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福岡高等裁判所 平成2年(ネ)296号 判決 1992年9月24日

第三六二号事件控訴人・第二九六号事件被控訴人(一審原告)

小坂晋一郎

第三六二号事件控訴人・第二九六号事件被控訴人(一審原告)

山本治市郎

第三六二号事件控訴人・第二九六号事件被控訴人(一審原告)

福田禎

右一審原告ら訴訟代理人弁護士

市川俊司

服部弘昭

第二九六号事件控訴人・第三六二号事件被控訴人(一審被告)

日本国有鉄道清算事業団

右代表者理事長

石月昭二

右訴訟代理人

荒上征彦

利光寛

滝口富夫

増元明良

内田勝義

第三六二号事件被控訴人(一審被告)

緒方義幸

第三六二号事件被控訴人(一審被告)

堀豊志

右一審被告ら三名訴訟代理人弁護士

秋山昭八

平井二郎

主文

一  原判決主文第二項を取り消す。

二  一審被告日本国有鉄道清算事業団が一審原告らに対し、昭和六一年三月三一日付でした戒告処分は、いずれも無効であることを確認する。

三  一審原告らの一審被告緒方義幸及び同堀豊志に対する控訴並びに一審被告日本国有鉄道清算事業団の控訴をいずれも棄却する。

四  訴訟費用は、第一、二審とも、一審原告らと一審被告日本国有鉄道清算事業団との間に生じたものは同一審被告の負担とし、一審原告らと一審被告緒方義幸及び同堀豊志との間に生じたものは一審原告らの負担とする。

事実

第一本件控訴の趣旨

一  一審原告ら

1  原判決中一審原告ら敗訴の部分を取り消す。

2  主文、二項と同旨

3  一審被告緒方、同堀は、各自一審原告らに対し各金三〇万円及びこれに対する一審被告緒方は昭和六一年一月二〇日から、同堀は同月二一日から、各支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

二  一審被告日本国有鉄道清算事業団(以下「一審被告事業団」という。)

1  原判決中一審被告事業団敗訴の部分を取り消す。

2  一審原告らの一審被告事業団に対する請求をいずれも棄却する。

第二当事者の主張

原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する(ただし、原判決九枚目裏一〇行目の「主張のような」から同一二行目末尾までを「一審原告らが、昭和六〇年八月五日直方自動車営業所において不都合な行為があったとして本件懲戒処分に付されたことは認めるが、その余は争う。一審原告らは、本件スト当日の不参を理由として本件懲戒処分を受けたものである。」と改める。)。

理由

一  当裁判所は、一審原告らの一審被告事業団に対する本訴請求を正当として認容し、一審被告緒方、同堀に対する請求を失当として棄却すべきであると判断するもので、その理由は、次のとおり付加、訂正するほかは原判決の説示するところと同じであるからこれを引用する。

1  原判決一二枚目裏一二行目の「主張のような理由により」を「一審原告らが、昭和六〇年八月五日同営業所において不都合な行為があったとして」と改め、同一三枚目表七行目の「同古賀厚」の次に「、同奥田義一(一部)」を加える。

2  同一四枚目裏五、六行目の「日勤者」の次に「(具体的には事務及び修理担当者十数名)」を加え、同八行目の「非休の職員」を「非休(非番)の職員及び当該時間帯が勤務時間外となっていた職員(バス乗務員)」と改める。

3  同一六枚目表末行の次に行を改めて、「なお、当時、国労としては、当局から時季変更権の行使がなされた場合にはそれに従うよう組合員に指導していたし、一審原告らも本件年休について時季変更権の行使があればそれに従うつもりであったが、右一審原告らに対する通告は時季変更権の行使としてなされたものではなかった。」を加える。

4  同一七枚目表初行の次に、行を改めて「なお、同営業所はバスの運行業務を行っているものであるが、当時の職員数は七十数名であり、そのうち本件ストの対象者は前記のとおりバス乗務員を除く十数名であって、本件ストにより同営業所のバスの運行に支障を生じたことは全くなかったし、事務部門等の業務にも問題とされるほどの影響は生じていない。」を加える。

5  同一七枚目表八行目の「当局は」から同一二行目の「第一号により」までを削除する。

6  同一七枚目裏初行「なお、」の次に「同営業所における」を、同四行目の末尾に続けて「しかして、右減給処分を受けたのは国労直方班から上部団体(自動車分会)の書記長になっていた者であり、戒告処分及び一日分の賃金カットを受けたのは、一審原告ら三名のほか一審原告らと同様に年休を取得して職場集会等に参加し、不参とされた女性の車掌二名(本件ストの対象者ではなく、また少なくともうち一名は組合の役員ではなかった。)であり、訓告(懲戒処分ではない。)及び一時間分の賃金カットを受けたのはスト対象者として本件ストに参加した日勤者であった。そして、一審原告ら及び右車掌二名と同様に(本件ストの対象者ではなくて)職場集会等に参加した者であっても、年休を取得していなかった者(公休・非休の者及び当該時間帯が勤務時間外であった者等)については、何らの処分もなされていない。」を、それぞれ加える。

7  同一八枚目裏三行目の「本件スト等の指導」を「本件スト対象者の激励」と改め、同九行目の「証拠はなく」の次に「(本件ストにより直方自動車営業所のバスの運行業務の支障を生じていないことは前示のとおりである。また、スト実施の時間も一時間にすぎない。)」を加える。

8  同一八枚目裏一二、一三行目の「いうべきである。」の次に「もっとも、一審原告らは、その所属する事業場である直方自動車営業所において行われた本件ストの際における職場集会等に参加して、本件スト対象者の激励等の行為をしたものであるけれども、一審原告らと本件スト対象者とではその業務の内容が異なり(ちなみに、<人証略>の証言によると、同営業所における年休申込簿は一審原告ら等の運転係用、営業係(バス車掌)用及び日勤者用で区別されていたことが認められ、当局が時季変更権を行使するかどうかの判断も右職種ごとになされていたことがうかがえる。)、前示のとおり、一審原告らの本来の業務であるバス運行に関しては何ら業務の阻害はなかったのであるから(なお、本件スト対象者である日勤者の担当業務に関しても問題とされるような業務阻害は生じていない。)、一審原告らの行為は、実質的にみるならば、他の事業場における争議行為の支援活動を行った場合とほとんど異ならないともいえよう。」を加える。

9  同一九枚目表六行目の「(もっとも、」から同八行目の「否定するものではない。)」までを削除する。

10  同一九枚目表九行目の「次に」から同二〇枚目表五行目末尾までを左のとおり改める。

「次に、本件懲戒処分について検討するに、一審原告小坂(当審)、一審被告堀各本人の供述及び弁論の全趣旨によると、一審被告事業団は、一審原告らの本件年休の取得が正当な年休権の行使ではなく、したがって本件八月五日は勤務を要する日となるのに一日勤務しなかったとして不参とし、このことを理由として本件懲戒処分をしたものであることが認められる。なお、このことは、前示のとおり、直方自動車営業所において当日一審原告らと同様に年休を取得して職場集会等に参加した一般組合員である車掌が一審原告らと同じ戒告の処分を受けたのに、本件ストに参加した(現実に職場を離脱した)スト対象者に対しては懲戒処分ではない訓告しかなされず、また年休を取得せずに職場集会等に参加した者については何らの処分もなされていないこと、さらに、同営業所福丸支所の職員で国労門司地方本部中央支部自動車分会福丸班の副班長であった山下常久及び同書記長であった末永勤、並びに同営業所博多支所の職員で同分会博多班の副班長であった倉本和義は、いずれも本件八月五日右各支所で行われた本件ストと同態様のストの際の職場集会等に参加し、本件一審原告らと同様な行動をしたが、いずれも当該時間帯が勤務時間外でかつ年休も取得していなかったところ、何らの処分も受けなかった(同じ福丸支所でも、年休を取得して本件一審原告らと同様の行為をした班長の塩田喜代範は戒告処分を受けた。)事実(右は、<証拠・人証略>並びに弁論の全趣旨により認める。)によっても裏付けられるところである。

しかし、前示のとおり、一審原告らの本件年休の取得は有効なもので、そうすると、一審原告らが不参(無断欠勤)とされる理由はないから、本件懲戒処分はその根拠を欠くものとして、無効であるといわざるを得ない。

この点につき、一審被告事業団は、本件懲戒処分は本件ストの際の職場集会等における一審原告らの各行為をも処分の理由とした旨主張するが、これに沿うかのような(人証略)部分は右認定の諸事情や一審被告堀の供述に照らしてにわかに採用できず、他に右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

11  同二一枚目表一〇行目の「請求中」から同一一行目の「部分は」までを「請求は」と改め、同裏初行「本件懲戒処分の」から同二行目の「棄却し、」までを削除する。

二  よって、原判決中本件懲戒処分の無効確認を求める請求を棄却した部分は失当であるから、一審原告らの控訴に基づき同部分を取り消して右請求を認容し、その余の部分は相当であるから同部分についての一審原告らの控訴及び一審被告事業団の控訴を失当として棄却することにして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 柴田和夫 裁判官 榎下義康 裁判官渕上勤は転任のため署名捺印することができない。裁判長裁判官 柴田和夫)

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