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福岡高等裁判所 平成21年(く)5号 決定 2009年1月19日

少年

A (平成○.○.○生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

君の書いた抗告申立書を読んで,君の言い分は,中等少年院送致(一般短期処遇)の処分は重過ぎて納得がいかないので,試験観察にしてもらい,もう一度社会の中で立ち直るチャンスがほしいということであると理解しました。

そこで検討しましたが,私たちも,君を中等少年院(一般短期処遇)に送致した福岡家庭裁判所の判断は正しいものと考えました。

今回の非行は,君が,平成20年11月16日,○○市内の繁華街の道路において,普通乗用自動車を無免許で運転したという道路交通法違反(無免許運転)の事案です。

君は,無免許であるにもかかわらず,友人3人を乗せた普通乗用自動車を運転し,パトカーに乗車した警察官から停止を求められたのに,無免許運転が発覚するのを防ぐため,急にスピードを上げて逃走を図っています。今回の非行は,一歩間違えれば重大な事故につながりかねないもので,危険かつ悪質といわなければなりません。

君は,これまで自動車の運転免許を取得したことは一度もなく,平成17年9月に取得した自動二輪車の運転免許についても,平成18年10月にバイク仲間と一緒に集団暴走(共同危険行為)を行ったことなどで,平成19年3月に取消処分を受けています。しかも,同年1月にはこの事件について交通保護観察処分を受け,その後無免許で自動二輪車を運転したことで平成20年5月に罰金刑に処せられたにもかかわらず,同年8月に,運転免許を取るまでは付き合っている彼女に運転させるなどと言って,伯母さんからお金を借りて普通乗用自動車を購入し,両親や伯母さんから無免許運転をしないように注意されていたのに,この自動車を運転して近所のコンビニに買い物に行ったり,彼女が運転しているときに運転を交替したりして,無免許運転を繰り返し,今回の非行に至りました。

以上のいきさつからわかるとおり,君は,明らかに交通法規を軽視しており,無免許運転が一歩間違えれば人の命を奪いかねない危険な行為であることをわかっていなかったといわざるを得ません。また,君には,周りの人たちの注意を聞き入れず,わがままを押し通そうとするところがあります。

そして,君が,これまで,繰り返し社会の中で立ち直るチャンスを与えられてきたのに,それを生かすことができなかったことからすると,先に述べた君の問題点が,社会の中で簡単に治るとは考えられません。

そうすると,君が反省していることや,これまで真面目に働いてきたことを考え合わせても,今回,君には,少年院で専門家の指導を受けてもらい,交通法規を守ることの大切さや,自分本位の考えでわがままを押し通すのではなく,周りの人たちの意見にも耳を傾けながら行動することの大切さをよく理解してもらうことが必要であると考えます。佐世保学園での生活をがんばって,立ち直ってほしいと思います。

以上の理由から,君の言い分を聞き入れることはできないと考えました。

そこで,少年法33条1項により,主文のとおり決定します。

(裁判長裁判官 川口宰護 裁判官 池田信彦 早川幸男)

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