福岡高等裁判所 平成18年(く)211号 決定 2006年10月31日
主文
本件即時抗告を棄却する。
理由
本件即時抗告の趣意は,弁護人B作成の即時抗告申立書に記載されたとおりであるから,これを引用するが,所論は,要するに,原決定は,捜査段階におけるAから聞き取った事情に関する各報告書(以下「本件報告書」ともいう。)の開示命令の申立てを棄却した原決定は,刑訴法316条の15第1項6号の解釈・適用を誤った不当なものであるから,同決定を取り消した上,未開示の上記各報告書の開示を求める,というのである。
そこで,記録及び当審における事実取調べの結果をも併せて検討するに,本件報告書は,警察官が,本件殺人及び詐欺未遂等事件の任意捜査の段階で,共犯者のAに対し事情聴取を行って,その都度作成したものであるところ,本件報告書には,作成者で事情聴取をした警察官の署名押印があり,上記法条にいう「被告人以外の者の供述録取書等」に該当する余地はある。しかし,当審における事実取調べの結果によれば,本件報告書の内容は,争点であるAと被告人らとの上記各犯行の共謀の有無との関連は薄く,少なくとも,上記法条にいう「検察官が特定の検察官請求証拠により直接証明しようとする事実の有無に関する供述を内容とするもの」とはいい難い。したがって,A供述の信用性を検討・判断するに際して,本件報告書を取り調べる必要性や重要性も低いと認められる。もとより,検察官において,被告人側に無用の疑念を持たれないよう任意に開示するのはともかく,その要件を欠くとして,本件報告書に関する開示命令の申立てを棄却した原決定に,上記法条の解釈・適用の誤りはないというべきである。
よって,本件即時抗告は理由がないから,刑訴法426条1項によりこれを棄却することとし,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 正木勝彦 裁判官 平島正道 裁判官 柴田厚司)