたが,平成12年ころにdから合計300万円を借り入れた後,dから見下されたり,貸金の取立てなどに使い回されるようになり,同女のそのような態度に憤まんを募らせ,平成16年7月ころから,fやcに対し,dについて,「もう,がまんならん。うち殺さなでけん。」などと口癖のように言うようになり,これを聞いたfやcも,自然dに対する敵意を強めていった。また,被告人aは,父親から引き継いで営んでいた建設業等により家計を切り盛りするとともに,夫fが組長を務める指定暴力団i組の姐御的立場で同組の会計もやり繰りしていたが,平成15年ころからその両方で資金繰りが苦しくなるとともに,次第に日々の生活にも困窮し,平成16年9月ころには同被告人とfの借金の合計が6000万円以上にまで膨れ上がった。そこで,同被告人は,同月9日,fに対し,借金の現状やi組の資金繰りの実情等を打ち明けたところ,fから,以前から多額の金を持っていると高言していたdを殺して,同女から金を奪うことを提案された。同被告人は,そうすれば生活難や資金難から脱し,dからの借金も免れることができるとともに,dに対して抱いていた憤まんを一気に解消することもできると考え,fの提案に賛同した。そして,両名の間で,以前dに持ち掛けていたd方隣地の購入話を利用し,同女をだまして現金を用意させた上で,被告人aが同女を殺害し,その死体を同女が使用しているワゴンRに積み込んで,車ごとu川に遺棄する計画を練った。
その後,被告人aは,dから,上記土地代金等として同月15日ころまでに合計2680万円を用意できると聞き,fとの間で,いよいよ同月16日にdを殺害する旨謀議を固めるとともに,ある程度i組やj家の財政事情及び被告人aとdの確執を承知し,自らも将来の夢を実現するためまとまった金が欲しいと思っていたcにもその旨告げて了解を得,同人ともdを殺して,同女所有の現金を奪うことについて意思を相通じた上,同月15日,dから現金の用意ができたと聞くや,その旨fにも報告した。
そして,被告人aは,計画どおり,翌16日,凶器としてカッターナイフを携帯し,ワゴンRを運転して来たdと待ち合わせ,同女を自分が運転していた自動車の助手席に乗り移らせて殺害の機会をうかがったものの,夜遅くなってもd殺害に踏みきれず,途中,fからアイスピックを示されたり,cから万能包丁を示されたりしてせかされたが,なかなか殺害に踏み切れなかった。
(2) 原判示第1の犯行(eに対する強盗殺人)について
cは,このような煮え切らない被告人aの態度を見て,f及び被告人aを出し抜いてdの現金を手に入れることを企て,猪突猛進型の性格で実行力のある実弟の被告人bを犯行に引き込むことにし,上記fらには内緒で,同日(9月16日)夜,被告人bに対し,d方に一人でいるeを殺して同女方にあると思われる2000万円以上の現金を奪うことを持ち掛けた。被告人bは,即答しなかったが,同日午後10時30分ころ,c所有の普通乗用自動車(以下「プレジデント」ともいう。)に同乗してd方の様子を見に行き,eが一人でいたため,cにその旨報告したところ,同人から,「さっさと殺してこんか。」などと指示され,その場でe殺害を決意し,同日午後10時40分ころ,d方2階居間の机でノートパソコンに向かっていたeに対し,殺意をもって,持っていたタオルをいきなりその頸部に掛け,いわゆる一本背負いをするように背中合わせに同人の体を持ち上げてその頸部を絞め,失神して動かなくなったeを床の上に寝かせて,更にその頸部をタオルで絞め,同人が動かなくなったところで,cとともにd方1階寝室内から原判示の指輪等在中の金庫を捜し出して強取し,d方近くに駐車していたプレジデントの後部座席に積み込むとともに,仮死状態のeを同車のトランク内に押し込んだ。
その後,cが,助手席に被告人bを乗せてプレジデントを運転中,トランク内のeが意識を取り戻して悲鳴を上げて暴れ出したため,両名はeを確実に殺害してu川に捨てることにし,コンクリートブロック3個及びロープ1本を用意し,同日午後11時45分ころ,u川にかかる橋の上で同車を停めてトランクを開け,被告人bがeの顔面を1回殴打するとともに,cが仰向けに倒れたeの頸部に素早くロープを掛け,2人がかりでそのロープを強く絞め,eが動かなくなるや,その頸部及び両足にロープでコンクリートブロックを1個ずつ結びつけ,同月17日午前零時ころ,橋の上から,eをu川に投げ込み,同人を頸部圧迫による窒息若しくは溺死又は両者の競合により死亡させて殺害した。
(3) 原判示第2の犯行(dに対する強盗殺人)について
被告人bらが上記原判示第1の犯行に及んでいたころ,被告人aは,自分が運転する車内でdと二人だけになって,なおも殺害の機会をうかがっていたものの,依然としてためらって実行できず,結局,同日(9月17日)午前4時ころになって,fから,いったん殺害計画を中止するが,dを帰宅させずに被告人らのt町の自宅に連れ帰れと指示された。ところが,同日午前6時ころ,dが,息子のeを起こそうと同人の携帯電話に電話したところ,gが応答してeがいなくなっていることが判明し,dは,てっきりeが家出をしたと思い込み,被告人aに対し,gにeを捜させるために自分が乗ってきたワゴンRを自宅に持ち帰ってgに渡したいと言い出した。これに対し,被告人aは,上記のとおり,fらとの間で,dを殺害した後,その死体をワゴンRに載せて車ごとu川に遺棄する計画を立てていたことから,dがgに同車を渡すのは困ると思ったが,それをdに言い出せず,仕方なくdとそれぞれの使用車を運転してd方へ行ったところ,dは,gに,eを捜すように言ってワゴンRを渡すと,被告人a運転の車に戻ってきた。そこで,被告人aは,そのまま自分の車を運転してdを自宅に連れ帰ったところ,そこにいたfから,dをkアパートのi組事務所に連れて行き,同女をできるだけ外出させるなと指示され,指示に従って,dを同事務所へ連れて行った。そして,被告人aは,dの金は欲しいが,やはり自分の手では殺せないと思い悩むうち,ついに同日午後2時ころ,cに対し,「もうどげんもしきらんばい。」「ター坊,お願い,お母さんば助けて。」などと電話して,d殺害の手助けを求めるに至った。その際,被告人aは,cに対し,このことは被告人bには内緒にするよう言った。
そのころ,cは,被告人bとともにd方から奪った金庫をこじ開け,金庫の中にあった貴金属を換金するために質屋を回っていたところであったが,被告人aからの上記電話に対し,「分かったけん,心配いらん。」などと答え,その電話の後,被告人aの意に反して,実行力のある被告人bにも手伝わせるべく,同人に事情を話した。すると,被告人bもこれを了解し,その上で,cと被告人bは,dを殺害するには,まず睡眠薬で眠らせるのがよいと相談し,cが,被告人aに電話し,睡眠薬入りの食べ物をdに食べさせることを提案すると,被告人aは,それに賛成し,cに対し,dの弁当とお茶を購入して持参するように依頼した。cと被告人bは,弁当にかけられているタルタルソースに睡眠薬を入れることにし,被告人bが,購入した弁当のタルタルソースに睡眠薬をすりつぶして混入させた。そして,cは,同日午後4時ころ,i組事務所を訪れ,被告人aに対し,弁当等を手渡し,「タルタル。」と小さい声で耳打ちした。これに対し,被告人aは,弁当のタルタルソースに睡眠薬が混ぜられていることを察し,その弁当をdに渡し,果たしてdがこれを食べ終わって間もなく眠り始めたので,同日午後5時ころ,電話でfを呼び寄せ,同人と,d殺害やその死体の処理の方法を話し合ったが,fは,dだけではなく,同女と被告人aが一緒にいることを知っているgも口封じのために殺す必要があり,両名の死体をワゴンRに載せてu川に沈めて遺棄しなければならないと主張した。これに対し,被告人aは,dは体格が良いので,その場で殺害するにしろ,場所を移して殺害するにしろ,被告人aとfの2人だけで同女の死体あるいは眠った同女を同事務所から運び出すことは無理であると考え,fに対し,cと被告人bを協力させたいと提案したところ,fもこれに賛成したので,同日午後8時30分ころ,cに電話し,被告人bを連れてi組事務所に来るよう指示した。
こうして,同日午後9時前ころ,被告人ら4名がi組事務所に集まり,被告人bも,dを殺害して金品を強取する計画に加わることを了承し(遅くともこの時点で,その旨の被告人ら4名の共謀が成立したものと認められる。),引き続き,同女の殺害方法や口封じのためにgも殺害して同女の死体と一緒にワゴンRに載せてu川に沈めること等について話し合った末,翌18日午前零時ころ,ついに同女を殺害するために同事務所から連れ出すことにし,被告人aが,dを目覚めさせたが,その際,被告人bは,事務所内で,オートバイ等を停めるときなどに使うワイヤー錠を見つけ,それを使って同女の首を絞めて殺すことを決意した。そして,被告人bは,睡眠薬の影響によりまだ意識がもうろうとして足取りのおぼつかない同女を,fが運転する普通乗用自動車(以下「MPV」ともいう。)に乗せた上,自分も被告人aとともにその車に乗り込んだ。fが運転して同車を発進させ,cもプレジデントを運転してMPVに続いたが,fは走行中の車内で,被告人bに対し,自分が咳払いをして合図したら,d殺害を実行するよう指示し,その後,2台の車は原判示の福岡県大牟田市l町m番地n北側岸壁に到着した。
そして,被告人bは,同日午前零時30分ころ,fがMPV車内で咳払いの合図をするや,依然として睡眠薬の影響により意識がもうろうとしているdに対し,「おばちゃん,肩を揉んでやるたい。」などと言いながら,背後からその頸部に上記ワイヤー錠のワイヤー部分を引っ掛け,ワイヤー錠を施錠して輪にした上,両手あるいは片手でワイヤー錠を持ち,同女が座る2列目シートの背部分に足を当てて踏ん張り,更に自分が座る3列目シートの背もたれを後ろに倒して上体を後ろに倒すなどしてワイヤー錠を力いっぱい引っ張ってdの頸部を絞め始めた。そして,このようにdの頸部を絞め続ける被告人bに対し,その様子を車の外から見ていたcは,同被告人の求めに応じてタバコを車内に差し入れたり,車の窓ガラスに「ひとごろし」と指で書くなどして同被告人をからかったりし,fは,車内が熱いと言い出した同被告人のために車のエアコンを作動させたり,同被告人の口元にペットボトルの口をあてがってお茶を飲ませてやったりした。被告人aも,始めは助手席から被告人bがdの頸部を絞める様子を見ていたが,dが両足をばたつかせてもがいているのを正視できずに車外に出たところ,cから,「人間は首を絞めてもしっかり絞めないと息を吹き返す。」などと言われるや,被告人bのところへ行って,同被告人に対し,「dが息を吹き返さないようにしっかり首を絞めろ。」などと指示した。こうして,被告人bは,dの頸部を絞め続け,そのころ,dを頸部圧迫により窒息死させて殺害した。そして,被告人aは,原判示第2のとおり,同第3ないし第5の各犯行後の同日午前4時30分ころ,福岡県大牟田市内を走行中のMPV車内で,dの手提げバッグ内から同女所有の現金約26万円を強取した。
(4) 原判示第3,第4の各犯行(g及びhに対する殺人等)について
被告人bは,上記のとおりdを殺害した後,車外から死体が見えないように同女の死体をシート上に倒し,同女の頸部に掛かったワイヤー錠をシートの肘掛けに掛け,その頸部が絞まり続けるようにした。fは,被告人aが助手席に戻るやMPVを発進させ,cもプレジデントを運転してこれに続き,gが運転していると思われるワゴンRを捜したが,なかなか見つけることができず,cと一時はぐれたりしたが再び合流し,その後はcもプレジデントからMPVに乗り替えてgが運転するワゴンRを捜し続けたが,やはり見つけることができなかった。しかし,被告人ら4名は,同日(9月18日)午前1時35分ころ,gがワゴンRで帰宅しているかもしれないと思ってd方付近にMPVを停めたところ,ちょうど,eが家出をしたと思って同人を捜しているgとそれに協力していたhが乗ったワゴンRがd方に帰ってきた。被告人b,f及びcは,車から降りてワゴンRに近付いて行ったが,同人らはhとは初対面であった。被告人bは,ワゴンRの運転席にいたgに対し,自分たちもeを捜しているかのように嘘をついて話しかけたところ,g以外にもう一人乗車していたことから,cやfと,その同乗者をどうするか相談したところ,2人から,gだけでなく同乗者も殺せと指示され,さらに,fから,原判示の自動装てん式けん銃(以下「本件けん銃」ともいう。)を手渡され,けん銃には既に弾が6発装てんされており,安全装置を外せばすぐに発射できる状態にあると教えられるとともに,gらの心臓を撃つように指示された。被告人bは,これを了承し,cに本件けん銃を渡そうとしたが,同人が受け取ろうとしないため,自ら実行することを決意した(遅くともこの時点で,同被告人とf及びcとの間で,g及びhの両名を殺害する旨の共謀が成立したものと認められる。)。
そして,被告人b及びcは,gらに対し,一緒にワゴンRに乗ってeを捜しに行こうなどと言葉巧みに申し向け,その旨だまされているgとhを同車後部座席に移動させ,後部座席ドアのチャイルドロックをかけてドアを閉め,gらを逃がさないようにした上で,cが運転席に,被告人bが助手席に乗り込み,同日午前2時ころ,cがワゴンRを発進させた。また,被告人bは,走行中の車内で,gとhの2人が外部に助けを求めないように,虚言を弄して2人から携帯電話機を取り上げ,これらを壊したりもした。
被告人aは,f運転のMPVでワゴンRを追いかけたが,その車内で,fから,ワゴンRにはgだけでなく,もう1人友だちが乗っているが,2人ともけん銃で殺害することにし,被告人bにけん銃を渡したと告げられて動揺し,gの友だちまで殺すことに若干異を唱えたものの,fから,顔を見られた以上,2人とも殺さなければならないと説得されて了承した(遅くともこの時点で,被告人ら4名の間で,gら2人を本件けん銃で殺害する旨の順次共謀が成立したものと認められる。)。その後,fと被告人aは,途中でワゴンRを見失い,cらと一時はぐれたが,その間も同人らと連絡を取り合う中,gらの殺害について,c及び被告人bに対し,fの指示を受けた被告人aが,「お父さんがさっさとせろち言いよらすよ。」などと犯行をせかしたり,fが直接に,「なんばしょっとか。うろうろせんで早く発射せんか。」などと怒鳴りつけたりした。
cは,原判示の福岡県大牟田市o町p番地q西側岸壁にワゴンRを停車させると,被告人bに対し,自分が車から降りたらgらの殺害を実行しろと言うや車外に出た。そこで,被告人bは,その場でgらを本件けん銃で射殺することを決意し,同日午前2時15分ころ,まずhに対し,本件けん銃をモデルガンのように装って安心させ,その頭を前に出させるやその左耳上辺りに本件けん銃を向けて弾丸を1発発射して命中させ,次に,目の前でhが撃たれたことに驚いてあ然としているgに対し,「eもdも俺が殺して死んどる。お前ん方,2000万あろうが。金,どけあっとか。」などと問いかけ,gが,金の在りかなど知らないと答えるや,h同様にその左耳上辺りに本件けん銃を向けて弾丸を1発発射して命中させると,いったん車外に出て,cに対し,頭を撃ったが2名ともまだ生きていると報告し,cがこれを被告人aに電話で伝え,更に被告人aがfに伝えると,fは被告人aから携帯電話機を取り上げ,cに対し,「何で頭ば撃ったとか。胸ば撃てち言うとったろうが。」と怒鳴りつけ,引き続き,fから携帯電話機を受け取った被告人aも,fにならって,cに対し,「お父さんが胸ば撃てち言いよらす。3発ずつ6発全部撃てげなばい。」と指示し,cはこれを被告人bに伝えた。被告人bは,またもcに本件けん銃を渡そうとしたがcがそれを拒んだため,再びワゴンRの助手席に乗り込むと,h,g両名に対し,いずれもその胸部に本件けん銃を向けて弾丸を2発ずつ発射して全弾を命中させ,その場でgを頭部射創及び胸部射創に基づく失血により死亡させて殺害した。
その後,fの指示で,被告人ら4名はそれぞれ移動して合流することにし,fと被告人aは,その途中でcらと連絡を取り合ううち,gは死んだが,hがまだ生きていることを知った。そこで,被告人ら4名は,合流後,fの指示の下,アイスピックでhにとどめを刺すことにし,被告人aが,被告人bに,MPV車内にあった2本のアイスピックのうち長い方を手渡した。そして,被告人ら4名は,fと被告人bがワゴンRに,被告人aとcがMPVに分乗し,fと被告人aがそれぞれ運転して出発し,同日午前2時25分ころ,被告人bが,原判示のとおり走行中のワゴンR車内で,hの左胸部を上記アイスピックで1回突き刺して,その場で,同人を頭部射創,胸部射創及び胸部刺創に基づく失血により死亡させて殺害した。
(5) 原判示第5の犯行(死体遺棄)について
g及びhを殺害後,被告人ら4名は,かねてから計画したとおり,dら3人の死体をワゴンRに積み込んで車ごと遺棄するため,d殺害現場付近の岸壁へ行き,被告人bが,dの死体をMPVから引きずり降ろしたが,死体が重くて1人で持ち上げられなかったため,cと2人がかりで死体を持ち上げてワゴンRに積み込み,fが同車を運転するなどしてu川付近へ行き,dらの死体を遺棄しようとしたが,通行車両があったことから,犯行をいったん中止して,fらの自宅に戻り,ワゴンRのナンバープレートを外すための電動ドライバー等を用意した上で,同日(9月18日)午前3時15分ころ,再びu川に戻り,原判示のu川左岸堤防道路にワゴンRを停め,暗がりの中で,被告人aがMPVに乗り込んで前照灯で照射し,その明かりを利用して被告人bがワゴンRのナンバープレートを取り外し,同被告人とfが,ワゴンRを沈みやすくするため同車の3つの窓をそれぞれ少し開けた上,同日午前3時30分ころ,fが,車外からアクセルを踏み,ワゴンRをu川土手の斜面から同川中央付近に向けて走行させて水没させ,dら3名の死体を遺棄した。
(6) 各犯行後の被告人らの行動等
その後,被告人ら4名はMPVに同乗して同日(9月18日)午前4時ころ,d方近くに至り,そこで同車を停止させて被告人aは車内に待機し,被告人b,f及びcが,d方に入って家捜しをしたが,現金を見つけることはできず,その後,被告人aが,前記のとおりdのバッグ内から強取した現金約26万円中,10万円をcに渡し,cは被告人bにうち5万円を渡した。fと被告人aは,こうして得た現金を電話料金やi組の上部団体への上納金,飲食費等に費消した。なお,被告人bは,同月17日,d方から強取した金庫内に在中していた指輪のうち6個を入質し,得た現金合計10万8000円をcに渡し,cから分け前として約4万円をもらった。また,cは,同月19日にも,同様に指輪4個を入質して現金合計2万1000円を得た。
2 被告人aの刑事責任について
以上のとおり,被告人aは,f,c及び被告人bと共謀の上,わずか数時間のうちに,dに対する強盗殺人と,g及びhに対する殺人を次々に実行し,それら3名の死体を車ごとu川に沈めて遺棄したほか,殺人の犯行に際し,けん銃を適合実包とともに所持したものである。
(1) 本件各犯行の経緯や動機についてみるに,dに対する強盗殺人は,被告人aが,多額の負債による生活苦等を打開し,dに対する憤まんを一気に解消しようとしたものであり,g及びhに対する殺人は,gの口封じを狙ったところ,偶然hも一緒にいたからといって,両名とも殺害したものであり,死体遺棄については,これら犯行の隠ぺいを目的とするものであり,金銭欲に始まり人命軽視も甚だしく,自己中心的で身勝手極まりない動機というほかなく,被告人aらが生活苦に陥った経緯等に特段同情できる事情が見出せないことにも照らすと,いずれも酌むべきところはない。所論は,dが長年にわたり被告人aをいいように利用し,j家を見下す態度をとり続けたほか,多額の現金を用意したなどと虚勢を張ったことが,一連の犯行を誘発したなどと主張するが,関係証拠上,dの言動に本件のような凶悪な被害に遭うような非があるとは到底認められない上,仮にdに被告人らの反感を買うような言動が多少あったとしても,それを殊更同被害者の落ち度とみることはできない。
(2) 各犯行の態様をみるに,上記強盗殺人については,dが被告人aらを全く疑っていないことに乗じて睡眠薬入りの弁当を食べさせ,睡眠薬の影響から意識もうろうとなって抵抗できない状態に陥らせた上で,背後からその頸部をワイヤー錠で力いっぱい絞めて殺害し,同女のバッグから現金約26万円を奪ったものであり,また,殺人についても,言葉巧みに被害者両名をだますなどして,その頭部及び胸部に至近距離から3発ずつ発砲してgを殺害し,更にうめき苦しむhの胸部をアイスピックで思い切り突き刺してとどめを刺したものであり,いずれも強固な確定的殺意に基づく,非情かつ残酷なもので,誠に凶悪な犯行態様である。さらに,死体遺棄の態様も,現場に他の自動車が進入しないように道路の交通を妨害したり,犯行を発覚しにくくするために被害者らの死体を積んだ車からナンバープレートを取り外したり,車を沈みやすくするために車の窓を少し開けるなど,計画的なものであって,悪質である。
(3) そして,これらの凶行の結果,3人もの尊い命が奪われたもので,各被害者らがそれぞれ絶命するまでの間に感じたであろう,想像を絶する肉体的苦痛や無念さ等をも考慮すると,本件各犯行の結果が極めて重大であることは明らかであり,社会に与えた衝撃や不安の大きさにも著しいものがある。dは,女手一つで苦労して2人の息子を育て,その成長を楽しみにしていたはずであるのに,それまで親しく付き合っていた被告人aらによって,だまし討ちのようにして殺されたもので,何とも痛ましく無惨というほかなく,哀れである。また,当時18歳で大学1年生であったgと当時17歳で高校2年生であったhの両名も,その前途有望な未来を何の落ち度もないのに理不尽にも突然奪われたもので,これまた誠に不運で哀れというほかない。当然ながら,これら3名の被害者の遺族らは,家族を失った深い悲しみをいやされるはずもなく,一様に峻烈な被害感情を表し,被告人aに対し極刑を強く求めている。なお,所論は,強盗殺人の犯行において,被告人aが強取した約26万円を自分のために費消していないと主張するが,同金員が被告人aを含めた被告人ら4名で分配されたり,それぞれの利益のために費消されたことは明らかであり,そのような点が被告人aに特別有利な事情とはいえない。本件各犯行においては,一貫して被告人ら4名の物欲と人命軽視が認められるというべきである。
(4) ところで,被告人aに関して特筆すべきは,同被告人は,日ごろからfらにdに対する強い憤まんを漏らすなど,同被告人の言動が本件一連の犯行の契機となっているほか,強盗殺人の犯行においては,犯行当日まで自分がdを殺すと言い張り,結局怖ろしくなって犯行に踏みきれないと諦めるや,母親としての立場を忘れ,あろうことか長男(c)に協力を求め,更には次男(被告人b)までも犯行に引き入れたほか,dに睡眠薬入りの弁当を食べさせたり,dの首をワイヤー錠で絞めている被告人bに対し,dが息を吹き返さないようにしっかり絞めなさいと叱咤するなどしている。また,殺人の犯行においても,fとともに,被告人bらに対し,強く実行をせかしたり,被害者らの頭部でなく胸部をもけん銃で撃つよう指示したり,hにとどめを刺すために長いアイスピックを選んで被告人bに手渡している。さらに,死体遺棄の犯行においても,被告人bがワゴンRのナンバープレートを取り外すのに協力し,目撃者等が現われないように自動車を停めて道路の交通を妨害するなどしている。このように,被告人aは,殺害行為こそ担当しなかったものの,各犯罪の遂行に向けて重要な役割を積極的に果たしている。所論は,本件各犯行の計画を主導的に企画立案したのはfであり,それに準ずる首謀者的役割を果たしたのはcであり,各犯行を実行したのは被告人bであって,被告人aは,d殺害の計画が暴走しないようブレーキをかけようとしたが,fやcに従わざるを得なかったとか,g殺害には当初から反対したが,f,c及び被告人bからの圧力のかかった状況の中,反対できなかったのが実情であり,h殺害に至っては,完全にfの決断によるものであり,追認せざるを得なかったとか,犯行に使用されたけん銃の管理についても犯行前後を通じて一切関与しておらず,いずれの犯行にも,従属的かつ消極的に関与したにすぎず,決して首謀者などではないなどと主張する。しかし,被告人aが,d殺害を自ら実行しなかったのは,上記のとおり怖じ気付いたからにすぎず,共犯者として犯行の遂行に何らの防止策も採らず,かえって十分納得した上でd,g及びh全員の殺害に参加し,上記のように各犯行で重要な役割を果たしている。なお,被告人aは,h殺害については,最後まで,同人とは認識していなかったようであるが,gが運転するワゴンRに同乗者がいると聞いた上で,その同乗者の殺害に同意したものであって,決して殺害後に了承したものではない。したがって,被告人aについて,同被告人が関係した前記各犯行について,同被告人を首謀者と評価するかどうかはともかく,その関与が従属的かつ消極的なものにとどまるなどと評価することはできず,同被告人の本件犯情はすこぶる悪いというほかなく,その刑事責任が極めて重大であることも明らかである。
そうすると,同被告人が,本件各犯行の実行犯ではなく,上記のとおり,d殺害をためらって実行せず,g殺害に若干異を唱えた場面もあるなど,当初から各被害者を殺害することを主導したものではないこと,捜査段階から素直に各罪を認め,本件各犯行の事実関係等について詳細に供述し,原・当審公判においても,極刑を覚悟していると供述し,一連の犯行が全て自分の単独犯行であると主張するfと,本件各犯行への関与を全面的に否認するcに対し,事実を正直に認め,一緒に刑に服そうと手紙で呼び掛けるなど深く反省していることがうかがえ,更生可能性が皆無であるとまではいえないこと,hの母から差し入れられた現金を自らした写経とともに供養のために寺に送るなど,決して十分ではないが被害者及び遺族らに対する謝罪の意思を明らかにしていること,その他所論指摘の点を含め同被告人のために酌むべき諸事情を最大限考慮し,さらに,死刑が人間の生命を奪う極刑であり,窮極の刑罰であることにかんがみ,その適用は慎重に行われなければならず,「犯行の罪質,動機,態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性,結果の重大性ことに殺害された被害者の数,遺族の被害感情,社会的影響,犯人の年齢,前科,犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき,その罪責が誠に重大であって,罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には,死刑の選択も許されるものといわなければならない」(最高裁昭和56年(あ)第1505号同58年7月8日第二小法廷判決・刑集37巻6号609頁)との最高裁判決の趣旨を踏まえても,被告人aに対し死刑を宣告した原判決は,やむを得ないものというほかなく,これが重過ぎて不当であるとはいえない。
3 被告人bの刑事責任について
被告人bについても,被告人a同様,fらと共謀の上,わずか数時間のうちに,dに対する強盗殺人と,g及びhに対する殺人を次々に実行し,それら3名の死体を車ごとu川に沈めて遺棄したほか,殺人の犯行に際し,けん銃を適合実包とともに所持したものであるが,さらに,被告人aらがdに対する強盗殺人の実行をためらっている間に,cと共謀の上,eに対する強盗殺人をも実行したものである。
(1) 本件各犯行に至った経緯・動機については,上記2(1)において被告人aについて述べたところが被告人bについてもそのまま当てはまる上,eに対する強盗殺人においては,同被告人は,cから,d方の金庫には2000万円以上の現金があり,e一人しかいないので同人を殺害して現金を強取しようと持ち掛けられ,いったんは,eが親しい友だちであるgの弟であったことから,eを殺す必要はないと消極的態度を示したものの,cから,「(被告人bの)弟を使う。」,「お前がやめるなら,お前もr(被告人bの交際相手)も殺す。」などと言われ,cの言をそのまま真に受けたとは思われないが,cに対する怒りを覚えながら,結局は500万円の分け前も提案されて犯行に荷担することに同意したもので,これまた利欲的で人命軽視も甚だしく,自己中心的で身勝手極まりない発想というほかなく,そのような犯行に至る経緯や動機に酌量の余地がないことは明らかである。
所論は,①dの言動が,犯意形成に寄与したことは否定できず,原判決が,d殺害の動機について,人の尊厳を無視する短絡的かつ極めて自己中心的なものであって,酌量の余地は全くないと判示しているのは,いささか断定的すぎる,②被告人bは,特に金銭に困っておらず,利得目的がほとんどなく,dに対する恨みもなかったが,i組ないしj家において絶対的立場にあったfや被告人a,あるいは日ごろから腕力においても,弟としての立場からも逆らえない立場にあったcの命令に従ったまでであって,fや被告人aに対する忠誠心や愛情も相まって本件各犯行に及んだものであるから,その動機を自己中心的なものとみるのは相当ではない,③被告人bは,g及びhの殺害について,いったん逡巡もしたものであって,同被告人に,dに対する強盗殺人の発覚を防ぐために上記2名の生命を奪うという身勝手極まりない動機があったともいえない,などと主張する。しかし,①上記2(1)において被告人aの所論について判示したとおり,dの言動を落ち度とみるのは相当ではない。②また,関係証拠から認められる被告人bとf,被告人a及びcとのやり取りをみる限り,被告人bが,決してfや被告人a,cらに支配されて逆らえない状況にあったものとは認められず,被告人bは,あくまでも自ら犯行を決意したものであり,また,eに対する強盗殺人についても同様である。③さらに,被告人bがg及びhを殺害することに当初若干逡巡したことは所論指摘のとおりであるが,上記1(4)に判示したとおりの残酷で容赦のない殺害態様には,同被告人の極端な粗暴性が顕著に現れているというべきである。
(2) 次に,各犯行の態様についても,上記2(2)において被告人aについて判示したとおりであるが,加えて,eに対する強盗殺人の犯行についてみると,上記1(2)のとおり,被告人bは,eが自分を全く疑っていないことに乗じて,背後からいきなり首を絞め,その後もeが息を吹き返すたびにその頸部を平然と繰り返し絞め,更にはコンクリートブロック3個をeの首と両足にロープで縛り付けて同人を橋の上からu川に投げ落とすなどして殺害したもので,誠に執ようで冷酷な殺害の態様であり,金庫を強取し,その後奪った貴金属類を換金した点も大胆で悪質である。所論は,被告人bは,e殺害については犯行の30分前,dほか3名の殺害については犯行当日に初めて知らされ,そのまま勢いで各犯行に突っ走ってしまったものであり,本件は場当たり的で計画性のない犯行というべきであって,計画的犯行の特徴である犯罪遂行に対する強固で継続的な意思はなく,犯行を中止する機会もなかった,などと主張する。しかし,関係証拠によれば,同被告人らは,e殺害に際してロープやコンクリートブロックを用意し,車のトランク内で悲鳴を上げるeの殺害方法を打ち合わせ,dらを殺害した後に死体を車に積んでu川に沈める旨謀議を遂げるなど,いずれの犯行についても,綿密とまではいえないまでも,それなりに計画性が認められる上,前記1で認定・判示したとおりの各犯行態様をみる限り,同被告人が強固な殺意を有していたことは明らかであり,殺意を放棄し,犯行を中止する機会などいくらでもあったというべきである。なお,所論は,原判決は,被告人bがe,g及びhの各殺害行為をすべて実行したと認定しているが,同被告人は,cに意地を張って真実を述べていない可能性があり,cも殺害行為を更に実行した合理的疑いがあると主張するが,関係各証拠を精査しても,そのような合理的疑いをうかがわせるものは見当たらない。また,被告人aが,cが原判示以上に実行した疑いがあると述べていることは所論指摘のとおりであるが,これも現場にいなかった者の推測にすぎず,客観的根拠に基づくものではない。
(3) e,d,g及びhの4人もの尊い命が奪われた,その結果自体が極めて重大であるところ,上記2(3)において被告人aについて述べたところは,そのまま被告人bにも当てはまるが,更にeについても,当時,弱冠15歳の高校1年生で,勉学に励むとともにボクシングを習うなど充実した毎日を送っていたところ,何の落ち度もないのに,突然襲われ,必死に抵抗したがむなしく殺されたものであり,絶命するまでの間に感じたであろう,想像を絶する肉体的苦痛や無念さ等に照らすと,誠に痛ましい限りである。所論は,hの母親sが,現在においては被告人らに対する死刑を望んではいないと考えられると主張するが,当審における同女の意見陳述等からも,同女が被告人らに極刑を望んでいることは明らかである。
(4) そして,被告人bは,本件各犯行,殊にe,d,g及びhの4人をわずか2日間のうちに殺害した実行犯であり,その刑事責任が特に重いことは明らかであって,ためらいなく次々と冷酷に殺人を重ねる様子からは,顕著な人命軽視及び極端な暴力肯定の態度が明白に認められる。しかも,同被告人は,平成15年4月に暴力行為等処罰に関する法律違反,覚せい剤取締法違反,大麻取締法違反及び器物損壊罪により中等少年院送致の保護処分を受け,平成16年5月に少年院を仮退院したが,すぐにi組に加入し,短期間のうちに本件各犯行に及んでおり,上記保護処分当時から,同被告人には,深刻な反社会性や無軌道な粗暴性や暴力団に対するあこがれといった問題点があると指摘されていることにも照らすと,同被告人の犯罪性向は極めて深刻であって,同被告人が犯行当時20歳で,現在23歳といまだ若年であることから,そうした人格傾向の矯正が全く不可能であるとまで断定することはできないが,その可能性は著しく困難であるといわざるを得ない。いずれにしても,同被告人の本件犯情は極めて悪く,その刑事責任は被告人a同様,あるいはそれ以上に重大であるといわねばならない。
そうすると,被告人bが上記のとおり若年であること,捜査段階から素直に各罪を認め,本件各犯行の事実関係等について詳細に供述し,原・当審公判において,それなりに反省の態度を示していること,前科がないこと,その他所論指摘の点を含め同被告人のために酌むべき諸事情を最大限考慮し,さらに,上記最高裁判決の趣旨を踏まえても,被告人bに対し死刑を宣告した原判決は,相当にしてやむを得ないものというべきであり,これが重過ぎて不当であるとはいえない。
以上によれば,被告人両名に関する弁護人らの各論旨はいずれも理由がない。
よって,刑訴法396条により本件各控訴を棄却し,当審における訴訟費用を被告人両名に負担させないことにつき同法181条1項ただし書を適用して,主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 正木勝彦 裁判官 松下潔 裁判官 平島正道)